電動バイクブランド『XEAM』試乗会〜ZEROの新モデル『FXE』が気持ちいい〜!

電動バイクの新鋭ブランド『XEAM』が、新モデルを発売する機会に箱根でメディア向け試乗会を実施しました。久しくバイクには乗ってませんが、30年近く電気自動車(EV)の取材をしてると電動というだけで乗りたくなります。押っ取り刀で駆けつけてみたら、すごく楽しい乗り物と出会えました。

電動バイクブランド『XEAM』試乗会〜ZEROの新モデル『FWE』が気持ちいい〜!

霧の箱根で新型電動バイクを体験

関東地方が梅雨入りをした3日後の6月9日、福岡市に本社を置くMSソリューションズが展開している電動バイクブランド『XEAM(ジーム)』のメディア向け試乗会が実施されました。場所は、箱根ターンパイクを上りきって大観山展望台を超えた所にある『バイカーズパラダイス南箱根』です。

バイカーズパラダイスは幻想的な霧に包まれてました。

なにしろ場所は山の上。先日のヤマハの電動スクーター『E01』試乗会のように雨が降ったら寒いだろうなあと思ったのですが、天気予報は晴れ。これならオッケーと思って寄本編集長の『リーフ』で行ってきました。

現地に着いてみると、雨こそ降らなかったものの、一面が霧に包まれた幻想的な雰囲気でした。ちょっと肌寒い中、今回は試乗の台数が多いので試乗枠に合わせてどんどん乗っていきました。試乗コースの中心は、『バイカーズパラダイス南箱根』から坂を下った、箱根エコパーキングまでの往復約6kmです。ちょっと道が荒れてる場所もありますが、天気が良ければ景色も良さそうです。

今回『ジーム』が用意した試乗車は9モデルです。そのうち6モデルが新たに発表されたものだったのですが、EVsmartブログではスクータータイプの原付2種『V-MOTO FLEET』を除く5モデルに試乗してみました。

今回はまず、軽二輪の『ZERO FXE』と、原付2種の『TOROMOX UKKO S』『SUPER SOCO TC ストリートハンター』『SUPER SOCO TC WANDERER』の3モデルを紹介します。

今回の試乗車

●軽二輪

Zero FXE

●原付2種

TOROMOX UKKO S

SUPER SOCO TS STREET HUNTER

SUPER SOCO TC WANDERER

思わず口から「気持ちいい!」と漏れてしまう『FXE』

EVsmartブログではこれまで、『Zero Motorcycles』の電動バイクをいくつか取り上げてきました。

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記事の中では『Zero Motorcycles』について、電動バイク界のテスラと言われていると表現しています。今回、初めて『Zero Motorcycles』のバイクに乗ってみて、179万9800円(税込み)という価格といい、性能といい、そう評されるのも納得の1台でした。

ということで、まずは試乗会の目玉のひとつでもある、マルチパーパスっぽい『FXE』からいってみます。軽二輪なので昔で言う中型免許、今の「普通自動二輪(AT限定含む)」で乗ることができます。

普通のバイクと同じように、と言っても最近はキーレスもあるので昔ながらと言った方がいいかもですが、キーをひねってスタート位置にしたら、サイドスタンドを上げて、右手位置にあるメインシステムをオンにするスイッチを押します。これでメーターパネルに「READY」表示が付いて発進OKになります。

走行モードは基本的に、「エコ」と「スポーツ」です。モードの切り替えはワンタッチなので、走行中でもちょこちょこと変更できます。ブレーキ操作は一般の二輪車と同じで、右手がフロントブレーキ、右足がリアブレーキです。

『FXE』は見た目からして腰高なので足つき性がいいとは言えませんが、オフロードバイクに乗ったことがあれば違和感はないと思います。168cmの筆者でもつま先は着きました。

まずはそーっとアクセルを開けていくと、クラッチ操作がないので低速でのコントロールがすごくラクなことに気づきます。しかも低重心でバランスもいい感じです。歩くくらいの速度でも、なんだか気持ち良く感じます。これなら免許試験の一本橋も怖くなさそうです。

