VWが電気自動車『ID.3』生産開始。首相出席の式典で示された「本気」の度合い

2019年11月4日(月)、フォルクスワーゲンがザクセン州のZwickau(ツヴィッカウ)工場で電気自動車『ID.3』の生産開始を記念した式典を開催。インターネットを通じてライブ配信しました。式典にはドイツのメルケル首相も出席して登壇。EV普及への強い意欲を明言しました。

VWが電気自動車『ID.3』生産開始。首相出席の式典で示された「本気」の度合い

ライブ中継のアーカイブはこちら

フォルクスワーゲンではYouTubeの公式チャンネル『Volkswagen News』で式典中継のアーカイブを公開。さらに『Production of the ID.3 starts in Zwickau』と題したイメージ動画を公開して、e-モビリティ化への取組の「本気度」をアピールしています。

式典ライブ中継アーカイブ


※式典は14分過ぎから始まります。

ID.3 生産開始イメージ動画

式典でフォルクスワーゲンが示した「本気」のポイント

式典にはドイツのメルケル首相も登壇。国としての気候変動対策として電気自動車普及を重視しており「2030年にはドイツ国内の電気自動車(EV)保有台数を700万〜1000万台に増やす」目標を明言。ID.3の生産開始が「ドイツ自動車産業の未来を開くきっかけとなる」期待感を述べました。

改めて確認しておくと、ID.3はフォルクスワーゲンが電気自動車のために開発したプラットフォームである Modular Electric Drive Toolkit(MEB)を使って生産・発売される初めての本格的な量産電気自動車となります。欧州ではすでに予約を受け付けていて、2020年夏に発売予定。今回の式典を受けたリリースでも、3万5000人を超えるユーザーがすでに予約して、事前予約保証金を支払っていることが発表されました。

搭載する電池容量には、45kWh、58kWh、77kWhなどのバリエーションが用意されることになっており、ベースモデルの価格は低排ガス車の補助金(ドイツでは4000ユーロ)を適用すると2万6000ユーロ(約308万円)程度と想定されています。日本での発売は2022年以降とされていますが、補助金を活用すれば300万円前後で購入できる純電気自動車(BEV)として登場することが予想できます。

ID.3 参考データ
航続距離
電池容量航続距離(WLTPモード)実用上の予測航続距離
(WLTPモード)
推測EPA航続距離
45kWh
330km
230〜330km
294km
58kWh
420km
300〜420km
374km
77kWh550km390〜550km490km
ID.3 車体寸法
全長×全幅×全高
4261×1809×1552(mm)
ホイールベース
2765mm
最小車両重量
1719kg(DIN)
回転半径
約5.1m
トランク容量385ℓ
ID.3 1st 動力性能
最高出力
150kW
最大トルク
310Nm
最高速度160km/h

(※EPA値はアメリカでの実車検証を元に「WLTP / 1.121 = EPA」という計算式で推定しています)

グループCEOのハーバート・ダイス氏は式典の中で以下のようにID.3の役割を述べています。

「ID.3は、eモビリティの突破口として重要な貢献をするでしょう。クリーンな個人のモビリティを何百万もの人々が利用できるようにして、2050年までに気候変動対策としてモビリティの温暖化ガス排出を中立とするためにも、当社にとってのマイルストーンとなります」

エンジンの効率をどれだけ高めたところで、あくまでも「低炭素」でしかありません。でも、ドイツでは再生可能エネルギーによる発電を国として推進していることもあり、電気自動車であれば理想的な「脱炭素」を実現するための手段となります。「低炭素」を超えて「脱炭素」を実現するためには、自動車にも断絶的な変化が必要です。フォルクスワーゲンという世界的にも巨大な自動車メーカーが完全な電気自動車への意欲を明確に示している現実は、自動車の電動化がモビリティの脱炭素のために不可欠な選択であると、すでに世界が決意していることを示しています。

式典を受けて、フォルクスワーゲンは「電動化」への強い意欲を示すリリースを発表しました。いくつかのポイントを整理してお伝えしておきます。

2028年までに2200万台のEVを販売
Zwickau(ツヴィッカウ)工場には12億ユーロ(約1500億円)を投資。2020年には約10万台、2021年から毎年最大33万台のEVを生産する。さらに、フォルクスワーゲングループでは、2028年までに世界中で約2200万台のEVを販売し、EV普及のブレークスルーを支援する計画となっている。

