大型電気バイク『ZERO SR/F』に鈴鹿8耐チャンプの生見氏が試乗

いよいよ日本に上陸する本格的電気バイク『ZERO』のサーキット試乗会に、2003年鈴鹿8耐の優勝ライダーである生見友希雄さんと一緒に行ってきました。はたして、「バイク界のテスラ」と評される電気バイクの乗り味はいかがなものか?

大型電気バイク『ZERO SR/F』に鈴鹿8耐チャンプの生見氏が試乗

プロライダーのインプレッションを聞いてみたい!

2020年4月7日(火)、電気バイクのセレクトブランドである「XEAM(ジーム)」が日本に初導入する本格派の大型電気バイク『ZERO SR/F』と、ヨーロッパを中心に人気を集める『SUPER SOCO』シリーズのサーキット試乗会が開催されました。

サーキット試乗をお願いした生見友希雄さんと『SR/F』。

会場は千葉県の『袖ヶ浦フォレストレースウェイ』。まさに「今日にも緊急事態宣言か?」という状況下でしたが、参加者はメディアなどに限定、マスク着用必須、会場にはアルコール消毒液を設置、会議室で行う予定だったブリーフィングは急遽屋外のピットスペースで実施するなどの対策をしての開催となりました。

試乗の目玉は大型二輪免許が必要な『ZERO SR/F』。試乗会にはもちろん興味しんしんですが、私は二輪免許を所持していません。そこで、プライベートの知人である鈴鹿8耐優勝ライダーの生見(ぬくみ)友希雄さんに「電気バイクの試乗会取材に行きませんか?」とお声がけしてみると快諾。当初は私のリーフで一緒に行く計画だったのですが、コロナウィルスへの用心から別々に、それぞれのクルマでサーキットへ駆けつけました。

最大出力110馬力の『ZERO SR/F』の実車をチェック

SUPER SOCOシリーズの5車種。

今回、試乗会に登場したのは、『ZERO SR/F』が2台と、『SUPER SOCO』シリーズ5車種。XEAMによる日本導入についての速報は、3月23日の記事でもご紹介しました。

【関連記事】
電気バイクの黒船『ZERO』が「XEAM」から日本初登場~『SOCO』も気になる!

試乗開始前、充電中の『SR/F』。

最大のお目当てはもちろん生見さんによる『SR/F』試乗インプレッションですが、せっかくなので『SUPER SOCO』シリーズのフラッグシップである軽二輪規格の『TC Max』と、原付一種規格のスクーター『CUX』の試乗枠も確保。生見さんに乗ってみてもらうことにしました。

実は『SR/F』の実車が日本にやってきたのはこの試乗会の数日前のこと。はたして、どんなEVバイクなのか、この目で確認する貴重な機会です。先日の速報記事では付属している充電ケーブルの仕様が「100V対応」か「200V対応」なのか未確認のままだったのですが、試乗会会場にはもちろん現物がありました。

見ると、コンセントに差し込むプラグ側のボックスに「DUAL」の文字が。なんと、二本爪の100Vプラグとともに、アース端子の付いた電気自動車用200Vコンセントに差し込むプラグのアダプターを備えた「100V&200V兼用」の充電ケーブルが付属していました。「これは便利!」と感動のあまり、うっかりケーブルの長さや単体での価格を確認するのを忘れたのですが、このケーブル、リーフでも使えたら1本欲しいくらいです。

搭載する電池容量は14.4kWhです。三菱『アイミーブ』16kWhに匹敵する電池なので、バイクに積んだら大きくて存在感ありすぎになるんじゃないかと想像していたのですが、実際に見るとスッキリと収まっている印象です。XEAMブランドを展開するMSソリューションズとカリフォルニアのZEROを繋いで日本初導入を実現させた岸本ヨシヒロ氏によると、電池だけの重量は80kg程度とのこと。思いのほかコンパクトに収まっている印象でした。

