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会場で感じたミッドサイズSUVの台頭とコンパクトEVの可能性【バンコク国際モーターショーレポート03】

会場で感じたミッドサイズSUVの台頭とコンパクトEVの可能性【バンコク国際モーターショーレポート03】

2026年のバンコク国際モーターショーを取材して、筆者はタイEV市場において2つのトレンドがあることを感じた。ひとつは(いまさらながら)ミッドサイズのEV、SUVの台頭。もうひとつはコンパクトEVの可能性だ。

目次

BIMS恒例〜予約台数の動向は?

第47回 バンコク国際モーターショー(BIMS47)は、毎回期間中に成立した新車予約数が話題になる。タイは過去数年、自動車産業を含む景気後退局面にありながら、2026年は予約総数が昨年の7万7千台を上回り13万台以上を記録した。イスラエル・アメリカによるイラン攻撃によるオイルショックにより各国でEV需要が喚起された。タイも例外ではなく、これが追い風となり前年から大幅な予約数増を達成した(現地メディアの記事)。

BIMSの予約台数は、すぐに納車実数に現れるわけではなく、予約消化率(コンバージョン率)は70~80%、最初の1か月で20~30%がキャンセルされる(ローン審査不通過など)とも言われている。会場以外での開催期間中の成約数カウント方法もメーカーポリシーによって同一ではないこともあり、あくまで参考でしかない。中国勢は数字を盛っているという話も聞く。

ただ、この数字を調べているとき、面白い偶然(?)を発見した。数字を盛っているといわれている中国勢のうち、BYDは2024年におよそ3万台の新車登録を記録していた。2025年は4万台前後と1万台ほど上乗せしてきた。そして、昨年2025年のバンコク国際モーターショーでの予約台数はおよそ1万2千台だった。BYD 2025年の新車登録台数が4万2千台という統計もある(関連情報)。2025年のショーの予約台数とその前年からの増加台数が近似している。数字の一致はただの偶然でしかなく意味はないが、予約台数の勢いがそのメーカーの実績に反映されることは言えそうだ。

BIMS47で発表されたおもなEV

47回目となる今年のBIMSのトレンドを見るため、会場で発表された主だった新型EVをブランドごとにリストする。

ブランドモデル名
BYDATTO1/ATTO2/SEAL 6/SEALION 5 DM-i(PHEV)
DENZAB3
CHERYChery Q
GEELYEX2/Starray EM-i(PHEV)
NIO(Firefly)Firefly
DEEPALNEVO Q05
MG(SAIC)MG4/IM5
OMODA(CHERY)C5EV
JAECOO(CHERY)JAECOO5 EV
GWMORA5

中国ブランドでは、他にもZEEKR、XPENG、GAC AION、Forthing、LEAP、AVATRなども出展していた。

日本ブランドではホンダが「Super EV」、「e:N2」やプラグイン充電が可能な電動バイクのコンセプトモデルを展示していた。ホンダの電動バイクは詳細未定のコンセプトモデルと普通充電が可能な市販予定のものがあった。

スズキはeビターラ、マツダはCX-6e、日産はKicksのe-Powerモデル、いすゞは現地組み立てのD-MAX EV。

トヨタはランクルFJなどICEメインだったが、bZ4Xも目立つ場所に展示していた。2年前の取材では、bZ4Xの展示はあったものの、詳細説明ができる人が少なく「EVもある」というアピールだけだったが、今年は説明員もしっかり対応してくれて、一般公開日でも人だかりができていた。

欧州勢では、BMWのiX3とMINI ACEMANが目立っており、メルセデスはCLAを持ち込み、注目を集めていた。

タイEV市場の主役はSUV/OMODAとJAECOOの躍進

タイのEV市場の主役はミドルサイズのSUVだ。国を問わずEV市場全体の傾向ともいえるので、このこと自体は特筆するものでもない。だが、細部を見るとタイSUV市場のちょっとした変化を見ることができる。ひとつは価格帯の変化、もうひとつは乗車定員の変化だ。

価格帯の変化は、CHERYグループのOMODAとJAECOOの戦略をみるとわかりやすい。OMODA C5 EV MAX+、JAECOO 5 EV、同6 EVは、会場予約者向けの特別価格を設定し、大規模なプロモーションを展開した。JAECOOはCHERYブランドの中ではプレミアムブランドに位置づけられるモデルが多いが、60万バーツ(約298万円)を切る価格設定をしてきた。また、バッテリー保証、ホームチャージャー、V2Lケーブル、ロードサービスなど手厚いサポートも打ち出したという。

