テスラの自動運転「FSD」ベータ版解説動画に日本語字幕を提供しました

テスラがアメリカの一部ユーザー向けにローンチした自動運転機能FSDベータ版の動きがわかりやすい動画を見つけました。EVsmartブログ編集部から字幕用の日本語訳をチャンネル運営者に提供。字幕付きで見られるようになったのでご案内します。

テスラの自動運転「FSD」ベータ版解説動画に日本語字幕を提供しました

※記事中写真は動画からの引用です。

歩行者への対応などをリアルに実証&解説

フルセルフドライビング(FSD)のレポート動画を公開しているのは『AIDRIVR』というチャンネルです。運営者の方は、動画クリエイター向けのサブスクリプションサービスを行っているようですが、そこはスルーさせていただいて、なにはともあれ、字幕入りの動画をご紹介しましょう。

The human inside Tesla’s FSD BETA

※日本語字幕翻訳/杉田 明子

動画のタイトルは「人間が中に入ってるよぉ!」です。

運営者の方は以前からオートパイロットをいろいろ試した動画を数多くアップしてきているそうですが、今回のFSDベータ版の進化に驚き、テスラ担当部門の仕事を絶賛しています。

検証に使用している車種はテスラ モデルS。全体で16分31秒とボリュームたっぷりなので、EVsmartブログ編集部が注目した「見どころ」をピックアップしておきます。

【00:40】テスラ工場の駐車場をスタート

前方のクルマに人が乗り込むことを確認して前進。

検証ドライブはフリーモントのテスラファクトリーの駐車場から始まります。混んだ駐車場でも的確に機能している様子は、02:45あたりからスロー再生で丁寧に説明。多くのクルマが行き交う駐車場内の通路で、進むかどうかの判断が的確であることがわかります。

【05:10】車線を間違えたことに気付いて巧妙に右折

一般道走行シーンに移ります。いきなり、本当は右折車線に入るべきなのに間違った車線を走ったまま右折する交差点が接近。FSDがウインカーを出し、渋滞している右折車線に素速く車線変更して右折する様子が紹介されています。

【07:50】信号のない片側二車線道路へ発進

次のタスクはスーパーの駐車場。混み合った通路を抜けて、信号のない片側二車線の道へ左折する様子です。アメリカの左折は日本なら右折に相当します。かなりの台数のクルマが行き交う手前車線を横切って、スムーズに自分が走るべき車線への合流に成功しています。

【09:05】信号無視の歩行者を待って発進

車道の信号は青になっても、歩行者が渡り終えるのを待っています。

運営者の方がFSDを褒め称えてハンドルをタップした出来事。車道の信号は青になったものの、歩行者がまだ横断歩道を渡っていることを認識。歩行者が渡り終えるのを待って発進した様子が、これもスロー再生で解説されています。

【11:00】舗装の段差も的確に判断

駐車場内などでよくある速度抑制のための段差。そんなケースでもFSDが適切に減速し、運転者自身も「このくらいで走るだろうな」という安定したスピードで乗り越えていくことが紹介されています。さらに、暗くて信号がない交差点で、歩行者を認識して余裕をもって一時停止しています。

【12:20】高速走行中の車線変更

高速道路に不慣れな人間のドライバーより明らかに上手な印象です。

夜間の高速走行中、後方から猛スピードで迫ってくるクルマをスムーズにやり過ごして車線変更する様子です。スムーズ安全な車線変更を行うには微妙な速度調整が大切ですが、FSDの進化はそれを可能にしているようです。

動画はさらに、ラウンドアバウトの走行シーン解説へと続き、今回のアップデートによる進化への賞賛とともに終わります。

日本ではまだ自動運転の実現に懐疑的な声が根強く、テスラの安全へのスタンスに対する疑問が提言されているのもしばしば目にします。

とはいえ、テスラの自動運転車は、こうしてアメリカで走り始めています。遠い日本からの懸念は何かを変えることもなく、世界は動き始めているのです。なにはともあれ、一度、自分で運転してみたい(あ、自動運転だから自分じゃ運転しないのか)ですね。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)7件

  1. 左折レーンからの右折割り込み、法律違反してますね。アメリカの法律は知らないけど、日本では違法でしょう。
    でも現実の道路でもこの程度の違反は日常茶飯事です。何がこの程度かは主観になりますが。
    私がこれやられても、相手が初心者マークだったら絶対許すし、そうでなくてもなんかうんこ漏れそうとか事情があるのでしょうみたいな感じで結局許すでしょう。
    AIが人間のドライバーの運転方法から学び、それを忠実に再現しているかんじで、ほほえましいような悲しいような。人間の悪いとこまでマネしないでと。

