テスラ『モデル3』で広島まで約904kmを充電1回で走破〜「EVは航続距離が短い」はもう古い

7月30日から31日にかけて、テスラ『モデル3』で、埼玉県所沢市から広島県広島市の広島SC(スーパーチャージャー)までの約904kmを「途中充電1回」だけで走破することができました。今でも「電気自動車は航続距離が短い」と言う人がいますが、そんな思い込みはもう古いことを実感しました。

テスラ『モデル3』で広島まで約904kmを充電1回で走破〜「EVは航続距離が短い」はもう古い

EVsmartチームのモデル3で走ります

さて、今回はいくつかのテーマを掲げた取材のために西日本まで遠征しました。目的地は広島県広島市・三原市、それに愛知県岡崎市です。私自身がまとまった時間が取れたのと、先方のご都合もうまく合ったので。

普通にスーパーチャージャーを使いながら移動してもよいのですが、普段「好電費」を出している筆者としては、「周囲からの期待」も感じていたので、敢えて自宅がある所沢から広島まで「途中充電1回で走りきる」チャレンジをすることにしました。

EVsmartチーム社有車のモデル3。

EVsmartを運営するアユダンテの社有車であるモデル3 Performanceは、テスラは明確に公表していないものの「75kWh」ほどのパナソニック製の二次電池を搭載していると言われています。

また、実はこのクルマは、モデル3では「日本納車第1号」なのです。当初は満充電で「395km前後」は高速道路でも安心して走ることができましたが、2021年7月末現在では平均して「360~370km」あたりに落ちているそうです。さすがのパナソニックのNCAケミカル電池とテスラの管理でも、電池劣化は免れないようです。45,000kmほど走っていますし、いろいろな人が様々な運転スタイルで走らせてきたので、さもありなん、ですね。ただし、これは高速道路を流れに乗って気持ちよく走った場合の目安距離であり、2019年モデル3パフォーマンスのEPA高速距離は499km。少し劣化しているとはいえ450kmは行けるでしょうから、省電費走行を旨とする筆者にとっては「絶対に負けられない戦い」です。

きっかけは Clubhouse での会話

取材旅行のきっかけは、音声SNSサービス『Clubhouse』での会話でした。筆者は2021年2月初めより、広島在住の友人藤井智康さんに誘われて、Clubhouseで電気自動車や環境、再生可能エネルギーを扱うRoomを続けています。毎週日曜の10:00~12:00が基本ですが、13:00近くまで伸びることが多いです。今ではiPhoneだけでなくAndroid端末でも使えますし、「招待制」も終わったので、どなたでも参加できます。よろしかったらお越しください。今度の日曜日もやりますよ。

さて、藤井さんと言えば、あの映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』にタイムマシンとして登場する「DMCデロリアン」を「バッテリー式電気自動車(BEV)」に改造して、10年にわたって改良し続け、様々に情報発信されていることで知られている方です。

じつは藤井さんは「現役」の、そして筆者は「元」のジャーナリストということもあり、どうせClubhouseをやるなら「双方向型ラジオ番組(筆者はこれを『Radio 2.0』と命名)」のような「番組」にしよう、と話し合ってきました。なので、事前取材のレポートや、「時の人」をお呼びしてのインタビュー、話題の現場に赴いて生中継など、単に愉しく喋るだけでは終わらせないように心がけてきました。

ちなみに、藤井さんのデロリアンを詳しくご覧になりたい方は、BS日テレで8月28日(今日です!)に紹介されますので、お見逃しなく!

BS日テレ「おぎやはぎの愛車遍歴」第353回
2021年8月28日(土)21:00~21:54放送予定 GLAYのHISASHIさんのリクエスト

藤井さんの手作り改造EVデロリアン。

このRoomのモデレーターには藤井さんと筆者のほか、大手電力会社勤務でi-MiEV Gに乗り小型電動モビリティーに詳しい大木広士さん、元・三菱自動車で今は物流・介護福祉関係の会社に務められているエンジニアでi-MiEV M乗りの平賀一洋さん、i-MiEVとminicab-MiEVトラックを自作の太陽光発電パネルで運用している村田良文さん、大手電機会社勤務で日産リーフ・BMW i3・電動キックボードに乗る石井浩一さん、BEVと太陽光発電パネル組み合わせてオフグリッドで養豚にとり組む坂本耕太郎さん、日産リーフを何台も乗り継ぎリーフ・アンバサダーも務める杉本容一さんなど、筆者たちのEV仲間であり、多くの経験と知識をお持ちの方々が参加しています。

