フォルクスワーゲン『ID.4』長距離試乗〜初冬の走りでヒートポンプ非搭載の実感は?

フォルクスワーゲンの新型EV『ID.4』で、東京(静岡)から奈良県まで往復の長距離ドライブを試してきました。日本導入モデルはヒートポンプ非搭載で、暖房を使った走りの電費や航続距離性能は? 純正ナビ非搭載でスマホ地図の使い勝手はどうなのか? 気になっていたポイントをレポートします。

フォルクスワーゲン『ID.4』長距離試乗〜初冬の走りでヒートポンプエアコン非搭載の実感は?

標準グレードは2023年第2四半期以降に発売

電気自動車専用アーキテクチャー「MEB」を採用したフォルクスワーゲンの世界戦略EVである『ID.4』で、沼津(静岡県)〜大和高田市(奈良県)〜東京・世田谷と往復するロングドライブを試してきました。試乗車はバッテリー容量77kWhでRWDの「Pro Launch Edition」です。

横浜での短時間試乗時は、以前の記事でもお伝えしたように「上質にして快適な、正しく進化したEV」であるという印象でした。「ICEから乗り替えても違和感がない」だけではなく、「EVとしての上質さとは何か」をきちんと考え抜いたEVに仕上がっていることを感じたのです。

ただし、日本導入モデルには、ヒートポンプ式ではなく暖房時の消費電力が大きいPTCヒーター式のエアコンが採用されています。また、スマホ接続の機能があるので、カーナビはスマホの地図を利用する仕様になっていて、純正のカーナビゲーションシステムが搭載されていません。

試乗したのは12月10〜11日。最も外気温が低かった復路の夜でも10℃くらいだったので、厳しい寒さではなかったものの、エアコンはあえて22〜25℃の快適温度に設定して常時使用。初冬の長距離ドライブで、電費や航続距離性能に感じる印象を確かめます。また、私はiPhoneユーザーなので、Apple CarPlay によるナビの使い勝手はどうなのか? というのも確かめたいポイントでした。

ちなみに、今回試乗した日本導入記念グレードである「Pro Launch Edition」と「Lite Launch Edition」はすでに完売していますが、12月23日には「ID.4の標準グレードの先行受注受付を開始して、2023年第2四半期以降に発売」することがフォルクスワーゲンジャパンから発表されました。Launch Edition の価格は、Proが636万5000円、バッテリー容量52kWhのLiteが499万9000円でした。Launch Edition は特別仕様車だったので、標準グレードはさらに価格を抑えて発売されるかもと期待していましたが、今回発表された価格はProが648万8000円(+12万3000円)、Liteが514万2000円(+14万3000円)と、両グレードともに10万円以上の値上げとなっています。

22日には日産サクラやリーフの大幅値上げが発表されたし、エンジン車の価格もどんどん高くなっています。EVシフト以前に、庶民にとって新車のマイカーがどんどん遠くなっていくようで……、というのは、今回の試乗レポートには関係ありません。

ディスプレイなどの表示はEVフレンドリー

ID.4には、運転席正面のドライバーインフォメーションディスプレイ(5.3インチ)と、ダッシュボード中央のセンターディスプレイ(10インチ)を備えています。センターディスプレイには充電時の最大SOCを指定できたり、運転支援システムなど車両の機能に関する設定、エアコンやシートヒーターなど車内環境のコントロールなどを行います。

運転席正面の小さなディスプレイは3分割と2分割の表示を選択可能。運転支援の状況、車速、電費情報を含めたトリップメーターなどが表示され、ステアリングのボタンで自分好みに表示内容を選択できます。

SOCや電費など、EVでのロングドライブ中には頻繁に確認したい情報がわかりやすく表示されていて、EVとしての使い勝手をしっかりと考慮して作り込まれたインターフェースであるという印象です。

スマホ連動のナビはトンネルが鬼門

スマホ連動のナビゲーションも、スムーズに使うことができました。車両との接続はUSB。ポートは「タイプC」になっています。私はマイカーやモバイルバッテリーとの接続にタイプAのケーブルを使っていますが、この日はノートPC用のガジェットを持参していて、その中に「タイプC→ライトニング」のケーブルがあったので助かりました。

