自動車ジャーナリストが日産リーフe+にじっくり試乗【諸星陽一】

毎週のように新車を試乗する自動車ジャーナリストの諸星陽一氏が、電気自動車である日産リーフe+に2週間じっくり試乗。充電を含めた使い勝手を検証してくれました。脱炭素へのアクションとして、電気自動車購入を検討中の方にも参考になるレポートです。

自動車ジャーナリストが日産リーフe+にじっくり試乗【諸星陽一】

電気自動車を「普段使い」する貴重な機会

2019年12月。普段乗っているクルマが修理のために入庫することになり、自車の車庫が空いたこともあり、ちょっと長めにクルマに乗り、生活のなかで普段通りの使い方ができるという機会に恵まれた。そこで日産のリーフe+をチョイス。約2週間を過ごしてみた。試乗会や日帰りの企画ではリーフに乗ることも多かったが、きっちりと腰を据えて試乗するのは久しぶりである。

初代のリーフが発売されたときのことだ。鈴鹿まで取材に行こうとした際、まだEVに対する知識も常識も薄く、さらにどこかで電欠を起こして止まったらどうなるだろう……という不安から、東名高速での移動では、ほとんどのサービスエリアに立ち寄り、30分間の急速充電を繰り返しながら鈴鹿へ向かった。

初代リーフは確かにバッテリー容量が少なく、不安はあったのだが、今思えばなにも各サービスエリアで30分丸々充電する必要はなく、充電効率のいい最初の15分で充電して次のサービスエリアに移動すれば、ずいぶんと移動時間を短縮できたはず。そんな経験をもつ私が、最新のリーフe+を使ってみた。

という予定であったが、なんとリーフe+を借用している間にマイナーチェンジが行われてしまった。マイナーチェンジ後の新型は2020年2月発売予定なので、今回のモデルは2019年1月~2020年2月までの約1年1カ月という短い期間のモデルということになる。

●12月9日
ナビ画面がテカって使いづらさも

神奈川県横浜市の日産自動車本社を訪ね、リーフe+をピックアップする。借り出し時のバッテリーは100%充電状態、おそらく日産自動車本社の普通充電器に充電されているのだろう。走行可能距離は389kmであった。

この日、東京23区西部にある自宅までは一般道で帰ることを予定していた。理由は以前から寄ってみたかったスーパーマーケットに寄るというじつに単純なこと。自宅ならノーナビで帰ることができるが、知らないスーパーへの立ち寄りではナビが頼りだ。

駐車場からクルマを出して路肩にクルマを止めてナビをセットしようとするが、ナビのモニターに光が入り、画面がテカってしまう。フロントクォーターウインドウの位置と平板過ぎるモニターのデザインとその配置、モニター表面の処理などが要因だろう。いずれにしろ使いやすいナビではない。ただし、2020年2月から発売されるモデルには新型の9インチナビが装着されるというので、このテカリが解決されていることを望む。

一般道を約40km走行してのバッテリー消費量は10%、走行可能距離は355km。これなら一般的なガソリンエンジン車と変わらないレベル。自宅に普通充電器があれば、つないで走行可能距離を400kmあたりまで復活できるのだけど、残念ながら自宅にはその設備はない。

●12月10日
アクセルペダルはオルガン式の方がベターでは

新宿で行われたミシュランのタイヤ発表会に出掛ける。せっかくなので少し回り道をして、フィーリングチェックを行う。リーフe+には、eペダルと言われる機構が付く。これは、アクセルペダルを戻したときの回生量を増やし、ワンペダル走行を可能にするものだ。

一般道で先の信号が黄色になったとき、アクセルを緩めて速度を調整しながら、停止線を目指すのだがどうもうまくいかないことが多い。減速Gが少し強く出すぎる感じがするのだ。この減速Gをペダルを戻すことで調整するのだが、つり下げペダルで戻り方向の微妙な調整はしづらいもの。eペダルをより使いやすくするには、支点が下にあるオルガン式ペダルのほうが操作が楽だろう。

この日の走行可能距離は約20kmでバッテリー残量は85%、走行可能距離は328km。つまり5%で20kmを走ったことになるので、最初に表示された充電100%、走行可能距離389kmに準じていることとなる。

