4月下旬の某日、テスラの新型モデルYロングレンジAWDにたっぷり試乗してきました。顔がちょっとカエルっぽかった前モデルからデザイン一新。ルックスだけではなく、足回りや走りのフィーリング、静粛性が大きく進化していることを実感。「魅力的なEVだぁ」と褒めるばかりになるのもつまらないので、房総フラワーラインで愛車を撮影しやすい絶景ポイントを実走調査してきました。菜の花の季節は終わっても、南房の道は爽快です。
※この記事はAIによるポッドキャストでもお楽しみいただけます!
ラグジュアリーEVとしての完成度がますます向上
2025年のゴールデンウィーク、みなさまいかがお過ごしでしょうか。私はどこかへ出かける予定もなく、記事発信と自宅屋上の畑仕事をこなす毎日ですが、GW直前の平日、デリバリーが始まったばかりのテスラ新型モデルYで、房総フラワーラインを走ってきました。
前日の夕方、有明の拠点で広報車をお借りして、自宅ガレージの200Vコンセントで満充電。早朝6時過ぎ、房総フラワーラインの起点となる千葉県館山市を目指して試乗ドライブをスタートしました。ディスプレイに表示されているSOC(電池残量)は100%。表示の文字をタップすると「525km」という航続可能距離表示に変わります。
開発コードネームから「ハイランド」と呼ばれる新型モデル3と同様に、新型モデルY(愛称はジュニパー)には、セレクターレバーがありません。ドライブやリバースに入れるには、この画面右側の矢印で選択します。ちなみに、ハイランドのウインカーはレバーではなくステアリングのボタンで操作するようになっていましたが、ジュニパーではウインカーレバー(位置は左側)が復活しました。
新型モデルYは新宿での発表会で対面済みですが、試乗するのは今回が初めてです。朝6時から午後3時ごろまで、房総フラワーラインをたっぷり試乗した印象は、端的に表現すると「すごくいい!」でした。
まず、走行時の静粛性が格段に向上していました。前日、3000万円近い超高級EVに試乗してその静かさに感嘆したのですが、新型モデルYは3000万円に匹敵するレベルに感じます。足回りや加速感もまろやかに洗練された印象です。加速がまろやかとはいっても、このロングレンジAWDの0-100km/h加速は4.8秒(RWDでも5.9秒)。「SUVとして」なんて注釈を付けるまでもなく十二分に爆速です。
テスラはグローバルでベストセラーとなっているモデルYを刷新し、今まで公式には使っていなかった「フルモデルチェンジ」というワードでSNS広告を展開したりしています(車種の改良は「アップデート」と表現してきました)。EVが、というかテスラ車が普遍的なプロダクトとなることに向けて、意欲的な進化を遂げたと評することができます。
愛車を撮影しやすい絶景ポイントをご案内!
