軽商用EV『ASF2.0』に初めて試乗〜スムーズな走りと手篤い補助金に驚いた

プレミアムな輸入車が集まるJAIA試乗会で、新興ファブレスメーカーの軽商用EV『ASF2.0』に初試乗。モータージャーナリスト、諸星陽一氏のレポートです。

軽商用EV『ASF2.0』に初めて試乗〜スムーズな走りと手篤い補助金に驚いた

試乗前に聞いた「手篤い補助金」に驚いた

EVの補助金が高額であるのは皆さんご存じだと思いますが、軽バンEV事業用の補助金がすごいことになっていました。JAIA(日本輸入自動車協会)の試乗会でAFS2.0に試乗したのですが、そのときに聞いた補助金額の高さに驚愕しました。2月初頭の試乗であり、ちょうど補助金などの切り替え時期だったので、令和5年度での金額になりますが、自家用の場合(経産省のCEV補助金)は55万円、事業用(環境省の「商用車の電動化促進事業」補助金)だと116万円も補助金が出るというのです。

チャデモ規格の充電口も装備していました。

AFS2.0はリース契約で乗るタイプのクルマですが、車両本体価格は260万7000円(一例)という設定なので、事業用として登録すれば144万7000円をベースにリース契約を結ぶことになります。東京都の場合はさらに37万5000円が支給されるので、107万2000円をベースにリース契約することになります。個人がリース契約を結べるコスモMyカーリースで東京都の場合、月々のリース料は2万900円と激安です。

事業用の軽自動車はいわゆる黒ナンバーとなります。事業用での届出(軽自動車のナンバー取得は登録ではなく届出となります)は個人でも可能です。軽自動車を事業用として登録している個人事業主も多く存在します。運送業者の赤帽も基本は個人事業主で、赤帽も個人事業主が集まった協同組合です。事業用の場合、自家用に比べて任意保険の掛け金が高くなることがあるなど、金銭的デメリットもあるにはありますが、高額な補助金との相殺になるので、圧倒的にお得感があります。

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輸入車の試乗会でASF2.0を初体験

さて、そんな月々2万円で乗れちゃう軽EVバンですが、なかなかの実力者でした。ポルシェやベンツなどいわゆる高級輸入車が多数出展するJAIA試乗会においては本当に異彩を放つ存在。銀色のボディを持つAFS2.0は完全に普通の軽バン。プレミアムを前面に押し出している輸入車のなかでは、別の意味でものすごく目立つ存在でした。

軽バンのボディパネルについて、メーカーによる特徴を把握するには至っていない筆者は、AFS2.0のボディはどこかの軽バンの流用かと思っていたのですがそのようなことはなく、なんとボディパネルもフロアパネルもゼロから作っている(ASFは中国メーカーの工場で車両を生産するファブレスメーカー)というのです。もちろん、パーツとしてほかのクルマと共通のパーツはあるとのことですが、パネルなどの主要パーツについてはオリジナルとのことです。

パッケージングは軽バンとしての性能を追求したものです。バッテリーは床下配置ですが、その床も二重構造となっていて、右側には台車などを収納できるスペース、左側には引き出しを備え充電用ケーブルが収められていました。全長×全幅×全高は3395×1475×1950(mm)で、軽自動車枠をギリギリまで使ったもの。軽自動車の全高は2000mmまでなので、とくに全高はかなり高い設定です。

荷室床下の収納スペース。

配送業務に特化したモデルだけに乗車定員は2名。助手席は運転席よりも幅を20mm小さいサイズに設定し、運転席の快適性を向上しています。荷室長×荷室幅×荷室高は1690×1340×1230(mm)で三菱ミニキャブEVと比べると長さが140mm短く、幅が30mm狭く、高さは同じです。