●12月12日
復路で下りの効率の良さを実感

12月11日は完全にクルマを動かすことなく過ごした。12日は試乗会のため山中湖まで往復となった。表示されている走行可能距離328kmなら山中湖往復は余裕だが、行きは中央高速の上り勾配をひたすら走らなくてはならない。ちょっと不安はあったが、そのまま出発した。

早朝出発だったため気温が低かったが、エアコンを使うのは電費に大きな影響を与えそうなので、シートヒーターとステアリングヒーターで寒さをしのいだ。高速道路ではプロパイロットを使ったが、速度の安定はかなりいい。車線維持は最新の日産車に比べるとちょっと下手だが、速度を抑え気味にすればかなりイージーなドライブが可能だ。プロパイロット使用時はeペダルをオフにしておいたほうがフィーリングがいいように感じた。

山中湖までの走行距離をトリップメーターから逆算したところ138.2km。バッテリーは37%まで減っている。走行可能距離は114kmなので、往路と同じ電費なら東京まで帰れないことになる。往路は48%分のバッテリーで138.2kmを走ったというわけだ。ザックリだが、登りが続いても280km強は高速道路を走れることになる。サービスエリアごとに充電して鈴鹿に行ったことがうそのようだ。

さて、帰りは下りがメインとなる。果たしてバッテリーの様子はどうなるだろうか? 端的に結果を書くと、復路の走行距離は120.7kmで残りは10%となった。つまり27%分のバッテリーで120.7kmを走ったことになる。やはり下り坂では効率がいい。実際、復路スタートして急な下りがしばらく続いた区間では一時期50%近くまでバッテリー容量が回復した。

無事に東京には到着できたが、さすがに残り10%、走行可能距離43kmのまま帰宅するのは怖い。明日以降、突然長距離を走る必要が出るかも知れない。自宅に充電器はないので、日産のディーラーに出向き急速充電を行う。

30分の急速充電で41%に回復。次に待っている人もいなかったので「おかわり充電」を行った。もし、「おかわり充電」中に充電希望者が来たら、譲るつもりだったがそうした方も来ず、2回の充電で78%まで容量は回復した。1回目の回復量が31%分、2回目が37%分が入った。これは意外な結果。EVは最初の充電のほうがたくさん入ると思っていたからだ。

●12月17日
出先での急速充電を試してみた

12月13日~16日までクルマの使用はなし。17日はあいにくの雨模様のなか、横浜ゴムの平塚製造所までタイヤの勉強会のため出向く。ワイパーの払拭性能は高く、しっかりと前方視界を確保できた。

年末の渋滞を避けるべく早朝に出発したところ、思ったより早く近隣に到着。ナビの検索機構を使って、近くの急速充電器を検索、三菱のディーラーにて30分の急速充電を行う。59%で充電をスタートし84%まで回復させる。

勉強会終了後は日本橋でのトヨタ系企業の取材があり移動する。駐車場のあてがないため、ナビのオペレーター機能(カーウィングス)を使って、取材先近くの駐車場を探してもらう。もしかしたら、この際に料金を考慮しての検索が可能だったかも知れないが、そのリクエストをしなかったので、ナビ画面に表示される料金をもとに駐車場を決定した。日本橋あたりだと駐車料金がべらぼうに高いところもあり、こうしたデータが入っていることは非常にうれしい部分だ。

●12月23日
ガソリンスタンド探しにはひと手間が必要

いよいよ日産にリーフを返却する期限である。通常、このような広報車の返却時は燃料を満タンにして洗車して返却するのがレギュレーションなのだが、EVの場合は充電はせずによく、洗車のみを行って返却することになっている。

ドライブスルー洗車ができるスタンド情報検索機能も欲しい。

洗車を行う場所にはあてがあったのだが、念のためにナビで探す。しかし、なかなか見つけることができない。通常の画面には「ガソリンスタンド」は出て来ない。それもそのはず、普通に考えればリーフとガソリンスタンドはあまり縁がない。しかし、データはないわけではなく、ちょっと奥までいけばちゃんとガソリンスタンドの検索も可能であった。

