フォルクスワーゲン『ID.4』で東関東無充電一周に成功〜2023年モデルがもうすぐ発売!

昨年11月に「Launch Edition」がデビューしたフォルクスワーゲンの電気自動車『ID.4』。今年の夏から「標準モデル」のデリバリーが開始されるということで、メディア向けの「Long Drive Experience」という試乗イベントを開催。EVsmartも参加してきました。設定したテーマは「無充電で東関東を一周」と「PCAで充電」です。

フォルクスワーゲン『ID.4』で東関東無充電一周に成功〜2023年モデルがもうすぐ発売!

銚子市に宿泊する一泊二日の長距離試乗

『ID.4』はフォルクスワーゲンの電気自動車シフト推進の中核を担う世界戦略モデルです。日本でも2022年11月に「Launch Edition」と名付けた特別仕様モデルを発売して好評。「多くの販売拠点で在庫を完売、あるいは品薄になっている」として、12月には2023年モデルの「標準グレード」の先行受注を開始していました。

標準グレードの発売(デリバリー開始)は2023年第2四半期以降としていましたが、先だって5月22日には「ドイツ・エムデン工場にて日本向け『ID.4』の生産を立ち上げ」というリリースを発信。夏以降、順次納車を再開し、年内の納車可能台数を最大化することがアナウンスされました。

那珂湊から銚子へ向かう途中の波崎ウインドファームにて。

今一度、ID.4 の真価を情報発信したい! ということでしょう。6月28日〜29日の一泊二日、電気自動車専門メディア限定で「ID.4 Long Drive Experience」と題する試乗イベントを開催するということで、EVsmartブログにもお声がけをいただき参加してきました。

設定されていた試乗コースは、東京都品川区内(御殿山)のフォルクスワーゲンジャパンをスタートして、千葉県銚子市内のホテルで一泊。翌日は東京都江戸川区、もしくは千葉県木更津市内のフォルクスワーゲン販売店に設置されている「プレミアム チャージング アライアンス(PCA)」の急速充電器での充電を試してほしいというオーダーでした。

PCAの充電器は会員限定で、今まで使ったことはありません。まずは「PCAで実際の充電を試す」ことが、EVsmartブログとしての取材テーマとなりました。

問題は、どんなコースを走るのか。御殿山から銚子のホテルまでは普通に走って約130km。復路は木更津に回ったとしても約160kmで、合計290kmですから、バッテリー容量77kWのID.4 Pro にとっては、無充電でも余裕で走り切れてしまう距離でしかありません。

そこで、私が考えたのは「電気自動車は航続距離が不安という方も多いですけど、ID.4なら無充電でこんな感じに走れちゃいますよ」ということを提示するルートです。「無充電で東関東一周にチャレンジだ!」と題して、次のようなコースを設定してみました。

御殿山から木更津まで、東関東をぐるりと無充電で駆け抜けました。

無充電の463kmで楽しめたこと

初日のランチは那珂湊おさかな市場の市場寿し。
ネタがでかい!

初日はまず茨城県の那珂湊おさかな市場の「市場寿し」でランチをいただき、シーサイドのドライブを楽しんで銚子のホテルへ。2日目は犬吠埼灯台から房総半島を縦断して最南端の野島崎灯台へ。PCAの充電器があるフォルクスワーゲン木更津まではGoogleマップの表示で442kmでした。

実際の走行距離は、初日が233km。2日目が、ホテル→犬吠埼→勝浦の「市場食堂 勝喰」でランチ→野島崎灯台→フォルクスワーゲン木更津で230km。合計463kmを走り、バッテリー残量5%で急速充電器に到着しました。

2日目。海の駅九十九里に立ち寄って……。
お土産GET!
勝浦の人気店で2日目のランチをいただいて。
房総半島最南端の野島崎灯台をクリア!

東京から那珂湊へ行き、房総半島ほぼ一周を無充電。普通にマイカーを使う方なら、もう「電気自動車だから……」などという不安を抱く必要はないと言い切ってよいと思うのですが、いかがでしょうか。

那珂湊の市場寿しも、勝浦の市場食堂勝喰も、休日には行列必至の人気店。今回訪れたのは平日でしたが、ともに私と、動画担当として一緒に取材に参加したテスカスさんの2人が入店したら満席になるという好運にも恵まれて、連日の海の幸ランチを満喫することもできました。

電気自動車、というか、ID.4 のProグレード、グッジョブです。

PCAの都度会員プランは充電料金高めな印象でした

フォルクスワーゲン木更津の90kW器で充電。

「無充電で東関東を一周」チャレンジは大成功。もう一つのテーマが「PCAで充電してみる」です。

前述のように、PCAはフォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェというフォルクスワーゲングループのEVオーナーだけが加入できる高出力急速充電ネットワークです。専用アプリと会員登録が必要で、今回はフォルクスワーゲンのスタッフの方が用意してくれたスマホを使って充電体験することができました。