また、常連の参加者としては、普通車で世界初の量産車である「日産リーフ」の初代型のプロダクトチーフデザイナーを務められた井上真人さん、e Mobility Power会長の姉川尚史さん、三菱自動車の百瀬信夫さん、災害にEVを活かそうと活動されているパワーエイドジャパンの本郷安史さん、集合住宅への充電器設置の草分けである株式会社ユアスタンドの代表である浦伸行さんなど、EVとその周辺をよく知る方々に参加いただいています。

なかでも井上さんは、現在はイタリア・トリノで自動車デザインの大学で後進の指導をされていますが、真夜中から明け方の時間帯に当たるにもかかわらず、頻繁に参加していただいています。

そんななか、2021年の晩春、ちょうAndroid端末でも Clubhouse に参加できるようになった時のRoomで、EVsmartブログチームのリーダーであり、アユダンテのCEOである安川さんから、「i-MiEVでかなりの好電費を出している箱守さんなら、モデル3に乗れば東京から広島まで途中1回の充電で行けるんじゃない?」と言われたことがきっかけでした。東京から広島市までの距離はざっと880km(Google Mapの経路検索)、途中の充電は大阪?岐阜羽島?などと急に考え始めた、という事情がありました(実際に走った距離は、約904kmに達しました)。

充電1回を前提にプランを作成

首都圏から広島までのルートを普通に考えると、浜松SCあたりでまず継ぎ足し、大阪SCでさらに充電、その後必要であれば岡山倉敷SCで継ぎ足し、といった形に落ち着くことでしょう。浜松SCで充電したあとは、岐阜方面を経由せずに、伊勢湾岸道を使って名古屋都市圏の南側を通り、御在所から鈴鹿の山なみを越えて琵琶湖南東の草津に抜けるのが便利でしょう。

しかし、今回は「途中充電1回」を自らに課したので、おのずと岐阜羽島SCを中間充電地点に選ぶことにして、7/30の昼過ぎに首都圏を出発し、日が暮れる頃には岐阜市内の宿に入れる行程にしました。

Google Mapとテスラのナビで岐阜羽島SCまでの距離を見ると、400km前後の値が出て来ます。車両を管理するスタッフから「最近は370km程度しか走れない」と聞いていた現状のモデル3ですが、クルマが少ない場所で巡航速度を80km/hほどに下げれば到達できると予測しました。

地図アプリでルート検索してみると、所沢を起点にしていたためか、八王子JCから中央道を通るように指示されます。でも今回は電費優先でアップダウンは避けたいので、海老名JCTまで南下して東名・新東名を選びます。

さらに、後半の岐阜から広島がチャレンジです。こちらはどう見積もっても500km近くあります。一充電370kmくらいというEVで「500kmを走ろう」というのは、私にとってもかなりのチャレンジです。

とはいえ、岐阜羽島SCから広島へ向かう途中の倉敷SCまでは350km程度なので、最悪でもなんとかそこまでは到達できるでしょう。さらに厳しいようであれば、神戸市圏を過ぎたあとで一般道に降り、どこかのCHAdeMOで継ぎ足し充電することにします。

実際の走行レポート【前半】所沢〜岐阜羽島

満充電で所沢を出発。

前半の首都圏から岐阜羽島SCまでを走る7/30は、昼前で仕事が終わって(EVsmartとは別の仕事)、15:00ごろには首都圏を脱出するつもりでしたが、雑用が多く仕事場から抜け出すのが遅れてしまいました。結局、所沢を夕暮れ近づく時間帯に出ることになってしまいました。

EVsmartチームの石井さんが気を利かせてモデル3のガレージ(賃貸のビル地下駐車場)に設置してあるウォールコネクターで普通充電しておいてくれたので、アユダンテを出るときは100%でした。その後自宅に寄って荷物を積み込んでいるうちに電気を使ってしまったので、QCが複数ある小手指で100%まで入れてチャレンジ開始です。

小手指のQCで100%にしてスタートしました。

最寄りの入間ICから圏央道に入り、海老名JCTを目指します。月曜の夕方ということもあり、クルマはそれほど多くありません。海老名から東名に入るころには夕暮れが訪れました。登り終えた足柄付近では、例によって霧が少し出ています。また、周囲の山には雷雲がいくつも出ているらしく、所々が光っています。

新東名に入り、クルマも多くないので、80km/h巡航で電気を節約します。前に乗った人が設定していたBBC World Serviceを聴きながら、ゆったりと西を目指します。時おり左手に太平洋沿いの町や港が見下ろせますが、西に向かうと山の中を走るので、こうした景色はしばらく見納めです。

足柄付近では霧が出てきました。(ホルダーに固定したアクションカメラの画像です。※以下同)