    ただ、日本だとどうでしょう。
    AIがこの手の違反をすることを許容する文化があるでしょうか。
    テスラの自動運転が違反やらかした、ほらみたことか、と鬼の首取ったようにおおさわぎになりそう。

    また、AIが人間のマネをする点。そして現実に人間がやっているであろう違反まで学習されちゃってる点は気になります。

    たとえば信号のない交差点の「止まれ」標識を守っている人は現実にはほぼ皆無ですよね。
    停止線を平然と越えて目視しやすい位置まで進んでから止まる。
    近所では赤灯つけてないパトカーでも平然と「止まれ」標識無視して交差点に鼻先つっこんでいきますよ。
    何度も見てます。一部でしょうが警官ですら正しく理解していないのに、いわんや一般人が守るわけないです。
    運転免許の試験でこれやったら一発試験中止の行為なのに、なぜか免許を取ったあとは誰も「止まれ」で止まらない。
    私は絶対に「止まれ」で止まりますが、ごくたまにクラクション鳴らされる事すらあるんですよ。

    このような「止まれ」無視はこれじたいは慣習だから違法合法はいいとして、AIが人間のふだんの運転方法をそっくりマネした場合、たぶん「止まれ」で止まらないと思います。
    テスラ自動運転堂々と違反するんじゃねーよという話になりそうです。
    AI「でも私はあなた達から正しい運転のすべてを学びました。」
    人間「ぐぬぬ。。。」

  2. 動画共有ありがとうございます。機械学習によるアルゴリズムの進歩は恐ろしいですね。私が少し気になったのは、このアルゴリズムは北米に最適化されおり、日本国内では性能が低下するのか?という点です。また交通ルールに関しては、北米も州によって色々と細かいルールが異なっていますが、その辺りをどのように調整しているのかも気になりました。
    動画のように走ってくれるなら、今すぐ欲しいと思う反面、アルゴリズムにより事故はともかく、警察に捕まるのも怖いと思ってしまいました。

  3. テスラの株式を購入してます 指数に組み入れあるとわかったとくら値上がりに 喜んでます

  4. 寄本様

    翻訳付き動画拝見しました。
    内容についてですが….驚異的ですね。
    最初のFSDベータ版も十分にインパクトのあるリリースだったと思いますが、衝撃の度合いはそれを上回っているように思います。

    最もすごいと感じたのはやはり右折斜線への(やや強引な)割り込みトライと、譲ってくれる車がないと気づいた際の(やや強引な)右折突破ですね。これができるなら本当にハンドルのない車の生産が見えてくるように思います。

    しかし改めて思うと本当にすごいことです。
    マスクはFSDの行動選択アルゴリズムはOpenAIのGPT−3と同じく「ニューラルネットワークの推論で先を予測する」ことを行なっていると述べていましたが、これほどさまざまなケースの振る舞いを一挙に改善していることを考えると、非常にうまく機能しているように思います。

    こうなってくると他社のように「こういう場合はこう動く」といちいちルールを決めて開発している自動運転車は全く太刀打ちできないでしょうね。

    日本でもこのようなレベルのFSDがリリースされる日が今から待ち遠しいです。

    1. ひまじん さま、コメントありがとうございます。

      混んでる車線を避けて先を急ぎ、間違いに気付いて割り込み右折。自分が乗っててこれやられたら、思わずステアリングをなでなでしそうです

      信号無視の歩行者が横断し終えるのを待って勢いよく発進とか、猛スピードの後続車をいなして追い越し車線へ車線変更とか、「人が中に入ってるよぉ!」というタイトルにも納得の動画でした。

      記事のオーサーは一人しか設定できないので私にしましたが、字幕翻訳は杉田さんのグッドジョブです。スタッフの身内メッセージで恐縮ですが、杉田さん、「戸田奈津子さんばりの意訳で」てな無理難題に応えていただき、ありがとうございました!

  5. すごく参考になります。翻訳提供ありがとうございます。
    動画のモデルSの年式やAPはなんでしょうか?

    1. みっつ様、コメントありがとうございます。動画に出ているのはモデルSで、AP3のFSDオプション付き、そして最新のFSD(完全自動運転)ベータプログラムに参加している車両です。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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