【参照資料】
テスラ社の2021年会計年度第2四半期の決算報告
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※記事中写真などはPDFから引用。
4四半期連続でそれまでの最高売上高を更新
テスラ社が発表した2021年会計年度第3四半期の総売上高は137億5700万ドルで、4期連続で100億ドルを超えて過去最高を更新しました。前年同期比では57%の増加です。営業利益は20億400万ドルで、前年同期比は148%の大幅増となっただけでなく、前期の13億1200万ドルと比べても52%増です。コロナ禍や半導体不足でほとんどの自動車メーカーは厳しい経営が続いていますが、テスラ社は別格になっています。
純利益の伸びも順調です。前期は過去最高の11億4200万ドルでしたが、今期はそれをさらに増やし、16億1800万ドルに達しました。
前期もそうでしたが、今期も、売上高の伸びを支えているのは電気自動車(EV)の販売です。自動車部門の売上高は120億5700万ドル、利益は3億6730万ドルで、利益率は前期の28.4%からさらに上がって、30.5%に達しました。営業利益率も14.6%と高水準を維持しています。
自動車部門については、規制クレジットが2億7900万ドルあり、この売り上げを引いても利益率は28.8%になります。今や、規制クレジットで利益を確保していたのがちょっと遠い昔に感じられます。
決算報告書では大きな利益を確保できたことについて、モデルYなど価格の低い車の割合が大きくなっているため平均販売価格は下がっているものの、コスト削減によって過去最高の営業利益を確保することができたと説明しています。
また決算発表でザッカリー・カークホーン最高財務責任者(CFO)は、世界的な半導体不足の中で売り上げを確保していることについては、サプライヤーへの感謝の言葉を述べています。
半導体サプライヤーの中でテスラは特別な存在か
半導体不足は自動車だけでなく家電製品などにも大きな影を落としていますが、テスラ社の売上高や生産台数の伸びを見ると、何も問題がないように見えてしまいます。
この事に関連して10月20日付けのロイターは、今はサプライヤーがテスラを「戦略的な顧客のひとつと見なしている」というモルガン・スタンレーのアナリストチームの分析を伝えています。テスラ社の優先順位がサプライヤーの中で高くなっていること、それと同時にテスラ社自身が半導体の一部を内製していることから、部品の調達をコントロールできる幅が広くなっているというのです。
だとすると、今後も自動車メーカーの中でテスラ社だけは、今の伸び率を維持したまま年度末を迎えそうな気配が濃厚です。
ところで好調な業績が発表された後、テスラ社の株価はどう動いたのかというと、あまり変化はありませんでした。前日終値の864.27ドルが、865.8ドルに微増しただけでした。
ただ、テスラ社の株価は2020年初頭から上がり続けていて、2021年8月に一時的に今年の底値を付けていますが、そのあとはまたすぐに上昇。現在は、2021年2月に記録した883.09ドルの最高値に近づいています。
今期の業績について、アナリスト予想を下回ったという記事も見かけますが、違いは100分の1程度なのでそれほどの違いはありません。半導体不足の影響もほぼ抑え込んでいるようですし、極端なマイナス点は見当たらず、しばらくは業績好調を維持しそうな雰囲気です。
設備投資額と研究開発費も堅調
その他の指標をざっと見ていきましょう。まずテスラ社の決算でここ数年、顕著なのは設備投資費の多さです。今期もまた増えていました。ここ1年間の推移は以下のようになります。初めて10億ドルを超えたのは2020年の第3四半期でした。
2020年Q3 10億500万ドル
2020年Q4 11億5100万ドル
2021年Q1 13億4800万ドル
2021年Q2 15億500万ドル
2021年Q3 18億1900万ドル
この数字を合計すると、2020年第4四半期から今期までの1年間で58億2300万ドル(約6633億円)にのぼります。算出根拠が違うので単純比較はできませんが、トヨタの2021会計年度(2020年4月~2021年3月)の設備投資額は約1兆3000億円なので、金額の大きさが想像できると思います。
