BYDが第二世代のブレードバッテリーを正式発表してから2か月近くが経過し、それを搭載する新型モデルの導入とともに、リアルワールドにおける充電テストなど、さまざまな展開内容が明らかになってきています。中国でますます熾烈さを増す超急速充電の技術革新の現状を伝えるレポートの後編をお届けします。
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BYDが発表した最新のEV技術と展開に刮目
2026年3月5日、BYDが第二世代のブレードバッテリーの発表会を開催しました。はたして、その「スゴさ」とは何なのか。前編のレポートでは明らかになっている技術的な内容を整理しました。
後編となる本記事では、実際に第二世代ブレードバッテリーを搭載した新型EVが、それぞれどれほどのEV性能やコスト競争力を実現しているのかを俯瞰しつつ、さらに実際のユーザーが測定したリアルワールドにおける充電スピードの実測値などを紹介します。
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フラッシュ充電対応モデルを急拡大中

第二世代ブレードバッテリーを搭載する最初のモデルたち。
BYDは第二世代ブレードバッテリーの発表会で、最大出力1.5MWというフラッシュ充電に対応するモデルを複数発表し、一部車種は同時に発売もスタートしていました。その発表会から1ヶ月以上経過し、さらに複数のモデルが第二世代ブレードバッテリー(BB)を搭載し、フラッシュ充電に対応しています。特に重要なモデルを紹介します。
すでに発売中の第二世代ブレードバッテリー搭載モデル
Denza Z9GT
大型ステーションワゴン/26.98~36.98万元(約629~862万円)

BYDの高級ブランド「Denza(騰勢:デンツァ)」のステーションワゴン。122.496kWhの大容量電池を搭載することで航続距離はCLTC基準で1036kmを実現。トライモーター仕様の場合は0-100km/h加速2.7秒と強烈な動力性能。6ピストンブレーキキャリパーやカーボンセラミックブレーキディスクなどの超豪華装備を網羅して、「GT」としての走行性能を磨き上げています。また、セダンバージョンのZ9もまもなく発売予定。航続距離は1068kmを実現し、中国で人気の「56E」と直接対決へ。
(56EとはBMW 5シリーズ、アウディA6L、メルセデスEクラスというドイツ御三家の高級セダンの俗称。同じように“34C”や“78S”なども中国ではよく使われる表現です)
Yangwang U7
ハイエンド大型セダン/65.8~88.8万元(約1534~2070万円)

BYDのハイエンドEVブランドである「Yangwang (仰望:ヤンワン)」の超高性能ラグジュアリーセダン。BYD史上最大級となる150kWhバッテリーを搭載し、4つのモーターを組み合わせることで1008kmの航続距離を実現。ただしEVモデル(PHEVモデルもラインナップ)の急速充電は最大640kW充電にしか対応していないため、第二世代BBを搭載するものの厳密にいうとフラッシュ充電には非対応(とはいえSOC10%-80%充電時間は約16分と快速)です。
236Ah電池セルを198個直列に繋いでおり、定格電圧は635.6V。電池パック重量は926kgに及ぶものの、パックレベルのエネルギー密度は162Wh/kgと、LFPバッテリーとしては世界最高水準のエネルギー密度の高さを実現。DiSus-Z(電磁サスペンション)は世界初となるサスペンションモーターを搭載することで、サスペンションの動きから回生力として電力を回収可能。PHEVモデルには2.0Lターボ水平対向エンジンを搭載し、52.4kWh電池と組み合わせることでEV航続距離300kmを確保しています。
BYD Sealion 05 EV
コンパクトSUV/11.99~14.59万元(約280~340万円)

第二世代BBを搭載するBYDの最安SUV。上位モデルには68.55kWhバッテリーを搭載し630kmの航続距離を確保しています。新型240kWモーターを採用することで0-100km/h加速も5.9秒と俊敏。Sealion 05はYuan Plusの兄弟車で、Yuan Plusは海外名「Atto 3」として日本でも発売中。第三世代となるYuan Plusも第二四半期中に発売され、Sealion 05と同様の、大衆的なSUVとして優れたEV性能を実現。
Linghui e7
ミッドサイズセダン/10.98~11.58万元(約256~270万円)

