トヨタ自動車が開催した「電気自動車の普及を目指して」説明会の意味をじっくりと考えてみた

2019年6月7日(金)、トヨタ自動車が『電気自動車(EV)の普及を目指して』というメディア向け説明会を東京都内で開催。今まで「遅れている」と言われ続けてきた電気自動車に関する事業戦略を明確に示しました。はたして、トヨタは本気で電気自動車を作るのか? さまざまなメディアでこの説明会について報道されていますが、内容が幅広く、トヨタの真意がわかりづらいのが実情です。EVsmartブログでは、日本におけるEV普及への貢献、そして、トヨタは世界レベルでのEV戦争で巻き返せるのかという観点から、発表の内容を整理してみます。

トヨタ自動車が開催した「電気自動車の普及を目指して」説明会の意味をじっくりと考えてみた

説明会と質疑応答の動画が公開されています

説明会には、トヨタの電動化戦略を指揮する寺師茂樹副社長が登壇。続く質疑応答には、豊島浩二ZEVファクトリー部長と海田啓司電池事業領域領域長というEVと電池開発のキーパーソンが並び、記者やジャーナリストからのさまざまな質問に答えました。

説明会の内容は、トヨタ自動車の公式サイトで全編をほぼ完全に文字起こししたレポートとして紹介されています。

『EVの普及を目指して』(トヨタ自動車公式サイトニュースルーム)

また、説明会と質疑応答の様子は、プレゼンテーションと1回目の質疑応答、そして2回目の質疑応答の様子の2本に分けて、YouTubeの公式チャンネルで公開されています。時間と興味がある方は、ご覧になってみてください。

「EVの普及を目指して」メディア向け説明会 プレゼンテーション・Q&A①

「EVの普及を目指して」メディア向け説明会 Q&A②

着目すべき「発表」のポイントとは?

電気自動車への立場を今まで明確にしてこなかった一方で、トヨタと電気自動車については、今までにもさまざまなニュースが錯綜していました。パナソニックとの電池の共同開発や新会社設立、EV開発の新会社設立、中国・上海モーターショーでのBEV発表やグローバルで10車種以上のEV展開を発表、スバルとのBEVプラットフォームの共同開発、マツダやデンソーとの電気自動車共同開発、スズキやダイハツとの小型電気自動車共同開発、などなど、2017年ごろから頻繁に伝えられたニュースの数々は、「いったい、いつになったらトヨタは本気でEVを作るのか?」という疑問をかえって深めてさえもいた、といえるのではないでしょうか。

今回の説明会で発表された内容は、今まで積み重なってきた「トヨタはEVに本気なのか?」という疑問を解消し、錯綜していたニュースの意味がひとつの大きな戦略の上で理解できたという点で、とても有意義だったのではないかと思います。どういうことか、私が今回の説明会のポイントだと感じた点を、5つに絞って挙げておきます。

●EVが新しいモビリティ社会の中心になる。
●2025年までに550万台の電動車が目標。ただし、中心はハイブリッド車。
●EV普及には新しいビジネスモデルが必要。
●日本では超小型EVを2020年に発売。
●全固体電池について2020年中には「発表」する。

結論としては、トヨタは電気自動車に対してすでに「本気」になっていると捉えることができました。ただし、フォルクルワーゲングループやテスラのように、どんどん具体的な車種をリリースして世界の市場をリードしていこう、というよりも、EVの普及とともに、今までとは違う「ビジネスモデル」を模索、構築していくことを重要視していることがわかりました。

イメージとしては「テスラや日産、BMWやフォルクスワーゲンが切り開いた荒野へ用意周到に乗り込んで、道を固め畑を作ってビルを建て、おいしい果実を収穫していく戦略」という印象です。考えてみれば、文明開化や戦後の高度成長でも、日本、そしてトヨタは欧米のパイオニアが拓いた市場を耕すことで成功してきたのですから、とても日本らしい戦略とみることもできそうです。

では、それぞれのポイントについて、解説と考察を進めていきましょう。

●EVが新しいモビリティ社会の中心になる。

CO2排出量の削減や、中国、欧州、アメリカなどでの規制に対応するためにも、地球規模でEVをはじめとした電動車の普及は必要であることを、トヨタも強く認識しています。そして、MaaS(Mobility as a Service=マース)やCASE(ケース)といった今後進展していくであろう社会システムとEVは相性がよく、EVの普及が新しいモビリティ社会構築を促進し、その新しいモビリティ社会ではEVが中心になるという認識が示されました。EVなくしてモビリティの変革はなしえない、ということでもあります。

