市販電気自動車の実用的な電費(燃費)性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。少し間隔が空きましたが2026年になったのを機に再開します。第24回はメルセデス・ベンツ『G580 with EQ Technology』。この検証を行った車種の中で最も重く、かつCd値も最大だったため、全項目で過去最低の数値を記録しました。
【インデックスページ】
計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
電気自動車の実用燃費「東名300km電費検証」INDEXページ/検証のルールと結果一覧
100km/h巡航で約367kmの航続距離性能
G580 with EQ Technology(以下、G580)は、メルセデス・ベンツの高級クロスカントリービークルであるGクラスをベースとした電気自動車です。独特の外装デザインはそのままにEVの強みを活かして、新たにGターン(その場で360度回転する)などの走行性能を手に入れています。
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G580のスペック概要を確認します。全長4730mm、全幅1985mm、全高1990mm、車重3120kg、モーター出力432kW/587ps、トルク1164Nm、バッテリー116kWh、一充電走行距離(WLTC)530km、価格は2635万円です。
今回の注目点は、検証企画史上最も重い3トン超のG580がどんな電費を記録するかでした。Cd値も0.44と圧倒的に大きく不利なので、過去最低を記録しそうな予感はしていましたが、その期待を裏切らず、気持ちいいほどの過去最低新記録を作ってくれました。
G580の一充電走行距離530kmを、バッテリー容量の116kWhで割った目標電費は4.57km/kWhになります。2024年11月某日、計測日の外気温は最高18℃、電費検証に臨んだ深夜は7.5~10.5℃でした。
(諸事情で検証から時間が経ったレポート公開となりましたが、データとして蓄積しておきます)
各区間の計測結果は下記表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしています。
【今回の計測結果】

目標電費を超えたのは、往路のD区間、復路のBとC区間の3区間でした。85~347mの下り勾配であるこの3区間は、電費が伸びやすい特徴があります。往復では80km/hがぎりぎり4km/kWh台、100km/hが3km/kWh台、120km/hが2km/kWh台で4-3-2になりました。これは5-4-3で過去最低だったトヨタbZ4X AWD(20インチのスタッドレスタイヤ)の記録を更新したことになります。
【巡航速度別電費】
各巡航速度の電費は下表の通りです。「航続距離」は実測電費にバッテリー容量をかけた数値。「一充電走行距離との比率」は、530kmの一充電走行距離(目標電費)に対しての達成率です。
| 各巡航速度 の電費 km/kWh | 航続距離 km | 一充電走行距離 との比率 |
|
|---|---|---|---|
| 80km/h | 4.05 | 469.7 | 89% |
| 100km/h | 3.17 | 367.9 | 69% |
| 120km/h | 2.43 | 281.6 | 53% |
| 総合 | 3.09 | 358.0 | 68% |
(注)80km/hの電費は、80km/hの全走行距離(97.4km)をその区間に消費した電力の合計で割って算出、100km/hと総合の電費も同じ方法で求めています。
総合電費の3.09km/kWhで計算すると、満充電からの実質的な航続距離は約358kmになります。100km/h巡航はそれよりも少し長い約367km、80km/h巡航は、カタログスペックの一充電走行距離から11%落ちの約470kmになりました。
「東名300km電費検証」企画の独自の基準として、この表の100km/h巡航と総合の達成率が90%台だと優秀、100%を超えると相当優秀な実測電費性能であることが見えてきました。一充電走行距離の正確性の基準にもなりますが、G580はそれぞれ69%と68%ですので、大きな開きがあります。
巡航速度比較では、80km/hから100km/hに速度を上げると22%電費が悪化します、さらに120km/hにすると40%減になります。反対に120km/hから80km/hに下げると航続距離を1.7倍(167%)に伸ばすことができる計算です。
| ベースの速度 | 比較する速度 | 比率 |
|---|---|---|
| 80km/h | 100km/h | 78% |
| 120km/h | 60% | |
| 100km/h | 80km/h | 128% |
| 120km/h | 77% | |
| 120km/h | 80km/h | 167% |
| 100km/h | 131% |
ここで同じメルセデス・ベンツブランドの大型EVであるEQS450 4MATIC SUV(以下EQS SUVとします)の記録と比較してみます。
両車のスペックを確認すると、G580、EQS SUVの順に、最高出力(432kW/587ps、265kW/360ps)および最大トルク(1164Nm、800Nm)は4モーターの数的優位を活かしてG580の方が大きくなっています。タイヤサイズは275/50R20と、275/45R21で幅は同じです。車重は3120kgと2900kg、バッテリー容量の8.2kWhの差(116kWh、107.8kWh)やモーター数の差(4個、2個)、ボディ構造の違い(ラダーフレームとモノコック)がある割に、意外に220kgの開きでしかありません。検証時の外気温はG580が7.5~10.5℃に対して、17~21℃のEQS SUVの方が有利と思われます。
| G580 | EQS SUV | 電費差 km/kWh | 航続距離の差 km | 比率 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 80km/h | 電費 | 4.05 | 6.31 | -2.26 | 64% | |
| 航続距離 | 469.7 | 680.2 | -210.5 | |||
| 100km/h | 電費 | 3.17 | 4.98 | -1.81 | 64% | |
| 航続距離 | 367.9 | 536.8 | -168.9 | |||
| 120km/h | 電費 | 2.43 | 3.85 | -1.42 | 63% | |
| 航続距離 | 281.6 | 415.0 | -133.4 | |||
| 総合 | 電費 | 3.09 | 4.86 | -1.77 | 64% | |
| 航続距離 | 358.0 | 523.6 | -165.6 | |||
結果は電費で1.42~2.26km/kWh、航続距離も133km~210kmと大きな差がつきました。G580に気温の不利があったとはいえ、下落率は約35%ととても無視できるような差ではありません。100km/hや総合の電費で350kmほどの航続距離であるため、購入の際はそれを踏まえて検討する必要があります。
静粛性の高い車内
東名300km電費検証では、毎回同じ区間を3つの速度で定速巡航するため、巡航中は基本的にACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用します。さらに交通量の少ない深夜に行うことで、渋滞に遭遇する可能性を極力低下させ、ブレがでないよう留意しています。
G580のACCはステアリングホイール左スポークの下側にあるスイッチで操作します。設定速度は速度スイッチを上下に「スワイプ」すると1km/hごとに、「押す」と10km/hごとに変わります。先行車との車間距離設定は右上のスイッチで4段階から選択できます。