工場での生産もカーボンニュートラルに
ID.3のバッテリー生産には再生可能エネルギーによるクリーンな電力を使用。生産工程で避けられないカーボン排出については、インドネシア・ボルネオ島の「カティンガンマタヤ森林保護」気候プロジェクトへの投資などを通じて相殺。自動車生産のカーボンニュートラルを実現する。

8000人の従業員全員が資格プログラムに参加
ツヴィッカウ工場は、段階的に完全な電気自動車工場へと転換する。約8000人の従業員全員がEVの生産に備え、高電圧技術など電気自動車製造のための資格プログラムに参加。ツヴィッカウ工場で将来性のある仕事を確保する。

eモビリティへの断固たる参入を決意
フォルクスワーゲンは、ID.3をスタートとして eモビリティへの断固たる参入によって、気候保護に重要な貢献をしていく決意を表明。ツヴィッカウ工場だけでなく、ドイツ国内各地の工場もID.3の生産を通じてEV生産への習熟度を高め、バリューチェーン全体でeモビリティへの変化を推進する。

脱炭素への「本気」が持続可能な自動車実現の鍵?

先日、ツヴィッカウ工場の従業員教育の様子を取材したある日本人自動車ジャーナリストの方からも「フォルクスワーゲンは本気だよ」という話を聞いたばかりです。今回の「生産開始式典」は、そんなフォルクスワーゲンの「本気」を象徴する出来事でもあります。

日本はもとより、世界の自動車メーカーには電動化への「温度差」があるのも事実。はたして、ID.3がEV普及のブレークスルーを実現するかどうか、今からの1〜2年でそれなりの「結果」が出てくることでしょう。

メルケル首相は、電気自動車普及のために「政治家として私たちの仕事は新しいイノベーションが定着するための枠組みを作ること」と述べ「充電インフラ建設に2035年までに35億ユーロ(約4240億円)を投資する」ことを明言しましたが、ロイターの報道によると、ドイツではID.3の発売開始に合わせて、2020年から電気自動車購入への補助金を増額する計画があることも明らかになりました。フォルクスワーゲンばかりでなく、ドイツも国を挙げて本気です。

テスラの躍進もしかり。電気自動車普及の現状をみていると、大きなイノベーションは社会的なコンセンサスから始まるのではなく、先駆的なカリスマや企業のチャレンジがもたらす恩恵であることを実感します。とはいえ、本当に電気自動車を普及させるためには、ユーザーの支持が不可欠であることも間違いありません。EVsmartブログチームは日本におけるEVのアーリーアダプター集団として、EV普及のブレイクスルーを応援していくぞ! と、改めて心に刻むニュースなのでした。

(寄本好則)


5 thoughts on “VWが電気自動車『ID.3』生産開始。首相出席の式典で示された「本気」の度合い”

  1. ニチコンなどの給電気に対応しているかが気になるところです。
    (筑波EVフェス、タイムアタック優勝おめでとうです。)

    1. TMR さま、コメントありがとうございます。

      CHAdeMO充電口からの給電には、おそらく非対応ではないかと予想しています。でも、CHAdeMO口を使わない「秘策」を先日取材してきました。もうすぎ記事でご紹介しますのでお楽しみに。

      > 筑波EVフェス、タイムアタック優勝おめでとうです。

      あざっす! スタッフにも関わらず、中途半端なタイムで優勝してしまいました。反省しています。w

  2. ポルシェの親会社であるVWは高圧充電システムを採用するか気になります。またドイツの充電網に対する補助金がどれだけ本気か意思表明も聞きたいところです。

    1. kazuさま、コメントありがとうございます。
      ID.3については従来同様の400V程度のシステムのようですね。欧州コンボ2の150kW充電には対応するでしょうが、CHAdeMO は最大50kWの予感も。。
      ドイツの充電インフラ整備。日本では2013年ごろ1005億円の補助金でしたが、メルケル首相は「投資」と言ってるようですね。政府が主体的に整備するという意欲表明と、私は理解しています。

  3. ドイツが官民一体で取り組むエネルギー転換
    2010年以降加速的に電力の再生可能エネルギーの割合が増え、2030年を前に50%は確実に超えてくるでしょう。
    着実に産業構造を改革し、国家を挙げてEVを推進する様子は正直羨ましいですね。
    エネルギー関係では今一番進んでいるんじゃないでしょうか。しばらく目を離せません。

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