駐車場から公道に出て、初めてなのでとりあえずは「エコ」モードでアクセルをカパっと開けてみると、ドン! という感じで加速しました。「え、これでエコなの?」という加速感です。ICE(内燃機関)のバイクも加速はいいですが、やっぱりEVは感触が違います。

思わず、「気持ちいい!」と叫んでしまいました。電動なので、街中で叫ぶと周りに聞こえてしまって恥ずかしいかも知れませんが、ここは山の中です。ヘルメットの中で独り言を言いまくってしまいました。

1300ccクラスのトルクで余裕をもった走り

走りながら、途中で「スポーツ」と「エコ」を切り替えてみると、やっぱり「スポーツ」モードの方がトルク、パワーともに一段上です。一般道でやたらにアクセルを開けたら危ないくらいの加速力があります。信号グランプリなら無敵ではないかと思います。

後でスペックを見てみて、トルク感に納得しました。『FXE』の最大出力は34kWなので400ccクラス並ですが、最大トルクは106Nmあります。同等なのは、最大トルクが112Nmあるホンダの『CB1300』です。大型バイク並のトルクがある軽二輪ということです。

しかも電動の『FXE』はゼロ発進から強大なトルクが出る上、車重が135kgしかありません。『CB1300』は約200kgです。爆発的な加速力があるわけです。

でもこのトルクをうまく使うと、乗りやすさにものすごく貢献します。低速での取り回しもラクだし、加速時はほんの少しのアクセル操作で済むので右手の負担も減ります。

ただ、アクセル開度に対する反応が良すぎて、気をつけないと乱暴な加速をしてしまいそうになるので注意が必要でした。個人的にはもう少しズブくてもいいのですが、このへんは好みの問題もありますね。

アクセルオフにした減速時のGのかかりかたは、内燃機関(ICE)のバイクとそれほど変わらないように思いました。回生ブレーキがほどよく効いている感じです。担当の方からは2ストのような減速感という説明がありましたが、もう少し止まる感じがしました。ブレーキをかけると回生量が増えるのも自然な感じで、安心して減速できます。

他方、「スポーツ」と「エコ」で回生量があまり変わらない印象を受けました。システム上は「エコ」の方が回生を多くとっているそうですが、それほどの変化は感じません。ちなみに駐車場内で少しだけ大型二輪の『SR/S』を体験させてもらうと、「エコ」と「スポーツ」で明確に回生量の違いがありました。『SR/S』の最高出力は82kWです。やっぱりモーターが小さいと回生量は少ないし、走行モードによる違いも出にくいのだと思われます。

駐車場内でSR/Sも体験!

ちょっと長いツーリングに行きたくなる

走り出してからの挙動は、とても落ち着いていました。ハンドルを多少、左右にふってもヨレたりしません。それに重心のバランスがいいせいか、コーナーを安心して回っていける気がしました。怖いので、そんなに速く走ってないですけどね。

なにより、当たり前ですが振動もエンジン音もないので疲れにくいのは間違いなくて、ツーリングは気持ちいいだろうなあと思わせてくれる乗り心地でした。航続距離を考えると遠出するにはちょっと気合が必要ですが、それでも走ってみたくなります。

なお1回の充電での航続距離は、街乗りで約160km、高速道路(89km/h走行)で96kmとなっています。アメリカ本国の『Zero motorcycles』のHPを見てみると、市街地の航続距離はSAE J2982に沿った測定、高速道路は時速55マイルでの定速走行とありますが、リアルワールドとの差がどのくらいなのかは想像がつきません。チャンスがあれば試してみたいと思います。

充電は100Vか単相200V、あるいはオプションでJ1772も使えます。バッテリー容量は7.2kWh、車載充電器の出力は650Wです。ただし、スペック上は100V/200Vでの充電だと0から満充電まで9.7時間となっています。650Wなら10時間以上かかりそうですが、もしかすると7.2kWhのバッテリー容量をフルに使えるということではないのかもしれません。