車両にスマホを接続すると、CarPlay のアイコンが並んだ画面が表示され、マップを選ぶとナビ画面になります。Apple CarPlay の場合、デフォルトのマップを選ぶとAppleの地図になります。私は普段Googleマップを使うことが多いので、Appleのマップはちょっと苦手なんですけど、簡単な操作でGoogleマップを選ぶこともできました。

Apple CarPlay が立ち上がると、音声認識は Siri なのでかなりクレバー。目的地設定や電話を掛ける際など、便利に使いこなすことができました。クルマを運転しつつ、自分のスマホと同じような利便を活用しやすいという点で、純正ナビではなくスマホ連動というのは、悪くない選択だとも感じます。

ナビとしての使い勝手で気になったのは、「高速道路でSAPAなどまでの距離を示すチャートが表示されない」のと、「長いトンネルを走っていると迷走する」ことです。

車載の純正ナビの多くでは、高速道路を走っていると自動的に数カ所先までのSAPAやICへの距離を示す簡略化した図が表示されますよね。ことに、急速充電するSAPAを選択する時に、あの図はとても便利です。でも、現状のAppleのマップやGoogleマップではあの図が表示されません。今回は、宿泊するホテルなどを目的地としてルート設定した後に、立ち寄る予定の長篠設楽原PAを立ち寄り地点に加えましたが、ひと手間掛かって面倒でした。

ま、Apple CarPlay とかどんどん進化しているようですし、車載ナビでは当然となっているような機能が増えることに期待です。そうなれば、新しい道路などの情報更新が迅速なスマホのナビは、車載ナビより便利なツールになることでしょう。

長いトンネルで、GPS信号の受信ができなくなると自車位置確認ができなくなって、トンネル周辺の一般道を走っていると誤認識して、「ここを右折」とか「左折してください」とか頻繁に音声案内が入ったりするのは煩わしかったです。これを改善するにはジャイロとかタイヤの回転を反映する車両側の機能が必要になることでしょう。可能であれば、早めにアップデートできるといいですね。

【追記/2022年12月28日】Twitterでご指摘をいただきました。「高速道路のチャート表示」など、Apple CarPlayでも「Yahoo!地図」アプリでは可能とのこと。また、ジャイロを使わないのはApple CarPlayの仕様とのこと。改めて試乗の機会を作って確認してみますが、ID.4 でAndroid接続してらしゃる方にコメントなどでご教示いただけるとうれしいです。(寄本)

電費や充電性能も必要十分なレベル

心配した暖房使用時の電費も、そんなに悲しい数字ではありませんでした。車載インフォテイメントシステムの数字では、復路をスタートしてからゴールまでの平均電費は5.7km/kWh。ミドルサイズのSUV電気自動車で、冬場に22〜25℃設定で暖房を使いながらの長距離ドライブとしては、なかなかの好結果ではないかと思います。

充電記録は、一覧表にしておきます。

【ID.4 ロングドライブ充電記録】

場所到着時
SOC
出発時
SOC
充電器
出力
充電量走行距離
12月10日
静岡日産沼津店---64%------START
長篠設楽原PA(下り)19%61%90kW31.8kWh151km
宿泊ホテル20%70%3kW38.5kWh159km
12月11日
草津PA(上り)29%72%90kW34.6kWh145km
遠州森町PA(上り)22%55%90kW
※2台同時
25.4kWh210km
海老名SA(上り)13%60%90kW36.6kWh177km

往路は、新東名の長篠設楽原PAの90kW器で急速充電を1回。実は、この充電時、開始直後から176Aしか電流が流れませんでした。

開始直後から電流値は176Aのまま。この時点で66kW程度の出力しか出ていません。

もしや、ID.4にも充電受入出力制限が? という疑問を翌日の復路で検証するために、立ち寄る予定の草津PAと遠州森町PAに20〜30%程度までは残量を減らして到着するようざっくりと計算して、宿泊した「ルートイングランティア和蔵の宿 伊賀上野城前」の普通充電器(3kW)での充電時には、車両側で「70%」までの設定にしておきました。

