「レベル4」にも相当する高度な自動運転の実力は?
テスラはアメリカで選ばれた一部のオーナーに、おおむねレベル4にも相当(ハンズオンは必須なので法的にはレベル2ですが)する高度な自動運転機能をもった『FSD Beta』を提供しています。
「FSD」は「Full Self Driving」の略。すなわち「完全自動運転」ですね。念のため、日本の国交省などが提示している自動運転のレベル分けを確認しておきましょう。
レベル1
自動ブレーキ、前車追従走行(ACC=Adaptive Cruise Control)などの運転支援。
レベル2
LKAS(Lane Keep Assist System)とACCを組み合わせ、車線を維持しながら前のクルマに付いて走るといった特定条件下での自動運転機能。
レベル3
高速道路での自動追い越しや分合流など、より高機能化された特定条件下での自動運転機能(緊急時はドライバーが対応)。
レベル4
特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施する完全自動運転。
レベル5
常にシステムが全ての運転タスクを実施する完全自動運転。
テスラの『FSD Beta』はハンズオンが必要なレベル2であり、ドライバーがいつでも介入できるようにしておく必要はありますが、一般道で設定したルートに従って走る自動運転を実現しているなど、レベル3を超えて、おおむねレベル4に近い自動運転の実現を目指した機能であるといえます。とはいっても、イーロン・マスクは自動車業界などが定めようとする「基準」ではなく、自らの思いやユーザーの願いを基準として進化に挑んでいるのでしょうが。
日本でもテスラのEVは市販されていて、オプションで『FSD』を購入することができます。レベル2とレベル3の違いは「常にドライバーがハンドルを握ってなければいけないかどうか」、「運転の主体がドライバーにあるかシステムにあるか=アイズフリーが可能かどうか」といった点であり、日本のテスラ車に提供されている『FSD』もレベル2相当の自動運転機能です。
ただし、『FSD Beta』は導入されていないので、Navigate on Autopilot(ナビのルート設定に従って自動で走る)が可能で、一般道でもかなりの範囲でシステムに運転を任せる『FSD Beta』の実力がどんなものなのか、日本で体験することができません。
そこで、EVsmartブログではアメリカで『FSD Beta』にアップデートしたテスラ車オーナーがYouTubeで公開している走行動画を探索。わかりやすい動画を選んで紹介したり、作者にオファーしてその動画に日本語字幕を提供する試みをしてきました。
【アーカイブ】
テスラが完全自動運転(FSD)のベータ版リリース〜アメリカのオーナーから撮れたて動画が届きました!
テスラの自動運転「FSD」ベータ版解説動画に日本語字幕を提供しました
※筆者注/複数の動画を見て『FSD Beta』はレベル3相当のハンズオフやアイズオフが特例的に認可されていると思い込んでいたのですが、アメリカで提供されている『FSD Beta』もハンズオン必須のレベル2であるという指摘をいただきました。勘違いのまま当初記事を発信してしまい、大変失礼いたしました。事実を踏まえ、記事を一部修正しました。(2021年10月29日)
進化の実情を2つの動画で確認してください
今回は「AI DRIVR」さんという作者が公開している、『FSD Beta 9.2』と、『FSD Beta 10』を紹介する動画をピックアップ。日本語字幕を提供しました。
FSD BETA 9.2 First Drive & Impressions
Pushing FSD BETA over MY limits in San Francisco, CA
『FSD Beta 9.2』と『FSD Beta 10』を比べても、交差点での挙動がスムーズになるなど、着実な進化を続けていることがわかります。
また、さまざまなシチュエーションで『FSD Beta』の実力を試しながら、良い動きをした場合は「完璧な対応です。自分でもこうします」と褒めたかと思えば、交差点での動きがダメだった時には「テスラのトルクだったらこの交差点をさっさと通れるので、自分なら行けたチャンスが2回はありました」などと指摘するなど、今までのバージョンとの違いも紹介しながら、わかりやすく解説してくれています。
日本でも、お台場や横浜のベイエリアなどで自動運転のテスト中らしきクルマがそろそろと走っているのに遭遇することがありますが、何がどうなっているのかは厚いベールの向こう側。テスラの場合、選ばれたオーナーにも『FSD Beta』を提供し、こうして実際に市街地を走り回ってもらうことで、膨大なデータをニューラルネットワークのデータとして蓄積していっているのです。
