ホンダが電動ビジネスバイク第2弾『ジャイロ e:』を発売〜試乗会をレポート【青山義明】

ホンダがビジネスバイク シリーズの第2弾モデルとして『ジャイロ e:』を3月25日(木)に発売(法人向けのみ)しました。シリーズ第1弾の『ベンリィe:』なども揃った試乗会にジャーナリストの青山義明氏が参加。運転した印象などをレポートします。

ホンダが電動ビジネスバイク第2弾『ジャイロ e:』を発売〜試乗会をレポート【青山義明】

ホンダの電動ビジネスバイクが集結

『e:ビジネスバイク シリーズ』は、ホンダが展開するビジネス用の電動二輪車シリーズで、法人向けにのみ販売がなされています。今回、シリーズ第2弾となる『ジャイロ e:』の試乗会が行われました。自動車教習所の会場には、第1弾の『ベンリィe:』や、この夏登場予定のキャノピーモデルも並びました。

e: ビジネスバイク シリーズの最初のモデルは、昨年4月に登場した『ベンリィe:』となります。既存のホンダのスクーター・ラインナップにある『ベンリィ(ガソリン車)』の電動化モデルで、ガソリン車と同様に新聞配達や宅配用途に積載性を重視したビジネス向けスクーターというコンセプトです。ガソリン車では原付一種の50ccモデルと原付二種の110ccモデルがあり、それぞれ標準仕様と装備を充実させた「プロ」があり、計4つのタイプをラインナップしていますが、電動モデルベンリィe: も原付一種と二種(モーター定格出力0.58kWと同0.98kWの違い)にそれぞれ標準仕様と「プロ」を用意しています。

そして、シリーズ第2弾として3月に登場したのが、「スリーター」ともいわれる、前1輪、後2輪の3輪タイプのスクーターモデルであるジャイロ e: です。こちらも、ジャイロというガソリンモデルを過去にホンダが製造していました。

2ストローク50ccエンジンを搭載したシリーズ最初のモデルとなるジャイロXが登場したのが1982年。その後、後ろの荷台部分を常に水平に保つために荷台部分を独立させたジャイロUPが1985年に登場。さらに雨天走行にも対応したジャイロキャノピーは1990年に登場し、計3機種のバリエーションで展開がされていました。

ジャイロシリーズは2008年に排出ガス規制対応のため4ストローク50ccエンジンを搭載するフルモデルチェンジを行なったのですが、そのモデルチェンジを受けたのはXとキャノピーのみで、UPはそこで生産終了していました。

そして今回登場のジャイロe: は、リア側に大きくフラットな荷台を持つジャイロUPと同じ形状を持った後継機種として、13年ぶりの復活となりました。

「毎日の配送をより便利で安心なものに〜ビジネスe: スリーター」をコンセプトに開発されたジャイロe: は、駆動ユニットなどはベンリィ e: を踏襲しています。基本的に同じ交流同期モーター(モーター形式名は変わります)を使用します。ただ、ジャイロ e: はスリーターとなるため、ベンリィ e: と異なり2本の後輪を駆動させることとなります。また、ジャイロUP同様、旋回時の左右の回転差を収束させるためディファレンシャルギヤを採用しています。

今回発売が発表されたジャイロ e: は、モーター定格出力0.58kWの原付一種の標準仕様モデルのみ。駆動バッテリーは、「モバイルパワーパック」という1本あたり約10kgの重量を持つ、48Vのバッテリー(バッテリー電圧/容量=50.4V/20.8Ah=約1kWh)を2個直列に接続した96V系のシステム(総容量は約2kWh)で駆動します。システム自体はベンリィ e: と同じ。シート下に横並びで搭載され、1回のハンドル操作で2個のパックを同時に固定と解除する構造となっています。バッテリーは残量ゼロの状態から満充電まで約4時間とされています。

発表された一充電当たりの航続距離(国土交通省届出値)は、30km/h定地走行テスト値 (1名乗車時)で72km。実用的にどのくらい走れるのか、公式な発表はないし、EVsmartブログで試したこともありません。ネットで検索してみると、『モーサイ』の『最新電動スクーターは「電欠」までどれくらい走れる? ホンダ・ベンリィe: IIプロで限界走行に挑戦!』という記事で、60km/h定地走行テスト値が43kmのベンリィe: II プロの場合、メーター表示が0%になるまでに41.2km、出川さんの番組のようにストップしてしまうまでに44.8kmを走行できたと報告されていました。実際にはどのような印象なのか、郵便配達で使っている方などに一度聞いてみたいところです。

使いやすさに配慮したデザインや機能

ジャイロ e: の外観は、フロント側はベンリィe: とよく似ています。LED灯のヘッドライトはホンダe: ビジネスバイクシリーズ共通で、ベンリィのガソリンモデルとは異なり六角形の形状を持っています。その上面はフラットになっており、大型フロントバスケットの装着も可能。一方、後方はジャイロUPによく似ています。車両のホイールベース長はベンリィよりも80mm長い1360mmとなりますが、ハンドル切れ角が2°深い50°となっており、最小回転半径は1.9mとベンリィ e:と同じ数値となります。

大型のリアデッキは、ジャイロUPと同等の高さ(455mm)と広さ(603mm×450mm)を確保しており、ビールケースなどを楽々積める広さだということです。荷台は常に地面と平行であって、荷崩れを防止するストッパーバーとロープフックを採用し、荷物積載時の扱いやすさにも配慮しています。

