トヨタRAV4 Prime(PHV)は急速充電に対応するのか?

アメリカで11月22日(金)から開催されているロサンゼルスオートショーで、トヨタがRAV4のプラグインハイブリッド車(PHV)である「RAV4 Prime」(米国車名・米国仕様)を世界初公開しました。日本でも来年(2020年)夏の発売を予定しています。

トヨタRAV4 Prime(PHV)は急速充電に対応するのか?

トヨタブランドで2車種目となるPHEV

EVsmartブログを愛読いただいているみなさんにとっては釈迦に説法ですが、プラグインハイブリッド車とは外部電源から充電可能なハイブリッド車のこと。EVsmartブログでは略称として世界のスタンダードとなっていて「Plug-in Hybrid Electric Vehicle」の略として合理的な「PHEV」を使用していますが、トヨタではプリウスにおいても「Plug-in Hybrid Vehicle」の略である「PHV」という呼び方をしています。今回はトヨタの新車種についての情報なので、記事中では「PHV」と呼びます。

『トヨタ自動車が開催した「電気自動車の普及を目指して」説明会の意味をじっくりと考えてみた』でお伝えしたように、トヨタは今年6月に電動化戦略についての説明会を開催しました。

その中でも、2017年に設定した「電動車普及のマイルストーン」を5年程度前倒しにして「2025年までに550万台以上の電動車を販売することが目標」であることを示しました。ただし、2017年の発表にある通り、電動車の中心(資料によると550万台のうち450万台)は、HV(ハイブリッド車)とPHVであることを示しています。

2017年に示された目標
電動車普及のマイルストーン
2019年の発表会で示された「前倒し」計画
電動車普及のマイルストーン

EVユーザーとして、また欧米や中国での規制の動向を見ると、外部からの給電ができないHVを「電動車」と呼ぶことにはいささか疑問を感じます。また、フォルクスワーゲンをはじめとする欧州メーカーのEV攻勢を考えると、今後数年、トヨタの「電動車」の主力がPHVになっていくのではないかと考えることができます。

今回発表されたRAV4 Primeは、トヨタにとってプリウスに続いて2車種目となるPHV。すでにHVは幅広い車種に展開していますから、さまざまな車種に外部から充電できるPHVを設定していくのは、さほどハードルの高いことではないでしょう。日本のユーザーとして気になるのは、普通のHVよりも高価にならざるを得ないPHVに、はたして日本でどのくらいのニーズがあるのか、ということですね。

RAV4 PHVに与えられた付加価値は?

RAV4 Prime(PHV)は、アメリカと日本で2020年夏、欧州では2020年後半の発売が予定されています。はたして、どんなクルマなのか。現地取材したわけではないので、プレスリリースの内容を読み解くしかないですが、まず、リリースで強調されているのは次の2点です。

1.パワフルな走行性能と環境性能の両立
2.スポーティでプレミアム感のある専用デザイン

1994年に日本でデビューした初代RAV4は、5ナンバーサイズのコンパクトな4WDのSUVでした。その後、世界に展開されるとことにアメリカで人気となり、アメリカで累計約397万台、グローバルでは累計約974万台(2019年10月末時点)が売れている人気車種です。

今回のPHVモデル追加について、リリースでは冒頭で「RAV4の基本性能をベースに(中略)パワートレーンには新開発のプラグインハイブリッドシステムを採用し、米国でクラストップレベルの加速性能を始めとするパワフルな走行を可能としています。電動車ならではの運転の楽しさに加えて、EV航続距離をはじめとする優れた環境性能も両立させて」いると紹介されています。

ひとつ目の訴求ポイントである「パワフルな走行性能と環境性能の両立」について。RAV4 Primeは既存のHVモデルと同じ「2.5Lエンジンを搭載しながらも、新開発の大容量リチウムイオン電池やモーターの大容量化をはじめ、高出力を可能にする新たなプラグインハイブリッドシステム」を採用。「RAV4ハイブリッド車を83hp(約62kW)上回るクラストップレベルの302hp(約225kW)を達成、加速性能は時速0-60Mile(0-96km/h)加速において5.8秒(RAV4のハイブリッド車は7.8秒)を達成するなど、パワフルな走行を実現して」いることが強調されています。
※出力や加速性能などの数値は米国仕様車の社内測定値。

「新開発の大容量リチウムイオン電池」がどのような電池なのか。また搭載している電池容量などは未公表ですが、EVとしての一充電航続距離(EPA基準で測定)は39Mile(約62km)で、燃費性能が90MPGe(約38km/ℓ)を達成しているそうです。航続距離が62kmということは、5.5km/kWhとして、約11kWh程度の電池は搭載している計算になります。プリウスPHVの総電力量(搭載電池容量)は8.8kWhなので、それよりも少し多めに電池を搭載していると考えられます。