ちなみに、MaaSというのは、ICTを活用したマイカーに頼らない交通(移動)システムの概念。CASEというのは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(カーシェアリング ※Service の意を含むこともある)、Electric(電気自動車)を意味する造語で、今後の自動車産業が取り組むべき課題、とか「あり方」を示しています。

さらに、電動車に搭載する電池の再利用を進めるために、電池の耐久性や信頼性を高める技術開発に注力していることも明言されました。質疑応答のなかで示された「10年後、10万キロ走ったあとの航続距離を比較共有できる方法もつくっていきたい」(寺師副社長)「10年後、トヨタのEVを買って良かったと思っていただける車作りをしていきたい」(海田氏)といった言葉には、トヨタならではの魅力的なEV登場への期待が膨らみます。

●2025年までに550万台の電動車が目標。ただし、中心はハイブリッド車。

トヨタは2017年に、2030年にHVやPHEVを含む電動車の販売台数を550万台以上とするマイルストーンを発表していました。今回の説明会では「この目標を上回るスピードで電動化が進展しています。おそらく、5年近くは先行しそうです」(寺師副社長)ということで、2025年には電動車550万台と目標を前倒しすることを示しました。

テスラやフォルクスワーゲンなどの欧米メーカー、そして猛進する中国メーカーの現状をみると、5年前倒しでも遅すぎるのではという印象はありますが、電動車開発への速度をさらに上げる決意表明として、一定の評価はできるでしょう。

とはいえ、質疑応答の中で寺師副社長が「(電動車の台数としては)ハイブリッドが前に出てくる」「ハイブリッドを中心に電動化が進み、CASEやMaaSはEVが中心になる」と回答しているように、電動車のなかでEVが締める割合はさほど多くはならないと見込んでいて、具体的には550万台のうち「EVとFCVで100万台程度」でしかないという予測が示されました。

正直、それはちょっと消極的過ぎるのでは? と感じます。

「2020年に中国を皮切りにEVを本格投入、以降、グローバルに車種を増やしていき、2020年代の前半には、10車種以上にする」という、従来から公表されていた計画は今回の説明会でも繰り返されたし、開発中のクレイモデルまで含めたEVのラインアップを会場にも展示するなど、トヨタの意欲も示されました。

ただし、これは個人的な見解ではありますが、提示されたラインアップのスタイルを見ても、なんだかあまりワクワクしないのが気になります。従来のカテゴリーにEVを当てはめて、プリウスやMIRAIなどで繰り出しているデザインテイストの延長線上に「ひとまず置いてみました」というイメージに留まり、「おっ!」という新しさが感じられないからでしょう。

テスラのモデル3が欧米を中心にこれだけ売れているのは、ユーザーに「おっ!」という新発見や感動をもたらす力があるからこそであり、トヨタがそういうEVを世に問えば、電動化のスピードはさらに加速するはずと確信(個人的に)しています。かつてトヨタ自身がキャッチフレーズにしていた「Fun to drive」は、EV開発でもぜひ忘れないでほしいな、と思います。

●EV普及には新しいビジネスモデルが必要。

つまり、トヨタの思惑としては「電動車普及は急ぐけど、EVはそんなに売れないだろう」ということになります。あるいは「そんなに売りたくない」と捉えることもできるでしょう。その理由も、説明会で明確に示されました。つまり、自動車を作りディーラーを通してユーザーに販売するという現在のビジネスモデルでは、EVを売っても儲からないから、です。

企業ですから、利潤を求めるのは当然です。EVが持続可能なモビリティになるためにも、適切な利益を得られることが必要です。トヨタが構想しているビジネスモデルも示されました。

「耐久性の高い高性能な電池で商品力を向上することをはじめ、製造から廃却まで、EV及び電池を最大限に活用し、普及における課題に対応します。

具体的には、販売に加えてリースも充実、確実に回収し、お客様が使われた後の電池の状態を査定、その上で中古車として流通させたり、電池を補給部品やクルマ以外の用途も含めて再利用し、電池をしっかり使い切る、さらには、お客様に安心して使っていただけるよう、充電サービス・保険等の周辺サービスもEVに最適なものを整備いたします。