浜松でトイレ休憩し、その後はテスラナビに従って浜松いなさJCTで曲がらずに豊田東JCTを目指します。この区間を走るのはじつは初めてです。名古屋圏の道路もテスラナビの指示通り、快適に80km/h走行で岐阜羽島を目指します。途中からは見慣れた名古屋の景色が見えます。小牧や一宮稲沢北を越えて、いよいよ関ヶ原へ入ります。消費電力は出発時より少ないようで、岐阜羽島まで充分に保ちそうです。

岐阜羽島SCに到着。

岐阜羽島に着きました。テスラのスーパーチャージャーはインターを降りて、クルマで3分もあれば着ける近さです。まずは翌日に備えてある程度まで充電します。

これは、この夜宿泊する「ルートイン岐阜県庁南」には200V充電器が複数設置されているので、最後の部分は200Vでゆっくり入れようという目算です。朝起きると満充電です。出発前に電池温度も上げずにすみますしね。

ざっと計算したところ、翌朝の出発時までに満充電にするのには70%も入れておけば大丈夫そうだと分かりました。ショッピングモール駐車場の一隅にあるスーパーチャージャー、向かい側には広大な田んぼが広がり、むせかえるような稲の匂いのする蒸し暑い空気のなか、カエルの大合唱が延々と響いています。

岐阜羽島到着時の電池残量は29%でした。実際に走行した距離は約402km。約53kWhの電力を消費した計算になります。

実際の走行レポート【後半】岐阜羽島〜広島

前半の「所沢→岐阜羽島」の走行で予想以上に電費を稼げたので、後半の「岐阜→広島SC」は一気に行くことに決めました。

ルートイン岐阜県庁南を出発する時にテスラのナビをセットすると、到着時の予想残量は「4%」と出ています。かなりヒヤヒヤすることになりそうです。まぁ、Plan BもPlan Cもあるので、到達はできるでしょう。

ルートイン岐阜県庁南には2台の普通充電器がありました。

ホテルの駐車場を出発し、一つ隣りの中州に渡って安八ICから名神高速に入ります。今日も朝から太陽が照りつけて、モデル3のガラスの屋根は触ると熱いです。でも冷房のお陰で頭は暑さを感じません。

琵琶湖の東岸を延々と南下し、いよいよ京都が近づいてきました。今回はテスラナビが指示するように、高槻JCTからは右手の山の上を目指す新名神に乗ってみます。初めは連続登り勾配、川西市のさらに北側のあたりを通ります。雲が迫って来て、少し雨が降ってきました。通り雨でしょう。宝塚のかなり北の山を走り、神戸JCTへ緩やかに下って行きます。交通量も多くないですが、うっかり飛ばさないように80km/hに設定したオートパイロットで走ります。

省電費運転にはアクセルワークなどの「コツ」もありますが、何よりも効果的なのが「ゆったり走る」ことであることは言うまでもありません。

神戸JCTから先は山陽道に乗り、消費電力をたまにチェックしながらひたすら西をめざします。途中、三木という地名を見て、かなり内陸部を走っていることを実感。

テスラの地図は、縮尺を変えようとすると描画にやや時間がかかり、日本の一般的なカーナビとは使い勝手が違います。著者はナビはつねに「ノースアップ」で、日本列島の全体像を想像しながら、自分がいまどの「座標」にいるのかを意識しながら走るのが好きです。元々地図好きなので。そのため、山の中を走っているルートだと、「陸地のどのあたりか?」をたまに確認したくなるのです。たとえば「三木JCT」に至ると、地図を縮小すると「須磨浦海岸の真北あたり」か、と分かるわけです。

岡山県備前市付近で残量は47%。順調です。

順調に姫路、岡山圏を越えました。電費も大丈夫そうです。出発時のテスラナビは「広島到着時4%」と表示していましたが、80km/h巡航が功を奏したらしく「広島到着時14%」まで伸びました。

いよいよ広島県に入りました。最後の難関は三原市付近にある「山陽道最高地点」を越えることです。これさえ越えてしまえば、広島市までは基本的には下りが優勢です。途中、到着時間を早めるために少し速度を上げたため、広島SC到着時の残量予想は11%まで下がりました。

高屋JCT* で山陽道から広島高速に乗り換えます。あとは驚くほどの下り坂の連続で広島市街を目指します。この広島高速では、かなり発電(回生で充電)できたようです。

*ご指摘をいただきました。高屋ではなく広島東JCTで降りて、広島高速の1号と3号を乗り継いでLECTに向かいました。最初は高屋を考えていたのですが、テスラナビは広島東を選んでいました。

