ヒョンデ『IONIQ 5』1100km試乗レポート〜EVとしての実力を徹底検証

5月に発売開始が予定されている電気自動車ヒョンデ『IONIQ5』に、モーター・エヴァンジェリストの宇野智氏が集中試乗。市街地から高速道路まで多彩な状況で、EVとしての実力を検証しました。日本でいちばん詳細な試乗レポート目指してお届けします!

ヒョンデ『IONIQ 5』1100km試乗レポート〜EVとしての実力を徹底検証

目次

  1. 日本での呼称を「ヒュンダイ」から「ヒョンデ」に一新
  2. 『IONIQ 5』の基本スペック
  3. 【1日目】市街地走行での取り回しは?
  4. 【2日目】行楽地でのワインディング走行など
  5. 【3日目】気になるポイントを★★★評価
  6. 【まとめデータ】状況別電費と急速充電結果
  7. 試乗してわかった日本再参入への本気度&EVとしての実力

日本での呼称を「ヒュンダイ」から「ヒョンデ」に一新

韓国の自動車メーカー『Hyundai』が、日本での社名の読み方を「ヒョンデ」と改め、2車種のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)のラインナップで日本市場へ参入することを発表しました。

『Hyundai』は「ヒュンダイ」の呼び名で2001年に日本市場に参入しました。しかし、販売は低迷し、2010年に日本市場から撤退となってしまいました。2022年2月8日に開催された日本市場参入の記者発表会では『Hyundai Motor Company』CEO 張 在勲(チャン・ジェフン)氏の流暢な日本語によるビデオメッセージが流れ、その中で過去の日本市場撤退を振り返り、「反省」という言葉を用いていたことが印象的でした。今回の参入では、日本の消費者とコミュニケーションをしっかりと取りながら、ブランドを構築し展開していくとの決意が示されました。

この発表会の後、今回の試乗の直前には、Hyundai Mobility Japan 株式会社でマネージングダイレクターを務める加藤成昭氏に、日本市場参入についての思いや戦略についてインタビュー取材を行っています。日本再進出に向けた戦略や思いの詳細は、こちらの記事をご覧ください。

【関連記事】
電気自動車『IONIQ5』で日本再参入~ヒョンデの思いをキーパーソンに直撃インタビュー(2022年4月4日)

『Hyundai』の呼び名を「ヒョンデ」に改める背景は、日本市場再参入のための呼称変更ではなく、本国の母国語である韓国語の発音に合わせたと説明されています。

今や、ヒョンデは世界第5位の自動車メーカーに成長。特に欧州や北米では販売シェアを大きく伸ばしています。日本再進出に向けて、自らがすでにグローバルなカーメーカーであることを示した呼び名であると受け止めることができます。

広報車の貸出拠点にもなっている『ヒョンデハウス原宿』から試乗スタート!

『IONIQ 5』の基本スペック

試乗レポートの前に、まずは『IONIQ5』の基本的なスペックを紹介しておきます。IONUQ 5は画像で見るとコンパクトにも見えますが、実車を見た第一印象は「でかっ!」でした。けっこう堂々としたフォルムです。

ボディサイズは全長が4,635mm、全幅が1,890mm、全高が1,645mmとなっており、SUVのトヨタ ハリアーが近いサイズとなります。IONIQ 5はハリアーより全長が105mm短いですが、全幅は35mm広く、全高は15mm低くなります。IONIQ 5はハッチバックですが、ミドルクラスSUVと同じくらいのボディサイズということですね。

IONIQ 5のディメンションで注目したいのは、3,000mmというロングホイールベース。参考までに、日本へ正規輸入される数多くのモデルの中で、最大のボディサイズ「キャデラック エスカレード」のホイールベースは3,060mm。ハリアーのホイールベースよりIONIQ 5は210mm長くなっています。

IONIQ 5の初見では、1,890mmという車幅の広さと3,000mmのホイールベースが日本の道路事情に合う取り回し性があるのかどうかが気になりました。また、20インチの大径タイヤ(試乗車はAWDモデルで20インチを装着、2WDモデルは19インチを装着)が、乗り味をスポイルさせてしまっていないかというのも試乗で確かめたいポイントです。

