※冒頭写真はプレスリリースより。左奥がC40 Recharge Plus Single Motor、右手前がC40 Recharge Ultimate Twin Motor。
価格低下とエントリーモデルで競争力アップ
ボルボ・カー・ジャパンは、電気自動車のSUV『C40 Recharge』にフロントモーターだけを搭載したエントリーグレード『C40 Recharge Plus Single Motor』を追加しました。
同時に、2022年1月にオンライン販売を開始したAWD(全輪駆動)の『C40 Recharge Twin』は、ピクセルLEDヘッドライトなどをオプションにしたグレードだけに絞って『C40 Recharge Ultimate Twin Motor』に名称を変更しました。
価格は、シングルモーターの『C40 Recharge Plus Single Motor』が599万円(税込み)、AWDの『C40 Recharge Ultimate Twin Motor』が699万円(税込み)です。いずれも4月21日にオンラインストアで販売を開始し、デリバリーは今年秋になる予定です。
ボルボ・カーズは2030年までに新車として販売するモデルはすべてEVにする目標を掲げています。直近では2025年に新車販売の50%をEVにすることを目指しています。
同時に日本でも新車販売の40%、約1万台をEVにする計画です。エントリーモデル導入によるバリエーション拡充は、こうした中長期戦略の一環になります。
一方で、すでに販売している『C40 Recharge Twin』の仕様変更と価格引き下げは、最近の半導体不足の影響という説明がありました。EVsmartブログとしては「続々と登場するライバル車に対抗するためのコスト戦術か」などと妄想し質問もしてみたのですが、「そうではない」そうです。
シングルモーター仕様はバッテリー容量も抑えてコスパ良し
簡単にスペックをおさらいしていきましょう。まずツインモーターの『C40 Recharge Ultimate』は、「ピクセルLEDヘッドライト」と「LEDフロント・フォグライト」をオプションにして、通常のLEDライトにしたほか、外装ではルーフレールが黒からボディと同色になります。
新しく追加になったシングルモーター仕様の『C40 Recharge Plus』は、内外装は基本的にツインモーター仕様と同じです。ただ、ホイールはツインモーター仕様が20インチなのに対して、シングルモーター仕様では19インチが標準装備になります。
シングルモーター仕様の最高出力は231ps、最大トルクは330Nmです。最大トルクがほぼ半分なので、ツインモーター仕様の前後モーターはほぼ同じスペックなのかもしれません。
シングルモーター仕様のバッテリー容量は69kWhです。ツインモーター仕様のバッテリー容量は78kWhなので、9kWh減らしています。1充電での航続距離は、日本仕様はまだ確定していません。
そこで欧州仕様の航続距離を見てみると、ツインモーターが437km、シングルモーターが434km(いずれもWLTP)と、ほぼ横並びです。実用に近いアメリカのEPA基準ではツインモーターのレンジが226マイル(約364km)なので、シングルモーターの実用的航続距離も360km前後になろうかと思われます。
もちろん、最高出力が違うのでスタートダッシュの能力は違いますが、4WDが必須でなければシングルモーター仕様のパフォーマンスはかなり高いと言えます。
もうひとつ特筆したいのは、『C40 Recharge Plus』の日本導入の素早さです。シングルモーター仕様のグローバルでの発表は3月4日。その2週間後に日本導入が公表されたのは、ちょっとびっくりです。日本市場でのEVの可能性を重視しているということなのでしょう。
●C40 Recharge Plus Single Motor
駆動方式 FWD
最高出力 231ps(170kW)
最大トルク 330Nm
バッテリー容量 69kW
一充電航続距離 360km前後(EPA推定値)
電費 5.49km/kWh(欧州仕様)
0-100km/h 7.4秒(欧州仕様)
●C40 Recharge Ultimate Twin Motor
駆動方式 4WD
最高出力 408ps(300kW)
最大トルク 660Nm
バッテリー容量 78kW
一充電航続距離 約364km(EPA値)
電費 4.74km/kWh(欧州仕様)
0-100km/h 4.7秒(欧州仕様)
●共通仕様
急速充電対応出力 150kW
普通充電対応出力 9.6kW
電動SUVの価格帯が500万円台の勝負に
それにしても、シングルモーター仕様の『C40 Recharge Plus』が600万円を切ってきたのはちょっとした衝撃です。車格としては高級SUVに入るEVが補助金を含めると500万円台前半になるのは、市場へのインパクトも大きいと思います。
EVsmartブログでは、ボルボが1月に『C40 Recharge』のオンライン販売を開始したことを受けて、各メーカーの高級電気SUVのコストパフォーマンスを比べてみました。
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この時の比較でも、税込みの車両価格が719万円、バッテリー1kWhあたりの価格が9万2000円の『C40 Recharge』は価格競争力は高かったのですが、仕様を簡素化することでお買い得感がさらにアップしています。
ということで、ここでもう一度、バッテリー容量から見たコストパフォーマンスをさらっと比べてみたいと思います。
車名 | 容量 | 駆動方式 | 急速充電 最大出力 | 車両価格 (税込) | 価格/kWh |