日本最難関のスーパーチャージャーの洗礼

広島SCがあるショッピングモールに到着。

残り11%で広島SCのあるショッピングモール「LECT」に到着できました。

まずは充電と思いSCを探すのですが、これがかなり難しい。誘導の係員にお訊きすると、「充電器は地上にもあるが、地下にもある」とのこと。そこで地下に行くと、確かにありました。ただし200Vと、「テスラ充電不可」と書いてあるCHAdeMO機です。

再度地上に出て別の係員にお訊きすると、「いったんショッピングモールから外に出て、再度入る時に地下に向かい、地下から出て来ると、外に出る手前の左手にある」とのこと。言われたとおりにしましたが、地下からの出口が2つあり、どちらか表示も何も無い状態。ええい! と選んで地上に出ましたが、「1/2の賭け」に負けて「ハズレ」の出口を選んでしまったようです。

再度外に出て、LECTの周りを半周し、再度LECTに入って地下に向かい、今度は「廿日市方面」ではない出口から外に出ました。

ありました! このmazeというかlabyrinthを巡っているあいだに、なんと4%も電力を空費してしまいました。ネットで調べてみたら、「日本最難関のSC」との意見がいくつも見つかりました。侮りがたし広島SC!

おわりに

後半の走行距離は約502km。100%で出発して到着時は8%。92%のSOCを使ったので、概算の消費電力は約69kWhということになります。

今回の行程は合計で実走904kmに達しました。これだけの距離を、途中わずか1回* の充電で走り切れてしまったので、今やBEVでもかなり長距離を走れることが証明できました。もっとも、速度を80km/h巡航中心にするなど、それなりの工夫もしています。

*実際には岐阜羽島SCのとホテルの2回の充電ですが、「1回の満充電」という意味でご理解ください。

この行程の消費電力を『TeslaFi』というアプリの記録で確認したところ、平均電費は「129Wh/km」と出ました。私たち日本のBEV乗りが使い慣れてる形で表記すると「7.75km/kWh」ということになります。

筆者はふだんi-MiEV M(10.5kWh搭載)で11km/kWh台後半を出せていますが、さすがに7倍の電池を積んで車重が重く、モーターも2基搭載しているモデル3 Performanceでは10km/kWh台に乗せるのは無理だったようです。

今回の省電費運転のポイントをまとめておきます。

1. 空気抵抗は大きな要素なので、急ぐとき以外は80km/hで左側車線をのんびり走る。
2. 合流点や車線の少ないところなどは、100km/hあたりなど、法規と周囲のクルマの流れに合わせる。
3. 自動運転、無ければオートクルーズを使うほうが、アクセルに乗せた足の疲労も減らせて、平均電費も良くなる。

といったところでしょうか。

テスラ車で走るときに限りませんが、途中で適宜充電しながら走るほうがスムーズにに目的地に着けることもわかりました。今回の筆者のチャレンジのように無理に長距離を走ると、トータルでは到達時間を遅らせることになります。

広島の夜は自分のためのお疲れ様会。瀬戸内名物の小イワシの天ぷらが最高でした。

テスラ車に関して言えば、全国に点在するスーパーチャージャー(SC)をうまく繋げて走ると、かなり快適に移動できることを実感しました。また、BEVのバッテリー大型化に対しては、CHAdeMOの高出力化も意味があると感じました。

ただし、優先すべきは高速道路のSAPAに複数のQCが設置されることであり、そのうちの一部が90kWや、将来的には100~150kW程度の物が設置されることが理想的だと感じました。市中のカーディーラーやショッピングモール、道の駅に高出力QCが整備されるのは、そのあとで良いでしょう。

日産・三菱合弁のNMKVの軽規格BEVの登場も2022年前半に予定されているなか、高速道路SAPAへのQC複数台設置と、出力の広範囲化を望みたいところです。

(取材・文/箱守知己)

この記事のコメント(新着順)30件

  1. Youtubeで解説動画が出ていました。
    モーターにはいくつか種類が有り、それによって電費が結構変わるそうです。
    高速道路が苦手な物と得意な物が有るそうです。
    初期のモデル3は高速道路が苦手なモーターを採用していたそうです。