サイドスタンドやセンタースタンドは存在しません。代わりにスイング機構と後輪軸を同時に固定するパーキングロック機構を備えていて、ハンドル下に装備されたロックレバーで操作します。フロントカウル内には他にも最大1kgの重量物まで掛けられるフロントフックやインナーポケット、アクセサリーソケットを備えています。メーターもベンリィ e: と同じもので、シンプルですが視認性も良いです。

後進アシスト機能が役立ちそう

今回は自動車教習所の会場で試乗もできました。バッテリーパックを収めたシートの上に座るわけですが、厚みがあって適度に大きなシートは座り心地も良好です。ライディングポジションとしては、上半身はしっかりと立ったイメージになります。

キーシリンダーを回してスイッチオン。その後ブレーキレバーを握りながらセルスターター風のボタンを押すことで、メーター内に「READY」が表示され、発進が可能となります。極低速域の動き出しもスムーズで印象が良く、坂道発進でも中間加速でもスロットル操作に対しての反応は極めてダイレクトで、十分楽しめるものに仕上がっていました。

走行中はまったく音がしないような、ということはなく、インバータだけでなくいろいろな音が発生していますが、特に気になるほどのものでもありません。回生も取っているということでしたが、アクセルオフ時の減速が自分の感覚とズレるようなことはなく、ブレーキ使用時も気になるような違和感はありません。今回の試乗が完全に空荷の状態だったかもしれませんが、若干アクセル開度に対してトルクが大きいイメージがありました。これについては荷物の積載で印象は変わるのかもしれないですね。

ちなみに、積載能力や登坂性能を考慮し、モーターの最高出力はベンリィ e: の2.8kWに対し3.2kWへと向上させています(定格出力は同じなので車両区分は原付一種と同じとなります)。その分、電費は落ちることとなり、一充電走行距離はベンリィ e: の87kmに対し、72km(ともに30km/h低地走行テスト値)となっています。ちなみに最大積載量となる30kgの荷物を積んだ状態でも傾斜15°の登坂性能を実現しているそうです。

面白い機能としては、後進アシスト機能がついています。右ハンドルについているスタータースイッチと左ハンドルにあるリバーススイッチの同時押しで後進となり、スロットルを回す必要はありません。人の歩く速度程度(時速4km/hほど)での後進となりますが、車両にまたがったまま操作するのでけっこう速く感じます。重い荷物を積んでいる場合など助かる機能ですね。

前述のように、ジャイロe: のモデルラインアップは原付一種の1機種のみ。ボディカラーは写真の「ロスホワイト」と「ファイティングレッド」の2色をラインナップします。価格は税込み55万円です。ベンリィ e: 同様、法人向けのみの販売となります。

(取材・文/青山 義明)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 昨日、渋谷宮益坂の路肩をリーフで駐車中に、郵政eバイクが追い越して行きました。周辺もそれほど静かではなく、リーフの窓も締めた状態ですが、まったく無音で通り過ぎて行きました。内燃原付きだと聞こえないことがない。eバイクだと無音。危険だと思います。

    リーフでも生活道路を高齢者が前方を歩いていて、まったく気づかれず、500mほど徐行することは、常連です。

    EV・HVのお化け屋敷のような効果音は無意味です。もっとインバータらしい心地よい警告音を考えてほしいです。

  2. 実際の走行距離をレポートしてくれているので中々面白かったです。
    さて、これらの機種に採用されているバッテリーは各社共通のものではないと思いますがそこには触れられていませんね。
    当面はリース販売だけですから一般販売が始まるときには変更されるかもしれません?
    気になるのはキックオフカスタマーの郵便局でアイディア社のaaカーゴも追加で採用したことです。
    供給体制が整わないのか?
    原付2種がホンダにないからなのか?
    リスク分散なのか?
    聞いてみて欲しいと思います。

    これ以外にもブレイズからもスリーターが出ています。
    こちらは普通免許で乗れてメットもいらないというのでそれなりの市場はあるのかな?
    と思いますが。

    いずれにせよ、ホンダのこれらは一般人には買えないという時点でアイディア社やブレイズ社に出遅れていますね。

  3. 二輪も四輪もあるホンダ、いよいよ二輪系も電動化の波を起こし始めましたね!
    こうなると出川の充電でおなじみのヤマハも本腰入れて他のモデルを展開してくるんでしょうか!?そうなりゃ充電バイク旅番組も新型投入になると思いますが。
    電池2kWhもなりゃ100V充電でも2~3時間は必要かと。そのうちEV用200V普通充電器の増設も真剣に取り組み命がけで打つ込まないとダメかもしれません。
    ※せがた三四郎に「指が折れるまで充電器増設シロ!」って言われる!?(斜め上の発想)

    バック対応は3輪なら必須やと思います。重量結構ありますし。
    あとは電池が気になります…劣化の早い三元系よりは燐酸鉄あるいはチタン酸リチウムが望ましいとはいえ重量増の懸念がありますし…できることなら最近人気の大容量ポータブル蓄電池と連携する機能も欲しくなりませんか!?ホンダのことやから自社製ポータブル蓄電池とのリンクも無くは無いでしょうが。

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					青山 義明

青山 義明

自動車雑誌制作プロダクションを渡り歩き、写真撮影と記事執筆を単独で行うフリーランスのフォトジャーナリストとして独立。日産リーフ発売直前の1年間にわたって開発者の密着取材をした際に「我々のクルマは、喫煙でいえば、ノンスモーカーなんですよ。タバコの本数を減らす(つまり、ハイブリッド車)のではないんです。禁煙するんです」という話に感銘を受け、以来レースフィールドでのEVの活動を追いかけている。

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