グランドキャニオンに行ってみた
アメリカでは電気自動車(EV)が売れ始めています。カリフォルニア州では2022年第3四半期に、EVの市場シェアが16%になりました。
そんな中、カリフォルニア州に隣接するネバダ州のラスベガスで開かれるCESを取材(レポート記事はこちら)するのとあわせて、現地でテスラを借りてアメリカでのEVを実感してみようと思い立ちました。あわせて、スーパーチャージャー以外の急速充電器の様子をちょっとでも見てみようと思ったのでした。
さっそく、ハーツのWEBサイトでポチっと。借りたのは『モデル3』……だったのですが、当日受付に行くと『モデル3』は先に借りた人がいて残っていない、25ドル高いが『モデルY』があるがどうするかと聞かれて、そっちの都合で車を替えるなら同じ料金にしてくれよと思ったものの、他に車がないのではどうにもならず、『モデルY』で出かけることにしました。
行き先は、筆者は初めてのグランドキャニオン・ウエストです。同行者は、長年の友人でありEVsmartブログにも寄稿しているITジャーナリストの石川温さんです。正直、ひとりでグランドキャニオンまで運転していくのはちょっと寂しかったので、乗ってくれるだけでも助かりました。
前日にGoogleマップで検索すると、ラスベガス中心部からグランドキャニオンの西の端、グランドキャニオン・ウエストまでは129マイル(約206km)、約2時間10分。レンタカーは『モデルY』のAWD、ロングレンジ(日本には設定がないけど、2021年モデルのEPA高速距離は326マイル=約525km)です。これから無充電で往復も楽勝、なんの不安もありません。
スーパーチャージャーで余裕のドライブ
ただし、レンタカーが置いてあるホテルの駐車場で乗り込んだ『モデルY』は、バッテリー残量が78%からのスタートでした。返却時には78%以上にしておいてくれと、レンタカー屋さんに念を押されました。ガソリン車でも返すときには満タン返しなので、合理的な考え方だと思います。それにバッテリー容量を考えると、スタート時78%でもとくに問題ないように思います。
出発前にモニターで表示画面の確認をしていると、石川さんが言語表示の切り替えに気がつきました。見慣れた表示の方がいいので迷わず日本語に変更です。
すると、モニターの表示が消えて、『モデルY』のシステムがリスタートしたのには、ちょっとビビりました。走行中に変更したときにリスタートはしない(もしくは変更できない)と思いますが、リスタートの前に実行/キャンセルを訪ねてほしいと思いました。テスラユーザーにとっては常識かもしれませんが、レンタカーで貸し出されていることを考えるとワンステップほしいところです。
出発前にテスラのカーナビやGoogleマップで検索すると、スーパーチャージャーのステーションはラスベガス市内や周辺にいくつも出てきます。レンタカーの営業所近くにもあるので安心感が高まります。
ということで早速、グランドキャニオンに向かって肌寒いラスベガスを出発です。まず目指したのは、ラスベガスから約68マイル(108km)先にあるホワイトヒルズのスーパーチャージャーです。
テスラのナビ表示では、到着まで約1時間、到着時のSOC予測は39%だったのですが、久しぶりのフリーウエイだったので慎重に走ったせいか、到着時には48%を残していました。
スーパーチャージャーの充実ぶりをアメリカで実感
設置されていたスーパーチャージャーは8基で、到着時には筆者らのほかに3台のテスラ車が充電中でした。けっこう多いなあと、この時は思ったのですが、これは序の口だったことが後でわかりました。
グランドキャニオンからの帰路、充電のために同じステーションに寄ると、なんと1基を残して満車だったのです。筆者らが充電スポットに入ると完全に埋まりました。
その後も1台のテスラ車が入ってきて、満車なのを見てすぐに出て行きました。まだ余裕があったのでしょうか。半径60km以内には他に4カ所ほどスーパーチャージャーがあるようなので、他に行ったのでしょうか。
往路はここで25分ほど充電すると、SOCは86%まで復活。帰路にまた同じステーションに寄るとして、グランドキャニオンまでの片道約62マイルを往復するのに十分な量です。
再出発後、US国道をちょっと走ってからグランドキャニオンに向かうローカルの道路に入り、しばらく走ると、景色が一変。山というかガケというか、西部劇で見るような起伏の激しい一帯に出て、一気に高度が上がっていきました。
最終的に、アップルウォッチ表示で約1500mまで上がりました。SOCは57%でした。テスラ予測だと65%だったので、ちょっと減りが早かったようです。でも登りのあとは下りなので、残量に問題はありません。
ラスベガスからグランドキャニオンは、『モデルY』ならロングレンジでもスタンダードレンジでも、普通に日帰りドライブができることがよくわかりました。