    モーターにも内燃機関と同じく特性が色々有るのを初めて知りました。
    AWDの場合、前輪と後輪で特性の違うモーターを組み合わせる事が殆どとの事です。

    1. PHV乗り様、コメントありがとうございます!

      モデル3は、どの車両もほとんど同じモーター構成と理解しています。デュアルモーター車両については、フロントがIMと呼ばれる誘導モーターで、リアはPMSRMというテスラ独自のスイッチトリラクタンスモータを採用。リーフはIPMという、PMSRMと方式はちょっと違いますが、永久磁石を使ったモーターを使用しています。テスラの旧型のモデルS/Xは、前後ともIM。新型のモデルS/X(Raven/Palladium)ともに、フロントがPMSRMでリアがIMと、モデル3と逆の構成になっています。これは、RWDが主要なラインナップであるモデル3では、電費の良いPMSRMをリアで使いたい、しかしパワーを優先したいS/XではリアにIMを持ってきたい、という設計の差だと思います。

      IPMやPMSRMは電費が良いのですが、最初の瞬発力という点ではIMに劣ります。電費が良い=効率が良いので、発熱は少ないのですが、高温になると永久磁石がダメになってしまうので、高温には絶対してはいけなく、しっかり守らないといけません。また永久磁石を使うということは、レアアースであるネオジムが使われることになります。高速回転時、実は電気を流さないとこのモーターは空回りさせることもできず、「超低負荷での」高速時の電力消費率には少し問題があります。実は、高速道路はこっちのほうが苦手です。
      対してIMは、コイルだけでできており、永久磁石ではなく電磁石を使います。電磁石にも電気を流さないといけないため電費はIPM/PMSRMより少し悪化しますが、瞬発力が強いです。信頼性も高く、例えばエレベーターなど産業用のモーターはほとんどがIMです。発熱が多少ありますが、ある程度の高温には耐えることができます。レアアースは必要ありません。低負荷時は電気を完全にオフにできるため、超低負荷での高速時の電費は良くなります。高速道路を流すには、こちらのモーターが適しています。
      効率を考えれば、やはり今後はIPM/PMSRMが主流になると思いますが、テスラがYでも同じ組み合わせを使用していることを考えると、2種類搭載が普通になるかもしれません。

      が!!面白いのは日産アリアです。これはEESM(巻線界磁式)と呼ばれるモーターで、モーターの中心の回るところ(ローター)にも周りの電磁石にも電力を供給して回すモーターで、IMよりは効率が高いと言われています。IMとの決定的な違いは、IMはモーターの周りのところ(ステーター)にしか電磁石がなくてローターには電気が入っていないのですが、EESMはローターにも電力を供給するため、ブラシという摩耗する部品が必要になります。回っているところに線をつないだら絡まってしまいますからね。問題はこれがIPMより効率が高いかどうか、なのですが、高速(低負荷)域ではIPMより効率が高いと言われています。低速域では、やはりステーターの電磁石が無駄になるようで、IPMに効率は負けているようです。
      つまりこれは面白い選択です。低速域ではIMより良いが、電費は少し犠牲に。高速域(アウトバーンのような走り方ではなく、100km/h程度でゆっくり流す走り方)では最も効率が良いモーターという選択なのです。寿命はIM/PMSRM/IPMはすべてブラシレスですが、EESMはブラシがありますので、短くなります。とはいってもエンジンなんかよりははるかに長持ちすると思います。IMやIPMは100万キロ走行できると言われています。

    1. 七時様、コメントありがとうございます。

      Model 3 Dual Motor Performance は75kWhほどは積んでいるようなので、飛ばさなければ500kmは誰でも走れそうです。とは言っても、少し劣化していて、真夏酷暑でエアコン使用ですから、502kmは結構なチャレンジでした。

  2. 箱守さんテスラ車での高速移動お疲れ様でしたー!
    テスラ車に乗れないi-MiEV(M)乗りとしては電費が車内メーターパネルに表示されるのがうらやましいですー!!つーても最近愛車にFCM-NX1つれて電費が判る様になりましたがww

    テスラ3で7.75km/kWhですかっ!!さすがはi-MiEV(M)電費職人ですがな。かくいう己もi-MiEV(M)で国道41号移動電費13.3km/kWhを叩き出し、リーフe+でも8km/kWh出しましたが(笑)
    日本の電力事情は電気事業法に守られすぎて欧米ほど大エネルギー補給できない状態です、電費節約テクニックはもちろん車両自体の電費ももっと上げるべきないですか!?…これは電池容量の小さいEV乗りだからこそ気がつくのかも。

    1. ヒラタツ様、コメントありがとうございます。

      我々のi-MiEV Mに比べると、電池容量は7倍なので、一度に走れる距離も5倍はある感触でした。ただし、スーパーチャージャー(SC)を使うと充電がとても速いので、吸い込みの速いMと感触が似ています。走った距離や時間と充電時間の割合というか、それが似た感触なんです。お陰でCHAdeMOよりSCをまず探すようになりました。

