軽EVの『日産サクラ』でどこまで行ける? 542kmロングドライブレポート【前編】

ジャーナリストの中尾真二氏がマイカーに日産サクラを購入。EV技術に詳しく、取材で大容量EVには乗り慣れた中尾氏も、20kWhのサクラで挑む往復500km以上となるロングドライブは初体験。前編は充電計画などに関するレポートです。

軽EVの『日産サクラ』でどこまで行ける? 542kmロングドライブレポート【前編】

サクラで川崎=名古屋往復はどうなのか?

買い物や日常の足、セカンドカーとして最適と言われる軽EV。我が家が日産サクラを購入したのは駐車場の問題でリーフ(40kWh)が入らなかったからだ。ただ月に数回は仕事で使うこともある。サクラでも日帰り、もしくは1泊でどれくらい遠征できるものなのかをぜひ検証しておきたい。そう考えて、2022年12月某日、サクラによるグランドツーリングを実施した。

筆者宅は神奈川県川崎市にある。サクラが納車されたのは2022年11月初旬。すでに取材他で都内、千葉(幕張)、埼玉(上尾)などの往復は試している。サクラの航続距離はWLTCで180km。より実測値に近いとされるEPA換算だと144km前後となるだろう。千葉、埼玉の120km前後の遠征でも、バッテリーの残量が80%以上あれば経路充電なしで往復できたことを確認している。

しかし自動車関係の取材では、群馬県、茨城県、栃木県、西は山梨県や静岡県の工場、研究所、テストコース、サーキットに日帰りで出向くことがある。往復で200から250kmを日帰りでこなす必要がある。この場合の経路充電はどのように組み立てればいいのか、その感覚をつかむため、一度は経路充電ありの長距離ドライブをテストしようと考えていたところ、12月に名古屋(日進市)に行く予定(私用)が発生した。通常は新幹線で済ませるのだが、ちょうどよいということで、サクラでの名古屋往復を検討した。

サクラ以前では、24kWhリーフで1泊旅行や長距離移動、出張先のレンタカー利用で1日200km前後の移動は経験していた。名古屋まで片道300km、往復で600kmは、それ以上の遠征となる。SNSなどで情報を募ったり調べてみると、三菱アイミーブは3回の経路充電で300km走破はいけるという。だが日帰りで往復となると24時間で急速充電を6回ほど行う計算となる。バッテリーへの負荷とサクラでの最初の長距離移動となることを考慮して、1泊でどこまで行けるのかを検証することとした。

結論は100kmごとの急速充電3回で行ける

検証の結果を先にまとめると、まず、遠征は東名川崎ICから豊川ICまで、片道約270km。往復542kmとなった。名古屋ICまでは行けなかったのは、名古屋の用事は時間指定があるもので遅着ができない。出発時間が遅くなったり渋滞が重なったりと、静岡でいったん車を停めて新幹線で名古屋の用事をこなすことになったからだ。計算上は充電時間を入れてぎりぎり間に合うか、という状態だったので、大事をとって新幹線移動に切り替えた。

アポに遅延連絡を入れて調整することも考えたが、そもそも仕事と関係ない用事と仕事をいっしょにこなそうとした自分のミスだ。遠距離検証は2日の間に終わらせればいいので、時間指定のある用事を優先させた。ただ、そのおかげで事前計画とは違う走行パターンや充電パターンを試すことができた。得られたものも多く、サクラでも片道200~300kmくらいの移動や旅行は不可能ではないという感触も得た。

もちろんサクラの用途としてはイレギュラーで推奨できるものではないが、無理なく100km弱単位の移動をつなぐことができれば、あとは時間、日程の問題にできる。300kmなら急速充電3回が目安となる。

結果としては、ガソリン車との比較で「やはりEVは充電があるので長距離はダメだ」と思うかもしれない。だが、EVオーナーやEVドライブの経験が多少でもあるドライバーなら、サクラで200~300kmの移動がそれほど非現実的ではないという感触を理解できると思う。なにより、40kWh以上のバッテリーを搭載した平均的なEVはこれくらいの移動を日々、難なくこなしている。

絶好のドライブ日和だった。

なぜ「新幹線ワープ」が必要だったか

では、静岡で「新幹線ワープ」を含む1泊2日の行程をおさらいしてみよう。

名古屋までのルートは、Nissan Connectアプリの「ドアtoドア ナビ」で大まかな検索を行った。このアプリでは、目的地を設定すれば、ルートのほか必要な充電ポイントも自動的に中継地点に設定してくれる。そのまま車のナビに設定を転送できるので非常に便利だ。車に乗ってから画面の50音キーやテンキーで検索・設定するより何倍も楽である。ただし、検索条件のうち「バッテリー残量」を「現在の車両の値」(デフォルト)を使うときは注意が必要だ。出発前夜などで自宅で充電する前、充電中に検索すると、その時点のバッテリー残量で充電ポイントを検索してしまう。大きな影響はないこともあるが、中継地が5か所(残量が少ないとそうなることがある)以上となると、ナビの中継地数を超えてしまい、ルートの転送ができない。