BYDがライドシェアやタクシー向けに立ち上げた専用ブランド「Linghui(領匯:リンフイ)」のミッドサイズセダン。航続距離550kmを実現する57.5kWhバッテリーは第二世代BBを採用したことでフラッシュ充電に対応。商用向け車両でもフラッシュ充電に対応することで、商用EVの使い方が大きく変わるポテンシャルを秘めており注目を集めています。商用向けの電池保証はなんと6年60万km。ちなみに非商用車の場合は第一世代と同じく、全モデルファーストオーナーに限って年間3万km以下を条件に無制限保証を継続付与。第二世代BBに対するBYDの電池耐久性への自信がうかがえます。
今後数ヶ月以内に発売予定の第二世代ブレードバッテリー搭載モデル
BYD DaTang
大型SUV/予約価格:25~32万元(約583~746万円)

DaTang(大唐:ダータン)はBYD王朝シリーズのフルサイズSUVです。3列シート搭載で、全長5263mm、ホイールベース3130mmとなっています。130kWhの超大容量バッテリーを搭載することで、大型SUVとしては異例の950kmの航続距離を実現。さらに252LのフロントトランクやDiSus-A(デュアルチャンバーエアサスペンション)、DiPilot 300(市街地における自動運転支援や高度駐車機能)、後輪操舵機能など豪華ハードウェアを満載して、競争が激化する大型SUVセグメントに参戦。予約受付開始24時間で3万台を超える予約台数を獲得しました。2026年第2四半期中に正式発売予定。
Denza Z
4シートスポーツカー/?万元(?万円)

Yangwang U9に続くスポーツカータイプのEV。BYD初導入となるDiSus-M(磁性流体サスペンション)など最新テクノロジーを導入しつつ、トライモーター仕様により1000馬力以上、0-100km/h加速も2秒以内をアピール。U9と比較して軽量化を徹底することで、ニュルブルクリンクにおけるEV最速を目指します。
7月にイギリスで開催されるGoodwood Festival of Speedで正式登場予定。
Fang Cheng Bao Formula SL
フルサイズセダン/?万元(?万円)

BYDのサブブランド「Fang Cheng Bao(方程豹:ファンチェンバオ)」のフルサイズセダン。個人的にBYDのラインナップで最もエクステリアデザインが優れていると感じるモデルの一つ。直近の北京オートショーで初公開され、同じく初公開された中大型セダン「Formula S」のロングホイールベースバージョンという位置付け。Denza Z9などと共に高級セダンセグメントに参戦。第三四半期正式発売予定。
リアルワールドにおけるフラッシュ充電の実測値
発表された第二世代ブレードバッテリーによるフラッシュ充電性能には目を見張るものがある一方で、実際の市販車で、ユーザーによる充電テストにおいてどのようなフィードバックが得られているのかも同時に重要です。中国国内にはさまざまな超急速充電器が存在するものの、充電器によって相性問題が頻発しており、実際に期待通りの充電電力を発揮できない様子がしばしば報告されています。
そして、第二世代BBを搭載する複数のEVが実際に納車され始めており、オーナーによる充電テストの様子が複数SNS上に投稿されています。実は第二世代BBを搭載するモデルについては例外なく、車載ディスプレイで実際の充電電力の数値を確認できません。理由は第二世代の充電性能の特徴として、最高充電出力の数値を最大化するのではなく、SOC100%近くまで高い充電出力を維持するという充電制御方法を優先しているからです。つまり充電電力の数値自体が重要なのではなく、ユーザーにわかりやすく伝えるため、BYDはあえて充電出力の数値を公開していないということです。
従って、リアルワールドのユーザーレベルにおいて、BYDのフラッシュ充電器でどれほどの充電電力が出ているのかは厳密には不明であるものの、公共の急速充電器であれば充電器側のディスプレイやアプリ上で充電出力を把握可能なので、それをオーナーやメディアが測定してSNSなどで報告しています。