      電池残量や電費が見られるテクトム製FCM-NX1は必須ですね。電池容量の小さいBEVでの経験・知見が、大容量電池を積んだBEVの運用でもしっかり活きた印象です。アユダンテのモデル3はしょっちゅう乗っていますが、これだけの長距離は始めてだったので、発見することが多くて面白かったです。

    2. テスラ3とかけてアイミーブMととく、その心は「電力吸収が速い」!なるほどです。それは航続距離が多い日も安心ですな(笑)。
      それと8割まで急速充電してから時間のある場所で普通充電も電気自動車の賢い使い方。いくら優れた電池でも急速充電で100%までいくのは至難の業ですから。
      ※ストイックに叡智を研ぎ澄まさないと遠出がツライi-MiEV(M)ユーザーやから判りますーwこれは小容量EVがユーザーを鍛える構図!?
      今後は日産三菱軽EVの情報が楽しみです、ただ問題は電池がどんな材質になるかですが…テスラ車がリン酸鉄リチウムでコバルトフリーになるなら軽EVも採用かもと思いました。我らが贔屓する東芝SCiBと大差なければエエですが?!

    3. 追伸:テスラSC岐阜羽島観察談です。
      過去数回コストコ岐阜羽島へ行ったついでにスーパー(バロー)併設のテスラSC岐阜羽島も寄りましたよ。まだ田畑が結構残ってて充電ステーションとは思えない長閑さがあった記憶。
      ただ電気技術者の自分は充電器より高圧受電設備に目が行きましたよ!?見た限り300kVA程度でテスラSCの最高出力に見合った容量のようです、といっても土日以外は全負荷になりにくいからギリギリでもokなんでしょうが。
      平日のガラガラは判るとして、休日の朝に埋まってたのは意外。昼間はそれほどでもないです…ってアプリでもわかるとは思いますが。
      ただ何分岐阜県は広大だから他の地域も欲しがるかもです…中央道恵那・中津川あるいは東海北陸道郡上八幡・高山など主な観光地でのニーズがありそうですから。たぶん2台で十分

    4. ヒラタツ様、コメントありがとうございます。

      たしかに小容量電池のBEVで磨かれたスキルは、40kWhやそれを超える大容量のBEVの運用でも活きると感じました。誰でもわりと直ぐに運用できる内燃車に比べて、BEVは「慣れ」も重要な要素かも知れません。その部分をICTでカバーするテスラのようなアプローチもアリですね。

      岐阜羽島SCは土日朝には結構埋まるのですね。分かる気がします。集合住宅への充電器設置の先人「Yourstand」の浦さんもおっしゃってましたが、集合住宅の充電器は、お出かけ前の「金曜夜」や、帰宅後の「日曜夜」が予約が集中する傾向があるそうです。バッテリー容量が大きくなれば、そうした混雑・集中を緩和することができるかも知れません。もっとも、常に満充電にしないと安心できない層が「進化」するか、テクノロジーでそれをカバーしてあげるかしないと、根本的には解決しそうもありませんが…。

  3. 実際は充電一回ではないですし😏、誰もが簡単に出来ることでもありませんが、EV=短い航続距離というイメージを払拭するのに絶大な効力を発揮しそうな素晴らしいレポートです❗😇

    やはり実証した方の言葉は説得力が違いますね‼️

    ほぼ一般道でしたけれど、一昨年同じく広島を目的地にした者として最後のご意見にも完全同意❗☺️

    https://twitter.com/murasaki_banana/status/1202877162090422272?s=19

    1. むらさきはなな様、コメントありがとうございます。

      minicab-MiEVで走破されたのですね。凄いです! 私も次回は自分の i-MiEV Mで、一般道主体でのんびり行ってみようと考えております。次回は温泉津温泉と、三江線の廃線跡めぐりかな。(って、じつは今回もやっていたんですが。大学以来の友人のお父様のお墓参りに江津まで行きました。広島取材のあとの2日間は、島根の山の中を拠点に、里山の風景を撮影したり、三江線の廃線跡をめぐったり、温泉津の温泉に浸かったりしていました。)

  4. 箱守 知己様
    当方は北海道在住です。
    高速は大半が暫定2車線や未整備区間であり、4車線区間は極僅かです。

    既に行動範囲が決まっており、遠くに行く事も有りませんので、今後の維持費等も考え電気で良いやとなりました。
    アリアB9 e-4ORCEの中古を狙っています。
    主に自宅太陽光で充電し、道中の充電器はほぼ利用しない予定です。
    無料電気で充電するので、パワーを楽しむ事もできます(ガソリン車では勿体ないだけので楽しめません)。
    AWDなので積雪地に行くときも安心です。
    容量が大きいので太陽エネルギーを有効に活用できます。
    今から楽しみです。