1日試乗は南房へ向かってみることに決定。Googleマップで確認すると、走行距離は250kmを少し超えそうです。とはいえ、ロングレンジAWDの航続距離は満充電で500km以上。電費がどうしたとか細かい話は気にせず走りを楽しめます。ここはひとつ、ゴールデンウィーク後半や夏休みに向けて、館山市から南房総市まで約50kmにわたって太平洋の海岸線を走る「房総フラワーライン」を実走し、愛車と絶景を撮影しやすい「映えスポット」を紹介しようと決めたのでした。
今回の走行ルート。館山市の北条海岸あたりから、南房総市の和田浦あたりまでが正式なフラワーラインですが、鴨川市の仁右衛門島や鴨川シーワールドといったスポットまで、南国風情の爽快なドライブを楽しめます。
取材当日、前日の大雨はやんだものの、ちょっと残念な曇り空ではあったのですが、実際に走ってみると思った以上に絶景スポットが続々でした。「この写真の空と海が青ければ!」と想像しつつ、みなさまのドライブにご活用ください。
※冒頭写真はサクッと作成した合成写真です。
【スポット01】北条海岸
館山自動車道の終点から海沿いルートへ。館山のランドマークでもある「渚の駅たてやま」手前の北条海岸。海沿いに停めやすい無料駐車場があり、館山湾(別名は鏡ヶ浦)の絶景が広がっています。駐車場に設置されていた案内看板によると、天気がよければ富士山を望み、夕陽が絶景! らしいです。
【スポット02】沖ノ島海水浴場
鏡ヶ浦の南端に位置する周囲約1kmの沖ノ島を囲むように広がる人気の海水浴場。自衛隊館山航空基地の北側の護岸に沿って絶景ポイントが広がっています。沖ノ島は地続きになっていて、歩いて行ける無人島。周辺の海はサンゴ生息の北限域とされています。
【スポット03】伊戸漁港バス停前
フラワーラインの県道から「漁港食堂だいぼ」の看板に誘われて海沿いの小道へ入ってみると。伊戸漁港というバス停のところに超絶景の無料駐車場がありました。公衆トイレまで完備です。まだ朝9時ごろだったので漁港食堂だいぼは開店前でしたが、伊戸漁港の網元直営の海鮮料理店。東京あたりから日帰りドライブの目的地にもなり得るポテンシャルを感じました。向かいのダイビングショップのガレージに白いモデルXが停まってたのも印象的でした。こんな場所で暮らしてたら、そりゃ電気自動車に乗りたくなるでしょう。
【スポット04】野島崎灯台
北条海岸から約30km。正式なフラワーラインの半分ほどを走ってきた位置には、房総半島最南端の野島崎灯台があります。館山方面から走ってくると、灯台入り口の手前に無料駐車場と公衆トイレがあります。少し先には野島崎公園駐車場もありますが、灯台入りの写真を撮るならこっちがオススメ。ただし、GWなどの繁忙期は激込み必至です。
【スポット05】磯笛公園
野島崎灯台入りの写真を撮るなら、灯台から少し離れた磯笛公園の駐車場もいい感じです。緑地や遊歩道が整備されていて、子供連れでまったり海辺の時間を過ごすってなスポットでもあります。ただし、キャンプやバーベキューは禁止です。せっかくの絶景空間、ゴミの後始末とかきちんとすればバーベキューくらいできるといいなぁとも思いますが、マナーを守らない人が多いってことなんでしょう。とくに炭火の後始末がやっかいなんでしょうが。EVがもっと普及してV2Lの電気BBQが当たり前になれば、こういう規則が変わっていく、のかも知れません。
【スポット06】道の駅ちくら潮風王国
絶景というのは少し強引ですが……。芝生の広い公園に展示されている第一千倉丸というサンマ漁に使われていた漁船(のレプリカ)を入れた写真が撮れた千倉市内の道の駅です。ここには最大出力25kWの急速(中速)充電器が設置されています。世田谷区の自宅からここまで約135km。AZE0までのリーフやサクラなど軽EVであれば、充電休憩に使えます。

EVsmartで南房総エリアの急速充電器を検索。
設置されているのは1口だけなので充電待ちの懸念はありますが、フラワーライン沿いには急速充電器を設置した道の駅が点在しているのがありがたいです。フラワーラインの終点にある南房総市和田町の「道の駅 和田浦WA・O!」では、以前の記事でお伝えした従量課金制でクレジットカードやQRコード決済が可能な出力50kWの蓄電型急速充電器に初めて出会いました。ま、使わなかったですけど。
【スポット07】千倉漁港
