【最新情報/2019.11.5】
『VWが電気自動車『ID.3』生産開始。首相出席の式典で示された「本気」の度合い』
フランクフルトモーターショー(IAA=Internationale Automobil-Ausstellung=国際モーターショー=フランクフルトモーターショーの正式名称)は、世界のモーターショーの中でも自国開催となるドイツメーカーが最も力を入れるモーターショーです。フランスとドイツでは毎年パリとフランクフルトで交互に開催されますが、ドイツメーカーは「ここ」に向けていろいろな「しかけ」を用意してきます。
今回、私はフランクフルトモーターショーの前に「アウディQ3スポーツバック」の試乗会に参加していたため、フランクフルトモーターショー前夜に行われた「フォルクスワーゲン・グループ・メディアナイト」からIAAに参加しました。
海外モーターショーって楽しいですよ
実は私はモーターショー取材が好きで、年に数回海外モーターショー取材に出かけます。一番最初に行ったのは今から15年ぐらい前のジュネーブモーターショーだったと記憶しています。それ以来、年に数回、これまでにアメリカ(デトロイト、ニューヨーク)インド、インドネシア、タイ、中国(北京、上海、広州)、韓国(ソウル、釜山)、ドイツ、フランス、スイス…。
今年はジュネーブに行けなかったので上海に行き、今回のフランクフルトで2か所目。今回のように国際試乗会などの流れでモーターショーに行く場合もありますが、そうではない場合でも、自腹でも行きます。メーカー取材で行くと、そのブランドの取材をより深くできるし、個人で行くと広く取材ができるという、それぞれのメリットがあります。
モーターショーの魅力は、世界で一番早く最新の車に触れられること。今はネットなどで写真も情報も手に入るため、現地に行かなくても原稿が書けてしまいます。むしろ、現地にいる人は忙しくて原稿を書くのが遅くなるぐらい。
しかし、写真で見るのと実物は違います。そのクルマの匂いや座った感触、手触りなどなど、どんなに高性能のカメラでも、たとえ360度カメラを使っても、人間の感覚や感性には叶いません。たとえばそのクルマが本当に「高級」なのか、「高級そう」なのかというのは、五感でわかるもの。そして会場の空気感などもそこでしかわからないことです。私はそんなプレスリリースには書かれない生感覚を伝えられたらいいな、と思っています。ただし、世界のモーターショー会場は東京モーターショーより広い場所で行われることが多いため、かなり体力勝負ではありますが。
開幕前夜に『ID.3』とご対面!
そして今回、私はフランクフルトモーターショーの開幕前日に「ID.3」を目にすることができました!
メディアナイトの会場は、翌日からモーターショーが行われる会場内VWグループのブース。このホールにはVWグループの「フォルクスワーゲン」「アウディ」「ランボルギーニ」「ポルシェ」「SEAT」「シュコダ」の6ブランドが勢ぞろい。グループは全部で11ブランドありますが、「ベントレー」や「ブガッティ」などは今回出展していません。
少し前までVWグループは、大きなホールを貸し切り、トラックの「スカニア」や「MAN」以外が次々とステージに登場し、ショーの目玉となるクルマと共に、それぞれの会社の代表がステージに登場してプレゼンテーションを行うというスタイルでした。
しかし9つもブランドがあると1ブランド10分だとしても90分かかります。翌日からの超ハードな取材を強いられるモーターショー前日なので体力的にちょっと厳しいのですが、それでもひと足早く情報が得られることやモーターショーの「お祭り感」を肌で感じることができるので、積極的に参加したいプログラムです。今年は、どんな発見が待っているのでしょうか
しかし、それも数年前までの話で、現在は少しスタイルが変わったとのこと。
少し早く会場に到着すると、話題のポルシェの電気自動車「タイカン」やランボルギーニ初のハイブリッドモデル「シアン」もすでにベールを脱いだ状態で各ブースに展示されていました。
「タイカン」は、フロントライトが印象的。目の奥の4つのシルエットは、ザ・ポルシェ。でもその端から下に伸びるデザインは好き嫌いが分かれそう。そしてアナログ感を忘れない最新ポルシェの電気自動車が、どんな走りをするのかはとても気になります。
さて、タイカンも気になりますがこの日のメインステージは、フォルクスワーゲンブースです。しかし周辺は白いカーテンで覆われています。
いよいよプレゼンテーションが始まりました。
メインは「ID.3」のワールドプレミア(世界初公開)ですが、その前にフォルクスワーゲンは「VW」のロゴを新しくすることを発表しました。文字が華奢になり、「W」の文字が少し前に出た2次元スタイルで、新しい時代を予感させます。また、ブランドミュージックが女性の声となり、ステージには可愛らしい女の子が上がって、フォルクスワーゲンと「ID.3」がいかに多くの人々のためのフレンドリーなブランド、フレンドリーな車かをアピールします。
そしてその新エンブレムを実装する第一弾モデルが「ID.3」になることが発表されました。つまり、「ID.3」には「新たなVW」を象徴する大きな大きな期待が込められているのです。
トピックはMEBプラットフォームをベースにしたこと。生産時にもCO2ニュートラルな方法で生産されていること。
電気自動車ならではのドライビングダイナミクスを体験できる共に、パーソナライズされたネットワーク機能も充実しています。
ちなみに「ID.3」には3つのバッテリーが用意され、45kWh のバッテリーで航続距離330㎞。58kWhのバッテリーで航続距離420㎞。77kWhのバッテリーで航続距離550㎞(すべてWLTPモード ※航続距離などの詳細はこちらの記事で紹介しています)。つまり、自分が普段、どれくらいの距離を乗るかによってバッテリーの容量を選ぶことができます。私だったら、長距離ドライブにも対応できる一番航続距離が長いものを選びそう。ただしそうなると価格が……。悩ましいところです。
リアアクスルにパワーエレクトロニクス+ギアボックスがあり、PM同期モーターを採用。高電圧のバッテリーはアンダーボディに搭載されているので低重心となり、ハンドリングの良さも期待できるとのこと。
また、特別限定モデル「ID.3 1st」が先行デビューすることになり、58kWhのバッテリーで3つの装備バリエーションが用意されます。ヨーロッパでは充電の電気代が1年間無料というサービスも用意されます。
ドライバーが近づくとヘッドライトがウインクするという装備もあったり、「Hello,ID. 」と声をかけるボイスコントロールもあり、楽しそう。ただし、ウインク機能(または、瞬き機能)は残念ながら、プレゼンテーションの時に動画で見ただけで、自分では体験できていません。
個人的に驚いたのは、パーキングブレーキが意外な場所にあること。電気自動車になるとこれまでの常識に捕らわれないユニークな発想が可能になる、というメッセージなのかもしれません。
ベースモデルが3万ユーロ以内でドイツでは政府からの補助金4000ユーロを受けたら約312万円。バッテリーは8年または16万km保証です。日本でももし同じ価格だとしたら約360万円(補助金なしとして)ですね。日産「リーフ」40kWhのXグレードが新車価格約366万円ですから、ほぼ互角の価格帯というイメージでしょう。ただし「ID.3」のバッテリーのほうが45kWhで容量が大きくなります。しかもエクステリアデザインも、インテリアも「ID.3」のほうが後発なだけに目新しく見えそう。
まずは2020年中ごろにドイツで発売されますが、日本導入はもう少し先になるようです。いよいよVWが本気で送り込んできた電気自動車「ID.3」。早急な日本導入を期待します!
(吉田由美)