テスラが2021年第3四半期の台数実績を発表〜前期比20%増で過去最高を更新

テスラ社はこのほど、2021年度第3四半期(2021年7月~9月)の生産台数と納車台数の速報を発表しました。『モデルS/X/3/Y』を合計した生産台数、納車台数はともに、前期を20%ほど上回って過去最高になりました。半導体不足は今でも続いていますが、影響をなんとか抑え込むことができているようです。

テスラが2021年第3四半期の台数実績を発表〜前期比20%増で過去最高を更新

※冒頭写真はギガベルリン(写真提供/Tesla, Inc. )

【参考情報】
Tesla Q3 2021 Vehicle Production & Deliveries

四半期ベースで過去最高記録を更新

テスラ社は現地時間の2021年10月2日、2021年度第3四半期の生産台数と納車台数の速報値を発表しました。生産台数は『モデルS/X』が8941台、『モデル3/Y』が22万8882台で合計23万7823台、納車台数『モデルS/X』が9275台、『モデル3/Y』が23万2025台で合計24万1300台でした。生産台数、納車台数はいずれも過去最高を更新しました。

生産台数推移

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納車台数推移

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これで1月から9月の生産台数は62万4582台、納車台数は62万7350台となり、いずれも年間目標の75万台を超えるのは確実と思われます。

生産、納車の各台数はともに、『モデル3/Y』がほとんどを占めています。一方で第1四半期には1台も作れなかった『モデルS/X』が、第2四半期には2340台、第3四半期には8941台まで回復しました。コロナ禍の直前では2万台弱だったので、新型の『モデルS』が出たこともあり、今よりはもう少し増えそうです。

半導体不足の影響の回避策が奏功か

『モデル3/Y』は、前年同期の生産台数が12万8044台、今期が22万8882台なので伸び率は180%近くになります。2021年の第1〜第3四半期は、前年同期比で2倍以上の増産が続いています。

新型コロナウイルスの影響が大きくなる前の年、2019年以降の生産台数を見ると、2020年第1四半期と第2四半期が前期比マイナスになっているほかは、一貫して右肩上がりで数を増やしています。2021年の第1四半期は『モデルS/X』を1台も作っていないにもかかわらず、前期比ではプラスでした。

テスラ社も他の自動車メーカーと同様に半導体不足の影響を受けており、決算会見でイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、生産台数はチップをどのくらい確保できるかによると話しています。このためテスラ社は代替チップの開発や、それに対応したファームウエアの作成を進めていて、影響を抑え込もうとしています。そしてこの対策は、これまでの数字を見ると功を奏しているように見えます。

加えて、顧客がパンデミックの中で納車が遅れるなどの影響が出ていることに対して、一定の理解を示していることも販売台数の伸びにつながっているようです。テスラ社は速報値発表にあたり、「私たちが世界的なサプライチェーンと流通の課題に取り組んでいる中、お客様のご理解とご協力に感謝します」とコメントを発表しています。

ベルリン工場の見学イベントを10月9日に開催

今回のテスラ社の速報値発表は、同社の株価にそれほど大きな影響を与えませんでした。もう、業績が伸びるのはあたりまえなので、株価には織り込み済みなのかもしれません。年間目標をクリアすることが確実になった今、むしろ気になるのは来年の目標です。

マスクCEOは2020年通期の決算発表の際に、年率50%の成長がしばらく続くという見通しを示しています。もくろみ通りなら、今年75万台の150%なので、来年の目標は112万台以上になります。100万台クラブの仲間入りです。

テスラ社が発表している計画では、今年中にはベルリンやテキサスのギガファクトリーが操業を始めるほか、年末までには大型トラックの『テスラ セミ』も市場に出てきます。ベルリンのギガファクトリーでは、さまざまな職種の従業員を絶賛募集中で、操業開始が間近であることを示しています。そして計画通りなら、来年にはいよいよ『サイバートラック』の生産も始まるはずです。

そういえば10月にはベルリンのギガファクトリーで工場の見学会が実施される予定だったことを思い出してネット検索していたのですが、工場見学を含むイベント『Giga Fest』の申し込みがつい最近、締め切られたことを知りました。『Giga Fest』は10月9日に開催予定です。

ベルリンのギガファクトリーは、政府の承認時期によっては操業開始が来年にずれ込むという見方も出ていました。今のところ、遅れるという話も、予定通り年内という話も詳細が出ていませんが、『Giga Fest』を予定通りに開催するということは見通しが立ったのかもしれません。

ギガファクトリーベルリンが予定通りに動けば、年産100万台の生産能力は確保できることになります。残る問題は家電との購買競争になっている半導体不足で、まだしらばくは楽観視できない状況が続きそうです。

低価格EVの今後は?

半導体の壁を乗り越えられれば、今後は、イーロン・マスクCEOが2020年9月のバッテリーデーで発言した、2万5000ドルEVへの期待が膨らみます。2020年から3年以内が目標なので、あと2年ですね。

ただでさえテスラの車はコスパが良いのに、価格が2万5000ドルなんていうことになると、他社にとっては目の上のたんこぶどころか、漬物石を頭に乗せられるようなプレッシャーでしょう。

フォルクスワーゲンは、「2025年までのいつか」の時期に『ID. LIFE』を投入することを発表しています。計画している価格は2万ユーロなので、約260万円です。これならテスラに対抗できそうです。あとはバッテリーの搭載容量がどうなるかですが、『ID. LIFE』はWLTPで400kmを目指しています。

ただ、発売時期がテスラに遅れをとることになるので、市場に出たときには低価格かつ高性能なEVのパイオニアというわけにはいかないかもしれません。

ところでルノーグループは3月に、ダチアからEVの『SPRING』を発売しました。この車、以前にお伝えしたようにリリースでは「無敵価格」をうたっていたので、いくらになるかと思いつつ、モデルYの記事で引き合いに出したこともあります。

【関連記事】
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ダチア『SPRING』

現在は2グレードを出していて、フランスでの価格は安い方がVAT込みで1万6990ユーロ、高い方が1万8490ユーロです。1ユーロを128.8円(10月4日時点)とすると、なんと約220万円~240万円です。これは確かに無敵感あります。

【関連記事】
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『SPRING』は一充電での航続距離がWLTPの市街地モードで305km、高速走行を組み合わせたミックスで230kmと発表されています。EVsmartブログのEPA推計値では、市街地モードで約272km、ミックスで約210kmになります。バッテリー容量は実用域で26.8kWhです。

スペックは目を見張るようなものではないですが、価格とのバランスを考えると、コスパはかなり高めです。市街地で確実に200km以上走れるなら十分、という人はいますよね。まあ、日本で販売される可能性はほとんどないので涙が出ますが。

ちなみに、ルノーは約2万ユーロで『トゥインゴ ZE』を販売しています。バッテリー容量は21.3kWh、一充電での航続距離はWLTPのミックスで180kmなので、数字上のスペックは『SPRING』の方が高いし、おまけに安いです。車のサイズも違うので購買層が違うのでしょうが、なかなかスゴイのが出てきた感はありますね。

そんなこんなで、テスラの成長はしばらく続きそうですが、数年のうちには、追いつけ追い越せで他社からも手頃なEVが出そろいそうです。選択肢が広がるのは、市場拡大の必須条件。5年後のEV市場がどうなるのか、お楽しみはこれからです。

(文/木野 龍逸)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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