漁港の風景と愛車ってのもいいよなぁと思いながら走っていると、千倉漁港の広い岸壁を発見。進入禁止の表示などはなく、突端には海釣りの方がクルマを停めていたのでサクッと写真を撮影しました。水揚げの漁船が接岸していたりするとこんなにのんびりした雰囲気ではなくなるでしょうし、関係者の方の迷惑にならぬようという注釈付きで紹介しておきます。
【スポット08】南千倉海水浴場
絶景撮影スポットの締めくくりは、波間にサーファーたちが浮き沈みするビーチを間近に望む駐車場です。海水浴シーズンには混むのでしょうが、ビーチへ出るにはもっと便利な駐車場があるようでサーファーの方々のクルマはなく、この日はガラガラ、撮影場所は選び放題状態でした。ああ、背景が澄んだ青空だったらなぁと強く感じる一枚です。
【おすすめ】仁右衛門島
せっかく南房まで来たなら立ち寄ってみたいスポットのひとつ。石橋山の戦いに敗れた源頼朝が落ちのびて身を隠したという伝説が残る島を、渡し船で観光できます。観光客用の駐車場は港手前の高台にあります。
【おすすめ】鴨川シーワールド
今回の試乗ルートのゴールに設定したのは鴨川シーワールド。ゲート前のオブジェにもあるように、シャチなどのパフォーマンスが人気です。今回はあまり時間の余裕がなかったのでゲートの写真だけ撮ってスルーしました。ファミリードライブやデートなら、メインの目的地としてオススメです。
今回の紹介スポットをGoogleのマイマップにプロットしておきました。
地魚の回転寿司を満喫して東京へ帰還
房総フラワーラインをたっぷり走ったのは、2023年の7月にフォルクスワーゲンID.4で無充電東関東一周のレポート以来。2020年8月にはオートシェア館山(実証実験はすでに終了)のレポートで、超小型EVの『ジャイアン』で館山駅前から伊戸漁港近くの洲埼(すのさき)灯台まで走ったことがありますが、館山から鴨川まで、房総フラワーラインのフルコースを一気に走ったのは初めてでした。
早春の花の季節に走ったことがないのは口惜しいところですが、どんな季節に訪れても絶景の爽快なドライブルートです。撮影しやすい絶景ポイントを探しながら走ってみると、想像以上にたくさんの場所を発見できたのも有意義な収穫でした。
ゴールに設定した鴨川シーワールドから少し引き返し、地魚回転寿司丸藤というお店でランチを食べて。テスラジャパンから借りていた新型モデルYを、有明ガーデン(江東区有明)のテスラデリバリーセンターに返却する約束の時間は午後3時。
アクアラインなどの渋滞に遭うこともなく、14時30分頃には有明ガーデンに到着したので、地下駐車場の「スーパーチャージャー東京-有明」で充電してから返却することにしました。
到着時のバッテリー残量は52%(航続可能距離は271km)。急速充電の上限に設定されていた80%まで、およそ20分(ショッピングモールにコーヒーを買いに行ってたら終了って感じ)で充電することができました。

残量予測グラフの正確さは私がテスラ車に感じている大きな魅力。
走行データを確認すると、「前回の充電以降」の走行距離は260.6kmで、消費電力は33.8kWh。電費は129.8Wh/km(約7.7km/kWh)と優秀です。残っていた航続可能距離と合わせると「271+約261km=約532km」で、満充電時の航続可能距離として表示された525kmを少し超える結果となりました。

ユーザーがバッテリーとコミュニケーションするための情報の多さもいいですね。
私がマイカーとしてテスラを購入しなかった(バッテリー容量48.6kWhのKONAを選んだレポート記事)のは、テスラに乗ってしまうとテスラ車以外のEVを評することへの関心が薄れてしまいそうに思うのと、狭い道路に囲まれた自宅周辺ではモデル3やYでも少し大きすぎると感じること。あと、最廉価なモデル3のRWDでも500万円オーバーの価格や搭載するバッテリー容量が、私のライフスタイルには過分であると感じているから、ではあるのですが。
先だって発表された国のCEV補助金、モデルY(モデル3も)の補助金額は輸入車最大の87万円となりました。新型モデルYのRWDであれば車両価格は558万7000円なので、87万円の補助金を引くと471万7000円です。一般庶民のマイカーとしてはまだまだ高額だとは思いますが、新型モデルYが、日本国内で買える最も魅力的なEVのひとつであることは間違いありません。
取材・文/寄本 好則
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