    三菱の販社がその様な事を行っていたのは初耳です。
    日産でもやってくれると良いですが、駄目ならDIYで行うつもりです。

    1. PHV乗り様、コメントありがとうございます。

      “主に自宅太陽光で充電し、道中の充電器はほぼ利用しない予定です。
      無料電気で充電するので、パワーを楽しむ事もできます(ガソリン車では勿体ないだけので楽しめません)。”

      これってまさにそうですよね。幸運にも私の家の屋根にもPVパネルが載せてあるので、「屋根が油田」みたいなものです。i-MiEVで使っている電力は、年間ベースで粗々計算すると、屋根で作っている電気のほぼ1/4に過ぎません。

      たまにパワーを楽しんで走っても、「家の屋根で作ってるんだから良いじゃん♫」のような気持ちです。もっとも、BEVに乗ってると電気は無駄にしたくなくて、のんびり走るようになってしまいますが。

      アリヤ、楽しみですね!

  5. スピードを控えれば航続距離を延ばせるなら、逆に言えばスピードを出せる所が無い環境には特に向いていますね。
    高速が有っても暫定2車線で常時70~80キロ規制、そもそも高速道路が無い等。

    暫定2車線の高速はメリットが無いので殆ど利用しませんが、EVに乗り換えれば利用しようと思います。

    日本は諸外国と比べて制限速度が低いのでEV向きだと思ってます。
    合法的に100~120キロ出せるのは極一部だけです。

    寒冷地に住んでいる身としては燃焼式ヒーターが欲しいところです。
    熱を生み出すのは電気よりも燃料の方がトータルで見ても良いです。
    DIYで付けている事例が有るので、EVに乗り換えた暁にはやってみようと思います。
    暖房で航続距離が半分以下に減りますので。

    1. PHV乗り様、コメントありがとうございます。

      確かに日本の高速道路は80km/h制限をよく見かけますね。こうした速度域だと、BEVには有利でしょうね。私はSAPAの充電器で先客に待たされる無駄が厭で、高速道路はほとんど使いません。使っても、慢性渋滞の都市部や、峠道などの「隘路」を避ける場合だけです。

      ベバスト・ヒーターは、三菱のminicab-MiEVで、北海道の販社が希望者に取り付けるサービスをしていたと聞いたことがあります。私も東北・北海道に赴任した経験があるので分かります。アユダンテCEOの安川さんが言ってますが、北陸などの「湿度の高い雪」がいちばんBEVには厳しいと思います。フロントガラスに熱線を入れるなどの対策も欲しいですね。

  6. 所沢にお住まいなのですね。極めて近所です。
    省電費運転のポイントは3つとも正にその通りで、さすがパイオニアだと感服します。
    80km/hで三車線の最左車線を走るのは、電費とマナーの最適な妥協点だと感じています。
    大型貨物車が80km/h制限ですからね。法的に。全然悪い事ではありませんよね。
    まあでもモデル3ですと、快適に速度制限内の最高速度で走った方が気持ち良いかも。

    小イワシの天ぷらが、美味しそうです。

    1. シーザー・ミラン様、コメントありがとうございます。

      シーザー・ミラン様もパイオニアじゃないですか。いずれにせよ、その時のプライオリティーで走り方を選べて、そして結果が案外違うので、BEVは面白いですよね。(もちろんガソリン車も似ていますが、いろいろ考えなくても長距離走れますからね。)

      小イワシ、美味しかったです。おかわりしちゃいました。

  7. > 筆者は2021年2月初めより、広島在住の友人藤井智康さんに誘われて、Clubhouseで電気自動車や環境、再生可能エネルギーを扱うRoomを続けています。

    Podcastで聴けるようにもしていただけたら是非聴きたいです。もしあえてその場限りの情報にしたいという明確な意図が無いならばClubhouseでのライブ配信だけにとどまるのはもったいないと感じます。

    1. mono様、コメントありがとうございます。Clubhouseの規定から、録音などはできないんです(涙)。なので、「デロリアンEV化計画」などで情報は出したいと考えております。

      でも、かなり濃い内容ですので、お時間がありましたらお越しください。

  8. お疲れ様でした。
    「80km/h」は高速を走るときの必須条件ですね!
    100km/hとかで走ると途端に電費が悪くなります。

    1. Eddy様、コメントありがとうございます。我々は80km/h巡航には慣れていますから問題ないですが、ICEの記憶が生々しい方々にはキツいでしょうね。

      いずれにせよ、万人に押し付ける気はサラサラありません。それぞれのご都合に合わせてどうぞ!です。

  9. 電費チャレンジしながら目的地へ向かうのはEV乗りの醍醐味ですね!
    好電費の秘訣を教えていただきたいのですが、タイヤは標準のままですか?空気圧はどのくらいでしょうか。エアコンや運転モードその他の設定などありましたらよろしくお願いします。