帰り道の途中、グランドキャニオン入口の標識で、ICEモデルの生産終了が伝えられ、2022年秋のSEMAショーで電動マッスルカーのコンセプトモデルが発表された『ダッジ・チャージャーSRT』を横に写真を撮って、帰路についたのでした。
EVの横に『チャージャー』というのも妙な取り合わせだなあと思ったのでした。
ラスベガスで最後の充電
帰路、途中で夕食を食べたりして、ラスベガス中心部に戻ってきたのは夜の7時過ぎ。借りたときと同じくらいのSOCにすべく、ホテル近くのスーパーチャージャーの施設に向かいました。
ここで最後のびっくりです。スーパーチャージャーが25基という数もさることながら、システムの合理性に感心したのです。
市内だけあってテスラ車専用になっているのでゲートがあります。これを開けるには、まずテスラ車のモニターで「Navigate」画面を表示させて、「Charging」を選択します。
これで画面にスーパーチャージャーのリストが表示されるので、現在地のステーション(High Roller at LINQ)をタッチします。
すると、ステーションの充電器数や空いている数などの詳細が出てくるのですが、同時に「#」で始まる4ケタのコードが表示されます。これを入口で入力すると、あら不思議、ゲートが開いたのでした。
当然、コード番号は毎回ランダムで表示されるのでしょう。テスラ車は個別の車のデータを収集しているのでこのくらいはお茶の子さいさいなのでしょうが、IT後進国の日本から来た筆者らは、よくできたシステムに「おぉ~!」と感嘆の声を上げてしまいました。
充電器は、24基のうち5基が空いていました。時間によっては満車になりそうです。ここで最後の充電をして86%まで戻し、1日のミッションが無事終了したのでありました。
アメリカの充電ネットワークをちょい見
さて、テスラのスーパーチャージャーネットワークが優れているのはよくわかりましたが、テスラ車以外のEVが利用する急速充電器はどうなっているのでしょうか。その一端をのぞき見してきました。
最初に立ち寄ったのはホワイトヒルのスーパーチャージャーのすぐ近くにあった普通充電器です。充電器には「blink」というロゴが書かれていました。とりあえず使い方を確認するために液晶モニターを操作してみると、出力は10kW、料金は「blink」の会員とゲストで違いがあり、会員なら1kWhあたり0.69ドル(1ドル135円で約93円)に加えて、場所代が30秒で0.02ドルと表示が出ました。
従量課金とスペースを占有する料金が別々になっているのはとても合理的だと思いました。
次に充電器の個別番号(ユニット番号)を入力するのですが、充電器にはいくつかの番号があちこちに記載されていて、どれを指すのかよくわからず、とりあえずひとつずつ入れてみると、充電可能の表示が出ました。慣れれば簡単にできそうです。
支払いはクレジットカードのコンタクトです。日本ではいまいち普及していませんが、欧米ではかなり一般的な支払い方法です。
この手順は、日本の高速道路に設置されている急速充電器に比べると、はるかに簡単です。それに通りすがりのゲストでも簡単に使えるのはポイント高いです。なぜ日本の、というかeモビリティパワーの急速充電器はゲストに対してあれほど使いにくくなっているのか、改めて不思議に思いました。
『EVgo』と『Electrify America』をチェック
次にのぞきに行ったのは、ラスベガスのハリーリード国際空港の東側を走る州間道路I-515に隣接する『EVgo』の急速充電器です。
市街地に近いこともあり、ホームデポやベストバイなどが並ぶショッピングモールの広大な駐車場の一角、シェブロンのガソリンスタンドの横に設置してありました。駐車場が広すぎて迷いそうになりましたが、Googleマップではピンポイントで場所を表示していました。
写真を見るとわかるのですが、さびが出ていたりして年期を感じる充電器でした。コネクターはCCSとCHAdeMO(チャデモ)の2本出しです。支払いは『EVgo』のアプリか、メンバーシップのカードです。通りすがりの一見さんはお断りのようでした。
出力は、充電器が古いせいかCCSもチャデモも50kWでした。実際に使えるのかどうかは、今回はテスラ車だったので確認していませんが、故障してるようには見えませんでした。
さらに急速充電器を求めて、今度はラスベガスの西、ハリーリード国際空港から約10kmのところにある『Electrify America』の設備です。Googleマップで検索して到着してみると、こんどはピンポイントで表示されている場所に充電器はなく、ショッピングモールの広大な駐車場の中を1周近く回ってしまいました。