なおZero motorcyclesの公式HPでは、『FXE』の充電時間は95%まで9.2時間です。これはなんとなく納得の数値です。実際にどのくらい充電できるのかも、今後の検証課題ですね。

●『ZERO FXE』スペック
最大出力:34kW
最大トルク:106Nm
最高速度:137km/h
航続距離:160km(高速道路で89km/hの場合96km)
バッテリー容量:7.2kWh
充電器入力電圧:100V/単相200V
車載充電器:650W
サイズ:全長2050mm×全幅840mm×全高1150mm
シート高:836mm
車重:135kg
タイヤ径:前後17インチ
価格:179万9800円(税込み)

街乗りにぴったりな3モデルの原付2種

試乗会では、ちょっとスーパーな価格と性能の『ZERO』のほか、価格抑えめな原付2輪電動バイクを3台試乗できました。

まずは中国の杭州に拠点を構える『TROMOX』から、最高出力がちょっと高めの『Ukko S』です。ベルト駆動なのでチェーンのシャリシャリ音がなく、とても静かです。

バッテリーは「ブレードバッテリー」と表記されているので、BYDのリン酸鉄(LFP)バッテリーだと思われます。バッテリーは着脱可能で、重さは23.3kgです。あまり取り外そうとは思わない重量ですね。

キーは、非接触チップNFCかキーケースのボタン、いずれでもスタートできます。電源がオンになるとタンク、ではなく車体の上部カバーの上にある縦線が点灯して色が変わります。こういうギミックは中国メーカーが得意そうです。

非接触チップでも始動が可能。

シートに座った感じは、原付より少し大きめのチビバイクという感じです。タイヤ径は13インチでした。

走り出しのパワー感は、悪くありません。さすがにスーパーカー的な『FXE』は別格ですが、街中で走るには十分な力があります。

走行モードは「S」「D」「E」の3種類で、それぞれ最高速度が時速90km、60km、30kmに制限されます。ブレーキはスクーターと同じように左右グリップのレバーです。

気になったのは、「S」モードで速度を上げていくと車体が微妙にふらつくことでした。パワーにフレームの剛性が追いついていなくてヨレているのか、車体が小さいからなのか、理由はわかりません。でも街乗りなら気にならないレベルだとは思います。

1充電での航続距離も、『ジーム』による実走参考値では約75kmなので、街乗りなら問題なく使えるレベルです。それに原付は2段階右折ですが、原付2種なら車線通りに走れます。1台あると便利なバイクだと思います。

パワーと車体のバランスが良くて乗りやすい豪州バイク

写真は現行型の『』。価格は1バッテリーが29万9800円、2バッテリー39万9800円(税込)。

最後は、オーストラリアの電動バイクメーカー『Vmoto』が展開しているブランド『Super SOCO(スーパーソコ)』から、『TC WANDERER(ワンダラー)』と『TS STREET HUNTER(ストリートハンター)』です。どちらもインホイールモーターが特徴です。

シートに乗った印象は、タイヤ径が17インチなので普通のスポーツバイクと同じです。速度などの表示は。『ストリートハンター』は完全デジタルで、『ワンダラー』は速度のみアナログ表示になっています。

走行モードは1~3の3段階で、それぞれ最高速度が制限されています。公開されているスペックでは『ストリートハンター』は50/60/70km/h、『ワンダラー』は45/60/75km/hです。なぜか微妙に違っています。

バッテリーは着脱式で、搭載数1個か2個を選択できます。10万円の差はけっこう大きいですが、2個あった方が安心ではあります。バッテリーの重量は1個13.2kgなので、取り外して部屋の中で充電するという選択肢もアリだと思います。2個持ちだと厳しいですが。

オプションでJ1772充電アダプター(2万7500円)も用意されてます。

さて、実際に走ってみると感じるのは、パワーがそこそこなことです。街乗りに必要十分という感じで、ブンブンととばして走りたい人はやっぱり『ZERO FXE』に手を伸ばす必要がありそうです。