LKA(レーンキープアシスト)は、この検証コース中で最もきついカーブである鮎沢PA手前の300Rも曲がり切れますが、往路でそのあとに左右のコーナーが続く場面では白線を踏んでしまうことがありました。2000万円超の高級車としては、もう少し性能向上を望みたいところです。
ドライバーがステアリングを持っているかどうかは、接触センサーによる判定ですので、トルクセンサーの他社と比較すると、ステアリングを持っているのに「持ってください」警告は出ることがなく快適です。
ACCでの停車時はブレーキを抜きながら止まってくれるため、3トン超の車重と2mに迫る車高を考えれば、最小限の揺れでの停車を実現していると感じました。
スピードメーター表示とGPSによる実速度の差は、4~6km/hで、実速度を100km/hにする場合は、メーター速度を105km/hに合わせる必要があります。
| 80km/h 巡航 | 100km/h 巡航 | 120km/h 巡航 |
|
|---|---|---|---|
| メーターの速度 km/h | 84 | 105 | 126 |
| ACC走行中の 室内の静粛性 db | 63 | 64 | 65 |
巡航時の車内の最大騒音(スマホアプリで測定)は、全高と全幅がほぼ2mの車体に加えてCd値も0.44と大きいので全く期待していませんでしたが、いい意味で裏切られました。
80km/hが63dB、100km/hが64dBで、この記録は両方が63dBで、これまでの検証で最も静粛性が高かった『BMW i7』とほぼ同値です。東名よりも路面がきれいな新東名での120km/hは65dBでした。120km/hの最高は『EQE SUV』の61dBですので、少し差がありますが、G580は高速走行時の静粛性が高いクルマであることは意外な発見でした。
充電30分で54.5kWhの最高記録

G580は、SOC 9%から開始した駿河湾沼津SA下り(最大150kW器)の充電で、これまでの「CHAdeMO 30分充電」で過去最高となる54.598kWhの充電量を記録しました。充電時の最大出力は144kWで充電器の性能を最大限に活用できています。なお、「30分の充電」に枠を広げると、最大250kW出力のスーパーチャージャーで充電した『テスラ モデルS プラッド』の57kWhに迫る記録だったことも特筆に値します。
G580は、バッテリー容量が116kWhと「器が大きく」、急速充電性能も最大150kWと「間口が大きい」こともあり、電費は良くないですが、その代わりに充電性能が高いことを確認できました。
とはいえ、この54.598kWhの充電量であっても、検証結果の総合電費である3.09km/kWhでは約168km分、80km/h巡航の4.05km/kWhで約221km走行分の補給にとどまるため、やはりロングドライブには向かないBEVなのかなという気がします。
充電結果

●クリックすると拡大表示します。
※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオフ時に確認。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。表示がない場合は不明としています。
ここで公共用充電器の使用マナーについてのお願いです。駿河湾沼津SAの下りでは150kW器で上記のような車両と充電器のスペックを活かせる充電を経験しました。その後に120km/h巡航で100kmの走行を終えて、今度は駿河湾沼津SA上りでももし150kW器が空いていて、下りと同じような充電を実施できれば、復路とその後の予定に余裕を持てるなと考えていました。
そして上りに到着すると、150kW器2台分も90kW器の4台分にも充電しているクルマはいませんでした。しかし、90kW器のスペースにキャンピングカーとアルファード(非プラグイン車)が停まっていて、その2区画は充電ができない状態でした。充電車の専用区画にガソリン車は停めないのが基本ルールです。
さらに別の事態も発生しました。私が150kW器の区画に駐車した直後に、別の電気自動車が同じ150kWの区画に駐車してきました。150kW器は2台同時の充電の場合、最大出力が90kWに落ちてしまいます。
最大150kW器で2台同時充電となった結果、最大出力は76kWと144kWの半分にとどまり、90kWにも届きませんでした。効率的に充電していきたかったので空いている90kW器に移動、最大出力85kWで30分充電し、36.765kWhをチャージ。150kW器で記録した充電量とは17.833kWhの大きな差になりました(航続距離にすると約43~72km分)。
BEVやPHEVのオーナーは、可能であれば、充電器の特性や自分が乗っている車種の性能を把握し、状況に応じて充電器を選択・利用することにより、より多くの人が効率的な充電ができるようになればいいなと実感した次第です。