このようなビジネスモデルを、様々な分野のパートナーの皆様と一緒に作ることを考えています」(寺師副社長)

EVの特長である「電池」を活用して、さまざまなサービスと結びつけることで、新たな付加価値を生み出していく。そのために、さまざまな分野のパートナーと協力して新しいビジネスモデルを構築していくという決意です。

寺師副社長が「CASEやMaaSはEVが中心になる」と明言したのは、EVを新しいビジネスモデルの必須ツールと位置づけているからと理解できます。

自動車に夢や感動を求めてきた私たちには少し寂しいことではありますが、たとえばシェアリングサービスのツールとしてのEVに「夢や感動」はあまり必要ではなく、パブリックな移動手段として必要最低限な機能を備えた乗り物になっていくのは、仕方ないことなのかも知れません。

●日本では超小型EVを2020年に発売。

さて、EV普及に意欲を明示したトヨタですが、10車種以上をラインアップする乗用車EVの展開は「中国、欧州など」が中心とのこと。私たちが気になる日本で最初に展開するのは「歩行領域」を支援する乗り物を含めた「超小型モビリティ」であることが明らかにされました。

具体的には、2017年の東京モーターショーで発表された『i-RIDE』をベースとした超小型EVです。

また、歩行領域、つまり歩いて移動する範囲をカバーするEVとして、これも2017年東京モーターショーにコンセプトモデルとして出展された『i WALK』を2020年に発売。さらに、座り乗り対応や、車椅子連結タイプのEV(ヴィークルというよりは移動支援ツールですけど)を、2021年に発売予定であるとしています。

さらに、各地で実証実験が進められていた三輪バイク風の『i-Road』も、まずは日本で、新しいビジネスモデルを探るための超小型EVとして位置づけられているようです。

10年ほど前から国土交通省が提言している「超小型モビリティ」は、安全基準などの課題が山積して暗礁に乗り上げているのかと思っていましたが、トヨタが「2020年発売!」と宣言したということは、着々と準備が進んでいたんですね。ただし、ナンバーなどがどうなるかは「まだわからない」ということでした。

超小型モビリティや歩行領域EV。EVが普及していくためには重要なカテゴリーだと思います。今までにも試行錯誤を重ねながらなかなか広がっていかなかったことを思えば、2020年という具体的な時期をトヨタ自らが明言したのは、着目すべきだと思います。

一方で、いわゆる乗用車EVは「グローバル展開のEV」として「中国、米国、欧州など、EVの需要の高い市場に向けて、普及を念頭に置いた開発を進めています」(寺師副社長)とのこと。

日本ではあまり売るつもりがないのかと気になっていたら、質疑応答の最後の最後で、私も関わっている日本EVクラブ副代表の自動車評論家、御堀直嗣さんが「日本導入の見通しは?」と、ズバリ質問してくださいました。

寺師副社長の回答は「日本国内にもEVが欲しいというお客様は一定数いらっしゃることはわかっています。どのようなビジネスチャンスがあるか日本特有のモデルが必要かどうかなどを含めてラインアップを検討しつつ、お客様が買いたいと思う車をぜひ作りたい。必ず、何かは出します。お待ちください」という内容でした。

数年のうちに、日本でも「トヨタのBEV」が発売されるのは間違いないでしょう。素晴らしいことだと思います。

とはいえ、全体を通じてEV普及の鍵を握るのは「マーケット」であり、日本のユーザーはそれほどEVを待ち望んではいない。日本ではあまりEV(乗用車)は売れない。と認識されていることが伺えました。

個人的には、日本ではEVが売れないなんてことはなく、たとえば、200万円以下で一充電航続距離が150〜200km程度の軽自動車EVがスズキやダイハツから発売されたら大ヒットするに違いないと、数年前から言い続けているのですが。。。

ちなみに、マツダやスバル、スズキやダイハツなどとの共同開発についても「複数のバリエーションについて、それぞれ得意分野を持つパートナー企業の皆様と共同で企画及び開発を進めて」(寺師副社長)いることを明示。『トヨタZEVファクトリー』では、さまざまな関連企業や団体からの出向者が集まって、ZEV普及に向けた開発を進めているそうです。

1ユーザーとしては「もっとシンプルに魅力的なEVを発売してくれればいいんだけどな」とも思いつつ、EVをたんなる「自動車」というよりも「社会の仕組み」として普及させていこうという、トヨタの意思を感じます。

