テスラ『モデルY』北海道遠征【後編】マイナス25℃の極限状況でEV車中泊〜消費電力を検証

厳寒期の2月にマイカーである2022年製テスラモデルYパフォーマンスを使用して、真冬の北海道のEV性能や北海道の充電インフラを調査する、毎年恒例の「北海道遠征」レポート。後編では、氷点下25℃という過酷な状況での車中泊について紹介します。

テスラ『モデルY』北海道遠征【後編】マイナス25℃の極限状況でEV車中泊〜消費電力を検証

ヒートポンプ式エアコンは正常に作動するか?

前編では、関東埼玉から北海道陸別まで1350kmという超長距離を移動(青森〜函館はフェリーを利用)した際の電費や充電行程などをレポートしました。

【関連記事】
テスラ『モデルY』北海道遠征【前編】埼玉→北海道陸別の充電や電費レポート(2024年3月29日)

後編では、「日本一の寒い町」をアピールする陸別において、一晩暖房をつけっぱなしにして車中泊を行うと、どれほどの電気を消費してしまうのかという暖房電力消費量テストを敢行しました。

最新のEVは、ヒートポンプシステムを搭載しているケースが多く、熱を生み出すだけでなく移動させるという原理であることから、その分だけ電力消費量を減らすことが可能です。私もモデルYもヒートポンプ式エアコンです。他方でヒートポンプシステムの欠点というのが、外気温が氷点下以下の場合、その性能が極端に低下してしまう、もしくは極端な低温環境下においては動作しなくなると言った懸念があります。

はたして、モデルYのヒートポンプシステムは、2月の陸別のような超極寒環境下においてどのような性能を発揮するのでしょうか。

より正確な検証を行うために

検証開始直後のディスプレイ。午後8時過ぎで気温はマイナス21℃。エアコン設定は22℃。

まず、今回の検証に関する前提条件を列挙します。

●検証場所:北海道陸別、小利別地区
●検証時間:11時間(20時30分~7時30分)
●空調設定:22℃オート
●ガラスルーフを含めた窓ガラスには断熱材を一切使用せず
●車内(センターコンソール肘置き付近)と車外(地表)にそれぞれ温度計を設置し、正確な温度をモニタリング
●OBD2経由で正確なバッテリー残量を計測

まず検証時間については、今回の北海道遠征で計測する際は全て夜間に実施(夜明けからの数時間を除き)しています。というのも昼間の場合は太陽光があるため、外気温が低かったとしても、ある程度車内温度が保温されることから、天候の状態によって検証結果が大きくブレてしまうからです。太陽の影響がない夜間の検証であれば、気温に対するエアコンの性能や消費電力を正しく検証することができます。

さらに検証場所についても、この陸別はただ寒さが厳しいということだけではなく、降雪が少ないという点もポイントです。というのも、かまくらをイメージすればわかりやすいと思いますが、実は積雪によって車が雪で覆われてしまった方が保温という観点ではベターであり、これも検証結果がぶれる要素となり得ます。今回は降雪がない状態で検証できたので、エアコンにとって最大限に過酷な状況における電力消費量を計測できるというこよになります。

保温という点に付随して、目張りも含めた断熱処理は一切行いません。今回のようにマイナス20℃を下回るような極限状態の場合、2重ガラスを採用しているモデルYですら、窓ガラス付近から冷たい空気が流れてきます。よって通常車中泊を行う際は、快適性を優先して目張りしたり断熱材を貼るのが一般的でしょう。他方で断熱処理を行うと検証結果がブレる要素となり得ます。

さらに、車内外温度や充電残量といった数値の計測についても、車両のディスプレイ上に表示される数値というのは、四捨五入されてしまっていたり、計測場所が統一されていないことから、独自に信頼性の高い温度計を2つ使用。車内と車外それぞれに設置し、その期間の温度の変化も記録してあります。

充電残量についても、Scan My Teslaというサードパーティー製のアプリを使用することで、正確な充電残量やSOCを計測可能です。これも検証前と検証終了時点で記録しておきます。

実際の検証の間の車内の状況ですが、今回はYouTube上でのライブ配信などもあったため、運転席を完全にリクライニングさせて仮眠を取っただけですが、モデルYの場合は後部座席を倒してフルフラットにすることが可能です。北海道遠征中については、何度もフルフラットにした状態で就寝していました。

ただし、モデルYをはじめとして、モデル3、日産アリア、ヒョンデIONIQ5などなど、私は様々なEVで車中泊を行なっているものの、やはり気になるのが足元の寒さです。
ここは車中泊の宿命ですので、毛布などでトランク開口部分を塞ぐなどの対応は必須だと感じます。

