1トンクラスの商用EVフォロフライ「F11VS」に試乗しました。ファブレスメーカー製EVへの慎重な目線をもちながら、ハイエースとの比較や走行コスト試算も交えて、事業者にとって本当に導入を検討できるモデルなのかを検証します。結論は「条件が合えば導入を検討すべき」商用EVでした。
※この記事はAIによるポッドキャストでもお楽しみいただけます!
フォロフライ「F11VS」とは?

フォロフライ株式会社は、2021年に設立、京都に本拠地を置くファブレス(工場を持たない)EVベンチャーです。主力車種は、ラストワンマイル物流を担う1トンクラスの商用バン・トラック「F1」シリーズ(関連記事)で、国内大手物流会社などへ順次納車が始まっています。
2025年10月に開催された「ジャパンモビリティショー2025」では、ジーリー傘下ブランド「ZEEKR(ジーカー)」の高級ミニバンEVである「 009(ゼロゼロナイン)」の日本導入を発表するとともに、今回の試乗車である「F11VS」、軽EVトラック「FKT-B」、3tトラック「F3T-B」と、3モデルの商用BEVを発表しました。

F11VSは、車両重量2250kg、最大積載量1100kgで、車両総重量は3.5t未満に収まるため、普通自動車免許で運転できる1トンクラスのEVバンです。まずはそのスペック概要を、日本を代表する1トンクラスのバンである、トヨタ「ハイエース」と比較しながらお伝えします。
ボディサイズ
| 車種 | 全長 | 全幅 | 全高 |
|---|---|---|---|
| F11VS | 4,990mm | 1,980mm | 2,010mm |
| ハイエース ロング・標準ボディ・標準ルーフ | 4,695mm | 1,695mm | 1,980mm |
| ハイエース スーパーロング・ワイドボディ・ハイルーフ | 5,380mm | 1,880mm | 2,285mm |
F11VSのボディサイズは、ハイエースロングとスーパーロングの中間で、全幅はワイドボディより10cm広くなっています。日本の市街地では、ハイエースのワイドボディでも大きさを意識する場面が少なくないと思われるため、F11VSの1,980mm幅は運用条件を選ぶ可能性があります。
なお、F11VSの最小回転半径は、ハイエースワイドボディの6.1mと同じです(ハイエースロング・標準ボディは5.2m)。車幅の問題がクリアできれば、ハイエースワイドを運用中であれば、F11VSに乗り換えても支障はないといえるでしょう。

CHAdeMO急速充電に対応。最大受電性能などは未公表。
パワートレイン
| 車種 | 最高出力(kW/PS) | 最大トルク(N・m) |
|---|---|---|
| F11VS(電気モーター) | 170/231 | 336 |
| ハイエース 2.7Lガソリン | 118/160 | 243 |
| ハイエース 2.8Lディーゼル | 111/151 | 300 |
F11VSのパワートレインは、シングルモーターの前輪駆動です。最高出力、最大トルクともにハイエースを上回っており、とくに重い荷物積載時の動力性能はF11VSに優位性があるといえるでしょう。

前輪にモーターを配置。サスペンションはダブルウィッシュボーン式を採用。

後輪は車軸式リーフスプリング。バッテリーはシャシーの下側に配置。
ベンチャー系のEVバンでは最高速度が100km/h以下に制限されていることもありますが、F11VSの最高速度は135km/hとのこと。速度制限120km/hの高速道路の走行も問題なさそうです。
ベース車両はジーリーグループの商用EV
フォロフライのプレスリリースによるとF11VSは「Farizon(ファリゾン)との提携」で導入するEVと説明されています。明言されていませんが、デザインやスペックに共通点が多い「Farizon Super Van」がベース車両で、これを日本市場向けにローカライズされたクルマだと考えるのが妥当でしょう。