試乗車は最上級グレードの『Lounge AWD』。システム最高出力は225kW(305PS)最大トルク605N・m、バッテリー容量は72.6kWh、航続距離577km(WLTCモード ※EPA換算推計約462km)というハイパフォーマンススペックとなっています。EVsmartブログではIONIQ5発表時の記事で、全グレードのスペックと価格などを、日産アリア、トヨタbZ4Xと比較した表を紹介していたので、改めて引用しておきます。

Hyundai IONIQ 5Hyundai IONIQ 5
Voyage
Hyundai IONIQ 5
Lounge
Hyundai IONIQ 5
Lounge AWD
日産
ARIA B6
トヨタ
bZ4X(FWD)
全長×全幅×全高(mm)4635×1890×16454635×1890×16454635×1890×16454635×1890×16454595×1850×16554690×1860×1650
駆動方式RWDRWDRWDAWDFWDFWD
バッテリー容量58kWh72.6kWh72.6kWh72.6kWh66kWh71.4kWh
最高出力125kW160kW160kW225kW160kW150kW
最大トルク350Nm350Nm350Nm605Nm300Nm265Nm(推定)
航続距離(WLTC)498km618km618km577km470km500km前後
航続距離(EPA推計)約398km約494km約494km約462km約376km(推計)約400km前後(推計)
急速充電最大出力90kW90kW90kW90kW130kW150kW
価格479万円〜519万円〜549万円〜589万円〜539万円〜未発表

試乗車のスペックはスポーツカー並。スペックだけ見ていると、ちょっと扱い辛いのではないか? と思いました。

さて、見た目とスペックのファーストインプレッションは、実際の試乗でどうなったのでしょうか。

【1日目】市街地走行での取り回しは?

筆者が試乗した時点では、IONIQ5を1,000km以上もじっくり試乗したレポートはネット上でも見当たりませんでした。筆者はヒョンデブランドのクルマに初めて乗ります(ヒュンダイ時代のクルマも含めて)。さらに、ヒョンデの日本市場進出は多くの人から注目されており、どんなクルマかを知りたいという人もたくさんいます。そこで、筆者が人柱となって、さまざまなライフスタイルの中での多様なクルマ利用シーンを、徹底試乗で体験してみることにしました。

初日は、広報車の貸し出し開始時間が夕方になったため、都内の一般道をドライブをしました。想定シーンは日常生活。

背景は『レインボーブリッジ』。

1日目の走行距離は約70km。3つあるドライブモード(エコ、ノーマル、スポーツ)と、3段階の回生ブレーキ強度+ワンペダル(IONIQ 5では『i-PEDAL』の名称)を切り替えながら走行しました。

初めてキャビンに乗り込んだときのファーストインプレッションは、「広っ!」と思わず声に出してしまったほどです。3,000mというロングホイールベースが存分に活かされた前後長と、SUV並の車高の高さが生み出す頭上空間の広さを感じました。

初めてIONIQ 5のハンドルを握り、10m走ったところで感じたのは、ボディ剛性の強さでした。ボディ剛性の高さは、初めて運転する最初の数十mでも感じるものです。そして数分走ると、静粛性の高さに驚きます。EVならではの静粛性、などという形容では表しきれない静かさです。サイドウィンドウにも防音性が高い合わせガラスが採用されていますが、NVH(Noise、Vibration、Harshnessへの対策)をしっかりと作り込んでいる印象がありました。

市街地走行での最重要チェックポイントとして、狭い生活道路や縦列駐車をテストしてみました。1,890mmの車幅は、狭い道路のすれ違いなどが楽勝といったらウソになります。広い車幅はIONIQ 5に限った話ではありませんが、さすがにちょっと大きいですね。ただ、前後オーバーハングが短いため、最小回転半径5.99mの割には、狭い駐車場や曲がり角での取り回し性は、思っていた以上に良かったですね。