搭載されるバッテリーはリン酸鉄リチウムイオン電池で容量は30kWh、モーターは30kW/120Nm、一充電走行距離はメーカー計測値で209km、JARI測定値では243kmとアナウンスされています。荷物を積載した実用値としても、200kmくらいは走れるでしょう。ちなみに、バッテリー容量はもうすぐ発売が予定されているホンダのN-VAN e:と同じです。

走り出しからなかなかのモーター音(インバーター音やタイヤノイズを含め)が聞こえますが、商用の軽バンだと考えれば、さほどうるさくはないです。エンジン車の場合はシートの下にエンジンが配置されるキャブオーバーなどもありますので、「EVとしてはうるさいが軽バンとしてはうるさくない」という印象です。

車高が2m近くもあると運転に不安感が生まれるものですが、バッテリーが床下にあり、重心が低くなっている思ったより安定した印象です。加速力は十分にあり、エンジン車の軽バンよりも力強く走ります。走行モードは通常モードにあたるDと、エコモードにあたるEがあり、Eで走るとかなり強い回生ブレーキが働きます。AFS2.0の液晶モニターには電力の使われ方が表示されていて、回生量も表示されます。70km/hからアクセルペダルを急に戻すと、Dモードで最大7kW、Eモードでは最大15kWと2倍程度の差がありました。

商用モデルはサスペンションに大きなマージンを与えるものです。最大積載量は350kgですが、それを超えても大丈夫な安全性を持たせています。ユーザーがミスユースをした際にも安全であることが求められるからです。そのためサスペンションは硬めで、突っ張ったような印象があります。タイヤも通常の軽バンで使われる145R12 6PRよりもプライレーティングが高い145R12 8PRとなるので、タイヤそのものの当たりも強い印象がありました。

自動車評論家として軽バンに試乗する機会は多くないですが、これなら毎日の仕事が快適だろうという力強くスムーズな走りが印象的でした。軽商用EVの購入を検討している方は、ぜひ一度試乗してみることをおすすめします。

取材・文/諸星 陽一

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 最近出たミニキャブEVのスペックと値段に比べると非常に魅力的に思いました。
    あとはトヨタ連合の軽バンEVのスペックと値段次第でどれにしようかと思案中です。
    オートバックスセブンの資本参加、販売というニュースリリースもあって楽しみにしています。
    車の保障内容次第では無視出来ないです。
    ASF社のHPには軽トラックと思わしきシルエットもあってそちらも早期に実現して欲しいものです。
    タイムスケジュール的に1年程ならそちらを待ちたいと思うミニキャブMiEVトラック乗りです。

  2. 多額な補助金

    トヨタさん渾身の水素燃料自動車FCVの補助金も、凄いらしい
    でも、その当のトヨタディーラーさんが、FCVを余り売る気が無い?!
    別に充填スタンドが足りないのとは違う!
    店では、積極的に売らないのだそう!

    トヨタさんのお膝元の愛知県の、水素充填スタンドは、結構拡充してるかな?
    他県は?
    大都市は、有る?!

    小型EVのC+POTは、生産中止だし!

    トヨタさんが、唄う!全方位戦略はウソ偽り有りでは?

  3. 補助金の多さ

    ホンダさんが、N-BOX・EVの発売を急ぐ訳だ!( ᴖ ·̫ ᴖ )

    三菱ミニキャブEVの、OEM供給の日産クリッパーEVの発売も控える?!

    返す返すも!
    トヨタさん、ダイハツさん、スズキさん連合の!
    ダイハツ生産予定の、軽自動車EVの発売延期が痛い(ㅠ︿ㅠ)

    ダイハツさんは、永年の不正から一時、全車販売禁止だからな!

    トヨタさんグループ
    例のbz4xも、満を持しての発売が。
    直ぐにリコールが、発生したし!
    EVを、嫌うからなのか?

    個人的にはEVへの愛情は、余り感じ無い?(¯―¯٥)

    元社員だが!
    今は、車メーカーと言うよりも、トヨタ・ファイナンスと言う、金貸しになってる模様(¯―¯٥)

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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