見つけたのはガソリンスタンドのすぐ横です。かなり暗くなっていた中で、『Electrify America』の急速充電器は緑に輝いていました。充電器が真新しかったので、ひょっとすると設置されてから間がなく、Googleマップに反映されていなかったのかもしれません。
ここの充電器は、支払いはカードで、コンタクトか直接の読み込みです。コネクターは、CCSが2本か、CCSとチャデモの2本出しです。
出力は、CCSは150kWですが、チャデモは残念な50kWでした。考えてみるとチャデモの高出力に対応した車って、まだほとんど市場に出てないので、インフラ事業者としては対応の必要性を感じないのかもしれません。
それに日本以外の市場では、チャデモ自体が少数派になりつつあります。このまま諸外国でCCSやスーパーチャージャーが主流になっていくとすると、今後は車側でチャデモを装備するデメリットが大きくなっていきます。そうすると……。
世界の規格戦争は厳しく、難しいんだなあということが、少し垣間見えました。
チャデモがガラパゴス化するのを実感
ところで、CESの会場ではたくさんの急速充電器や普通充電器が展示されていました。その中に、前述した『blink』も出展していました。普通充電器と急速充電器を開発、生産しているほか、自前のネットワークも持っているそうです。
担当者に少し話を聞くと、『blink』では日本市場への進出も考えているのですが、市場の障壁が高く参入が容易ではないという認識を持っていました。
またチャデモ規格は、以前の『iモード』のようにガラパゴス化していく可能性があるかもしれないという印象も受けたそうです。この担当者は日本の経験も長いようで、「iモードも、当時は素晴らしいと思ったが、結局は日本だけで終わってしまった。いいものなのに広がらないのは残念だが、チャデモも同じようなことになりかねない」と話していました。
この点は、同感です。日本すごいぜと言っている間に世界に取り残されていくのは、ガラケーで味わった悲哀です。今回、アメリカで50kWのチャデモを見ると、その轍を踏まないようにするというよりは、同じことを繰り返しつつあるように感じてしまいました。
筆者が見たのはほんの一瞬なので、全体がどうかはわかりません。でも、ちょっとしか見ることができなかったにもかからず、複数基でチャデモは50kWだったことを思うと、状況は厳しそうに思えました。
そんなこんな、テスラでグランドキャニオンと、アメリカ急速充電器事情のさわりを見聞してきました。ヨーロッパにも機会があれば行きたいところなのですが、何しろラスベガスでも物価が高くて気を失いそうになったので、次がどうなるかは神のみぞ知るです。
現地取材ができるその日が来るまで、ゆるりとお待ちください。その間にもいろいろな変化が起きそうですけども。
取材・文/木野 龍逸
確かにチャデモは使いづらい、充電前にやることが多すぎる。まずは車両をシャットダウン➀して充電口を開けて➁内部コネクターの蓋を開け➂コネクターをセット➃、カードを取り出し➄ボタンを何度か押して➅からカードをかざして承認➆、そこからは充電器側で漏電チェック。ここまでに早くても1分間近く時間がかかってしまう。
テスラ車は降りてコネクターの充電口を開けるボタンを押して挿すだけです、長くても15秒ほどで非常にスマートに充電出来る。
カード会員だけではなくビジターをも考えての事と思いますが、電気自動車乗って充電カード作ってない人って少ないでしょう。緊急用としてクレジットカード決済にすれば簡単なんですが相互リンク出来ないんですかね〜。
イーモビリテパワーの目的はEVを不便にしてガソリン車の販売を手助けする。
出ないとやってることのチグハグさが説明つきません。
チャデモがEV充電網拡充を阻止し、不便いすれば国内のガソリン車が減らない。
でも、自動車の販売は世界規模なんですけどね。
早く悪の天下り組織イーモビリティパワーを解体して日本の国益に役立つ組織を作らないと立ち行かなくなるには見えてます。
越智英樹 さま、コメントありがとうございます。
越智さんもEVオーナーさんだと拝察します。日本国内の充電インフラの現状にもどかしさを感じるお気持ちには共感します。
とはいえ、eMPの目的が「EVを不便にしてガソリン車の販売を手助け」というのは違うのではないかとも感じます。
EVオーナーのご意見としてコメントは承認させていただきますが、極端な批判だけで現状を変えることはできないのではないか、というのが、EVsmartブログ編集長としての私の思いでもあります。
EVユーザー目線でどうなって欲しいのかということを、e-Mobility Power のみなさんにもお伝えしつつ、地道に広く発信していきたいと思い、日々の記事更新に務めています。
EVシフトが世界規模の競争であることもご指摘の通りだと思います。
日本がんばれ! ですね。