新目白通りのパーキングメーターにて。縁石は10cmほど寄せて駐車。
同じ場所で夜間に駐車テストしてみた。暗いところでも映像は鮮明で、UIも良いため、ハッチバックにしては大柄なIONIQ 5でも縦列駐車が苦にならなかった。

【2日目】行楽地でのワインディング走行など

2日目は、伊豆で見頃(試乗したのは3月中旬)になっていた河津桜を見に行くことにしました。目的地は『河津桜 原木』。河津桜とは、ソメイヨシノより1~2ヶ月ほど早咲きの桜で、濃いピンク色、春の訪れをいち早く体感できる桜です。オオシマザクラ系とカンヒザクラ系の自然交配種と推定され、その原木は、河津町田中の故飯田勝美氏が1955年2月に河津川沿いの枯れた雑草の中から発見し、現在の場所に植えたことが由来だそうです。

河津桜の原木。訪れたときには満開を過ぎて葉桜に近い状態になっていた。

伊豆の河津町といえば『天城越え』が有名です。石川さゆりが唄う名曲、松本清張の小説の舞台の地です。「天城峠」は非常に険しい峠で、現在では3周(!)するループ橋が架けられて走りやすいワインディングになっていますが、未舗装路の旧道も残されています。今回は、その旧道を走ってみました。旧道にある「天城トンネル」は観光スポットにもなっているため、未舗装路とはいえ、そこそこ路面はならされたラフロードとなっています。

天城トンネルにて。

20インチの大径タイヤのIONIQ 5ですが、天城越えのラフロードは「なんてことはなかった」という感想でした。オンロードでも、20インチタイヤを履きこなしており、乗り心地よく、操縦安定性も高い優等生の走りです。

「オフロード走行はしないけど、アウトドアはよく行くよ」という方、IONIQ 5でも大丈夫でしょう。キャンプに行ったとき、ラスト100mのラフロードが結構ハード、ということもありがちですが、IONIQ 5の最低地上高は160mmとSUV並のクリアランスが確保されていますので、あまり心配いりません。

天城越えはすぐに終わってしまうので、さらに少し遠回りをして『西伊豆スカイライン』をドライブ。西が付かない『伊豆スカイライン』の陰に隠れてマイナーな存在ではありますが、実はおすすめの絶景ドライブコースです。西伊豆の山稜を走るコースで、駿河湾と相模湾、伊豆半島の東西両方の海が望めます。つまり、朝日も夕日もきれいな珍しいコースでもあります。また、アップダウンとコーナーが多いワインディングが続き、クルマの性能を確かめるにも適した道路です。ちなみに、2004年までは有料道路でしたが、今は無料で走れます。

西伊豆スカイライン沿いの脇道に入って撮影。

それなりの速度でワインディングを走って感じたのは、ステアリングがピタっと決まる、スタビリティの高いドライビングフィーリングでした。半径が大きく長く深いコーナーでも修正舵いらず。300馬力超のパワーを持て余すことなく快走します。また、AWDの駆動力配分は後輪がメインとなっているようで、後ろから押し出されるような加速感があり、楽しい運転ができました。

ファーストインプレッションでは「ハイパフォーマンススペックが凶と出ないか」と心配していましたが、「吉」でした。

【3日目】気になるポイントを★★★評価

3日目は、ひたすら高速道路を走るという、自動車メディアっぽい試乗を行いました。ただ、コロナ禍が明けたら、盆暮れ正月は帰省で超ロングドライブされる方は少なくないでしょう。また、72.6kWhという大きなバッテリー容量を活かして、EV長距離走行を考えている方も少なくないでしょう。そんな利用シーンを想定して、IONIQ 5の高速巡航時の電費、SA/PAでの充電はどうなのか、徹底検証しました。

電費や急速充電性能の検証結果をご紹介する前に、3日間、走行距離1,100km超の試乗で、IONIQ 5の気になるポイントをじっくりチェックした結果を項目毎にまとめておきます。各ポイントは★3段階で評価してみました。

『IONIQ 5』徹底チェック!