    1. hatusetudenn様、いつもコメントありがとうございます。

      今回のタイヤは、Michelinの標準の空気圧で走りました。エアコンは、私は暑がりなので22〜21℃で巡航していました。

      その他の設定は、特別なものはなく、ふつうでした。我々はBEVの特性が身体に染みついているので、hatusetudenn様でも同じ記録が出せたと思います。

  10. 広島在住で車で東京とかに年に数回行くのでタイトルみて興味を持ちました
    実際の記事を読むと念入りに計画を立てて岐阜で2回(2ヶ所で)充電&一泊しつつハラハラしながらの旅なんですね
    そういうのを楽しめる人には良いのかもしれませんがまだまだ不便そうですね
    参考になりました

    1. toshi様、コメントありがとうございます。
      今回は、電気自動車ユーザー歴が日本で一番長いクラスのライターさんにお願いし、旅行記として執筆いただきました。恐らく一般の慣れない方々からみると「ギリギリでハラハラ」とお感じになるかもしれません。
      実際に、岐阜羽島で3割も電池が残っていましたし、広島でも11%残しています。

      EVsmartアプリでは、これをシミュレーションできるメニューをご用意しています。
      https://blog.evsmart.net/wp-content/uploads/2021/08/Screenshot_20210829_231804-scaled.jpg
      このシミュレーションでは、東京から広島まで片道、ホテルに泊まらずに行く場合では、浜松18分、大阪豊中22分、倉敷20分の計三回の休憩兼、充電で広島に到達できています。ご参考までに、こちらのシミュレーションは80km/hでなく、100km/h程度を想定しています。

    2. toshi様、コメントありがとうございます。

      広島にお邪魔したのはじつに30年ぶりでした。相変わらず緑が多く、水の豊かな素敵な街ですね。久ぶりに路面電車と一緒に走ったので、ちょっと緊張しました(汗)。

      中広から沼田までの広島高速にビックリしました。あのトンネルの多い道で一気に広島市街から北西の山の上まで登れてしまうんですね。その後は大朝まで行って、そこから江の川をめざして田舎道を走りました。中国地方特有の、赤茶色の石州瓦と、木々の濃い緑が美しかったです。

  11. 広島走破、大変お疲れ様でした。
    昨日小手指QCでお声がけ頂きました者です。
    私の車は2020年ModelSパフォーマンスです。
    約8000km走って電池劣化1%程度の感じで収まっています。
    普段は高速100km/h巡行がメインなので、確かに航続可能予測より、
    いつも実際には低い実績になりがちです。
    今度80km/h巡行を試してみたいと思います。
    あと、高速道路SAPAの複数QC設置、大賛成です。
    最近のEVカー増加に伴って、明らかにQCが足りていない印象です。
    是非、頑張って貰いたいところです。
    最後に、良い情報をありがとうございました。

    1. Xvius様、コメントありがとうございました。また、小手指でのおしゃべり、楽しかったです。行動圏が近いので、またお会いしたいですね。

      80km/h巡航は誰にでもお奨めできるものではありませんが、(私もかつて滞在していた)アウトバーンで有名なドイツでも、巡航速度を落とそうという動きは、すでに10年以上前から出ています。一つの選択肢としたはアリかと。

      SAPAへのQC複数台設置は、道路管理企業の義務ですね。「時間をお金で買う」という側面が否定できない高速料金を取るのですから。

  12. 先日、YouTubeで21年製のモデル3 SR+がメーカー値の448kmを大幅に超える510kmの走行を実現した動画を観ました。
    最近モデル3の数が増えてきて連休中や年末年始に関西ー関東の要所にある浜松や岐阜羽島のSCが混雑が予想されます。
    SCが他の充電器も含めての数がEVの増加数に一時的ですが追いついてない事態も予想されるのでこの様な実証走行も必要になってくると思います。

    1. Kozot様、肯定的な意見をいただき、チャレンジした甲斐がありました。ありがとうございます。

      浜松や岐阜羽島SCの今後の混雑、私も危惧しております。テスラ意外の利用を解禁する可能性も出て来ていますし。いずれにせよ、色々な移動スタイルを実行して検証することは意味があると考えます。

      「80km/h走行なんてオレには無理」の意見をネットでは見かけますが、みなさんにお奨めなんてしてないですよ。

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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