横浜で開催されたTOCJ全国ミーティングでテスラジャパンの橋本社長が挨拶。現在は販売停止となっているチャデモアダプターを今夏にもアップデートすることを明言しました。7月1日からはモデルYとモデル3を対象とした0%特別金利キャンペーンを開始。電気自動車(EV)の可能性を切り拓くテスラが、日本でも着々と歩みを進めています。
挨拶のなかで3つのアップデートを明示
2025年6月29日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された「2025 TOCJ 全国ミーティング」のなかで、テスラジャパンの橋本理智CEO(カントリーマネージャー)が挨拶。FSD(自動運転機能)、CHAdeMO(チャデモ)アダプター、スーパーチャージャー(SC)ステーションといったカスタマーの利便に大きく関わるポイントのアップデートを明示しました。
登壇した橋本氏は、まず「テスラに競合はない」と語り始めます。ガソリン車との競合については「ガソリンは有限。電気は無限で持続可能なエネルギー。いずれガソリン車はこの世の中からなくなります」と、ライバルではないという考えを示しました。また、EVにおけるライバルについても「世界では700万台以上のテスラが走りデータを蓄積している。どこの会社よりも多くのデータを集めて解析し、どこよりも多くOTAアップデートを実施している」と、テスラのアドバンテージを強調しました。
3つのアップデート、まず「FSD」に関しては、日本向けでも「(開発の)アクセルを踏むよう本国にも強く要請している」とのこと。一般道と高速道路が高架などで並走するシチュエーションは日本固有の事情で、AIが判別を間違えるリスクがあったり、信号の形状や表示方法が異なるなど複雑な交通事情の違いがあって簡単ではないものの「そう遠くない未来=近日中」にアップデートを届けることを約束しました。
次に、テスラ独自の急速充電ネットワークであるSCについて。ステーション数がまだまだ少ないという声に応えて拡充を進めていくことを明示。店舗ネットワークの拡大(就任時の11店舗から22店舗に増えた)とともに、新店舗のオープンとリンクしてSCを開設すること。公式サイトなどで募集しているカスタマーの投票数が多い場所への開設を進め「クオーター(四半期)ごとに3〜5カ所」程度の新ステーション開設を進めていることを説明。新生テスラジャパンがカスタマーファーストを最優先にしていることを強調しました。
新型チャデモアダプターは最大130kWの仕様に

NACS規格(テスラ)のコネクタはチャデモに比べてコンパクト。急速充電も普通充電もひとつのコネクタで対応しているのが特長です。
そして、現在は販売停止となっているチャデモアダプターについては、従来は最大50kW(125A)だったものを「最大130kW(最大電流値の推定としては300A程度)に耐えられる仕様」として「次の四半期(7〜9月)、遅くとも年内にはアップデートする」ことを示しました。
挨拶のなかで詳細なスペックなどは語られませんでしたが、関係者からの情報を交えつつポイントを整理しておきます。
ケーブルがない一体型でコンパクト
関係者からの情報によると、新型チャデモアダプターに車両、充電ケーブルそれぞれの接続部を繋ぐケーブルはなく一体型のコンパクトなものになるようです。ユーザーとしては望ましい進化といえるでしょう。ただし、充電器側ケーブルの重さがかかるポイントが従来型のアダプターよりも遠くなるため、テコの原理で車両側接続部に掛かる力が大きくなってしまう懸念があるため、現在はそうした耐久性テスト&改善などが行われているようです。
テスラ製ではなくサードパーティ製になる
橋本氏の挨拶でも「サプライヤーを調整中」といった言葉があったように、従来品は「テスラ製」でしたが、新型はサードパーティ製となるようです。テスラ以外のサプライヤーが「チャデモ規格→テスラ(NACS)規格」のアダプター開発を手掛けるのは、ソニーホンダやマツダが日本で発売するEVにNACS採用を発表し、テスラ車以外のカスタマーの需要を想定できるようになったことが追い風になったのではないかと思われます。
