テスラが2022年第2四半期の台数速報を発表〜前期より減少も納車台数の前年同期比は26%増

テスラ社は2022年7月2日(現地時間)、2022年第2四半期の生産台数と納車台数がいずれも前の四半期を下回ったことを発表しました。四半期ベースで生産台数が前期より減ったのは、新型コロナが猛威をふるっていた2020年の第2四半期以来、2年ぶりです。ただし前年同期比では増加しています。

テスラが2022年第2四半期の台数速報を発表〜前期より減少も納車台数の前年同期比は26%増

※冒頭写真はギガファクトリーベルリンでのモデルYファーストデリバリーの様子(テスラQ1決算資料より引用)

2年ぶりに前四半期を下回る

電気自動車(EV)メーカーのテスラ社は、2022年7月2日に生産台数と納車台数の速報値を発表しました。生産台数は、『モデルS/X』が1万6411台、『モデル3/Y』が24万42169台で、合計25万8580台でした。第1四半期は30万5407台だったので5万台弱、約15%の減少です。

【参考情報】
Tesla Vehicle Production & Deliveries and Date for Financial Results & Webcast for Second Quarter 2022

納車台数は、『モデルS/X』が1万6162台、『モデル3/Y』が23万8533台、合計25万4695台で、こちらも前期の31万48台から4万5000台、約18%の減少になりました。

生産台数が前四半期を下回ったのは2020年第2四半期以来、納車台数が前期を下回ったのは2020年第1四半期以来のことです。ただし、生産台数、納車台数ともに、前年同期比では増加しています。

業績が前期比でマイナスになった要因は、中国での生産の停滞です。ゼロコロナを掲げる中国政府が大都市のロックダウンを実施する中で、テスラの上海工場(ギガファクトリー・上海)は3月下旬から約3週間にわたって稼働停止していました。

ニューヨークタイムズによれば、中国市場はテスラ社の売上高の約40%を占めています。この工場が3週間も稼働していなかったことを考えると、生産台数の大幅な減少は予想の範囲内と言えそうです。

前年同期比では25%の伸び

テスラQ1決算資料より引用。

一方で、前年同期比では、生産台数は25%、納車台数は26%増加しています。

7月1日に北米トヨタ(TMNA)とゼネラルモーターズ(GM)が発表した期末報告は、いずれも業績が伸び悩んでいます。GMは、前年同期に比べて市場シェアは拡大したものの、売上高は15%のマイナスでした。TMNAの2022年上半期の販売台数は、2021年同期比で19.6%のマイナスでした。

トヨタやGMの状況に比べると、テスラ社の状況はかなり良好と言えそうです。テスラ社は速報値について、「サプライチェーンの課題が続き、工場は我々のコントロールが効かない中でシャットダウンしたにもかかわらず、25万8000台以上の車を生産し、25万4000台以上の車を納車しました」とコメントしています。

さらに、2022年6月は「テスラの歴史の中でもっとも多数の車を生産した月になりました」と付け加えています。

ロイターは5月23日に上海工場について、生産台数が3月の6万5754台から4月にはわずか1512台になったこととともに、ロックダウンが明けた5月下旬には1日あたりの生産量を2600台にするという内部メモを報じました。このメモの通りなら、上海工場だけで年間約95万台の生産能力を確保できます。

上海工場の状況が改善していることに加えて、ベルリン工場が稼働から数か月経過する中で、テスラ社全体の生産量が増えていることが想像できます。

また、第2四半期の『モデルS/X』の生産台数、納車台数はともに前四半期を上回っていて、米国内の工場は稼働を維持できているように見えます。

生産に関しては、半導体不足が続きつつも同業他社に比べて影響を抑え込んでいるテスラ社ですが、最近は、オートパイロットの関係スタッフ200人が解雇されたというニュースが駆け巡ったほか、イーロン・マスクCEOがブルームバーグのインタビューで約10%の人員削減に言及するなど、雇用を巡る話題がメディアをにぎわせています。

こうしたことが影響しているのか、テスラ社の株価は今年最高値だった4月4日の1145.45ドルが、7月1日時点では681.79ドルに下げています。

テスラQ1決算資料より引用。

とは言え、世界的な燃料不足の中で電気自動車(EV)に対する関心は高まっています。

アメリカではガソリン価格が1ガロン(約3.8リットル)あたり5ドルを超える状況が続いています。特に価格が高いカリフォルニア州では、6月に入ってから6ドル以上という異常な状態が続いています。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、湾岸戦争などの悪条件が重なった中でガソリン価格が上がったときでも、せいぜい4ドル程度でした。その頃、燃料代が安くなることもあって、トヨタのプリウスが西海岸でとても人気になりました。

そして今は、ガソリン価格が上昇する中でEVへの関心が高まっていると、ニューヨークタイムズなどが伝えています。EV市場が成長するのなら、テスラ社の業績もしばらくは伸び続けると思われます。

7月20日には2020年第2四半期の決算報告が発表される予定です。生産台数の減少がどのような数字になって出てくるのか、注目したいと思います。

(文/木野 龍逸)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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