ブレーキはスクーターと同じく左右グリップのブレーキレバーで操作します。ただ左手のリアブレーキは、フロントブレーキとコンビになっています。以前のEVsmartブログの記事では、元8耐チャンプの生見さんがコンビブレーキのバランスがけっこういいとコメントしていました。確かに不自然感はなかったです。

なおインホイールモーターのデメリットとして言われている、ばね下重量の増加の影響は、ちょっと感じました。路面の凸凹をそこそこ拾ってくる感じです。でもこれも、街乗りならそれほど問題にならないレベルだとは思います。このあたりは、試乗機会があればぜひ体感してほしいと思います。

インホイルモーターの乗り心地を実感。

『スーパーソコ』のバイクは価格もそこそこだし(駄洒落ではなく)、普段使いにはちょうどいいのではと思いました。残念ながら、今回紹介したバイクはどれも補助金申請に必要な認定を取っていないので補助金が出ないのですが、このままでも十分に検討対象にはなると思います。

TROMOX
Ukko S
Super SOCO
TS STREET HUNTER
Super SOCO
TC WANDERER
最大出力8kW3.5kW3.5kW
最高速度90km/h75km/h75km/h
航続距離(※1)90km140km(※2)110km
バッテリー容量3.96kWh
(72V/55Ah)
1.92kWh
(60V/32Ah)
×1個または2個(※2)
充電器入力電圧100V
(84V/5A)
100〜240V
(71.4V/4A)
全長×全幅×全高(mm)1820×800×10202038×780×10851984×788×1097
シート高780mm760mm760mm
車重110kg102kg
/115.8kg
103kg
(バッテリー1個)
タイヤ径前後13インチ前後17インチ前後17インチ
価格(税込)64万9800円39万9800円
/49万9800円
9月発売予定
※1)航続距離は各社で走行条件が異なる
※2)バッテリー2個で75kgのライダーが平均時速45km/h以下で走行の場合。
※3)バッテリーは、着脱可能なバッテリーパックを1個か2個で選択。航続距離はバッテリーパック2個の場合。価格は前者がバッテリー1個、後者が2個

なお『ワンダラー』は9月発売予定なので、紹介した仕様はこれから変更があるかもしれません。価格は、現時点では50〜60万円くらいになりそうだということですが、まだ未定です。

結局、ほとんど霧の中の中だった試乗会ですが、1度にたくさんの電動バイクに乗る機会はとても希少なので、いい体験ができました。各モデルの考え方の違い、特徴もちょっと見えた気がします。

でも欧米は、もっと電動バイクの選択肢が広いんですよね。しかも数が増えていて、為替レートの影響もあり価格が日本よりかなり安くなっています。情報を知ってしまうと、やっぱり羨ましいなあと思います。

ということで、まずは『ジーム』さんに頑張っていただいて、日本にも電動バイクが増えることを期待しつつ、梅雨明けには電動バイクで日帰りツーリングとかできるといいなあ、などと妄想する今日このごろなのであります。

(取材・文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 電動バイクは振動、騒音、シフトチェンジ、エンジン排熱がなく、疲れにくいので長距離ツーリング向きだと思います。航続距離と充電時間を除けば、ですが。
    実は私、電動バイクを自作したのですが、3.8kWhバッテリーと10kWモーターで航続距離60km。充電時間15時間です。
    しかしこれではツーリングには行けません。北海道一周とか無理です。
    北海道ツーリングなら一日に300〜400km走ると思います。
    Zero motorcyclesのFXE でも厳しいですね。SR/Sでは、14.4kWhバッテリーで最大航続距離が259kmなので、お昼ご飯中と宿泊施設で充電すれば一日300kmくらい走れるでしょうか。
    ただ、高速道路では航続距離132kmで、高速道路上にJ1772がない(ZEROのバイクはチャデモ非対応)ので、北海道にたどり着くまでをどうするか考えなくてはなりません。
    チャデモ対応で高速道路を200kmくらい連続走行出来る電動バイクがあったらいいなと思いました。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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