全固体電池について2020年中には「発表」する。

EVに搭載する電池の性能についての言及が多かったのも、興味深い点でした。「私たちは電池メーカーでもあると思っています」(寺師副社長)と明言しつつ、長期間、長距離を乗っても劣化しない、信頼性の高い電池開発に取り組んでいることが語られました。

また、EVの本格的な普及に向けて、従来から協力関係にあったパナソニックをはじめ、中国のCATLやBYDからの供給を受ける体制も確立。リチウムイオン電池供給のおける世界のトップ3を占める会社全てと協調して、電動車の急速な普及に対応することが示されました。このあたりは「さすがトヨタ」って感じです。

さらに、質疑応答のなかで言及されたのが、トヨタが自社開発に取り組んでいる「全固体電池」についてです。

社内で全固体電池開発を担当している海田啓司氏が「チャレンジングな開発ではあったが日々、改善点を発見し、みなさまの期待の時間帯に出していけるよう努力」していることに触れると、隣席の寺師副社長が「来年、オリンピックのタイミングではなんらかの形でみなさんに見ていただければ」と明言。海田氏はちょっと苦笑い気味に「きっついなぁ」という表情ではありましたが、2020年には「トヨタの全固体電池」が登場する、という期待が膨らみました。

実用化されたとしても、当面は価格が高かったりするのでしょうが、現状のリチウムイオン二次電池に比べて圧倒的に優れたポテンシャルをもつ全固体電池が登場すれば、EV普及がますます加速することは間違いありません。世界の自動車市場で、トヨタが一気に存在感を高めることにも繫がることでしょう。車種のバリエーションなどとともに、トヨタの本気に期待したいところです。

かなり長編レポートになってしまいました。ともあれ、トヨタはEVに背を向けているわけではないということが明確になったという点で、EV普及を応援したいEVsmartブログとしてもうれしいニュースでした。2025年に向けて、トヨタから続々と登場するであろう「本気」の電動車に注目していきたいと思います。

(寄本好則)

この記事のコメント(新着順)16件

  1. 充電の件も含めて、超小型モビリティに何の魅力も感じませんし実用性も皆無で売れるわけがないと思います。
    いくらなんでも安いだけの車ならガソリン車や中古車を含めていくらでもありますしね。売れない車を出して売れないという実績を作り、売れないから出さない言い訳づくりをしてるのかと思う酷さです。
    良くも悪くも他社で売れる車があるならさっさと参入する柔軟さがあったのに
    重い鉛電池の時代や、リチウムイオンでも高価で洗練されてない時代はともかく
    もうテスラが「EVは売れない」という常識を覆した後でこれを言ってるのは理解に苦しむ。ある意味もうお手本がある。
    はっきり言ってもうiPhoneが登場した時代にガラケーに拘ってるようなもの

    いやHV含むエンジン車が完全になくなるとは思いませんし、燃料電池車だって未来がないとすら思いませんが、それでもEVに注力しない言い訳にはならないと思います。

  2. なぜ電気自動車などは30分程で80%程の充電が可能なのに、小型モビリティではフル充電に5時間ほどかかるのですか?

    1. 高校生 様、ご質問ありがとうございます。充電に時間のかかる車種は、恐らく急速充電に対応していないものと思われます。そのような車両は、長距離を移動することはできないので、基本的に近場専用の車と考える必要がありますね。
      急速充電に対応するためには、専用のコネクターだけでなく、専用の回路や部品が必要となり、その分コストが高くなります。

    2. 高校生さん、コメントありがとうございます。

      答えとしては、充電する出力の違いです。
      30分で80%は、出力50kWなどのDC急速充電。
      5時間とかの小型モビリティでは、スマホ充電とかのように、ACの低出力で充電しているってことですね。

      なぜか。

      チコちゃん的に言うと、高出力の充電器は高いから〜、です。

  3. トヨタは20世紀の頃から次はEVと言い続けてるメーカーですので疑ってはいませんが、あまり動きが見えなくてやきもきする状態が何年も続いてますね。デカい船だけに向きを変えるのは時間と労力が大量に必要なんだろうとは思いますが。
    まあなんにせよ日本では充電インフラの問題で消費者はEVを敬遠気味ですから、国内は当面トヨタの得意なハイブリッドやニッサンのエクステンダー付EVのようにガソリン入れれば走る!という安心感のある乗り物で電気に慣れてもらうことになるでしょう。トヨタの日本への対応も仕方がないように思います。
    イギリスでしたか、新築の家に充電器設置を義務付けたのは。日本もあの位やらないと、どんなに良い車が増えてもなかなか消費者の心が前に進まないように思います。