リリースではさらに「大容量電池の利点を活かして災害時に役立てるよう、駆動用電池に蓄えた電力を最大1,500Wの出力で家電などへ供給できる外部給電機能を搭載」していることが紹介されています。このあたりは「さすがトヨタ」と言うべきそつのない選択だと感じます。

ふたつ目のポイントである「スポーティでプレミアム感のある専用デザイン」として強調されているのは、「専用ミッドグリルとロアバンパーを採用。メッシュグリルでスポーティさを際立たせ、ピアノブラックのアクセントで高級感を高めて」いること。「19インチ専用アルミホイールに大径タイヤを設定」。「インテリアでは、視認性を高めるヘッドアップディスプレイや、大型9インチディスプレイオーディオをRAV4として初採用。スポーティな走行を支援するパドルシフトも設定」していることが紹介されています。

プリウスでもPHVモデルは通常モデルよりも高級感が強調されました。RAV4 Primeの価格はまだ未公表ですが、HVモデル(日本向けのHYBRID Gが約390万円)と比較してもそれなりに高価な設定として、それに見合った「高級感」と「走りの性能」が付加価値として提供されるということでしょう。

大容量電池は床下に張り出して搭載し、室内スペースはまったく犠牲になっていないことが、メディアの記事で伝えられています。今まで培ってきたモデルの価値を守りつつ、充電できるという新たな価値を加えるための手法も、トヨタらしい進化を遂げているようです。

急速充電への対応は、まだ決まっていない

発表では触れられておらず、EVsmartブログ編集部として気になったのが「急速充電への対応」でした。プリウスPHVでは、欧米などでは急速充電機能はなし。日本仕様はCHAdeMO対応がオプション設定されました。

はたして、RAV4ではどうなのか。「欧米、中国仕様で急速充電に対応するのか。また対応する場合の規格は?」と「日本仕様はCHAdeMO対応の設定があるか?」という2点について広報ご担当部署に質問してみましたが、詳細は「現時点で公表しておりません。しかるべき時に公表させていただきます」という回答でした。予想としては、プリウスで対応しているのにRAV4で非対応とする理由がないでしょうから、おそらくCHAdeMO充電も可能になるのではないかと思われます。

現状でも、とくに高速道路では急速充電器の不足が問題になりつつあります。今後、トヨタから数多くのPHVモデルが登場すると仮定すると、日本国内の急速充電環境の整備はさらに火急を要する課題となります。なんとか「うまい方法」を考えていきたいですね。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)11件

  1. 初めまして。いつも興味深く読ませてもらっています。
    アウトランダーPHEVユーザーのカメラマンです。
    いつも大量の撮影機材を積んで、常に様々なバッテリーの充電や、時にはストロボの電源としても活用し、さらに振動のなさを生かした映像撮影にも重宝するRV系のPHEVは、もう切っても切り離せない仕事道具となっています。
    ただ、特殊な車だけにメンテナンスや車検をすべて三菱のディーラーに頼らざる得ないんですが、最大のネックは、私が住む四国の田舎には、三菱のディーラーが、トヨタや日産に比べて非常に少ない点でした。
    トヨタがこの車を急速充電対応で出すことになれば、多くの店舗があるトヨタ系ディーラーで充電できるようになるばかりか、PHEVユーザーが増え、その結果、道の駅やSAなどでの急速充電設備の増設が一気に進むのではないかと期待しています。

    1. LIFEisPHOTO さま、コメントありがとうございます。

      トヨタディーラーのQCもプリウスPHV発売以来増えている、と思ったら、まだ少ないんですね。四国だと、徳島に1基のみ。。。
      これからCHAdeMO対応のPHV車種が増えるのであれば、ぜひさらなる整備を期待したいところだと思います。また、ご指摘のように、ことに高速道路のQCインフラ整備促進にも、トヨタパワーを注入してもらえるとうれしいですね。

      ところで。。。「私が住む四国の田舎」で、カメラマンでいらっしゃる。ライター目指して上京し、ライター続けるために東京にしがみついている身としては、どのようにお仕事を回してらっしゃるのか興味しんしんだったりします。w

      toyotaqc

      ちなみに、三菱ディーラー含めた四国はこんな感じ。2013年の日本一周の際も室戸岬越えは計画時点で断念しましたが、太平洋側が心許ない状況はあまり変わっていないですね。
      (改めて確認すると、道の駅などにQCが増えて室戸岬越えルートも「繫がって」ました!)

      toyotamitsubishiqc

  2. いよいよトヨタがPHV攻勢を仕掛けてきましたね。
    もっとも電気自動車i-MiEVの技術を基にしたアウトランダーPHEVにどれだけアドバンテージがあるかは知りませんが。