2週間にわたりリーフe+を使ってみて、感想としてもっとも大きなウエイトを占めたのはやはり充電であった。1度は1時間、1度は30分の充電だ。30分の充電は、目的地に早着したときに時間つぶしも含めて行ったので負担ではないが、最初の1時間は充電のために割いた時間だ。自宅に充電器があれば何の問題もないことだが、そうでない場合の負担は大きい。今回は何もせずにただただ時間が過ぎるのを待ったが、読書やビデオ鑑賞または業務など……その時間を有効利用する手段を工夫することも必要と言えるだろう。

(取材・文/諸星 陽一)

この記事のコメント(新着順)7件

  1. 最初期リーフからe+に乗り換え、ニチコンのV2Hを今月から入れました。電気代が
    どの様に動くのかはこれから検証ですが、さして車に乗らない当家では、大容量
    蓄電池として動いております。使い勝手は悪くありません。CDプレイヤーだけは
    時々リップルの影響を受けている印象があります。
    PVはまだFITが期限内なので、充電せずに売電していますが、今後は自立型へ
    移行する事が出来るでしょうか。
    e+になってから、初めて厳冬期のスキー場を試す予定です。果たしてたどり着けるか。
    春の志賀高原300㎞強は、無充電も可能そうでしたが、今回はもう少し近い所に
    しています。バッテリーの凍結も考慮しないと行けません。
    200ないし100Vが来てればバッテリーヒーターが新搭載されているので、
    凍結の心配は少ないのですが。

  2. リーフe+はこれから問題になってくるソーラー発電固定買取終了問題に悩む家庭への蓄電池としての利用に大きく期待がかかっているのではないでしょうか!?
    平日自宅待機/休日ドライブのパターンならばソーラー発電+V2H仕様で家庭用蓄電池とクルマの機能をあわせて十二分に活用できます。出かけても往復300km以内なら充電せずに済みますし。
    自宅の3.5kWソーラーの一日当たり発電量は晴天なら20kWhなので3日もあれば満充電になります。実際は当然曇りや雨の日もあれば夜間に使う電力で消費するはずだから5日間で空から満充電はなかなか難しいですが。
    電気自動車が2台ある家庭ならもう万全ですよ!リーフe+が外出中にアイミーブなど小型の電気自動車をつなげればいいだけですし…その意味でも日産IMkのデビューが楽しみですね。

    日本のチャデモもテスラみたいに大型蓄電池搭載充電トレーラーがあるといいのになぁ。

  3. 記事や他の方のコメントと内容が被りますが、
    リーフもe+になって、航続距離は及第点に乗ったと言えますね。ですが充電電力の問題で、一回の経路充電で追加される航続距離はまだまだです。
    そこはやはりテスラのスーパーチャージャー並みに少なくとも100kw超の電力で充電されないと十分な航続距離の継ぎ足しが出来るとは言えません。
    そこはSA/PAへのchademo2.0の普及に期待します。高速道路を降りることなく継ぎ足し充電したいですから。国やNEXCOに普及させる気が有る前提ですけども。

    それでも旧車種にお乗りの方は、まだまだ短い航続距離と遅い充電を余儀なくされます。
    最大30分間の純粋な充電時間(自車が充電している時間)は、他の用事と合わせれば苦も無く待てるので問題ないことは皆さんがご存じの通りですが、
    充電待ち時間(先客達が充電している時間)は、他の用事と合わせる事は難しいです。出来なくはありませんが、待機場所が無い所で複数人待っている際の順番管理の問題や、先客が充電を早めに切り上げた際のタイミングがリアルタイムに分からない問題があります。
    充電待ち時間に他の用事をしに車から離れていたら、別の充電車両が来て先に充電を開始してしまう心配があります。
    なので、どうしても次に充電する順番を確保したい時は、充電している車両の傍に待機していなければならないのです。
    皆さん、これが苦痛に感じていらっしゃると思います。

    解決策の案ですが、充電器の認証機で予約が出来れば大分気が楽になると思うのです。
    具体的には、先客が充電している間に次の順番の人がピッと認証すれば、充電完了直後10分間は次に充電する人へ権利が移り、別の人が充電できない様にすれば良いのです。
    予約者にも充電完了メールが飛んでくるようにすることも大切です。
    10分経過しても充電するために戻ってこなければ、更に次の人に権利が移るようします。
    これで、充電待ち時間も安心して車から離れられるのではないでしょうか。10分以内に車に戻らねばならぬドキドキ感はありますが。

    アユダンテ様、この様なシステム改造を提案して受注しませんか?