このグラフは、中国で発売されている超急速充電に対応する主要なEVの充電カーブを示したものです。今回注目していただきたいのが黄緑色で示されているDenza Z9GTの充電カーブです。中でも600kW級急速充電器(600A×1000V)で充電を行った場合、なんとSOC85%程度まで約570kW(600A×950V)の充電電力をキープし続けています。日本で発売されているEVしか知らない方にとっては、にわかには信じ難い充電性能かと思いますが、このようなEVがすでに中国の街中を走り回っているのです。
ちなみに今回の充電テストを行ったメディアによれば、SOC90%の段階で468kWを発揮していたものの、SOC91%で突如として240kWまで低下。車両側の指示電力は340kWだったことから、充電器側が充電出力を制限していたようです。実際のZ9GTの充電受け入れ性能は充電グラフで示されているよりも、さらに優れていると考えた方が良さそうです。
参考までに、日本の読者にも分かりやすいように、中国CATL製91kWhバッテリーを搭載する日産アリアB9の充電カーブ(緑色)も併記していますので比較してみてください。
また、昨年Super e-platformをベースにメガワット充電を実現したTang Lの充電カーブ(オレンジ色)と比較してみると、確かに充電を開始した直後は1000kW級の充電出力を発揮するものの、その後は断続的に低下し、SOC80%程度になると200kW強程度まで落ちています。まさに第二世代BBは充電制御の設計思想が第一世代と比較しても大きく異なっている様子が見て取れます。
ちなみに、BYDの第二世代BBに対抗して、4月にジーリーが独自内製LFPバッテリー「Aegis Goldenバッテリー」を搭載する「Lynk & Co 10」を発表してきました。このLynk & Co 10の充電カーブ(黄色)を見てみると、SOC70%の段階でも600kW程度の充電出力に対応しています。SOC10%から80%充電するまで5分33秒と、これは第二世代BB搭載車両の約6分という充電時間よりもさらに速い速度です。
BYDの技術革新によって、競合も急速充電性能の開発を加速しているということであり、中国市場の競争環境の激しさを改めて思い知らされます。
充電器設置の進捗状況は?

4人のオーナー要望によって設置された初のフラッシュ充電ステーション。
第二世代ブレードバッテリーの発表会当日の2026年3月5日までに、すでに4239基を設置済みだったフラッシュ充電ネットワークですが、その後もBYDは設置速度を加速しています。
最新データが判明している4月23日までに、311都市に5499基が設置されました。たったの7週間で1250基以上が設置された計算になります。BYDは2026年末までに2万基を設置する計画ですが、年末まで36週間あるため、このままの設置速度であれば7000基弱を追加可能となり、余裕を持って目標を達成できる見込みです。壮大な計画を着実に実行できるBYDの実力に改めて驚かされます。

直近では新疆ウイグル自治区のエベレストベースキャンプの道中にも設置。都市部だけではなく中国全土に配備が進んでいます。
とはいえ気になるのが短期的なEV販売動向でしょう。BYDは2025年シーズンにおける中国国内の販売台数が減少しています。これはおもにPHEVの販売台数減少が要因でしたが、2026年はこの販売減少から挽回することができるのかに注目が集まっています。
まさに中国国内の反転攻勢の切り札となるのが、第二世代ブレードバッテリーと超急速充電器を含めたフラッシュ充電システムなのです。BYDの中国国内の販売台数に注目しながら、2026年の成長のメインエンジンとなるであろう、海外販売がどれだけ伸びるのか。さらに今後、フラッシュ充電システムが海外でどのように展開されていくのか。
すでにBYDは高級ブランドDenzaの欧州進出に合わせて、フラッシュ充電に対応させたZ9GTとフラッシュ充電器を海外でも導入しましたが、BYD本体ブランドでもフラッシュ充電をいつ導入するのか。BYDの最新動向からはますます目が離せません。
いずれにしても、前編でも触れた通り、BYDは第二世代バッテリーを投入するのと同時に、それに対応する超急速充電インフラを同時に普及させています。とくに私が感心しているのが超急速充電性能に関する一般ユーザーとのコミュニケーションの部分です。昨年導入したSuper e-platformでも超急速充電テクノロジーは導入されていましたが、その発表会では技術的な解説を深掘りするあまり、一般ユーザーが若干置き去りだった感は否めませんでした。
ところが今回の発表会では「5分で充電完了、9分で満充電、真冬でも3分延長するだけ」と、とにかく誰にでも伝わる言葉で、その超急速充電性能をアピールしてきました。さらに誰にでも扱いやすい独自開発の急速充電器として、プラグ&チャージ機能なども実装。何と言っても、これらのEVの進化を体感してもらうために、今回紹介したような、商用向けモデルからコンパクトSUV、大型セダン、スポーツカーに至るまで、あらゆるセグメントにフラッシュ充電機能を搭載してきたことに驚きます。
全ての人にEVを提供できる環境整備を地道に、着実に進めてきたのがBYDであり、今回の第二世代ブレードバッテリーは、その切り札なのです。
取材・文/高橋 優(EVネイティブ※YouTubeチャンネル)
※記事中車両写真などはBYD公式サイトから引用。






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