外装デザイン ★★★
未来感あるデザインです。これぞEVという印象もある、前衛的なデザインですがうまくまとまっています。既視感を覚えた人は、子供の頃に見た未来のクルマではないでしょうか?

内装デザイン ★★★
外装デザインの世界観との強い統一性は感じませんが、それを壊さない範囲で、リビングのような空間をうまく作っています。見やすいディスプレイ、操作スイッチは好感触です。

室内空間 ★★★
広くて快適です。ホイールベース3,000mmをしっかりと活かしています。身長180cmの筆者が後席に座っても、頭は天井に付かずゆったりとしています。大人4人乗車も余裕。後席シートも左右独立して前後スライドできるのは高評価。子育て世代にもうれしいシートアレンジが可能です。

後席にもリクライニング機構を備える。また、後席は左右独立して前後スライドが可能。子育て世代ユーザーにもうれしい装備。

ラゲッジ ★★
ハッチバックだから仕方がない。とはいえ、必要にして十分な荷室容量です。ゴルフバッグは1つ、斜めに入れることができます。(派生モデルでステーションワゴンが出てほしい、そんな欲も出てくるEVですね)

快適装備 ★★★
リビングのような空間作りがテーマのIONIQ 5。そのテーマどおりの快適装備を備えています。静粛性の高さも特筆すべきです。

後席頭上近くまで大きく開くガラスサンルーフ。シェードはサンルーフのセンターから前後両サイドに開く観音開き式。途中で止めれるため、直射日光を部分的に遮りたいときに便利だった。ルーミー感がアップして快適な移動が楽しめた。

加速 ★★★
システム総合最高出力306PSは、伊達ではないがチューニングは乱暴ではありません。前後モーターのEVで安定性も優れています。停止状態からアクセルをベタ踏みすると、首が後ろに持っていかれてしまうので注意してください。本気出すと速いですが、基本はマイルドです。

シフトはステアリングコラムにレイアウト。レバーの先端がダイヤル式になっており、ステアリング操作時に手が滑ってシフトを変えてしまうことがない。前にひねるとD、後ろにひねるとRとなる。メルセデス・ベンツの方式と同じだが、DとRは逆。

ハンドリング ★★★
予想を超えてよかったハンドリング。重心が低く、しっかりとした足まわりです。ステアリングフィーリングも良好で、修正舵いらずでピタリと決まります。運転しやすく、楽しいクルマです。

操縦安定性 ★★★
直進安定性、コーナリングの安定性ともに高いレベルです。ボディ剛性の高さも光っています。高速走行ではリアスポイラーが良い仕事をしており、安定感が高まります。ベクタリングコントロールがあったらいいな、と欲が出てくる走りの味でした。

乗り心地 ★★★
20インチ大径タイヤで不安だった乗り心地は、杞憂に終わりました。あらゆる路面状況で総じて乗り心地がよかったことに驚きました。日本の道路に合わせて入念にセッティングされた印象を受けます。シートもよくできています。

取り回し ★★
全幅1,890mm。これはさすがに狭い道路のすれ違い、狭い駐車場が得意とは日本では言えません。しかし、前後のオーバーハングが短いことと、前輪の切れ角がしっかりと取られているので、思っていたほど不自由はしませんでした。

NVH ★★★
乗ってすぐに静粛性の高さに驚きます。振動もよく抑えられて快適です。高速走行の風切り音が気になるのはEVの宿命ですが、がんばって抑えられています。

走りの楽しさ ★★★
意のままに操れる楽しさがあります。ワインディングはIONIQ5におすすめのドライブコースになるでしょう。

安全装備 ★★★
世界標準レベルの先進安全装備はすべて揃っています。ウィンカーの作動に連動して後輪内輪の映像をメーターパネルで確認できる機能は◎。

走行速度域に関わらずウィンカーが作動すると、その方向後輪付近をメーターディスプレイに表示する。左方向作動時は、ディスプレイの左側に映像が出る。視線移動が少なく安全確認ができる。