フォルクスワーゲン木更津に設置されていたのはABBの90kW器です。充電結果は31分11秒で37.6kW。料金は3840円でした。

設置されていたのは90kWの1口器ですが、会員限定なのでEVsmart(EV充電エネチェンジ)などの充電スポット検索アプリには表示されず、3社のEVオーナーかつPCA会員が使うだけなので、充電待ちのリスクは低いでしょう。

約31分(37.6kWh)で3840円はちょっと高いなと感じましたが、これは、今回「都度会員プラン」で充電したため、120円/分という充電料金が適用されたからでした。ちなみに、31分になったのは、いつもの癖で30分で自動停止すると思い込んでいたから。PCAの急速充電に30分制限はありません。

月額会員プランであれば、1800円/月の基本料金が掛かりますが、充電料金は90kWで45円/分(150kW器の場合は75円/分)となるので、約1400円で収まる計算になります。ということは、約37円/kWhくらいになるので納得のコストパフォーマンスです。
(PCAの料金などは公式サイトをご参照ください)

フォルクスワーゲンでは、PCAとは別にeMPネットワークの充電器が使える「Volkswagen充電カード」(公式サイトの案内ページ)を用意しています。こちらは「普通・急速充電器併用プラン」で月額会費が7810円。都度の充電料金は普通が2.75円/分、急速で16.5円/分(急速充電90分/月まで充電無料)となります。

PCA、Volkswagen充電カードともに、ID.4購入後12カ月間は無償となるので、当面は両方を活用するとして。PCA拠点の拡充具合にもよりますが、1年後には高速道路SAPAなどeMPネットワークの充電はビジター充電にすると割り切って、PCAのみでID.4を活用していくという選択肢もありそうです。

ともあれ、電気代高騰などを理由として激動の日本の充電カード会員システム。グループ3社で独自インフラネットワークを展開するPCAは、EV車種選択の重要な理由になっていくのかも知れません。

標準モデルは回生制御の改善などで電費が向上

初日は走行距離233kmで、電費は6.8km/kWh。
2日目、木更津到着時の走行距離は230km、電費はなんと7.0km/kWh。

今回の長距離試乗。夏に予定されている標準モデル発売へのアピールではあるものの、試乗車として用意されたのはPro Launch Editionでした。

標準の2023年モデルとLaunch Editionには特典などに少し違いがあるので、一覧にしておきます。

グレードLite Launch EditionLitePro Launch EditionPro
発売日2022年11月22日2023年夏(予定)2022年11月22日2023年夏(予定)
バッテリー容量52kWh52kWh77kWh77kWh
一充電走行距離(WLTC)388km435km561km618km
買取価格保証型
残価設定ローン
導入記念特別金利・
特別残価設定
(5年後)
通常プログラム導入記念特別金利・
特別残価設定
(5年後)
通常プログラム
普通充電器
設置費用サポート
10万円なし10万円なし
PCA
(※1)
加盟全ブランドでの
会員価格でのご利用
入会金+月会費
12か月分無償
VW販売店での
会員価格でのご利用
入会金+月会費
12か月分無償(※2)
加盟全ブランドでの
会員価格でのご利用
入会金+月会費
12か月分無償
VW販売店での
会員価格でのご利用
入会金+月会費
12か月分無償(※2)
VW販売店
急速充電器
利用料(※1)
60分/月無償
(12か月間)
60分/月無償
(12か月間)
60分/月無償
(12か月間)
60分/月無償
(12か月間)
Volkswagen
充電カード
普通・急速充電器
併用プラン
(急速充電90分/月まで無償付帯)
12か月分無償
普通・急速充電器
併用プラン
(急速充電90分/月まで無償付帯)
12か月分無償
普通・急速充電器
併用プラン
(急速充電90分/月まで無償付帯)
12か月分無償
普通・急速充電器
併用プラン
(急速充電90分/月まで無償付帯)
12か月分無償
希望小売価格(税込)4,999,000円5,142,000円6,365,000円6,488,000円
(※1)充電の際には、プレミアムチャージングアライアンスアプリのインストールが必要となります。
(※2) VW販売店以外の加盟店にて月額会員価格での充電器ご利用には、別途入会金および月会費が必要となります。

おおっと気になるのは、バッテリー容量は同じなのに一充電走行距離が1割程度向上していること。広報ご担当者に確認したところ「回生ブレーキの制御などが改善されたため」ということでした。今回の「無充電で東関東を一周」での電費(メーター表示)は、初日が6.8km/kWh、2日目が7.0km/kWhと、これはこれで優れていましたが、新たなモデルはさらに電費がよくなることが期待できます。

近いうちに新しい標準モデルの試乗車が入るでしょうから、その実力は改めて検証してみたいと思います。

今回の長距離試乗。近いうちにテスカスさんの動画レポートも公開されるはずなので、公開されたらリンクしますね。

蛇足ながら付け加えておくと、個人的に77kWhのバッテリーはややオーバースペック。無充電でこんなに走れなくてもさほどの不安や不満は感じません。普段の街乗りで大きなバッテリーを運ぶのはなぁ、という思いもあります。自分が買うなら52kWhのLiteで十分とも思うのですが、バッテリー容量以外にもいろいろ仕様が異なるのが悩ましいところです。

取材・文/寄本 好則

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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