メルセデスEQ青山の100kW器での充電風景。都心でありながら駐車料金は最初の40分間は無料と良心的です。30分で32.48kWhを充電しました。
タイヤ・ホイールは20インチ
G580のタイヤサイズは275/50R20、メーカーはファルケン、商品名はアゼニスFK520 MOです。MOはメルセデス承認タイヤの証。アゼニスFK520はファルケンがフラッグシップと掲げるタイヤですので、高速走行時の静粛性の高さにも納得です。前後の軸重(前1520kg、後1600kg)の差はわずかですが、空気圧は270kPaの前に対して、後は310kPaと高めです。

メルセデスの空力へのこだわりとCLA、GLCへの期待
G580は全高が1990mmと高いため、ドライバーの視線も高く、120km/h巡航でもさほど100km/hとの速度差を感じにくいです。しかしながら電費の悪化が大きいことと、乗り心地的にもスイートスポットと思えるので、高速巡航は100km/hがおすすめです。
100km/h巡航や総合の電費でも航続距離は350kmほどに限られますので、長距離移動を重要視する場合、同じメルセデス製大型電気自動車SUVであればEQS SUVを選んだ方がベターでしょう。しかしGクラスの形が好きで、ロングドライブ用には別のクルマがある人には、G580は最高の相棒になるはずです。
メルセデスはBEV開発にあたり、最もCd値にこだわっているメーカーのひとつだと思います。それはEQSセダンで0.20とトップクラスの数値を達成していることからも感じ取れますし、わずか0.02の向上のために、G580では専用のボンネットとリヤホイールアーチのエアカーテンを採用したことからも明らかです(G450d:0.46、G580:0.44)。悪い数値であってもちゃんと公開していることにも好感が持てます。
そんなメルセデスの日本でのBEVラインナップは現在6車種。2025年3月にワールドプレミアされた航続距離792kmを標榜する新型CLAやジャパンモビリティショー2025でも展示された新型GLCの日本での正式発表を楽しみに待ちたいと思います。

メルセデス・ベンツ G580 with EQテクノロジー/スペック
| メルセデス・ベンツ G580 with EQテクノロジー Edition 1 |
|
|---|---|
| 全長(mm) | 4730 |
| 全幅(mm) | 1985 |
| 全高(mm) | 1990 |
| ホイールベース(mm) | 2890 |
| トレッド(前、mm) | 1660 |
| トレッド(後、mm) | 1660 |
| 最低地上高(mm) | 250 |
| 車両重量(kg) | 3120 |
| 前軸重(kg) | 1520 |
| 後軸重(kg) | 1600 |
| 前後重量配分 | 47:53 |
| 乗車定員(人) | 5 |
| 最小回転半径(m) | 6.3 |
| 車両型式 | ZAA-465600CC |
| 交流電力消費率(WLTC、Wh/km) | 262 |
| 一充電走行距離(WLTC、km) | 530 |
| EPA換算推計値(km) | 424 |
| モーター数 | 4 |
| モーター型式、フロント、リヤ | E0033 |
| モーター種類、フロント、リヤ | 交流同期電動機 |
| モーター出力(kW/ps) | 108/147 |
| モータートルク(Nm) | 291 |
| システム最高出力(kW/ps) | 432/587 |
| システム最大トルク(Nm/kgm) | 1164 |
| バッテリー総電力量(kWh) | 116 |
| 急速充電性能(kW) | 150 |
| 急速充電時間 | 150kW器で10-80%が41分 |
| 普通充電性能(kW) | 6 |
| 普通充電時間 | 14時間 |
| V2X対応 | 非対応 |
| トランスミッション | 2段 |
| 駆動方式 | AWD |
| フロントサスペンション | ダブルウィッシュボーン |
| リアサスペンション | リジッド(ドディオン) |
| フロントブレーキ | ベンチレーテッドディスク |
| リアブレーキ | ベンチレーテッドディスク |
| タイヤサイズ(前後) | 275/50R20 |
| タイヤメーカー・銘柄 | ファルケン・アゼニスFK520 |
| 荷室容量(L) | 620-1990 |
| フランク(L) | なし |
| 0-100km/h加速(秒) | 4.7 |
| 渡河性能(mm) | 850 |
| Cd値(空気抵抗係数) | 0.44 |
| 車両本体価格 (万円、A) | 2635 |
| CEV補助金 (万円、B) | 36.8 |
| 実質価格(万円、A - B) | 2598.2 |
取材・文/烏山 大輔






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