レクサス初のPHEV『NX450h+』試乗レポート【諸星陽一】

レクサスブランドとして初めてのプラグインハイブリッド車(PHEV)としてデビューした『NX450h+』に、モータージャーナリストの諸星陽一氏が試乗。LEXUSが掲げる電動化ビジョン「Lexus Electrified」の先駆けとなる一台を、外部から充電できないハイブリッドモデルと比較します。

レクサス初のPHEV『NX450h+』試乗レポート【諸星陽一】

PHEVをハイブリッドモデルと比較試乗

レクサスのクロスオーバーSUVラインアップのなかで、上級のRXとベーシックなUXの間に位置するモデルがNX。初代にはピュアエンジン車のほかハイブリッドモデルが存在した。初代デビューは2014年で、2021年10月に行われたフルモデルチェンジで2代目に移行した。

NX450h+

2代目には2.5リットルエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車とPHEVがラインアップされている。試乗はこの2台を比較しつつ行った。試乗車の詳細はハイブリッドがNX350h Fスポーツ、PHEVがNX450h+ バージョンL。駆動方式はともに4WD(NX450hは2WDの設定なし)であった。

NX350h

使われるエンジンは2.5リットルの4気筒で型式も同一のA25A-FXSというものだが、スペックは少し異なり、ハイブリッド用が190馬力/243Nm、PHEV用が185馬力/228Nmとなる。フロントモーターは182馬力/270Nm、リヤモーターは40馬力/121Nmでハイブリッド、PHEVともに同一。バッテリーはリチウムイオンで容量はハイブリッドが4.3Ah(システム総電圧259V=約1.1kWh)、PHEVが51Ah(システム総電圧355.2V=約18.1kWh)となる。

ほとんど同じ仕様でありながら、クルマの乗り味はまるで異なるのがNX350hとNX450h+という印象。結論を先に述べれば、NX350hはとてもエンジン車に近い、対してNX450h+はとてもEVに近い印象だ。NX350hでもEV走行はするのだが、すぐにエンジンが始動する。そしてエンジンが始動すると振動やノイズでやたらとエンジンの存在が目立つ。ところがNX450h+はなかなかエンジンが始動しない(WLTCモードでのEV走行距離は88km)のだ。もちろんEVモードを選んでおけばクルマ側はできるだけEVで走ろうとするがNX350hは速度を少し上げていくとすぐにエンジンが始動してしまう。一方のNX450h+はといえば、高速道路を走ってもEV走行が続けられるので、よりEV領域を楽しめる仕様になっているといえる。

EV走行のフィーリングを楽しめる

NX450hはメーター表示もかなりわかりやすくなっている。基本のメーター表示ではセンター上部にデジタルの速度表示があり、センター下部にエンジン-バッテリー-タイヤのエネルギーフロー図が配置される。エネルギーフロー図の上にはEV走行比率が表示され、現走行でどれくらいをEV走行しているかを確認可能。右下にはEV走行での航続可能距離とハイブリッド走行での航続可能距離を表示、バッテリー残量については左側、ガソリン残量については右側に表示となる。さらに、メインモニターにはエネルギーフローの様子が詳細な様子が表示される。


NX450h+の加速感は非常にEV的である。滑らかにして力強く、それでいて静粛性が高く振動もない。ハイブリッドモードでもゆっくり目のアクセルワークならこの加速感が楽しめる。EVモードであれば、いうまでもなくEVの加速感である。ハイブリッドモードでエンジンが始動した際もNX450h+は静粛性を保っている。アクセルワークに対してエンジンの回転がリニアに上昇しするフィールで、このあたりは従来のエンジン車に近いが、ハイブリッドのNX350hよりも静粛性が高く、好感度が高い。

NX450h+の車重は約2トンで、NX350hよりも約200kg重い。しかし、この重さがいい方向に働いているといえる。スポーツカーのハンドリングや移動体としての効率を考えるなら重い車重はネガティブな要素でしかないが、しかし落ちついた走りを得るための要素として重さはポジティブに働くことも多い。いわゆるどっしりとして落ちついた乗り心地は重さによってもたらされることが多い。バッテリーを床下に敷き詰める搭載方法を採るNX450h+はその傾向がさらに顕著に表れ、上質感を高めている。

NX450h+は普通充電のみで急速充電には対応しない。200Vの場合は16Aでの充電で約5時間30分、100Vの場合は6Aで約33時間で充電完了(EVモードからHVモードに切り替わった状態からの充電)と示されている。充電口の照明や充電リッドロック、充電中や充電終了時のコネクター取り外しを防止するコネクターロックも装備。もちろんタイマー充電や充電中にエアコンやオーディオなどを使うことも可能だ。

2カ所のアクセサリーコンセントを標準装備

外部給電についてはアクセサリーコンセントによるAC100V-1500Wの供給が可能。アクセサリーコンセントはリヤのコンソールとラゲッジルームの2カ所に設置される。また、V2Hにも対応しており、トヨタホームのクルマde給電を使う場合、住宅側の電源切り替えスイッチを外部にしたうえで、NX450h+の100Vコンセントと住宅側の給電インレットを接続、給電を開始すれば住宅内で100V-1500Wの電気を使うことが可能となる。

諸事情によりEVへの移行が難しい層は、PHEVがもっとも現実的な電動化モデルともいえる。そうしたなか、レクサスブランドにPHEVが加わったのは大きな出来事だ。ブランド初となるモデルに急速充電口を装備しなかったことはPHEVに対するレクサス、そしてトヨタの方向性を示したといえるかも知れない。

(取材・文/諸星 陽一)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. クルマで給電は、今、注目を浴びているV2Hシステムとはちょっと違いますよ
    クルマで給電:100v、1500wを給電
    V2H:200v、3000w以上の電気を放電

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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