ボルボ初のBEV『C40 Recharge』試乗レポート〜大黒PAで急速充電性能も確認

ボルボ・カー・ジャパンがブランドとして初の電気自動車専用モデルとなる『C40 Recharge』のメディア向け試乗会を開催、EVsmartブログも参加してきました。約2時間の試乗枠を活用して、大黒PAの新型90kW器での急速充電もチェック。満足度の高い上質なEVであることが確認できました。

ボルボ初のBEV『C40 Recharge』試乗レポート〜大黒PAで急速充電性能も確認

ボルボならではの上質を実現した電気自動車

2022年3月、ボルボ・カー・ジャパンが神奈川県横浜市で開催した『C40 Recharge』のメディア向け試乗会に参加してきました。『C40 Recharge』はボルボブランドとして初めてとなる電気自動車専用モデルです。プラットフォームは小型車向けに新開発された「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)」を採用。電気自動車専用のプラットフォームではありませんが、当初から電動化を想定して開発されて、プラグインハイブリッドモデルもラインアップする『XC40』に最初に搭載されたプラットフォームとなっています。

ただし、あくまでもボルボとして初めてのBEV専用モデルとして開発された意気込みは、乗り込んだ瞬間から実感できます。象徴的なのが、いわゆる「スタートボタン」がありません。キーを持ってシートに座り、ブレーキペダルを踏んでセレクターを「D(ドライブ)」や「R(リバース)」に動かすと、クルマがシャキッと目覚めてくれます。

9インチのセンター液晶ディスプレイは、程よい存在感で好印象。新たなインフォテイメントシステムはGoogleと共同開発されたということで、ルート検索や充電スポット検索など、スマホでGoogleマップを使う感覚で操作できます。少し気になったのは、センターディスプレイに表示されるのはGoogleマップそのものなので、ルート案内中の交差点拡大表示とかが少々苦手(私が使いこなせていないだけ?)です。

メーターには必要な情報がわかりやすく表示されています。

「これはどうなんだろう?」と疑念を抱きかけた時、メーターパネルにルート案内の拡大地図が表示されていることに気が付きました。欧州車でしばしば見かける方法です。なるほど、センターディスプレイよりも、メーターパネルに表示した方が視線の移動は小さくて済むし、慣れれば使いやすいんだろうな、と実感した次第です。

広々としたパノラミックルーフで、後部座席や助手席の同乗者(今回、木野さんと同乗したので試してみることもできました)も快適。100%レザーフリーを実現したインテリアの質感も上々です。

木野さんの運転中に助手席シートを倒してくつろいでみました。快適です。

実は、すでに別記事でお伝えしたように、この試乗会でボルボからC40のラインナップ変更が発表されました。シングルモーター(前輪駆動)のエントリーグレードである『C40 Recharge Plus Single Motor』(599万円〜※税込)の追加と、前後2モーターのAWDモデルもピクセルLEDヘッドライトなどをオプションにしたグレードに絞って『C40 Recharge Ultimate Twin Motor』に名称を変更、価格も699万円(税込)〜に値下げされました。試乗車として用意されていたのはすでに発売されていた『C40 Recharge Twin』(719万円〜※税込)です。ちょっとややこしいですが、ヘッドライトなど仕様変更された部分以外、動力性能やインテリアなどは同じです。

2モーターでシステム最高出力は300kW(408PS)、0-100km/h加速4.7秒を誇るパフォーマンスは文句なし。ちなみに、エントリーグレードのシングルモーターのグレードでも最高出力は170kW(231PS)、0-100km/h加速7.4秒ということなので、普通のドライバーが普通の道を走る分には十二分なパワーで、EVならではのシームレスな加速感を堪能できるはずです。

最大150kW対応の急速充電性能は?

大黒PAでは「宇都宮と横浜を頻繁に往復している」というmartyさんのホンダe、同じC40の試乗取材に来ていたメディアの方のBMW i3と並んで充電。

さて、私たちの試乗枠はこの日の朝一番の回でした。通常であれば試乗車は満充電で貸し出してくれるのでしょうが。EVsmartブログとしては、ぜひ大黒PAの新型急速充電器での性能を試してみたかったので、広報のご担当者に「電池減った状態で乗らせてください」と、無理なお願いをしてました。

というわけで、試乗スタート時のバッテリー残量は56%。みなとみらい地区の試乗会拠点をスタートしてから、市内の高速道路をぐるぐる走り、残量50%で大黒PAにピットインとなりました。

急速充電口は後部左側。普通充電口は反対側にあります。

大黒PAに設置されたe-Mobility Powerの新型急速充電器。6台分の充電口がずらりと並び、1台あたり最大90kWで充電できる性能なのですが、開設時にレポートしたように、車種によっては20kW以下の出力しか出ないといった不具合が報告されています。はたして、C40はどうなのか。実際に試してみたいと考えてのことでした。