運転支援 ★★★
ハンドル操作支援も付いています。渋滞時も使える全車速ACCも付いています。操作性が良く、車間距離の取り方もよく、きちんと制御を煮詰めてきたなという好印象でした。

画像右上部の四角いところは、ヘッドアップディスプレイユニット。カーナビ使用時は、進行方向の矢印が道路上に現れるような視覚効果をもつ、先進的なAR(拡張現実)タイプを採用。運転支援は至れり尽くせり。

電費 ★★
試乗車は、ハイパフォーマンススペックのAWDモデルでしたので、実電費はあまり期待していなかったのですが、そこそこ走ってくれました。ただ、パワーがある分、アクセルを調子こいて踏みまくると劣悪な結果になりますから注意が必要です。試乗車は、72.6kWhのバッテリー容量で余裕があり、充電回数が少ないのはうれしかったですね。また、急速充電時の実際の出力もしっかりと出ていたことも好感が持てました(現時点で、大黒PAの新型QCはダメでしたが ※詳しくは後述します)。

コスパ ★★★
ライバルは、トヨタ bZ4x、日産 アリア、アウディ e-tron あたりとなるでしょう。性能、装備、パッケージングを比較すると、IONIQ 5のコスパは優秀です。一度に300km以上の走行をあまりしないカーライフなら、ベースの58kWhモデルもおすすめグレードになりそうです(まだ乗っていないので想像ですが……)。

以上、全体としてかなりの高評価となりました。

【まとめデータ】状況別電費と急速充電結果

3日目に行ったひたすら高速道路走行。コースは、東名高速東京ICからスタート。新東名高速は最高速度120km/h区間はすべて走行、いなさJCTと三ヶ日JCTを経由し、東名高速上りに入って横浜町田ICまでを走行。その後は、保土ヶ谷バイパスから首都高速に入り、大黒PAのニチコン製新型90kW充電器での充電検証を行い、早稲田の自宅へと帰るルートです。

3日間の試乗におけるすべての急速充電結果と、状況別に細かく刻んだ電費記録を表にまとめておきます。

計測地点おもな状況走行距離電費走行モード/回生
1日目
レインボーブリッジ周辺市街地45.5km4.7 km/kWh混在
レインボーブリッジ周辺市街地8.7km4.4 km/kWhSpo/Lv3
早稲田市街地14.5km5.0 km/kWhEco/i-Pedal
2日目
海老名SA高速道路47.9km6.4 km/kWhEco/i-Pedal
道の駅 伊豆のへそ高速道路99.5 km5.9 km/kWhNor/i-Pedal
河津桜 原木郊外35.6 km6.4 km/kWhEco/i-Pedal
天城トンネル郊外/山岳30.0 km3.3 km/kWhSpo/i-Pedal
伊豆の国市内コンビニ郊外73.7 km6.7 km/kWhEco/i-Pedal
三島市のスシロー郊外8.9 km7.1 km/kWhNor/Lv3
足柄SA郊外/高速道路38.0 km3.9 km/kWhEco/Lv3
早稲田高速道路51.6 km6.1 km/kWhEco/i-Pedal
3日目
静岡SA高速道路136.6 km4.4 km/kWhEco/Lv3
浜松SA高速道路58.0 km4.6 km/kWhEco/i-Pedal
三方原PA高速道路46.8 km5.9 km/kWhNor/Lv1
富士川SA高速道路107.6 km4.7 km/kWhSpo/Lv1
足柄SA高速道路47.1 km3.9 km/kWhEco/i-Pedal
大黒PA高速道路87.0 km7.2 km/kWhEco/i-Pedal
早稲田高速道路41.4 km5.0 km/kWhEco/i-Pedal
4日目
江東区若洲市街地19.7 km5.9 km/kWhNor/i-Pedal
早稲田市街地18.8 km7.3 km/kWhEco/i-Pedal
ヒョンデハウス原宿市街地5.8 km5.4 km/kWhEco/i-Pedal
返却時の総走行距離。お借りして20kmほど走行したとき、誤ってリセットしてしまった。オドメーターによる確認では、1,139kmの走行距離となった。