会場キャンペーンが奏功し、前述の事前予約台数ではトヨタに迫る1万5千台を叩き出した。インセンティブへの過度な依存はリスクもあるが、ライバルの中国勢がひしめく中、いちおうの結果を出した。CHERYグループは欧州、アジアでも同様な攻勢をかけている。どれもグローバルモデルであるため、国ごとの変更が少なくコスト管理がしやすい強みがある。今後のタイSUV、クロスオーバー市場への影響が気になるところだ。

タイでも増える3列シートミニバン

テスラはアジアのモーターショーではめずらしくブースを構え、しかもプレスカンファレンスでは「アンベール」(カバーをした新型の除幕・お披露目)を行った。タイ初登場となったのは「モデルYL」だ。その直後、日本でも「YL」が発表され、EVも3列シート時代突入を思わせた。

3列シートはインドネシアでは人気モデルのひとつとなっているが、タイで3列(以上の)シートは商用車や団体タクシー、送迎車がメインだった。ヒョンデのスターリア、サンタフェ、トヨタ アルファードなども人気だが、この波がEVにもきたようだ。

テスラブースのスタッフによれば、3列シートで6人乗りながら、価格はできるだけ低く抑えたという。中国勢とは価格では勝負にならないが、テスラブランドとAWD・ロングレンジのパフォーマンス、スーパーチャージャーで競争力はあるとする。右ハンドルはオーストラリアで最初に投入されたが、タイが2番目、3番目が日本ということになる。

また「XPENG X9」、「ZEEKR 009」「DENZA D9」など3列シート、キャプテンシートのミニバンの存在感が上がってきている。こうした動向を踏まえ、タイEV市場のひとつめのトレンドは、SUV・ミニバンの乗車定員増加と価格競争激化の動きだと感じた。

コンパクトEVが存在感をアップ

2つ目のトレンドはコンパクトEVだ。残念ながら、タイにはコンパクトEVの波はまだきていないが、今回のモーターショーでは、各社のコンパクトEVが目立った。狙いは数年後の新しい市場と考えられる。

BYDは「ATTO1」「ATTO2」という小型EVのタイ導入を発表した。タイでもっとも売れているBYD EVは「ATTO 3」と言われている。同社がタイ市場参入を果たしたとき、最初に販売したのが「ATTO 3」だ。その後、コンスタントに販売を重ね現在に至る。

今年の発表では、「SEALION」のPHEVなどラインナップを広げてきたが、コンパクトEVについては2モデルを持ってきた。DENZAブランドでは「B3」という「B5」を小さくしたようなオフロードタイプも展示していた。サイズ的にはミドルサイズとなりABセグメント(コンパクト)とは言えないが、EVシフトを小型車にも広げようとしている意図を感じる。

BYDのほかにもChery Q(CHERY)、EX2(GEELY)、AION UT(GAC)、ORA 5(GWM)、Firefly(NIO)など、コンパクトEV(もしくはSUVではないハッチバックやセダン)の展示が目立っていた。どれもカラフルな装飾や都会的なイメージで、女性や若い世代を意識している。「EX2」は、ボディ全体をファー(本物かどうかは未確認)で覆ったフラッフィー(モフモフ)仕様のデモカーがあった。BYD「ATTO 1」は、エントリーモデルは50万バーツ(約248万円)を切る価格設定とするなどアグレッシブだ。

Fireflyは現地のディーラーグループ「Thonburi(トンブリ)」と提携し、タイ市場に新規参入を果たした。トンブリグループは、メルセデスベンツやGEELYの代理店として契約を結んでいるが、Fireflyブランド(NIO)とは、「Thonburi BlueSky」として新たなパートナーシップを結び、モーターショーではその発表と「Firefly」発売をアナウンスした。価格は799,000バーツとATTO 1には及ばないもののHERE TechnologyのAIを活用したインテリジェンスナビ機能などの特徴を持つ。

Fireflyの担当者は、「オイルショックによるEV需要は一時的なものかもしれない。まずはこのショーで情報を集める」と戦略には慎重な姿勢を見せていた。IVI(車載インフォテインメント)やADAS+などの先進性など価格以外の市場ポジションをこれから作っていく戦略だ。

今回の取材ですべてのブランドをカバーできたわけではないが、各社が持ち込んだ車両、モデルを見ると、それぞれの売れ筋や今後の戦略を垣間見ることができた。昨年までEVの主戦場はプレミアムSUVという状態だった。2026年バンコク国際モーターショーでは、ミニバン、コンパクトと着実に市場が広がっていくタイEV市場の活力を感じた。

取材・文/中尾 真二

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この記事を書いた人

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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