Farizon Super VAN(Farizon公式サイトより引用)
ファリゾンはボルボ、ロータス、スマートといった日本でもおなじみの輸入車ブランドを傘下に置く「Geely(ジーリー)グループ」の商用車部門のブランド名です。ブランド発足は2016年、ジーリーの新エネルギー商用車部門の発足は2014年とされています。小型から大型までのトラック、バン、バスと幅広いラインナップを揃え、パワートレインはEV、PHEV、FCEV、メタノール車など新エネルギー全般の車種を取り扱っています。
Farizon Super Vanは、2024年4月に中国でデビュー、同年11月のセルビアを皮切りに欧州市場に進出しイギリスでも販売を展開、その後、中近東、東南アジア、豪州へとグローバル展開を進めています。

シフトはコラム右側。操作感は悪くない。

シンプル&クリーンなインテリア。上質さを感じた。
乗用車としても使えるクオリティの基礎設計
F11VSに乗り込み、100mほど走行してすぐに気が付いたのは「足の良さ」でした。今回は、空荷での試乗でしたので、硬い足の動きを予想していましたが裏切られました。この点、同乗いただいたフォロフライ株式会社の COO である中尾源さんにフィードバックすると「イギリスでは、同じベース車両の6/7人乗りモデル『ミニバス』がある。乗用車としても使えるクオリティの基礎設計となっている」とのことでした。

乗降性はいい。ドアは約90°まで開く。ドアを閉めたときの音にも一定の上質感があった。
ステアリングフィールは良好で、直進安定性、コーナリング時の安定性が良く、商用バンとしては上出来の部類に入ると感じました。1日100kmを超える配送業務でドライバーが長時間乗り続けることを想定しても、疲労が蓄積しにくい水準の乗り味です。
静粛性は商用車らしい、最低限度の遮音性と感じましたが、もともと静粛性が高いBEVですから問題とは感じませんでした。発進直後と、停止直前のインバーターの音はしっかり聞こえますが、不快にならない音圧と周波数でした。

フラットな座面も乗降性に寄与。座り心地もよく、疲労軽減が考慮されていると感じた。
好感が持てたのは、先進安全装備が充実していることです。後退時車両接近警報、車線変更支援、衝突被害軽減ブレーキ、歩行者衝突警告、追従機能付クルーズコントロールといったひととおりの安全装備を備えています。なお、試乗車はフォロフライ社初期導入のデモカーで、右ハンドルではありますが一部ローカライズされていない機能があり、安全装備系の詳細な確認はできませんでした。

フラットなラゲッジ。
また、運転席・助手席にシートヒーター、シートベンチレーション、ステアリングヒーター、Apple CarPlay対応ディスプレイといった快適装備が充実しているところも好感が持てます。

スクエアで使いやすそうな荷室。
ただ、気になったのは、走行中の後方確認はサイドミラーだけとなることです。360°全方位モニターが搭載されているので、駐車時等の安全確認は問題ありませんが、走行中の後方確認のために、デジタルインナーミラーが欲しいところです。
また、チルトステアリングは備えていますが、テレスコ(前後調整)がなかったのも気になったところです。これらの点を中尾さんにフィードバックすると「F1シリーズのユーザーからは、助手席エアバッグが欲しいなど、さまざまな要望を受けた。それに応えるF11VSをつくった」とのことで、F11VSに対する要望にも広く耳を傾ける姿勢を感じました。