    個人的に関心があるのはCHAdeMOとV2Hへの対応です。
    以前岐阜県内の道の駅でプリウスPHVへ急速充電していた方とお話しましたが、充電器の電流計に50Aと出ていたあたり充電速度は速くないと思われます。たぶん20kW機でも44kW機でも変わらないかと。
    あとはV2Hとの相性です。2019年問題を抱えるFIT切れソーラー発電家庭への普及には変換効率も考えると最低15kWhないとメリットないようにも思いますので。[変則的にi-MiEV(M)をV2Hにつなぎもう一台を普通充電で蓄電する手もなくはない]

    どうみてもPHEVはEVに比べてエンジン等がある分重たくなり電費は悪くなるもの。そして小型車ではエンジンとモーター類との同居が難しくなるもの。日産ノートe-POWERあたりが限界じゃないでしょうか!?
    電費10km/kWhを超えるEV、これから出てくるんでしょうか!?たぶん軽コンパクトカークラスでないと無理だと思いますが。

    1. > どうみてもPHEVはEVに比べてエンジン等がある分重たくなり電費は悪くなるもの。
      コメントありがとうございます。
      リーフとプリウス比較しても、そんな変わらないですよ。電池が非常に重たいので…。10年後に変わると良いですね。

  3. Priusは電池出力68kW。RAV4は225-131=94kW。だから比率的に12kWh以上だと思いますよ。
    EVレンジで計算すると、39÷25=1.56倍なので、8.8kWh×1.56=14kWh 以上。
    体格からして、たしかに20kWhになりそうな…

    1. ちゃぼ さま、コメントありがとうございます。

      個人的には、現行アウトランダーPHEVくらいかなあと想像はしていますが。また、待ち望むモデルのスペックをあれこれ予想するのも楽しみのひとつかと。価格もアウトランダーPHEVと競争力ある設定だったら、かなり売れそうな予感もします。

      早く発表して欲しいですね。

  4. 初めまして。いつも拝見しています。
    RAV4PHVのスペック公表を楽しみにしている者ですが、アウトランダーPHEVの海外モデルが12kWhのバッテリーで22miles(EVmode)なのでRAV4PHVは20kWhくらいのバッテリーを積んでいるのではないでしょうか?
    そうするとJC08モードだと100km弱くらいの計算になり、楽々アウトランダーPHEVのEV換算走行距離を超えてきます。
    モーターもRX450hクラス(以上?)だとしたら、相当魅力的なモデルになりますね。

    1. dc42 さま、ke-tau さま、コメントありがとうございます。

      記事をまとめながら、電池残量を気にする必要がないPHEVで細かく電費に言及するのもなぁと思いつつだったのですが、お二人からコメントをいただくあたり、意外と関心が高いポイントなのかも知れないですね。
      ke-tau さんがご指摘のように、12kWhアウトランダーPHEVのEV走行距離(EPA)は22マイル=約35km。kWh当たり3km以下になってしまうので、今度三菱の方に聞いてみよ、と思っていました。
      また、BMW 225xeが、JC08ですけど電池容量7.7kWhで航続距離が42.4km=約5.5km/kWh。実際は5km/kWhくらいがターゲットかなとも考えましたが、トヨタの技術に期待して「5.5km/kWh」を例示しました。
      ともあれ、日本向けの詳細な発表を楽しみにしています。

  5. RAV4PHVの電費が5.5km/kWhとするのは高過ぎじゃないですか?
    プリウスのEPA燃費が23.8km/LでRAV4ハイブリッドのEPA燃費が16.6km/Lですから約70%。プリウスPHVのEPA電費が6.44km/kWhなのでRAV4PHVのEPA電費もその70%としたら4.5km/kWhぐらい。4.5km/kWhと考えたら搭載電池は約13.8kWh。アウトランダーPHEVも13.8kWh積んでますし、パッケージ的にもこれくらいはあるんじゃないですかね。

    1. dc24様、コメントありがとうございます!もうお一方からももっと電費は低いはず、という指摘を頂いています。その可能性も大だと思います。
      https://www.fueleconomy.gov/feg/PowerSearch.do?action=noform&path=1&year1=2019&year2=2019&make=Tesla&baseModel=Model%20X&srchtyp=ymm
      一つのベンチマークとしてモデルXロングレンジ(Raven)があります。こいつが4.6km/kWh。4.5じゃないだろう、、と思う理由は、ココです。流石に天下のトヨタさん、100kWh搭載の重量級SUVより悪かったりすると、ちとヤバイかもしれません。。なので5-5.5くらいは出してくるのではないかと。。
      モデル3SR+が6.4km/kWhですからね。これも一つのベンチマークと言えると思います。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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