走行距離は4日間で1,139km。平均電費は全体で「5.2km/kWh」、市街地が「5.5km/kWh」、郊外で「6.7km/kWh」、高速道路では「5.4km/kWh」という結果でした。ことさらに省電費運転を心掛けたわけではなく、この車格でAWDのハイパフォーマンスモデルであることを考えれば、「まずまずの電費性能」と言えるのではないでしょうか。テスラ『モデルY』が日本デビューしたら、同じような条件で比較してみたいところです。

次に、急速充電の記録です。

スポットメーカー
最大出力
充電前
SOC
充電後
SOC
充電容量
(%)
電力量
(推計)
充電器
出力率
外気温
海老名SA
下り
新電元
90kW
42%83%41%約30kWh66%17℃
足柄SA
上り
東光高岳
40kW
6%32%26%約19kWh94%15℃
海老名SA
上り
新電元
90kW
22%74%52%約38kWh84%20℃
静岡SA
下り
東光高岳
50kW
5%38%33%約24kWh96%21℃
浜松SA
下り
東光高岳
50kW
21%53%32%約23kWh93%23℃
富士川SA
上り
東光高岳
50kW
8%41%33%約24kWh96%16℃
足柄SA
上り
東光高岳
40kW
12%33%21%約15kWh76%17℃
大黒PAニチコン
90kWh
33%44%11%約8kWh18%17℃

いずれも、30分間での急速充電結果です。「充電器出力率」というのは、急速充電器の最大出力に対してどの程度の電力が充電できたのかを示す目安として提示してみました。たとえば、90kW器で30分充電した場合の単純計算値である45kWhに対する割合です。

充電口のフタは電動で開閉する仕様。

最初の海老名90kW器は充電開始時のSOCが42%と高かったので66%にとどまっていますが、おおむね80〜90%以上の結果を示しています。充電量は車両側のメーター読みなので、実際には充電時の発熱ロスなどもあるはずですから、素晴らしい急速充電性能と評していいでしょう。

試乗後に改めてヒョンデに確認したところ、「日本市場で発売をする前に、主要な急速充電器メーカーに確認を取り、受電側の調整を実施した」旨の回答がきました。チャデモ規格の急速充電器と新型EVの相性で悩ましい「謎」が生じるケースもありますが、ヒョンデはこの点でも、ユーザー本位の考え方でしっかりと対応してきたと言えるでしょう。

大黒PAのニチコン90kW器は、ブーストモードという出力抑制機能や、充電器側で充電中に出力を変える「ダイナミック・コントロール」という機能を搭載しており、他メーカーのEVでも今回のケースと同様に出力が出ないなどの不具合が確認されています。ヒョンデでは、7月のデリバリー開始までには、ダイナミック・コントロールへの対応を行い不具合を解消するために対応中ということなので、ユーザーに納車される段階では大丈夫だと思われます。

メーターパネルなどの基調色はナイトモードに切り替え可能。

試乗してわかった日本再参入への本気度&EVとしての実力

ヒョンデは、2010年に日本市場から撤退してからも、既販車のユーザーへのサポート部門のほか、R&D(研究開発)部門が引き続き日本に残って活動していたそうです。

IONIQ 5を1,100km試乗して感じたことは、日本のクルマの使い方、道路事情をよく調べて仕上げてきたな、ということです。

ヒョンデ担当者の話によると、IONIQ 5のサスペンションのセッティングは欧州仕様より柔らかく、北米仕様よりは固めに仕上げたとのことです。また、カーナビは日本のユーザーにとって重要度が高いことを理解し、ゼンリンの地図データを使い重点的に開発したとのこと。さらに、ウィンカーレバーは国産車と同じステアリングコラムの右側にレイアウトされるなど、日本に合わせて配慮した丁寧な作り込みがされています。