ちなみに、全体の車重は約220kg。110PSというハイパワーな大型バイクとしては、むしろ軽いとすら言えそうです。考えてみれば、エンジンって大きくて重いんですよね。さらに大容量電池搭載が望まれる自動車では「電気自動車は重い」のが定説ですが、構造がシンプルで電費も有利なバイクでは、「電動こそ軽快」が常識になっていくのかも知れません。

メーターの表示内容も切り替え可能。

ドライブモード切替スイッチ。ハンドルにクラッチレバーはありません。

ドライブモードはハンドル手元のスイッチで切り替えます。最高速度が120km/hに制限されて回生ブレーキが強く効く「エコ」、一般的な走行時の「ストリート」、急な挙動を抑制する「レイン」、そしてサーキット走行などを楽しむための「スポーツ」と、4つのモードを備えています。

駆動がベルトドライブで、なんというか「油臭くない」のも、電動らしさを強調しています。

ガソリンタンク部分が、充電口とケーブルなどを入れられる収納スペースになっています。
日本語パンフレットも完成していました。

意外と素直。600ccクラスのスポーツモデルに匹敵する印象

さて、そんなこんなはこのくらいにしておいて、試乗した3車種について、生見さんのインプレッションをご紹介します。

SUPER SOCO『CUX』

原付一種(50cc以下相当)規格のスクーター。バイクギアの名門ブランドである『クシタニ』の特注レーシングスーツ&『アライ』の特注ヘルメットに身を包んだ生見さんに乗ってもらうのは恐縮しきりではありましたが……。

【生見さんのインプレッション】
さすがに、50ccのスクーターと比べても原付一種規格の電動はややパワー不足な印象はある。でも、3段階あるモードの最速モードを選べば、原付スクーターを日常の足として乗るには十分であるとも感じます。電動の特徴といえるでしょうが、モードを切り替えることで明確に走りが変わるのが印象的でした。

SUPER SOCO『TC Max』

XEAMの齋藤課長からモード切替などのレクチャー中。

軽二輪(125cc超~250cc以下相当)規格のスポーツバイク。最高速度は90km/h。電池容量は約3.2kWh(重量23kg)で車体に搭載したまま充電できるほか、着脱しての充電も可能。航続距離は110km(体重75kgのライダーが45km/h定地走行した場合の数値)。

【生見さんのインプレッション】
軽快なスポーツバイクという印象で、アクセルを開けた時の加速感は電動ならではの独特の気持ちよさを感じました。タイムラグなくリニアに加速する感覚が新鮮で楽しんで走れましたね。

このバイクはルックスはスポーツバイクですが、ブレーキはスクーターのように左ハンドルのレバーでリア、右レバーがフロントブレーキになっているのが特徴的。また、リアのブレーキをかけた時に適度にリアとフロント、両方のブレーキが効いて制動姿勢を安定させてくれる「コンビブレーキ」が採用されているのですが、そのバランスがすごくいい。今日の試乗はシンプルな周回コースの設定だったこともあり、フロントブレーキはほとんど使わないで走れるほどイージーで快適でした。

ZERO『SR/F』

昼食後、いよいよ『SR/F』の試乗となりました。ただ、フル稼働の試乗会、我々の順番が回ってきた時の試乗車の電池残量はすでに40%を切っていて、15分間の試乗終了時には15%くらいになるという、割とギリギリの走行ではありましたが。ストレートでは時速200km/hを叩き出しつつ、スムーズにコーナーを攻める生見さん。私が生見さんと会うのはゴルフ場が多く、正直言って、サーキットを走る生見さんを生で見た(ダジャレか!)のは初めてだったのですが、やっぱりカッコいいですね。

【生見さんのインプレッション】
僕の持論として「サーキットはリズムで走る」もの。シフトチェンジのない電気バイクで、どんな風にリズムを刻めるか少し不安もあったんですが、想像以上に素直な走りで楽しめたというのが正直な印象。全体として、600CCクラスのスポーツモデルに匹敵する走りを楽しめました。