  4. 興味深い記事、どうもありがとうございます。
    もっとこういう記事を書く人が増えてほしいと思います。
    自分は米国在住ですが2月にテスラのモデル3(4駆バージョン)を購入しました。
    自分はそれほど車が好きな人間ではなく、目も悪いのでなるべくなら運転したくない方でした。そもそもモデル3を買った一番の理由は評判の自動運転でした。 
    でも、モデル3に乗ってみて、ぶったまげました。これは、今まで自分が持っていいたクルマという物と全く別物か、といっても過言でないくらい、何から何まで突拍子もなくちがいます。
    まず走りが、別世界です。音もなく、今まで体験したことのないような勢いでグイグイ加速していく感覚は一度経験すると病みつきになります。高速道路での追い越しも、一瞬です。しかも、ガソリン車のようにエンジンが必死に唸ったりせずに、何事もないかのように、起こるので、楽しくなります。ハンドルを切ればファミリーセダンなのに、まるで地面に張り付いたゴーカートに乗ってるかのような感覚です。テスラを購入してからしばらく、運転嫌いな自分が何かと理由を付けては運転してました。こんな楽しいのに、自動運転を使うのが勿体無いと感じるくらい。それくらい衝撃的だったんです。
    さらに、驚いたのが2-3週間に一回のソフトのアップデート。画面の体裁が多少変わる、という表面的なレベルじゃなくて、モーターやブレーキの制御から自動運転のアルゴリズムまでどんどん変わっていきます。自分が買ってからも、モーターの出力が5%アップ(今は最高出力400馬力)したり、行き先に従って高速道路で自動車線変更、高速の乗り換え、出口まで完全自動で連れて行ってくれるNavigate on Autopilot (without confirmation)が加わったり、通常運転時の緊急車線維持(危険な車線変更をしようとすると押し戻してくれる機能)が加わったり、駐車中に誰かが触ったり、ぶつかったりしたら、自動的に前方と左右のカメラに前後の動画を保存してくれる防犯モードが加わったりしてます。買ってからどんどん進化して性能アップしていく車って、ありえないでしょ?
    テスラが売れなくなってる、なんて巷では業界の専門家やら評論家が言ってますが、この驚異的な車が世の中に増えてくると、周りに口コミでさらに広がってさらに売り上げが加速されるのは間違いないです。雪崩状態にならないのは値段が高いからでしょう。でも高級車を買っている層が実際にテスラに乗ってみたら一気に虜になってテスラに乗り換えるのではないでしょうか。それくらいインパクトがあります。
    翻って、日本の大手メーカーさんを見ると、本当にがっかりします。全く近視眼的です。今の日本でEVが売れていないから、需要がないと思っている。売れないのは人が欲しくなるEVが国内にないからでは?
    あと充電がEVの最大の欠点だと自動車関係者も含めて一般の人は思っているようですが、実際にEVを使ってみると、家で駐車している最中に充電できるっていうのはガソリンスタンドによらなくていいから、逆に利点なんですよね。
    トヨタさんの「乗って楽しい」車はどうしたんでしょう?スープラとかまた出ましたが、EVバージョンでも出したらどうなんでしょうか?モデル3ほど乗って楽しい車はないと思いますよ(私ではなく、BMWやベンツなどの高級スポーツ車に乗り慣れてる専門家たちが口をそろえてそう言ってるんです)。
    今物凄い勢いで世界中でEVシフトが起こっているのに、EVは規制をクリアするためにとりあえず中国で出して、でメインはPHVで当面はお茶を濁そうと考えている。EVなんてPHVをちょっと改造するだけだなんて高を括ってるのかもしれませんが、だとしたら、EV革命も乗り遅れ確実ですね。テスラのようなEVを作るにはいろんなノウハウの蓄積が必要です。一朝一夕には人が欲しいEVは作れない。レコードからCDへ、フィルムカメラからデジカメへ、ブラウン管テレビから液晶テレビへ、ガラ携からスマホへあっという間に変わってしまったように、みんながその良さに気が付いたら、転換は一気に起こりますよね。今のように及び腰では日本の自動車産業は本当に危ういですね。PC革命、インターネット革命、モバイル革命に乗り遅れ、今や日本に唯一残るのは自動車産業だけなのに、今目の前で起こりつつあるEV革命にも乗り遅れたら日本の将来は本当に危ういと思います。みなさん沈みつつあるタイタニックの上でパーティーをしている状態にあるのに早く気が付いてほしいです。