ちなみにバッテリー残量が100%での川崎―名古屋までの中継地は、駿河湾沼津SA(下り)、静岡SA(下り)、長篠設楽原PA(下り)の3か所を指定した。到着時間は検索時を起点に渋滞予測と充電時間を考慮しているが、精度は他のナビと大きく変わらないと見た方がよい。100km前後の移動ならかなりの精度が期待できるがそれ以上は誤差の蓄積が無視できなくなる。なお、ナビの予想時間のマージンの取り方があまかったのと、出発時間が遅れてしまった(筆者の判断ミス)のが新幹線ワープ発動の原因だ。

ナビ設定どおり、駿河湾沼津SAに到着したのは午前10時半。DC急速充電器は「Honda e」がつながっており、表示を見させてもらうと残り時間が14分ほど。想定はしていたが、若干悪い予感がしたので、待ち時間と充電中にGoogle検索やナビ検索を駆使して移動時間のシミュレーションをする。約束の時間はこのあとが順調であればギリギリ間に合う感じだったが、冒頭に書いたように大事をとって、行先を静岡駅に変更する判断を下した。

【今回の充電記録】

時間場所区間距離SOC
(増加量)
充電時間
推計電力量
航続可能距離(表示)区間電費
往路(1日目)
8:46神奈川県川崎市0---START152km
10:29新東名高速道路
駿河湾沼津SA下り
急速充電
103.1km21→78%
(57%)
30分
9.12kWh
40→130km8.2km
11:30静岡駅前
コインパーキング
18:14新静岡駅前
セノバ
倍速充電器
64.5km23→52%
(29%)
約40分
4.64kWh
35→82km7.3km
20:04東名高速道路
牧之原SA下り
急速充電
37.8km14→78%
(64%)
30分
10.24kWh
18→115km6.2km
21:53ルートイン
豊川インター
普通充電
77.4km14→100%
(86%)
約360分
13.76kWh
23→138km7.6km
復路(2日目)
8:42ルートイン
豊川インター
0---Return to Home138km
10:24新東名高速道路
静岡SA上り
急速充電
98.5km31→87%
(56%)
30分
8.96kWh
50→136km8.9km
11:47新東名高速道路
駿河湾沼津SA上り
急速充電
58.5km47→88%
(41%)
30分
6.56kWh
47→146km9.1km
14:28神奈川県川崎市102.1km0.21GOAL35km

バッテリー残量(SOC)と電費計算の注意ポイント

ここまでの移動は103km。バッテリーは21%まで減っていた。スタートからここまでの電費は、車載メーターのドライブコンピュータ表示で8.4km/kWhだ。暖房はエアコンではなくヒーターをオートモードで温度設定23°Cでの走行だ。外気温は出発時が2°C。駿河湾沼津SAで7°Cだった。走行は渋滞もありプロパイロットを80から90km/hの設定で多用した。気温10°C以下で電費8 km/kWh。スタートから最初の充電ポイントまで100km前後を無理なく移動できる。200km前後の移動なら無理なく組み立てられるのではないだろうか。

なお、ドライブコンピュータの電費表示は8.4km/kWhだったが、消費したバッテリーが全体の79%(100-21)。サクラのバッテリー容量のカタログ値は20kWhとなっている。20kWhの79%は15.8kWhとなる。移動距離103.1kmで割ると約6.5km/kWhとなる。ドライブコンピュータの電費はバッテリー容量を全体の80%、16kWhあたりで計算していると思われる(16kWhで計算すると8.1km/kWhとなりドライブコンピュータの表示と誤差が小さくなる)。

これは他社EV(じつはEV以外、例えばスマートフォン)でも同様だが、搭載しているバッテリーの全容量を常にフルに使っているわけではない。容量いっぱいの過充電、過放電はバッテリーの劣化を早める。いわば「腹八分」の状態で運用する設計になっている。

レポートの前編はここまで。後編では、新幹線ワープで所用を済ませ、予約したホテルへの往復を再開しての出来事や気付きをまとめたい。

取材・文/中尾 真二

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 充電待ち時間がカウントされていません。
    運任せとは思いますが平均何分だったのでしょうか?

  2. 無謀だ。
    サクラ似は荷が重いだろ。

    ウチのはプリウスPHVだからもっと重いけど。

  3. サクラ

    既に、無茶な?
    サクラの1000キロチャレンジのYouTube動画が出てますから!(笑)

    個人的には、何の心配もして無いですが。

    単なる街乗り車では無い(^-^)

    まあ、某bz4xは間違い無く街乗り車だが!(汗)
    何で、大容量バッテリーを積んでるのに!(泣)

  4. サクラEV
    羨ましいですね(笑)

    この軽自動車EVの中古車が、市場に出て来れば?
    更なる、EVの普及が進むと考えられます!

    EKクロスEVと並び、バッテリー冷却システムの装着から。
    旧型リーフ30キロバッテリー車と、同程度の性能らしい(笑)

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					中尾 真二

中尾 真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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