ピットからの立ち上がりで電動バイクらしい圧倒的な加速を感じたので、コーナーの立ち上がりでアクセルを開ける時のコントロールはシビアだろうと想像していましたが、それも意外にスムーズでした。シフトチェンジも何もないのでブレーキングに集中できて、シームレスに回転が上がっていく感覚が新鮮でしたね。電動バイクは、無限(ホンダ)がマン島TTレースに出場するために開発した『神電 弐』に乗ったことはありましたけど、『SR/F』はさすがに市販車だけあっていろんな制御のスムーズさや完成度が高められているんでしょうね。

途中で120km/hリミッターの「エコ」モードも試してみました。エンジン車でリミッターが効く速度で走ると、突然燃料がカットされるのでギクシャクしがちですけど、そのあたりの制御もなめらかで違和感なく走れます。エコモードでも加速などはしっかりとパワフル。通常の高速道路走行であれば最高速は120km/hで十分なわけだから、実用性は高いでしょう。

あと、電池がフレーム強化の役割も果たしているのかな。コーナーの切り返しでボディ剛性が高いと感じました。クラッチがないので「Uターンは大変じゃないのか」と思って試してみたけど、これもスムーズ。ひとつ気になったのは、15分間のサーキット走行で20%の電力を消費してしまったことですね。

日本の電気バイクラインアップは「XEAM」が独走状態に

今回の試乗会、実は私も所有している免許証で乗れる原付スクーター『CUX』でサーキットを試乗しました。昨年7月、XEAMブランドに初注目した『niu U』に乗った時は「これでいいじゃん!」と感じて記事にしましたが、『CUX』はより安定感ある走りを楽しめる印象で、ますます「これならいいじゃん!」と感じます。

ちなみに、岸本氏に「ZEROが今まで日本に導入されなかったのはどうして?」なのか尋ねてみると、以前、日本のとある業者がZEROに不義理を働いたことがあり、ZEROの幹部が「日本市場に興味がないから」とのこと。ZEROを説得して日本導入を実現した岸本氏の尽力と、ZEROばかりでなくSUPER SOCOシリーズも導入してバリエーションの幅を一気に広げたMSソリューションズ(XEAMを展開する会社)塩川正明社長の英断に拍手です。

塩川社長(右)と岸本氏(左)。

試乗会会場にもいらしていた塩川社長と立ち話で伺ったところ、塩川社長自身、ZERO導入に向けて教習所に通い、大型二輪免許を取得したそうです。

ともあれ、日本のバイクメーカーからはあまり電気バイクが登場しない中、欧米や中国ではもうこんなに「普通に素敵な」電気バイクがどんどん広がっています。そして、福岡市に拠点を置く、本来はデジタルガジェット商社であったMSソリューションズのブランド「XEAM」が、大手バイクメーカーを差し置いて日本一電気バイクのラインアップを充実させたことは間違いありません。

【関連ページ】
『XEAM』ブランド公式サイト

(取材・文/寄本 好則)

【追記】 SR/Fと市販エンジンバイクスペック比較(2020.4.15)

車名最高出力最大トルク車重価格(税込)
ZERO『SR/F』110PS190N・m約220kg330万円
ホンダ『CB1300 SUPER FOUR』110PS118N・m268kg約151万円
ホンダ『VFR800F』107PS77N・m243kg約145万円〜
ヤマハ『MT-09』116PS87N・m193kg約102万円〜
カワサキ『Z900 RS』111PS98N・m215kg約135万円

この記事の著者


					YORIMOTO Yoshinori

YORIMOTO Yoshinori

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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6 thoughts on “大型電気バイク『ZERO SR/F』に鈴鹿8耐チャンプの生見氏が試乗”

