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テラチャージがEV充電料金「業界最安値水準」のキャンペーンを開始/電子マネーのQRコード決済も導入へ

テラチャージがEV充電料金「業界最安値水準」のキャンペーンを開始/電子マネーのQRコード決済も導入へ

EV充電サービスを展開するテラチャージが、普通、急速ともに「業界最安値水準」の充電料金でサービスを提供するキャンペーンを開始することを発表しました。公式アプリのリニューアルも実施。料金が高いイメージを払拭し、より使いやすいEV充電ネットワークの拡充を目指します。

目次

高出力急速充電も44円/分の価格で提供

2025年9月29日、EV充電サービス「Terra Charge(テラチャージ)」を展開するTerra Charge 株式会社が、日本全国に設置している約5,000口のEV用充電スポットにおいて、「業界最安値水準」のキャンペーン価格での充電サービス提供を開始することを発表しました。テラチャージでは、出力3kWの普通充電器から最大150kWの高出力急速充電器まで幅広くサービスを展開しており、今回のキャンペーンでは出力ごとに特別料金が設定されます。

キャンペーンの充電料金表

種類出力月額料金従来の通常価格キャンペーン価格
普通充電器3kW無料3.3円/分2.5円/分 ★
6kW無料6.6円/分5円/分 ★
急速充電器50kW無料49.5円/分44円/分
90kW無料72円/分44円/分 ★
150kW無料90円/分44円/分 ★
※価格はすべて税込

表内のキャンペーン価格で「★」を示した、普通充電の3kW、6kW。また急速充電器の90kWと150kWの充電料金について、テラチャージでは「業界最安値水準」であるとしています。ベテランEVユーザーさんからは「イオンのほうが安いじゃん」とか、「フラッシュの超急速充電料金(44円/kWh)のほうが安くない?」といった突っ込みが入りそうな気もしますが、テラチャージとしては「全国で1,000口以上の充電器を統一価格で提供する事業者の料金体系を基準とした位置づけ」とのこと。

厳密に業界最安かどうかはさておき、e-Mobility Power ネットワークのビジター料金で「77円/分」となっている90kW器、150kW器を「44円/分」で充電利用できるのはEVユーザーにとって朗報です。

キャンペーン期間は「2025年10月1日(水)~2026年3月31日(火)」の予定。対象となるのはテラチャージが設置している国内約5,000口の充電器です。「累計設置口数15,668口のうち、自宅や社用駐車場等に設置された基礎充電器を除く」、道の駅、商業施設、ホテル、ゴルフ場、コインパーキングなどの公共用充電器となります。ただし、一部設置場所(対象充電器全体の約5%以下)ではキャンペーン価格が適用されないケースがあるとのことで、利用時に専用アプリで確認することができます。

多くのEVユーザーに「アプリを開いてもらうため」

いくつか、EVユーザーとして気になる点を確認するため、テラチャージの代表取締役副社長である中川耕輔氏にお話を伺いました。

まず、今回のキャンペーンで何を目指すのか。ニュースリリースでは、「EVをもっと身近に」をテーマとして、より多くのEVユーザーにテラチャージのネットワークによる充電を気軽に体験いただくためとアナウンスされています。中川氏によると「まずはより多くのEVユーザーのみなさんにテラチャージの公式アプリをダウンロードしていただいて、アプリを開いてもらうようにすることが最初の目的」であるとのこと。

今、EV充電サービスには多くの事業者が参入し、それぞれの公式アプリを提供している状況があり、出先での充電機会が多いEVユーザーのスマホには複数の充電用アプリがインストールされているはず。なかには「インストールはしたけど、長い間アプリを開いていない」というケースがあります。安価なキャンペーン料金を契機に、改めてアプリを開き、テラチャージの充電器がどこにあるのかといった認識をもってもらうことが、利用拡大のファーストステップになるという狙いです。

代表取締役副社長の中川耕輔氏。

高出力器が44円/分で採算は合うのか?

最大150kWの超急速充電器で44円/分(1,320円/30分なので、40kWh充電できれば33円/kWh相当)という料金は、たしかに安い印象です。とはいえ『フラッシュが「44円/kWh」を標準料金にすることを発表』などの記事でたびたび指摘しているように、高圧受電で運用する超急速充電器で安価過ぎる充電サービスを提供すると、高額なデマンド基本料金さえも賄えないのではないかという疑問があります。

中川氏に聞くと「今回のキャンペーンは、当面は弊社が持ち出しで負担することも想定したサービス価格」であるとした上で、採算の合う充電器とするためには、充電料金の設定とともに、「利用頻度(稼働率)を高めることが重要であり、今回のキャンペーンによって、急速充電器であれば1日当たり3回(台)くらいは利用していただけるようにもっていきたい」という回答でした。

設置場所の選定基準にもノウハウを蓄積

急速充電器の稼働率を高めるためには「どこに、どのように設置するか」が最も重要であることは、EVsmartブログで繰り返し提言してきました。かつて、テラチャージが「東京都内1,000カ所に超急速充電器を無償設置」を発表した際には、「1,000カ所という数よりも、使いやすい充電スポット展開を」といったお願い記事を発信したことがあります。

中川氏に確認すると、テラチャージでも多くの急速充電器を設置・運営するなかで、設置場所選定のノウハウなどが蓄積されており「周辺環境や交通量、施設利用者数などを確認して、より使われる充電器となるよう設置場所選定基準をブラッシュアップしている」ということでした。

電子マネーのQRコード決済も導入へ

利便性の向上も「使われる充電器」にするためのポイントでしょう。決済方法の多様化などについて質問したところ、すでに電子マネーのQRコード決済は導入できるようになっているとのこと。私自身はアプリに登録したクレジットカードでの決済でしか使ったことがないので、キャンペーンがスタートしたら、価格の実感を確認しつつQRコード決済を試してみたいと思います。

テンフィールズファクトリーがフラッシュで導入しているような、その場でのクレジットカード決済については、充電器側のハードウェアにクレジットカード決済端末を追加する必要があることもあり、当面、導入の予定はないということでした。

いずれにしても、充電サービス全体の着実な進化を歓迎したいと思います。

EVユーザー視点で使いやすい充電ネットワークの発展を!

いろんな記事で繰り返しているように「使われないまま放置されて朽ち果てていく急速充電器はもう見たくない」というのが、ひとりのEVユーザーとしての私の願いです。そのために、充電サービスが健全に持続可能な料金設定であることは必須です。

中川氏が「まずは1日に3回利用されること」と挙げていたように、稼働率の向上が健全な充電サービス運営の追い風になります。でも、日本ではまだ大衆的EVの車種が少なく、本格的なEV普及は滞っているのが実状です。街を走るEVの数が増えなければ、普通充電器も急速充電器も、使われる回数が増えないのは必然といえるでしょう。

充電料金が安いのはありがたいことですが、採算度外視で「我慢比べ」のような価格競争になってしまうのは、長い目で見てEVユーザーの利便向上を損なう可能性すらあるのではないかと心配です。使いやすい場所に、使いやすい充電器が設置されていれば、適切な充電料金を支払うのはユーザーとして当然のこと。キャンペーン価格をまずは歓迎しつつ、テラチャージのように大規模なネットワークを構築する充電サービス事業者には、今後ますます、EVユーザー視点でさらに使いやすい充電ネットワークの構築を進めてくれることを期待しています。

取材・文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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