---|---|---|---|---|---|
ボルボ C40 Recharge Plus | 69kWh | FWD | 150kW | 599万円〜 | 約8万6800円 |
ボルボ C40 Recharge Ultimate | 78kWh | 4WD | 150kW | 699万円〜 | 約8万9600円 |
ヒョンデ IONIQ 5 | 58kWh | RWD | 90kW | 479万円〜 | 約8万2600円 |
ヒョンデ IONIQ 5 Voyage | 72.6kWh | RWD | 90kW | 519万円〜 | 約7万1500円 |
ヒョンデ IONIQ 5 Lounge AWD | 72.6kWh | 4WD | 90kW | 589万円〜 | 約8万1200円 |
日産 アリア B6 | 66kWh | FWD | 130kW | 539万円〜 | 約8万1700円 |
日産 アリア B6 e-4ORCE limited | 66kWh | 4WD | 130kW | 720万600円〜 | 約10万9100円 |
日産 アリア B9 limited | 91kWh | FWD | 130kW | 740万800円〜 | 約8万1300円 |
日産 アリア B9 e-4ORCE limited | 91kWh | 4WD | 130kW | 790万200円〜 | 約8万6800円 |
アウディ Q4 40 e-tron | 82kWh | RWD | 125kW | 599万円〜 | 約7万3000円 |
メルセデス・ベンツ EQA 250 | 66.5kWh | FWD | 100kW | 640万円〜 | 約9万6200円 |
メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC | 80kWh | 4WD | 110kW | 960万円〜 | 約12万円 |
DS オートモビル DS 3 CROSSBACK E-TENSE | 50kWh | FWD | 50kW | 534万円〜 (※) | 約10万6800円 |
プジョー e-2008 | 50kWh | FWD | 50kW | 452万6000円〜 | 約9万500円 |
マツダ MX-30 EV | 35.5kWh | FWD | 40kW | 451万円〜 | 約12万7000円 |
(※)DSは2022年4月1日に価格改定。DS 3 CROSSBACK E-TENSEは542万円に変更予定。 |
前回比較時には、RWDのアウディ『Q4 e-tron』が税込み価格599万円からで、なおかつバッテリー容量が82kWhと大容量だったので、価格面ではナンバーワンでした。
これに対してボルボ『C40 Recharge Plus』は、税込み価格はまったく同じ599万円にしてきました。なんだかアウディに対して真っ向勝負を挑んでいるように見えます。やる気満々です。
では、バッテリー1kWhあたりのコストはどうなっているのでしょうか。実走行での電費との兼ね合いもあり、安ければいいというものでもありませんが、ひとつの指標ではあると思います。参考までに計算してみました。
比較モデル中でもっとも安かったのは、つい先頃発表があったヒョンデ『IONIQ 5』のうち、バッテリー容量が72.6kWhの「Voyage」で、1kWhあたりの価格は約7万1500円でした。駆動はRWDです。
これに続くのがアウディ『Q4 e-tron』の約7万3000円です。正直、アウディがここまで単価を下げているのは驚きです。
これらはいずれも2輪駆動で、ほかにはFWDの日産『アリア B6』が約8万1700円、『IONIQ 5』の58kWh版が8万2600円などとつばぜり合いを演じています。そして今回紹介した『C40 Recharge Plus』は約8万6800円でした。
では4WDはどうでしょう。ここでもやっぱり『IONIQ 5』は強く、8万1200円で最安値でした。このほか『アリア B9 limited』は8万1300円、『C40 Recharge Ultimate』は8万9600円などとなっています。4WDでバッテリー単価が安いモデルは大容量なのが特徴です。とくに『アリア』は91kWhもあり、価格も約790万円と、メルセデス・ベンツ『EQC 400 4MATIC』に次ぐ高額商品になっています。
一方で車両本体価格を考えると、エントリーモデルで500万円を切っている『IONIC 5』のお買い得感が光ります。また、前回の記事では700万円台が激戦区と記していますが、改めて全体を見ると、2輪駆動の電気SUVは500万円台が激戦区になっていることが見えてきました。バッテリー容量あたりの価格は8万円台前半が勝負どころです。
こうなると、トヨタ、スバルがこれから繰り出すEVはこの価格帯にするしかないと感じます。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響で原材料費が上がっていることから、テスラが車両価格を上げるなど、先行き不透明ではあります。世界観が大きく変わる中で、EVの位置づけにも変化があるかもしれません。それでもエネルギー、環境問題の解決策のひとつであるのは間違いないので、動きが止まることはないでしょう。そう願いたいところです。
ともあれ、徐々に価格が下がってきたEVの市場が日本でも活性化して、街中で普通にEVを見かけるようになることを祈っています。
(取材・文/木野 龍逸)
ヒョンデのIONIQ5の表での駆動がFWDになっていますがRWDの間違いですね!
本文中はRWDになっているので修正した方がよろしいかと。
kumasan2 さま、ご指摘ありがとうございます。
修正しました!