  1. 大型二輪で110psで220kgは特段ハイパワーでも軽量でもないですが、かなり面白そうですね

    二輪でベルトドライブはホイールダンパーいらないし楽だし静かだけどよくやる最終減速比の調整が容易じゃないのと石噛むとすぐ切れるので……

    Super SOCO TC (非MAXの原二モデル)は買おうかマジで悩んでます

    1. 良いもの さん、コメントありがとうございます。

      >大型二輪で110psで220kgは特段ハイパワーでも軽量でもないで…

      私はバイクに詳しくないので、記事を書くにあたり110PS程度の各社市販バイクカタログスペックを比較して確認してみました。記事が想定していたより長くなってしまったので割愛したのですが、せっかくなので、比較表を追記しておきますね。

      ご指摘のように、出力と重量を個別にみると「特段ハイパワーでも軽量でもない」ですね。ただ、トルクまで比べると、電動の強みが伺えて、値段まで比べると電動の弱点が浮かび上がります。w
      生見さんが「600ccクラスのスポーツモデル」と評したのは、SR/Fが比較的コンパクトだったから、ではないかと推察します。

      ベルトドライブが「石噛むとすぐ切れる」のは、XEAMにとってもきっと要チェックのポイント、ですね。

      SUPER SOCO TC、購入されたらぜひ感想など教えてください。もしご協力いただけるなら「充電させてもらえませんか」旅のレポートとかも。。。

  2. 趣味として大型バイクに乗っています。
    現在のハイスペックなバイクは200㎏以下で200psオーバーというのが一つの基準になっています。
    私が乗っているバイクは600ccで200kg、120psなので600ccくらいのイメージというは間違いなさそうです。ただし、トルク値は圧倒的にZEROの方が上ですね。
    190Nmなので、ガソリンエンジン換算で2L弱の排気量と同等です。
    こんなバイクは無いので非常に興味が沸きます。
    バイクの電動化に期待するのは快適性の向上です。バイクは体のすぐ近くにエンジンがあるため、ハイパワーなエンジンは俳熱で火傷しそうになります。私のバイクでさえも夏場に火傷しかけました。
    あと、カワサキも電動バイクの試作車を公開したりしているので、ぜひ取材をしていただければと思います。
    今後も楽しみにしています。

    1. 隅っこのエンジニア さん、わかりやすく有意義なコメント、ありがとうございます!

      カワサキのEVバイクにも興味しんしんです。ま、私は免許ないから乗れないですけど。

      ZEROの実車を見て、電動モビリティをプアなチョイ乗りモビリティに押し込めるのは間違ってる、という思いを強く感じました。

  3. YORIMOTOさま
    ZEROの実車を見て、電動モビリティをプアなチョイ乗りモビリティに押し込めるのは間違ってる>

    私もそう思います。
    まだ、電動バイクに乗った経験は無いのですが、モーター制御の性質上、やれることの幅が今までと比較にならないくらい広がるはずです。
    環境問題は当然大事ですが、趣味の乗り物としての発展性に電動化が大きく関わってくると考えています。
    電動であれば、敢えてクラッチとギアを残して気分によってオートマ、マニュアルを使い分けるなんてこも朝飯前です。
    エンジン車風に走らせたければ、制御マップの書き換え一つで自由自在!
    こんなことを想像出来るのも電動化ならではです。
    私は週末しかバイクに乗らないのと、300㎞以内のツーリングがほとんどなので、ウィークデイに太陽光から充電して、週末にクリーンエネルギーで心置きなくモーターサイクル楽しむというのが今の夢です。

    1. パーソナルなモビリティを楽しみ続けるため、モータースポーツを楽しみ続けるためにも電動化が必須という気づきは、日本EVクラブ代表の舘内さんからの示唆であり、私が20数年来EVにのめり込んできたモチベーションでもありました。
      太陽光と風力、人力発電で南極点目指してる友人もいますが、隅っこのエンジニアさんのオフグリッドツーリングにもそそられます。実現するときはぜひ取材させてください!

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