【元記事】Beyond Zero: Can Toyota’s bZ4X do for BEVs what the Prius did for hybrids? by Lei Xing.
5月14日、トヨタは日本国内でbZ4Xを正式にローンチしました。
約2週間前の4月28日、トヨタは自らの2つのジョイントベンチャーであるFAW ToyotaとGAC Toyotaを通じ、中国で生産されたモデルの現地先行販売を始めていました。中国で海外自動車メーカーがよくやる、『ツイン・モデル』戦略です。
また約1カ月前の4月12日、トヨタは最大かつ最も重要な市場である米国でもこのモデルをローンチしました。
今年中頃までに、3つの市場すべての顧客はこの新しいモデルで路上に出始めるでしょう。ベースのe-TNGAはトヨタが言うところの「BEVだけでなくすべての車で魅力的、スムーズ、直観的な運転パフォーマンスを達成する」という精神を持ち、スバルと共同開発したBEV専用プラットフォームを使うトヨタ初の車両で、奇抜な名前がついています。
時期が来た、ということですよね?
1年以上前、2021年の上海モーターショーでbZ4Xがコンセプトカーとしてお披露目された際、25年前のプリウスが開拓した日本メーカーのハイブリッド化や燃料電池車のMiraiと同じような、日本メーカーの新しい時代の到来が告げられました。このモデルは新しいトヨタのBEV、人間中心主義のアプローチを取ったbZ(ビヨンド・ゼロ)シリーズの先頭を行くもので、中国、米国、欧州などBEVへの需要が非常に高く、再生可能エネルギーの供給量が多いエリアで広く使われることを目標としています。『bZ』にはゼロ・エミッションを超えた価値を顧客に届けたいという願いが込められており、すべての顧客に歓迎されるであろうBEVをローンチするというトヨタの意図も反映されています。
しかし日本のトップ自動車メーカーがBEVにようやく真剣になったと業界が納得したのは、2021年12月に豊田章男社長が2030年までに30のBEVモデルをローンチして350万台の売り上げを目指すという社の長期BEV戦略を明らかにした時でした。そのたった1年前、豊田氏はEVが盛り上がり過ぎており、EVに全注力すれば日本で多くの雇用が失われるとオープンに発言していました。
bZ4Xが世界中のディーラーに現われて顧客に納車され始めた時、果たしてプリウスがハイブリッドカーで成し遂げたような業績をBEVに残せるのでしょうか。
トヨタには1997年にプリウスをローンチして以来、世界で2,000万台を超える(中国では150万台以上)電動化モデル(ハイブリッド、PHEV、BEV、燃料電池車を含む)の販売実績があるので電動化にまったく不案内というわけではないのですが、BEVに関しては同じような卓越性が見られません。事実、ほとんどの他レガシー自動車メーカーと同じくテスラや中国EVスタートアップのような先頭集団の後塵を拝しています。これからローンチする30のEVモデルの一部では、中国EVメーカーをリードするBYDの助けを借りてさえいるのです。
よって、プリウスをハイブリッド化して時の成功体験を、トヨタの四半世紀に渡る電動化の経験を『bZ』シリーズその他のBEVの成功に置き換えられるかには疑問符が付きます。
戦略的には、トヨタは各市場でbZ4Xの販売方法を変えています。
例えば日本では、トヨタいわく「顧客は電池性能やメンテナンス、残価に関して不安を抱えている」のと、すべての車両用に電池マネージメントの3R(Rebuild、Reuse、Recycle=リビルト、リユース、リサイクル)を促進するため、bZ4Xはリース専用車となっています。リースはKINTOのサブスクリプションサービスを通して行われ、安心して期間の延長ができ、顧客中心のサービスが提供されることを目指しています。
今年日本でトヨタが計画しているbZ4Xの生産販売台数はたった5,000台で、最初の3,000台の受注を5月12日に行い、2回目の受注は秋頃に行うと見られています。2025年までにすべてのディーラーに急速充電を設置し、中でもBEVへの需要が高い都市部から主に始めていく予定です。
日本でのアプローチを見ると、bZ4Xが大規模展開をするような、プライムタイムの準備をできていないのは明白です。トヨタがまだ懸念を持っている様子も表れています。ゆっくり、きっちりやろうという所でしょうか。
中国市場では苦戦の予感
中国では、bZ4XはFAW ToyotaとGAC Toyotaの両方が生産をします。違いはあまり大きくなく、FAW Toyotaからは『north』エディション、GAC Toyotaからは『south』エディションが出され、価格はトリムにより22万元~30万元(約383万円~575万円)です。ジョイントベンチャー間のバランスを取ろうとする動きである事に間違いは無いのですが、カローラとレビンで成功したような『ツイン・モデル』戦略に頼ろうとしているようです。
中国市場はEVモデルに要求されるもののゲームがすでに国内スマートEVスタートアップによって書き換えられており、bZ4Xが最も激しい競争に直面する場所になります。bZ4Xの22万~30万元というのは市場でもあまりなく、来年からはNIOやLi Autoなどの中国スマートEVスタートアップが新しいモデルで埋めていくセグメントになるでしょう。
スマートコネクティビティやテレマティクスは言うまでもなく、パワーと航続距離に関してもbZ4X、最近ローンチしたHonda e:NS1やもうすぐ出る日産アリアは、中国メーカーのEVモデルと比べると見劣りします。bZ4Xは1車線内でもレベル2アシスト機能しか搭載していませんが、中国スマートEVは15万元(約287万円)クラスでドライバー主導の自動車線変更機能が付いていますし、20万元(約383万円)ではナビ付の自動運転機能、30万元(約574万円)では市街地でのレベル2自動運転機能がついてきます。
スマートコックピットに関しては、bZ4Xでは多くの中国スマートEVでスタンダードになってきている、長文でも自然に言語認識をする機能や動画ストリーミング、アプリのダウンロードなどの人気機能がなく、スマホコントロールとともにベーシックなナビやボイスコントロールしか使えません。
中国国内生産で、こちらも『ツイン・モデル』戦略を取っているID.4のマーケットシェアは恐らく奪うことができるでしょうが、bZ4Xは苦境に直面しようとしています。少なくとも中国消費者は期待を持っていません。ただセグメント、性能、航続距離に関してはこの2つのモデルは最も比べられやすい位置にいます。
25年前にプリウスがローンチした際は、他に競合がおらず、市場環境も異なっていました。トヨタはプリウスとともに初期のハイブリッド化戦略に没頭してテクノロジーをモデルラインナップに拡大していき、今日のリーダーになりました。bZ4Xと共に参入するBEV市場ではそれに比べてかなり辛い時間を過ごすことになりそうですが、より短い時間で、より速く動く計画を立てています。
bZ4Xはプリウスにはなれません。しかし中国の有名な諺になぞらえると、「EV川」を渡る際の「石」にはなりそうです。
(※摸着石头过河。踏み石を探って川を渡る=石橋を叩いて渡る、という意味。)
(翻訳/杉田 明子)
発祥の地である日本の技術の粋を集めた「カラオケ機能」はあるのでしょうか?笑
日本にはない50kWHグレードが22万元からと、RAV4 PHVの24.8万元よりも安い価格に設定したことには好感が持てますが、一回り小さくも似たスペックのBYD Yuan Plusがその2/3以下の14万元未満から。VWのIDシリーズの苦戦が示すように、中国人消費者には、EVに関しては愛国心を発揮する傾向があるので、bZ4Xも苦戦する可能性の方が高いと予想します。