また、「車両側はNACSでもアダプターがあればチャデモが使える」ということになれば、マツダ以外の自動車メーカーがNACS採用に踏み切る要因になることも考えられます。そうなると、現在はチャデモだけで展開している国内の急速充電ステーションで、NACSポートが併載されるような動きが加速することでしょう。
いずれにしても、チャデモ協議会などとはしっかり調整していただいて、不具合なく使える新型アダプターができあがること(ほかのメーカー製EVでも使われるようになる可能性があることを考えると、できれば公式に認証されて)に期待します。また、パワーエックスが展開するハイパーチャージャーで「テスラ車で充電すると故障する」といったトラブルの原因がチャデモアダプターにあるのではないかとも言われていました。この課題も、新型ではしっかり解決されているとすっきりします。
気になるのは価格……
気になるのは、新型チャデモアダプターの価格です。今は公式のショップサイトから姿を消している従来品は、10万円以上まで値上がりしていました。対応出力が倍以上となり、はたして新型アダプターがいくらで購入できるのか。テスラオーナーには裕福な方が多いでしょうが、SCネットワークは急ピッチで拡充されていて、あえてチャデモ充電器を使わなければいけないケースは減っているはず。20万円を超えてしまうような価格になると悩ましいところではないかと思います。
ちなみに、新型アダプターは「130kW対応」とのことなので、電流値としては最大300〜350A程度と推定できます。150kW急速充電器の定格がおおむね350A(15分のブーストモード搭載が多い)であり、現状で日本国内に設置されている最大出力150kW器の性能は、ほぼ、フルに引き出せるのではないかと思われます。
CHAdeMOアダプタ2のお話。
聞き逃した方向けに。 pic.twitter.com/dmbmT4wStQ— みや@エコ🚗⚡⚡☀ (@eco_driver_ze2) June 29, 2025
橋本社長の挨拶の様子を、Xでみや@エコさんがアップしていたので貼っておきます。
7月1日から「0%特別金利キャンペーン」を開始
7月1日には、今年4月から納車が始まったばかりの「モデルY」と、「モデル3(在庫車)」を対象として「0%特別金利キャンペーン」を開始したことがテスラジャパンから発表されました。
モデルYやモデル3への国のCEV補助金額がほぼ上限の87万円。モデル3の在庫車には最大55万円の「特別価格調整」、つまり「値引き」が設定されていいます。車両本体価格(税込)が486万円のモデル3RWDの場合、補助金と値引きで実質353万7000円。頭金や残価設定などを概算して「一日あたり約650円」でモデル3のオーナーになれることをアピールしています。
個人的には、値段とサイズが私のライフスタイルにはちょっとでかい。また、私にとってのマイカーはEV取材者としての商売道具でもあって、テスラにしてしまうとチャデモ充電インフラなどのユーザー実感が薄くなりそうな気がして「テスラ以外」から選んでいます。とはいえ、知人などからオススメのEVを質問されたら真っ先に挙げるのはやっぱりテスラ。とくに、先日南房フラワーラインを試乗レポートした新型モデルYジュニパーはイチオシです。
日本でも、テスラは着々と前進しています。
文/寄本 好則
コメント
コメント一覧 (1件)
日本のテスラオーナー達の多くが気になっていた事がやっと代表者の口から出たのは良かったです。
ただ、テスラジャパンの伝統?なのかこういう大事な事を自社サイトに正式に掲載せず、非公式なSNS口コミ拡散やメディア報道させるだけで済ませる姿勢は改めるべきだと思います。
特にFSDに関しては法律の問題などあるが現状日本で販売開始されて6年は経過しているもののほとんど役に立たない詐欺商品です。
それなのに購入者に対して長年何の報告もせずやり過ごしてきた訳で、その間乗換や廃車になっしてしまった方に対する救済措置はほとんどありませんでした。
開発を急がせるのは当然としても、常時権利を移行できるようにすべきですし、返金要求にも応じるべきではないでしょうか。