丁寧な作り込みといえば、ディスプレイのUIが秀逸でした。輸入車で時折見かける変な日本語はありません。1つだけ気になったのは、「プレミアムオーディオ」が和訳され「高級音響」となっていたこと(笑)くらい。揚げ足を取るレベルですが、これが逆に気になったくらいの出来の良さとご理解ください。

IONIQ 5は、2022年のドイツ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。居並ぶ古参プレミアムブランドを押しのけての受賞は、ヒョンデが本気で作った新型EVの実力を証明したのだということを、試乗を通じて実感できました。

ヒョンデの日本参入の本気度と、IONIQ5がEVとして、またクルマとしての高い実力を備えて日本にデビューすることを確信できる試乗となりました。

【動画】1100km試乗!河津桜・天城越え・西伊豆スカイライン(前編)
(宇野智チャンネル on YouTube)

(撮影・取材・文/宇野 智)

この記事のコメント(新着順)11件

  1. 1100km走るのに8回充電している。
    安全を見てるとはいえ、実用性はないと見れる。さらに充電の待ち時間も示してもらいたい。

  2. インフラである充電スタンド拡充にはそもそも無理がある。
    理由は、事業用電力基本料金は1キロワットごとに1700円かかる。
    90キロワットの充電器1基据えただけで、使ってなくても月額153000円がかかる。
    だから事業者は2基設置しても最大で出力契約は90キロものままにするから2台充電すると出力は半分、3台なら1/3となっていく。
    ユーザーにしたら料金は時間制なので同じ30分充電なのに電気料金が3倍違う計算になる。
    さらにインフラがないから、メーカーや政府は家で充電するのを勧めている。
    家で充電する機会が増えるとスタンドに行く機会が減りスタンドの経営が悪化する。
    するとスタンドが廃業する悪循環に陥る。
    実際ブームで3万基近い充電設備ができたが3割はすでに廃業していると聞く。
    高速充電器は350キロワットまで出ているが、基本料金がどんだけかかるんだと言う話になり高速充電なんて夢のまた夢。
    解決するにはスタンド自体に発電機を据えて自給自足するしかなく、それを見据えてか海外では出力1メガワットクラスの小型原発の開発計画が盛んだ。
    日本でも三菱重工が500キロワットの小型原発を発表している。
    ただ原発アレルギーの日本人がスタンドに原発を設置することを良しとするかだ。

    1. 坂元 澄晴様、コメントありがとうございます!

      >理由は、事業用電力基本料金は1キロワットごとに1700円かかる。

      仰る通りで、これはデマンドチャージと言って、日本を含む先進国では比較的一般的な料金体系。日本だけが特殊なわけではありません。また日本の1kW当たりのデマンドチャージの金額(体系は細かく違うのですが)自体は、欧米と大きく違うわけではありません。
      そのため、日本でできない、と言っていると、世界で日本だけできない、と言っているように聞こえてしまいますね。。

      もちろんデマンドチャージは大変大きな金額になります。仮に30か所の急速充電器のデマンドが300kWであるようなセット設備を考えてみましょう。基本料金は1700x300x30x12=1.84億円/年間のランニングコストとなります。ではこれを2020年度の自動車メーカーの広告費と比較してみましょう。トヨタさんは大きいので置いておきましょうね。
      https://www.nikkei-koken.gr.jp/research/1891/
      日産  2800億円 1.84億円は年間広告費の0.066%です。
      マツダ 1240億円 1.84億円は年間広告費の0.15%です。

      夢のまた夢、という言い方をするほどではないことがお分かりいただけるかと思います。

  3. 私個人的な意見ですが、この上なく不細工なインパネと感じました。
    みんな、本当にかっこいいと思っているのかな。また視認性に問題ないのかな?