なお、テスラ社の2021年第3四半期の総売上高が137億5700万ドルなので、設備投資費の割合は約13%になります。設備投資の大きな要因は、引き続きテキサス州オースティンと、ベルリンの新工場と思われます。
研究開発費は、2021年第1四半期の6億6600万ドル、第2四半期の5億7600万ドルに続いて、6億1100万ドルとなっていて、依然として高い水準にあります。
研究開発費の中には、新たに生産を目指している4680のセルに関するものも含まれています。決算発表時のオンライン会見で、4680の搭載がいつになるのかを聞かれたテスラ社のカークホーンCFOは、信頼性やクラッシュテストなどは順調に進んでいてこの四半期に完了する予定としつつも、新しい技術であり未知の課題が存在する可能性があるとも述べています。
同じように、オースティン、ベルリンの工場についても課題は残っているようです。決算報告書では両工場について、今年末までに『モデルY』の生産開始を目指すとしつつ、新たな場所での新しい製品と生産技術の導入の成否や、現在も進行中の地域ごとの許認可、サプライチェーン関連の課題に影響を受けるという見通しを示しています。
テキサスの工場では現在、設備の試運転や最初の量産前試作を行っています。目標通りに年内に量産に入れるかどうかは、これからです。『モデル3』や『モデルY』で大量生産を実現したテスラ社でも、新しい工場で新しい技術を導入するとなると、容易に事は進まないようです。
リン酸鉄バッテリーが主流に
その他に目を引いたポイントは、上海工場、つまり中国市場にも関連した、バッテリーの今後の方向性です。たったひと言ですが、決算報告書では「標準的な航続距離の車の場合、世界的にリン酸鉄(LFP)バッテリーに移行している」という記述があります。
上海工場の『モデル3』はLFPバッテリーを搭載し車両価格を下げています。航続距離と価格のバランスをどうするかは正解のない課題ではないかと思いますが、テスラ社は、航続距離によってバッテリーの化学組成を変えるという選択肢をとったようです。
この考え方は理解できます。少なくとも、「EVは高い」「EVは長い距離を走れない」と言うばかりで解決策を提示しないのではなく、市場に出すことでリアルワールドでのユーザーの本音を探り、製品を提案をしていくのは、ステップを前に進めるためには有効な方法ではないかと思います。
この他、決算報告書では、エネルギー貯蔵の総量が、メガパックの販売増により前年比で71%増加したことを報告しています。
テスラ社は、9月末にカリフォルニア州で『メガパック』の新しい工場の建設をはじめました。9月24日にTechCrunchは、ラスロップ市の市長がFBに、同市が『メガパック』を生産するメガファクトリーの本拠地になったことを投稿したことを報じました。その後、市長の投稿はなぜか削除されていますが、テスラ社は決算報告書で新工場の建設を発表したことを記載しています。
『メガパック』と並んでエネルギー事業の柱のひとつとなっている『ソーラールーフ』の販売も前年比で2倍以上になり、太陽光発電の導入量は前年比で46%増になっています。
最後に、決算報告書は今後の見通しについて、前期同様、これから複数年にわたって年間平均成長率が50%になると予想しています。この1年間の状況を踏まえれば、強気の見通しも当然のことと思えます。
なんというか、ほんとうは4期連続の増産増益というのは驚愕すべきことなのですが、テスラ社については“当然”のことのように思えてきてしまいました。いや、まったく当然のことではないのですが。
次の決算発表は来年1月です。急成長がどこまで続くのか、楽しみです。
(文/木野 龍逸)
ブルームバーグが関係者の話として本日、レンタカーのハーツ・グローバル がテスラ車を10万台発注したという記事が出たそうです。10万台というものすごい数ですね。また詳細わかれば教えて下さい。
2017年10月に$351でテスラ株を買って、下がった時もスキャンダルの時も、これからは電気自動車の時代だし、このコンセプトならテスラしかないと持ち続けてきました。
おかげで一財産を築けました。
今やEVメーカーからエネルギー企業へと脱皮しようとしています。
近いうちにGAFA&Tと呼ばれることになりそう。楽しみにしています。