結果はまずまず。開始直後にはクルマのメーターパネルで82kWの出力を確認。この新型器は15分で最大出力が50kWに制限されるブーストモードという仕組みを備えているのですが、30分間で29.4kWh、残量は82%まで充電(試乗車のバッテリー容量は78kWh)することができました。以前、EQAでのロングドライブ&90kW急速充電を試した際には、新電元の90kW器で、30分間で36〜38kWhの充電ができました。足りない7〜9kWhが、ブーストモードで制限された充電量だと解釈できます。

仮に、電費が6km/kWhとした場合、38kWhなら228km走れますが、29kWhでは174kmしか走れず、ちょっと微妙ではあります。

陽光が明るいと液晶が撮りづらいのもなんとかして欲しいところです。まあ、特殊なニーズですけど。

90kW器で82kWの最大出力だったのは、車両側の総電圧の問題であり、エントリーモデルを含めて最大150kWとアナウンスされているC40の急速充電性能は、90kW出力の急速充電器のパワーをフルに引き出すことはできているはず。インフラ側の問題なので、これはe-Mobility Powerに提言すべきことですが、やっぱり、ブーストモード、ちょっともったいないなぁと感じます。ブーストモードさえなければ、結果は「まずまず」ではなく「バッチリ!」だったと思われます。

ただし、ボルボでは150kW出力の急速充電インフラ整備についての言及はなく、e-Mobility Powerなどが高速道路網に整備する計画も聞こえてきません。トヨタbZ4Xなどもそうですが、EVとして150kWといった高出力の急速充電に対応しても、高出力の急速充電インフラがなければその真価は発揮できません。いろんな記事でも述べている繰り返しになりますが、全国の高速道路SAPAには、せめて90kW器の複数台設置が、一日も早く進むことを願っています。

気になったのが「ワンペダルドライブ」への切り替え方法

しっかりした内蓋付きのフランクも備えています。

試乗した『C40 Recharge』は期待通りの素晴らしい電気自動車でした。スタートボタンがないことなど、いわばテスラが切り拓いてきた「電気自動車らしさ」を、ボルボなりの解釈で昇華させた新型電気自動車になっているという印象です。

ただ、一点だけとても気になり、もったいないなぁと感じたのが「ワンペダルドライブ」への切り替え方法でした。

『C40 Recharge』に回生ブレーキの強さを段階的にコントロールするパドルシフトなどの仕組みはなく、切り替えができるのはアクセルペダルを放すと停止までする「ワンペダルドライブ」と、ほぼコースティング状態となって回生ブレーキを使わないモードのみ。

コースティング状態と「ワンペダルドライブ」への切り替えにワンタッチのボタンなどもなく、センターディスプレイの「設定」から「ドライビング」→「One Pedal Drive」と、階層を掘り下げて選択しなければなりません。これは、正直言って面倒臭くて使い辛い。

この画面下部の「One Pedal Drive」にタッチして切り替えます。

ワンペダルドライブ時の回生の効き方や、完全停止時の挙動などの仕上がりも素晴らしいものでした。コースティングが使えるのもEVユーザーの気持ちをわかってくれていると感じます。でも、コースティングとワンペダルドライブの中間的な強さで回生ブレーキを使えると便利で楽だし、せめて、ボタンひとつでワンペダルに切り替えられる機能は欲しいと感じたのでした。

ともあれ、エントリーグレードの『C40 Recharge Plus Single Motor』は500万円台での登場となり、日本でも魅力的な電気自動車のバリエーションが増えたことを喜びたいと思います。友人のボルボユーザーには、熱烈にボルボというブランドを愛している人が多いですけど。『C40 Recharge』は、そんな「骨の髄までボルボファン」が納得できるBEVだと感じる試乗となったのでした。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. > e-Mobility Powerなどが高速道路網に整備する計画も聞こえてきません。

    eMPは25年までの取組計画(下記URL)として90kw級以上の大量設置を公表していますので150kw級の設置も視野に入れているように読み取れます。
    一方、具体的な設置計画の発表はされていないため、1日も早く高速道路上に150kw級の充電器が設置されるように、evsmartさんには日本で唯一のEV専門メディアとして、かつユーザ代表として、上記の要望を粘り強く伝えていただければ幸いです。

    https://www.chademo.com/wp2016/wp-content/japan-uploads/2021GA/e-MobilityPower2021GA.pdf

    1. kuwagata さま、コメントありがとうございます。

      >上記の要望を粘り強く伝えていただければ…

      はい。四ツ柳社長をはじめeMPや高速道路充電インフラ関係者の方々からも「EVsmartブログを読んでるよ」という声をいただきますし、粘り強く、繰り返し発信したいと思います。m(_ _)m

  2. この後の記事で、googleのインフォテイメントの記事がきっと載るはず。そこだけ興味ある。

    1. shibata さま、コメントありがとうございます。

      インフォテイメントシステム。今回試乗では、急速充電にかまけて、あまり細かく試すことができていませんでした。次回以降、何らかの機会を設け、心してレポートしたいと思います!

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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