    1. シーザー・ミラン様、アドバイスありがとうございます!

      おっしゃるような予約システムはかなり前から特許化もされており、すでにポルシェなども実施する、という発言をしたことがあります。

      恐らくですが、この充電器の順番を守る仕組みを作っても、勝手に停めるガソリン車はいなくならないし、放置車も減らないですよね。結果として、充電待ちの複数の原因のうち、複数台待ちで全員が電気自動車・プラグインハイブリッドの場合だけしか解決できないと思います。

      実はこの手の仕組みは、テスラはかなり工夫してきています。彼らは自社で、それぞれの車がどこを目的地にして、どこの急速充電器を使いそうか、たどり着く予想時刻なども全てデータで持っています。それで彼らが考えた、現時点の対策とは、、

      – 各充電スタンドで、何基中何基が使用中であるか、の満空情報をナビで無償提供
      – 一か所に数多くの充電器を設置。最低は4基
      – 2基がセットとなり、2基は負荷を分散し、必要なデマンドチャージを抑える=2台同時に充電開始すると半分しか速度が出ないが実際には20分ずれれば問題なし
      – 充電完了後、5分以上経過してもケーブルを抜かない場合、50%以上埋まっていれば、自動的に1分あたり110円の課金が開始される(青天井)
      – 冬期、気温が低いときに充電スタンドをナビで目的地設定して走行すると、余剰電力がある場合には、自動的にバッテリーヒーターを入れて急速充電が高速にできるように準備する

      これらは、実はどれも国内の充電ネットワークで実現されていません。技術的にはどれも簡単なことで、弊社でもやれることはやっていくつもりですが、やはり一か所の台数を増やすほうが圧倒的に正しいアプローチだと思います。

    2. Yasukawa様

      ご指摘の様に、特に充電ネットワークのサーバー側の改修は技術的にも簡単でコストもそれほど掛からないですね。
      クライアント側である充電スポットの各認証機のファームウェア変更は、機種が様々なので量的に大変そうです。特に各地のファーム入れ替え作業に莫大な人件費が掛かりますので、この為だけに入れ替え作業をするのは無理ですね。
      役目を終えた機械を交換する際にセットで行う感じでしょうか。

      テスラ社が現時点で採用している施策のご紹介、ありがとうございます。どれも素晴らしいです。

      充電場所に勝手に止める車両に関しても、テスラ車両の充電地帯を作って他の車が停める場所ではないことをアピールしているのですね。
      それでも勝手に止める他の車両は、もはや意地悪であり、法によって防いでもらうしかありません。

      テスラの充電網、出来れば高速道路上にももっと増やして貰いたいです。一部あるのは存じています。
      テスラ独自のインフラ拡充が成し遂げられた挙句にモデル3より価格が安い車両が今後出てくれば、もう国産のEVは売れないでしょう。

      そうなってくれば、やっと国内メーカーも目を覚まし、国内の自動車産業を守ろうとして国も目を覚ますことになりそうです。
      それでもPHEVばかり優遇するようなら、もはや勝手にしろです。

    3. シーザー・ミラン様、お世話になっております。一件だけコメントさせていただきます。

      >クライアント側である充電スポットの各認証機のファームウェア変更は、機種が様々なので量的に大変そう

      このあたりも、自動車メーカーがソフトウェアに「疎い」(ひどい言葉ですみません!!)点の一つです。グローバルでは充電スタンドの管理はOCPPという標準で規定されており、これに準拠するならば、すべてのメーカーのすべての充電プロバイダーの充電器を、少なくともサーバー側は一つのソフトウェアで管理できます。これに準拠しているのは私の知る限りデルタ電子さんの急速充電器は対応しているようですが、他社は微妙な気がします。まずは機種が違うとかそういう問題がそもそもあってはいけない、ということを、業界は理解し、推進していかなければなりません。

  4. BEVの「充電時間」に関する課題はまだまだこれからですね
    「航続可能距離」は、既に内燃機関車に追いついたかと。
    今後のバッテリー技術発展を期待します
    現段階では、上手に「充電中」を過ごしながら利用でしょうか
    慣れれば快適なモンです
    レポ、ありがとうございました!!

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この記事の著者


					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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