  5. 興味深い記事をありがとうございました。大変、興味深く読ませていただきました。

    47分14秒の動画も(我慢して)最後まで見ました。技術的なことはよくわかりませんが、素人なりに感じたのは「あれが足りない、これも足りない、だからまずあれからやります、その後でこれもやります、あ!それも足りないかもしれない・・・」という消極的な姿勢です。

    しかし、志の高さとか風呂敷の大きさはなかなかのものを感じましたので、早くたくさんの仲間を集めて、志を実現してほしいなと感じました。

    1. tamazou様、コメントいただきありがとうございます!消極的なのかどうか、ちょっと私には確信は持てなかったのですが、少なくともこれからノウハウの蓄積を行っていかなければらない、という認識ができているという点で、私は安心した部分があります。まだまだ行ける、などとメーカーが考えているとは思えませんが、まさかそういう内容だと本当に不安になりますしね。

  6. トヨタの電動化車両の取り組みの解説、ありがとうございました。 大変興味深く読ませて頂きました。

    少し気になったのですが、上のコメントの中に、シリンダーの中なて1000度超えてもいいやみたいなことが書かれていましたが、現在のエンジンはそのようにおおらかな制御にはなっていません。目標温度こそ高いものの、ノッキングを回避しながら高圧縮比とし、さらにはターボで加圧までする訳ですから、燃焼室内の温度管理、空燃費の制御は非常に精緻なものです。昔のように、ガソリン吹いて冷やせばいいや、みたいな時代ではありません。

    BEVとHVでは使う技術が大きく異なるという点に異論はありませんが、BEVファンであっても、現代の内燃機関の技術や技術者への尊敬の念を忘れてはならないものと思います。

    さて、トヨタの目標値ですが保守的だと私も思いますが、トヨタらしくて良いとも思います。 100万台の生産設備だけでも巨大な投資になると思いますし、トヨタのような巨大企業はその一点に集中して投資するのはやはりリスクが高いと思います。 中国以外の新興市場の電力事情を考えれば、まだまだHV/PHEVにも投資をしたいだろうとも思います。

    それに、予想より市場が大きいとなれば、喜んで計画を前倒しするでしょう。 日系企業では、前倒しは問題ありませんが、計画の後ろ倒しは失敗とみなされるので、公式な数字ほど保守的なものになりがちです。

    デカイ話をぶち上げてワクワクさせるけど、何度も何度も延期を繰り返す企業、つまらない数字が並ぶけど堅実に約束を守る企業、良い悪いではなく、文化が異なるのだと思います。

  7. トヨタの発表を見ると、トヨタは危ないと心底思います。EV化と言いながら、EVを発売白と言われている場所でしか売る気はありません。日本では全く発売の意思なしです。
    私もEV7年乗っていますし、たくさんのEVオーナーを知っていますが、一度EVに乗るとガソリン車には戻れません。
    ハイブリッドはちょっと燃費のいいガソリン車でしかありません。悪いのはシステムが複雑になるためメンテナンスはガソリン車以上に必要です。そこがトヨタの魂胆です。
    EVは燃料業界、自動車業界に影響が大きいですが、逃げてはいけないと思います。今のままではゲームチェンジありです。中国の動きは大きいです。私も昨年見て驚きでした。このままでは日本は茹でガエルやガラパゴスになりそうです。

  8. 素人の自分には詳しい事は分かりませんが、トヨタの発表は至って現実的であると思いますが。
    中国は別として、フォルクスワーゲンなどの計画を見て「果たして本当に売れるとでも思ってるのだろうか?」という印象しかありません、個人的には「在庫の山」となるのでは無いかと心配すらしますが?

    ここ数年のEVブームと、現実の市場の動向があまりにも解離しており、異常な矛盾としか言いようがありません、トヨタも売れると判断出来れば一気に舵をきるでしょう?HVやエンジン車をもっと売っていたい・・なんてEV信者の思い込みですよ。
    「売れないものに博打的投資はしない、但し、準備は怠らない」
    どう見てもこれが正しい姿だと思いますが?