なんとピラーレス! 広い開口部は特にラストワンマイル物流で使いやすそう。
車両価格と商用EVとしての経済合理性
F11VSの価格は未公表ですが、試乗時の中尾さんの説明によると、車両本体価格は1,200万円(税別)で、補助金(商用車対象のLEVO補助金)適用後の実質的な車両価格は400万円台とのことでした。一方、ハイエースバンの価格レンジは約300万~400万円台ですので、車両本体価格部分の実質支払額で比較すると、グレードによっては同等となる計算です。
事業者がBEVを導入する際に最も重要な判断基準となるのは、経済合理性でしょう。参考として、F11VSとハイエースバンの走行コスト(エネルギー費)を試算、比較してみました。
【試算の前提条件】
●1日あたりの走行距離:100km
●実電費想定:カタログ数値の航続距離の75%
●実燃費想定:ガソリンはカタログ数値の80%、ディーゼルは85%
●電気料金:事業用低圧/低圧電力:28円/kWh (燃料費調整額・再エネ賦課金含む)
●充電時間:18時~翌6時(12時間) 1日最大充電量:36kWh
●ガソリン価格:165円/L 、軽油価格:154円/L
走行コスト試算結果
| 車種 | 航続距離/バッテリー容量 WLTCモード燃費 | 1km走行あたり エネルギー費 | 100km走行あたり エネルギー費 |
|---|---|---|---|
| F11VS | 479km / 82.88kWh | 6.5円 | 646円 |
| ハイエース 2.7Lガソリン | 12.3km/L | 14.7円 | 1,473円 |
| ハイエース 2.8Lディーゼル | 9.3km/L | 22.2円 | 2,218円 |
F11VSの電費(カタログスペック)は、「479km÷82.88kWh=約5.78km/kWh」です。試算では実走行での電費を「75%」としたので、5.78×0.75=約4.33km/kWh。基礎充電の電気代が28円/kWhとした場合、1km当たりのエネルギーコスト(電気代)は約6.5円ということになります。
走行コストがエンジン車に比べて圧倒的に安上がりであることは一目瞭然です。差が小さいガソリンエンジンモデルと比較しても、走行100kmあたりのコスト差は827円と倍以上。年間3万キロ走ると仮定すると、ガソリンエンジンモデルで24万8000円、ディーゼルエンジンモデルとは47万1600円の差になります。
ただし、1日に300kmを超えるような長距離運用では、F11VSは途中充電が必要になるケースが出てくること、また、外部での急速充電は拠点における基礎充電よりも割高になることが多い点は留意しておく必要があります。

クリーンなフロントフェイスデザイン。個人ユーザーからも支持を受けそう。注意点は1,980mmという車幅。
F11VSの導入をオススメできる事業者とは
「EVモーターズ・ジャパン」が大阪・関西万博に納入したEVバスに不具合があり、大きな問題となり(2026年4月14日、同社は民事再生手続きの申立を行いました)、ファブレスEVに対する慎重な見方が広がっています。先だって、別のファブレスメーカーによるEV商用バンをベース車両としたキャンピングカーに試乗し、クルマとしての基本的な性能や装備面で少ないとは言えない課題を指摘しました(関連記事)。筆者自身、ファブレスEVに対して注意深くなっているのは事実です。
それでも、今回試乗したフォロフライ「F11VS」は、クルマとしての基本性能に問題は見当たらず、思った以上に乗り心地がよかったことや、現在の乗用車が採用する安全技術や装備がひととおり揃っており、質感も商用車にしては高い部類だったことなど、総合的に評価は高いと感じました。

収納も多くビジネスシーンでの使い勝手に配慮された設計。
耐久性や、荷物を積載した高負荷状態での走行、酷暑や厳寒時における走行については1回の試乗では確認できません。こうした懸念を伝えたところ「フォロフライは神戸にラボを展開し、さまざまな試験と検証を重ねており問題はありません」ということでした。
短い時間の試乗でしたが、筆者が懸念していたクルマとしての品質面は良いものでした。1,980mmの車幅でも問題なく、経済合理性にかなう運用ができる事業者なら、F11VSは導入を検討できるクルマだと思います。
具体的には、1日150km以下程度の定期ルートなどでの運用を想定し、夜間に事業所での充電が確保できる事業者であれば、補助金適用後の取得価格とランニングコストの両面でハイエースディーゼルを上回る経済合理性があるといえます。ただし、繰り返しになりますが1,980mmの車幅が制約になる狭小路の多い配送ルートや、基礎充電設備を設置できない拠点での運用は、導入前に条件を精査する必要があるでしょう。
中尾さんによると、フォロフライでは今後、F11VSに新たなボディタイプのラインナップ追加を計画しているとのこと。F11VSベースのキャンピングカーなども考えているそうです。
取材・文/宇野 智






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