  4. 各所※でも言われていますが、「いい車」であること、そしてヒョンデさんの本気度が伝わるいいレポートだと思いました。
    ※例えば五味さんもご自身のチャンネルで(日本の関係各所に配慮して小声で)大絶賛されていましたね。

    これを見た日本メーカーにも、まだ奮起を期待してもいいのでしょうか・・・?
    もう、なんか若干諦めたくなってきた気分なのですが。

  5. 同じ新電元90kW機でも、東名海老名下りのような1口出力機だとそれなりの入力のようですが、日産ディーラーによくある2口出力機だと、あまり入力性能が高くないと何処ぞのYouTuberが解説していました。今後の車両側のチューニングに期待でしょうか。

    1. はやと さま、コメントありがとうございます。

      90kW新電元2口器のQCは、先日私自身で長距離試乗&検証してきたので、追ってレポートします。
      大黒新型6口器もそうですが、いわゆるチャデモの「ダイナミックコントロール(充電の途中で充電器側からの制御で出力を変える仕組み)」への対応の問題だと思われます。
      とはいえ、ヒョンデではデリバリーまでには改善するとしているので、おそらく、現状、テスラ(SC利用時)以外では世界最高峰というべき急速充電性能は、日本でも享受できるようになろうかと。

  6. 先日、原宿で試乗してきました。購入候補です。トークショーにもエントリーしたので、20名の抽選に当たるといいな。さて、1点疑問点なのですが、HPをよく見ると、「100V充電ケーブル」が、付属品として付いてきますが、これでは、一般的な自宅充電の、200V、15Aの充電には使えないのでしょうか?細かい所ですが、気になりました。車はとても素晴らしかったです。

    1. テスラ愛 様、コメントありがとうございます。はい、現状では200Vケーブルは付属しておらず、100Vのコンセントからしか充電はできないそうです。200Vの普通充電器(ケーブル付き)は使えます。ケーブルのない200Vコンセントからは充電できるケーブルが付属していないことになります。他社製品でも動作はすると思いますが、日本では案外200Vコンセントで充電している方が多いので、そのうちオプションで用意されないのでしょうかね。

      TurboCordみたいなのが日本でも売ってると便利だと思うんですけどね、、
      https://info.evsolutions.com/turbocord
      ↑こちらはコンセント側がNEMA 6-20となりますので日本独自の200Vコンセントには挿せません。コンセント側の交換が必要になります。

      もしテスラ既に充電されていて、ウォールコネクターがあるなら、ウォールコネクターから普通充電への変換ケーブルというのも販売されています。
      https://ev-lectron.com/products/lectron-tesla-to-j1772-adapter-white
      ご参考までに。

    2. テスラ愛 さま、コメントありがとうございます。

      100V充電ケーブル。
      https://blog.evsmart.net/hyundai/ioniq5/hyundai-ioniq-5-showcased-at-hyundai-house-harajuku/
      この記事の最後のほうでも言及してますが、ヒョンデハウス原宿でスタッフに質問したところ「200Vケーブル開発中」とのことでした。デリバリーまでには標準装備されるのでは? と想像しています。

      先日、広報車をお借りして、自宅の200Vコンセント&リーフ用ケーブルで、気持ちよく満充電になりました。

  7. TOCJ中島です
    とても充実した記事で読みやすかったです。
    ありがとうございました。
    私も試乗して一つ「なるほど」という事があったのでお伝えしておきます。
    パドルで回生具合をコントロール出来るのですが、
    ワンペダルにしたときにアクセルコントロールに違和感を感じました。
    やってみたところこのモードで思いっきりアクセルを奥まで踏んで、速攻でアクセルをはなすと、クルマは1mmも動きませんでした。
    予測ですが、クリープ有りのモードではブレーキを意識的に踏んでいるが、
    ワンペダル時には意識が無い状態で止まっているので、「誤発進防止」かと思われます。
    なるほど、こんな所にも気を使ってるんですねって思ったので・・・
    これからも魅力的な記事をお願いいたします。

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この記事の著者


					宇野 智

宇野 智

エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元「MOBY」編集長で現在は編集プロダクション「撮る書く編む株式会社」を主宰、ライター/フォトグラファー/エディターとしていくつかの自動車メディアへの寄稿も行う。

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