    1. そえとも様、コメントありがとうございます!

      >トヨタの発表は至って現実的

      うーん、そうでしょうか?もし現実的であるなら、そもそも発表するほどのネタではないように思いませんか?

      >在庫の山

      フォルクスワーゲンとテスラ以外に、それほど多く電気自動車を量産しようとしている会社はありません。テスラは昨年一年で24万5千台の電気自動車を販売しました。
      https://blog.evsmart.net/ev-news/volkswagen-22m-cars-by-2028/
      フォルクスワーゲン社は2028年までに合計2200万台と発表。10年間と考えて10で割ると年間220万台とかなり多いですね。
      その他の既存自動車メーカーの2019年の年間予定生産台数は、ジャガーi-Paceが約5万台、ポルシェタイカンが1万台、アウディe-tronが2万台、メルセデスEQCが2万台です。フォルクスワーゲンがこれから作る車はともかく、それ以外のメーカーの車のすべては予約済みの車両で、全部売れる見込みですよ。

      またテスラの成長を見てみましょう。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/tesla-global-automotive-leader/
      • 2018年: USでの小型・中型ラグジュアリー車両カテゴリーで売り上げ1位
      • 2018年第3、第4四半期: カリフォルニアで全ての車種カテゴリーの中で売り上げ1位
      • 2018年第3、第4四半期: 全てのUSブランドの中で売り上げ1位
      • 2018年第4四半期: 全てのUS内での車両売り上げで収益1位
      • 2019第1四半期: USでのラグジュアリー車両カテゴリーで売り上げ1位
      • 2019年3月期: ノルウェー、オランダ、スイスそれぞれの国内全ての車両売り上げの中で1位(ノルウェーでは2位につけたフォルクスワーゲン e―ゴルフの6倍、オランダでは2位のフォード フォーカスの1.8倍)
      • 2019年2月から3月: ドイツでの売り上げ成長453%

      「電気自動車」というカテゴリに絞られていないデータから事実を抜き出してみました。ラグジュアリー車両には、BMW 3シリーズやレクサスIS/ES/LSなどが含まれます。

      最後に、ブランドというものについてちょっと考えてみたいと思います。
      今までのブランドは、歴史と過去のイメージ、実績によって形成されると考えられていました。しかし昨今の消費者は少しずつ変化していき、夢や興奮を与えてくれる商品やサービスにブランド価値を見出しています。経験することにより、価値を感じられるわけです。既存自動車メーカーが既存のブランド価値を追求する間に、フォルクスワーゲンやテスラは電気自動車を使った、夢や興奮を与える存在にシフトしていっています。これらは残念ながら商品を出さずに積み重ねたり作り上げたりできるものではなく、アイディアや、フィードバックによって形作られるものです。
      既存自動車メーカーはおっしゃるように「時期が来るまで様子見」をする戦略なのでしょうが、これは本当に得策なのか、実際に数年たってみないと本当のところは分からないと思います。今まで、音楽配信の登場により、音楽の消費がカジュアル化し、定額のサービスへのシフトを生み出し、レコード/CD等はほぼメインストリームから追い出されました。気軽さやリコメンドなどの夢・興奮につながる機能が評価されているのです。スマホも最初はあまり普及していませんでしたが、iPhoneの登場以降、ゲームやアプリなどの提供により、若者は夢や興奮を感じて一気にシフトが起こっています。
      クルマはどうなるでしょうね?今の車を運転して興奮できるか?夢を感じられるか?それが、既存自動車メーカーに課せられた課題だと言えると思います。それがガソリンで実現できるなら、全く問題ないと思いますよ。

  9. トヨタに限らずレシプロエンジンの命を1秒でも延ばしたいだけです。
    トヨタなんて本気になればハイブリッドの電池容量を増やせばいいだけなのですから。
    それもこれもテスラなどEVメーカーがもたついているうちだけてしょう。

