メルセデス・ベンツ「E350de」試乗で完成度の高さを実感

メルセデス・ベンツが2019東京モーターショーに展示したプラグインハイブリッドモデル「350de」と「350e」の2モデルの日本発売を2019年10月23日に正式発表。このうちディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたモデルとなる「350de」に、ジャーナリストの諸星陽一氏が試乗。インプレッションをお届けします。

メルセデス・ベンツ「E350de」試乗で完成度の高さを実感

まずは「Eクラス」からPHEVモデルを導入

「350de」、「350e」ともにデリバリーは2019年12月中から開始される予定。試乗時はまだ11月であり、正規に輸入したモデルは間に合わないとのことで、メルセデス・ベンツ日本が並行輸入し登録した「350de」への試乗となった。

「350de」は世界で1200万台以上の累計販売台数を誇るEクラスのプラグインハイブリッドモデルだ。日本では新しい機構や贅沢な機構は、上級モデルから導入されることが多いが、メルセデス・ベンツはまずEクラスに導入を果たし、その後各モデルに波及していくといったケースが多く見られる。

「350de」のパワーユニットは194馬力/400Nmを発生する2リットル直列4気筒ターボディーゼルエンジンに、122馬力/440Nmのモーターを組み合わせている。システム出力は306馬力/700Nmとなる。

搭載されるバッテリーは13.5kWhのリチウムイオンで、製造を担当するのはダイムラー社の完全子会社である「Deutsche ACCUMOTIVE」社。モーターのみでの航続可能距離は50km(WLTPモード ※EPA推定値は約44.6km)とアナウンスされている。

ディーゼルエンジンの排出ガスは、ガス浄化経路の短縮やsDPF(DPF with SCR Coating:選択触媒還元法コーティング付粒子状物質除去フィルター)の採用などにより、高いレベルで清浄化されている。なお、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド車は日本ではこのモデルが現状で唯一の存在となる。

走行モードは基本となる「ハイブリッド」、電動走行優先の「Eモード」、電気を使わないようにして走る「Eセーブ」、充電しつつ走る「チャージ」の4モードが用意されている。このようにパワートレインのモードの選択ができるほか、シャシーのモードも選択可能で、「エコ」、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツ+」、「インディビデュアル」の5モードが選べる。

ディーゼルエンジン走行でも静粛性は確保

試乗時は車内に乗り込んだ際のバッテリー残量は50%程度で、電動走行可能距離は16kmという表示。WLTPモードでは50kmだが、試乗コースは山の上にあるホテルがベース基地。しかも試乗となれば、いろいろな人がさまざまな走り方をするので、かなりシビアコンディションと言っていいだろう。つまり電気を食う乗り方をしても、満充電で30kmは走るだろうということが予測される。

システムを起動して、まずはEモードで走り始める。スタートはもちろんモーターのみだ。その静粛性は格段に高い。考えて見ればこのモデルに搭載されるエンジンはディーゼルターボである。ディーゼルターボのノイズやバイブレーションを抑え込むシャシー&ボディをモーターで走らせているのだから当たり前といえば当たり前。贅沢過ぎるような静粛性の確保である。

アクセルペダルに対する速度の応答性は高く、軽く踏み込むとEVらしい力強い加速感を得られる。静粛性確認のためにチャージモードを選ぶ。チャージモードは満充電になっていなければ基本的にエンジンは回ったままとなる。この状態でも、とくに不快なノイズや振動はなく、快適なドライビングが可能で、Eクラスらしさはまったく失われない。

自動車専用道路に入りデフォルトとなるハイブリッドモードに切り替えるが、すぐにエンジンは始動しない。アクセルを踏み込んでいくと、ペダルに重さを感じるときがあり、そこからさらに踏み込むとエンジンが始動する。この機構は「インテリジェントアクセルペダル」と言われるもので、エンジン始動のタイミングをペダルタッチでドライバーに知らせるためのもの。ペダルを踏み込み、エンジンが始動してもトルク変動はほとんどなく、とくに違和感はない。だからこそこの「インテリジェントアクセルペダル」が役に立つわけだ。

「インテリジェントアクセルペダル」にはもうひとつの機能がある。先行車との車間距離が必要以上に詰まるような加速を行っているときには、ペダルに2回のノックパルス(叩かれるような反力)でドライバーにその状態を知らせるもの。車間距離の計測にはACCで使うレーダーセンサーが用いられている。

ハイブリッド走行ではEV走行を中心とした走行となり、前述のようにアクセルを踏んでいくとエンジンが始動しエンジンドライブとなる。トヨタのハイブリッドのようにエンジン+モーター走行が入りこむことはなく、基本はモーターかエンジンかどちらかで走るというイメージだ。

ただし、アクセル操作に対するクルマの反応は敏感で、少しアクセルを戻せばすぐに回生ブレーキが介入してくる。回生時の減速感は強くなく、エンジン車でのエンジンブレーキ程度のもので、EVに馴れてない人も普通の感覚で運転できるはずだ。また、さらに強くアクセルペダルを踏めば、モーターがエンジンをアシストするブーストモードとなり、より強い加速を得られる。

室内空間はEクラスセダンそのものだが、駆動用バッテリーをリヤシート後方に搭載するため、ラゲッジスペースはその圧迫を受けている。容量については発表された数字が見つからず不明だが、トランクルームにそれなりに張り出してる。それでもトランクスルーは備え、スペースアップを可能としているところはなかなか頑張っていると評価したい。このバッテリーは小型化し、汎用性を高めてさまざまな車種への搭載を可能としてるというが、この搭載位置だとさすがにワゴンは不可能だと感じる。

E350de、E350eには6.0kW(30A)対応の普通充電器が無償提供されることになっている。そして、この充電器を設置するための費用として10万円の補助も行われる。普通に考えれば、この無償提供や補助は戸建て住宅でしか受けられないことだが、それでもこうしたサイドサポート面があることはうれしい点である。

充電口はリア右側。

E350de、E350eともにアバンギャルド仕様で、エクステリアなどはスポーティなものとなっている。レーダーセーフティパッケージと呼ばれる安全運転支援システムが標準で装備される。先行車を追従しつつのオートクルーズでは、停止までを制御、高速道路の渋滞停止では30秒以内、一般道では3秒以内に先行車が発進した場合は自車も自動発進する。もちろん緊急ブレーキ機能も装備する。また、高速走行時にはウインカー操作をするだけで車両側が安全を確認し自動的に車線変更を行う「アクティブレーンチェンジアシスト」も装備。その他の安全機構についても現在考えられるものはすべて装備していると思っていいだろう。

車両本体価格はガソリンPHEVのE350eが852万円、ディーゼルターボPHEVのE350deが875万円。新車購入から3年間は一般保証修理、定期メンテナンス、24時間ツーリングサポート、地図データ更新が走行距離無制限で保障される。また、保障期間の3年間の間には希望のモデルを3回無料で利用できる「シェアカー・プラス」の利用も可能となっている。

(取材・文・撮影/諸星 陽一)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

執筆した記事