11時間の車中泊でどのくらい電力を消費したのか。端的に、結果を紹介しておきましょう。

夜明け前、午前6時28分のディスプレイ。外気温はマイナス26℃を表示している。

検証開始時点の状態
●SOC:59.2%
●電力残量:47.3kWh

検証終了時点の状態
●SOC:19.1%
●充電残量:17.6kWh

正確を期して使用した温度計による外気温の変遷。検証を始めてから気温が徐々に低下し、明け方にマイナス25.1℃まで低下しました。
車内温度の変遷。基本的には車内温度は21℃以上に保たれていることが見て取れます。

ちなみに1時ごろまでパソコンを使用してライブ配信を行なっていたのですが、その際、空調を塞ぐ形でパソコンを設置していたこともあってか、若干温度が低かったように見えます。実際に、ライブ配信を終了してパソコンを片付けてから車内温度が上昇している様子が確認できます。

この表は、今回の車中泊テストの結果とともに、今シーズンと昨シーズンに実施した車中泊テストの結果の一部をまとめたものです。

左から3番目が今回の陸別での検証結果です。11時間で29.7kWh、SOC40.1%を消費する結果となりました。1時間あたり2.7kWh、SOC3.65%ずつ減っていくようなイメージとなりました。

例えば、左から2番目の検証では、エアコンの温度は同じであるものの、外気温平均がマイナス9℃からマイナス11℃とマイルドな寒さであり、その場合は1時間あたり1.3kWhという電力消費量。この比較からも、マイナス20℃を下回ると、消費電力量が極端に増加することが見て取れます。

また、昨シーズンにほとんど外気温が同じ条件であったものの、車内温度を21℃に設定していた場合は1時間あたり1.1kWhという消費電力量でした。運転席で何も防寒対策なしで眠るためには22℃設定は必須ですが、後部座席をフルフラットにして掛け布団や寝袋などを使って就寝するなんて場合は、21℃でも十分すぎるくらいだと思います。

いずれにしても、22℃オートという暖房設定は、外気温がマイナス25℃という極寒環境下でも必要にして十分な暖房性能を提供してくれるということです。

陸別小利別の朝方の様子。奥に見えるのは小利別の旧駅舎。晴れると放射冷却によってマイナス20℃を大きく下回ります。昨シーズンはマイナス29.7℃も経験しました。

このようにして、電気自動車でマイナス20℃を下回るような超極寒環境下において、どれほどの電力消費量となるのか、快適に車中泊を行えるのかについてを検証しました。

結論としては、マイナス20℃を下回ると暖房による電力消費量は劇的に増加することは間違いないものの、一晩程度であれば、かなりの余裕を持って車内を快適な状態に保つことができました。また、マイナス25℃以下という環境下でもヒートポンプシステムが正常に作動することも確認することができました。

また、今回の検証の前提条件を見ていただければ、断熱材を使用しないであったり、掛け布団をかけずに快適な車内温度をキープするなど、あえて最悪の条件下での検証を行っています。実際に車中泊を行う際は、これよりも電力消費量を抑えることは容易かと推測できます。

ここで紹介しているのは、日本国内で遭遇しうる最悪の極限状況における検証結果です。大雪立ち往生などを想定した場合、車内を快適な状態にキープして過ごす際などの消費電力量の目安にしていただければと思います。

一方で気になるのは、この極寒性能は、テスラだから実現できることなのかという点です。モデルYの競合車種となる日産アリアやヒョンデIONIQ 5、トヨタbZ4Xなどという、ヒートポンプが搭載されているEVたちが、マイナス25℃という超極寒環境でヒートポンプ式空調システムが正常作動するのか、モデルYと比較してどれほど暖房消費量に違いが出てくるのか、そして快適に車中泊を行えるのかについては検証する価値があると思います。

ちなみに北海道遠征中にヒョンデコナでも車中泊テストを行いました。こちらも興味深い検証結果(YouTube動画)が得られました。

来シーズンも、同様に真冬の北海道遠征を行って、充電インフラの改善であったり、極寒車中泊テスト、真冬の充電性能など多岐にわたって、EVの極寒性能を検証してみたいと思います。

取材・文/髙橋 優EVネイティブ※YouTubeチャンネル)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 貴重な記録ありがとうございます。興味深く読ませていただきました。
    一点だけEVのサーマルマネージメントシステムのコンサルタントの立場からコメントさせていただきたいと思います。
    -25℃の外気温でのR1234yfやR134a冷媒を用いたヒートポンプエアコンはテスラに限らず冷媒の飽和圧力が0付近になり、外気からの吸熱機能が失われるのでコンプレッサにいくら電力を供給できたとしても働きません(実際作動できませんが)。テスラモデルYの場合はHVACに空気PTCヒータが組み込まれているので2.7kWの平均出力で11時間作動して暖房していたものと考えられます。

    1. モデルYは年式に関わらずPTCヒータは装備されていないと思います。(もし装備されているという根拠がどこかにあれば教えて頂けますか?)
      ただしPTCヒータのような効率の悪い発熱源は無いものの、各電気電子ユニットの排熱を集めて暖房に使うという技は使っているようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です