    1. d43f様、コメントありがとうございます!
      エンジンの命を延ばす、そういうことかもしれませんね。

      ハイブリッド車の電池を増やしたものが電気自動車、というのはちょっと私は意見が違います。もし本当にそうトヨタさんが考えていたら(まずないと思いますが)マジでヤバイです。
      まずバッテリーのサプライチェーンです。例えばプリウスが年間150万台だと仮定して、これが全部リチウムイオン電池の0.7kWhバージョンだと仮定すると(実際には数世代前のニッケル水素電池が多いと思います)、150万x0.7kWh=1.05GWh。これで例えばリーフe+ 62kWhバッテリーの車が何台作れるかを計算すると、1万7千台弱。これを10万台まで増産するには、今までのプリウス用のバッテリー工場の規模を5.9倍にしなければなりません。もちろんテスラ社は昨年2018年1年間で245,240台の車両を販売していますが、この平均バッテリー容量を70kWhと仮定すると、17.2GWh。これはプリウスが現在1年に使用しているリチウムイオン電池の16倍強となります。
      次に制御技術です。ハイブリッド車はそのハイブリッドパワートレインそのものの高いノウハウがありますが、電気自動車は2モーター4輪駆動車も多く、エンジンと異なり強い回生があるため、トルクの制御のスピードが100倍以上求められます。今までのトラクションコントロールと同様ブレーキによる駆動力制御だけでなく、モーターパワーそのものの制御を1000分の1秒単位で行っていかなければなりません。4輪駆動車の場合はこれにトルクベクタリングも加わることになります。
      あとバッテリーの温度管理です。ハイブリッド車の場合はそこまでバッテリーを駆使するわけではなく、高負荷時(急加速、登坂、超高速走行)にはエンジンが主要なパワーを提供するのですが、電気自動車の場合は高負荷だろうがバッテリーの電力を使用します。これによりバッテリーは走行時にも急速充電時にも発熱しますから、これらを空冷にしろ水冷にしろ冷却する機構が必要です。この熱はエンジンのようにシリンダー内は1000℃超えてもいいや、冷却水を85℃くらいにキープね、というものではなく、均等に50℃前後に冷却し続ける必要があります。冬場は10℃以上にキープする必要もあります。真冬でも朝はバッテリーはヒーター・車室もヒーター。高負荷走行中はバッテリーはクーラー・車室はヒーター。急速充電中もバッテリーはクーラー・車室はヒーターとなり、複雑な温度調整が必要です。またこの温度管理は駐車中も稼働していますので、駐車中もコンピュータは常時稼働。つまり12Vバッテリーには負荷がかかり続けるため、駆動用バッテリーの残量が少ない時はいろいろと考慮して電力を使わないと、電池がなくなって動かなくなってしまいます。

      他にもいろいろあると思います。電気自動車って冷やすものが結構いろいろあるんですよ。バッテリー・モーターは誰でも思いつきますが、それ以外にもモーターへ電力を供給しているインバーターはかなり発熱しますし、自宅充電に使う車載充電器も発熱しますので、充電中は冷やし続けないといけません。必要なら、夜中でもファンを回すかエアコンを入れて、充電を行う必要があるのです。エンジン車のように駐車中はOFF!みたいなものではないんですよね。

  10. トヨタがSOFT BANKと組んだ意味を考えると、車の個人所有からより社会的なインフラ化するモビリティという方向をみているのかもしれませんが、この発表だとまだよくわかりませんね。現実のマーケットを見ていれば、日本のハイブリッドガラパゴスがそう簡単にev化するわけもないだろうとも思いますが、トヨタ自身もそう思っているとすれば寂しい話です。
    ノルウェーの自動車販売ランキングのトップテンにEVがどんどん入っている現実を知ると、どこかでブレイクスルーが起きるのはヨーロッパだからともいえ無いような気がします。
    トヨタの規模の会社が現実に迎合するのではなく、需要を創出する、くらいのことやってくれればいいのですが。Teslaは言うに及ばずVWほかの老舗も舵を切りましたから。かくいう日産もLEAF以外何も出てないのが気になるところですけど。

    1. Jacksonさん、コメントありがとうございます。
      MONET テクノロジーズのことにも触れようかと思いつつ書き忘れてました。ソフトバンクはトヨタと組んだだけでなく、ウーバーや中国の滴滴出行など、世界のライドシェア大手にばしばし出資していますね。トヨタが目指す「ビジネスモデル」が走り始めると、自動車のデザインや機能を決めるのは自動車メーカーではなく、IOT企業になるのか知れません。
      豊田社長が明言する「モビリティカンパニー」として、新しい時代のトヨタに期待するしかない、ですね。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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