ディスプレイのSOCバーを指でドラッグするだけで簡単に設定可能。

充電SOCの設定は、マイカーのリーフやアリアなどではできないのですが、便利ですね。ID.4 を購入して自宅充電する方は、最大80%くらいに設定しておくのが電池に優しくていい(テスラなどのLFPバッテリー搭載EVは満充電にするのがオススメ)と思います。

さて、疑念を抱いた充電受入出力制限。復路での充電出力は、まず、1回目の草津PA 90kW器ではしっかり200A流れました。

2回目の遠州森町での充電もしっかり200Aの最大電流でスタート。トイレに行って、コーヒー買いに売店に行こうとしたところで、充電スペースにリーフが入ってくるのが見えました。ここに設置されている90kW2口器は、2台同時充電になるとそれぞれ104A程度に出力が分散されてしまいます。

ところが、2台目となったのがバッテリー容量&充電受入出力が小さな初代リーフ(24kWh)だったからでしょう。ID.4への出力はいったん106Aまで落ちたものの、10分ほどで140A以上に増加、終了間際には176Aまで出ていました。出力分割の詳細な仕様などはわかりませんが、往路の長篠設楽原での急速充電時と同じ出力だったのは、何かの偶然でしょうか。

2台同時充電になったことで遠州森町PAでは「20kWhくらいしか充電できないかな」と覚悟していたのですが、最終的には25.4kWh充電できて、「あわよくばこのまま東京まで帰れるな」という状況になりました。

翌日の午前中早めに試乗したID.4をフォルクスワーゲンに残量50%以上で返却する約束になっていたので、最後は海老名SAの90kW器で30分充電。このときもしっかり最大の200A流れてくれました。

検証結果としては、暖房使用時の電費性能も、高出力(90kW)での充電性能も必要十分といえる上出来です。ここ数日のように最低気温が0℃前後になるような猛烈な寒さの中でのドライブではもう少し厳しいかも知れないですが、ID.4のヒートポンプ非搭載、案じるほどの「欠点」とはなっていない印象でした。

無駄にアクセルを踏むと簡単に電費は下がります

海老名で充電したので東京の自宅に帰るまでの電気は余裕しゃくしゃく。海老名〜東京までは、ディスプレイのアクセントカラーが刺激的な「赤」に変わる「スポーツモード」にぶちこんで、エンジン車にも負けないアグレッシブな走りを試してみました。

自宅に帰着したところで、充電後の電費を確認してみると。

上の写真で紹介したこの日トータルの平均電費が5.7km/kWhだったのに対して、海老名からの32kmの電費は4.7km/kWhに落ちていました。無駄なアクセルワーク、もったいないですね。

最後にひとつ、復路の草津PAでのこと。草津PAの90kW 2口器の充電スペースはそもそも狭いんですけど。右リアに充電口があるID.4を充電器左側のスペースに入れようと思ったら、前に使った方がきちんと片付けていなくて、路面にはみ出たケーブルに侵入を阻まれました。

EVユーザーのみなさん、お互いに気をつけましょう!

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)2件

  1. VOLVO C40 RechargeTwinからID4に乗換え現在納車待ちです。C40では電力単価が半分の深夜電力契約し21時から翌朝7時まで充電スケジュール設定する機能があり、普通充電200V,3Kwで充電していました。ID4は充電スケジュール設定出来ないと聞きましたが本当でしょうか?

  2. VWグループは販売店に90〜150kWの急速充電器を準備するなど、これから日本でEVを普及させるための企業姿勢に好感が持てます。60〜90kWhの大容量バッテリーを搭載したEVを販売するのなら、最低でも90kW程度の急速充電器も準備していただかないと実用的なクルマにならないです。VW ID.4がコスト低減でヒートポンプを搭載していないのは、数千万円の高出力の急速充電器を販売店に設置することを優先にしたのかな?と思っています。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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