選ばれたオーナーという自負もあるのでしょう。AI DRIVRさんが「ベータ版がどの位のミスをするのかを見て自動運転の進捗具合を見ようとする向きもあるかもしれませんが、僕は、ミスをどうやってカバーしているかの方が重要だと考えます。ミスはどうしても起こりますが、人間と同じように対処できるようになれば、ベータ版は次のステージに行けます。不完全な世界で、完璧をゴールとしてはいけません」とか、ユーザーというより開発者目線でコメントしているのが印象的でした。
テスラが電気自動車や自動運転の開発で世界をリードしている理由は、こうした「メーカーとオーナーの新たな関係」にもあるのだろうと感じます。
『FSD Beta』は、さらにどんどん進化中です
実は、今回紹介した2本の動画をまとめて紹介してバージョンごとの進化の実情を提示しようと考え、日本語訳を作成して字幕を入れたのは、先月のことでした。
この記事を書くのが遅れてしまったので、25日の日曜日に「10.3をリリースしたけど問題が発生して10.2にロールバック」したり、月曜には問題に対処した「10.3.1」を展開したといった、さらに新しいバージョンに関するニュースが飛び込んできています。
これからも、『FSD Beta』検証動画を確認しつつ、注目すべきトピックがあれば日本語字幕を提供する試みを続けていきたいと思います。
(文/寄本 好則、日本語字幕翻訳/杉田 明子)
テスラの技術はすごいと思い感心していて注目もして興味もガンガンにあります。
自動運転となれば、基本となる地図情報や最適なルートを生み出すためのGPSナビゲーションも重要だと思います。
ですが、他のレビュー等を拝見していると、テスラの日本においてのナビゲーションがダメダメすぎると聞いています。地図に関しては自社ではなく、GoogleやAppleの地図を使っての自動ナビゲーションをやってくれないかな、と、常々思っておりますが、この辺りの動向はどうのでしょうか。
寄本 様
レスを付けて頂きありがとうございます。
テスラ社は確かに自動運転にしても充電インフラにしても、頭一つ二つ分飛びぬけていますね。
免許返納を考え始めたクルマ好きの義母が、レベル5の完全自動運転車を待ち詫びています。昔の海外ドラマにあったナイトライダーのナイト2000レベルを想像しているようです。
一千万位までなら購入するそうです。
出来れば間に合わせてあげたいので、今後のテスラ社に期待しています。
レベル3の定義って、
・目を離しても良く、自動運転時の責任が車両にある
ということではなかったでしょうか?
スカイラインでも条件によりハンズオフ出来ますが、あくまでもレベル2だった気がします。
レベル3は国産車ではレジェンドだけだったような。
ハンズオフは高機能のレベル2で可能ですね(認可された車種のみ)
レベル3は、即座に運転できる状態であればアイズオフが可能ってところですね。
レベル3といっても、現状のところ、ホンダレジェンドは、極々特定の条件下のみレベル3が発動するだけ(普段はレベル2)な上に、
即座に運転に戻れる状態であるため、カーナビを見ることぐらいしか許可されていないようですけどね(スマホの操作などは禁止されています)
ちなみに、個人的な予想ではありますが、レベル3が飛ばされる理由は、レベル3は趣味の領域に近く、実用性に乏しいからだと思われます。
運転者が即座に運転できる状態であるかどうか判断するためのセンサーなど余分なコストが発生する上に、日常生活では発動しないので、普段遣いには実装できない。
普段遣いができるレベルまで進化させると、結局レベル4相当になったというオチだと思います。
シーザー・ミランさん、Pcci名無しさん、コメント&解説ありがとうございます。
日本でのレベル3はホンダレジェンド(たしか、世界初の認可)のみ。アリアにも搭載予定の日産プロパイロット2.0などのハンズオフ可能はレベル2。ともにご指摘の通りです。
運転の責任が常にドライバーにあることを象徴する、一般的に最もわかりやすい違いとして「ハンドルを握ってなければいけないかどうか」と例示しましたが、ご指摘のように、ん? ってなりますね。
記事の説明を
レベル2とレベル3の違いは「常にドライバーがハンドルを握ってなければいけないかどうか」、「運転の主体がドライバーにあるかシステムにあるか=アイズフリーが可能かどうか」という点なので、
と修正しました。
ちなみに、記事作成時、念のため国交省の以下資料を確認しました。
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
この資料では「自動パイロット」がレベル3に区分されていますが、プロパイロット2.0はレベル2。あくまでも「システムが全ての運転タスクを実施するが、システムの介入 要求等に対してドライバーが適切に対応することが必要」というのがレベル3の要件、ということですね。
どちらにしても、自動運転のレベル分けはどちらかというと規制や認可のための指標だと感じます。テスラの場合、規制をクリアすることではなく、モビリティを変革するために必要な機能の実現を目指していること、そして、さまざまな情報をトップであるマスク氏自ら発信しつつ、ユーザーとともに猛烈なスピードで進化を遂げているのがすごいな、と。