ヒョンデ カスタマーエクスペリエンスセンター 横浜がオープン〜150kW急速充電器が首都圏初登場か?

2022年7月30日(土)、神奈川県横浜市に「Hyundai Customer Experience Center 横浜」がオープンしました。電気自動車『IONIQ 5』などヒョンデのZEVに関する購入相談や納車、整備などのサービスを提供する日本初の直営拠点です。EVシフトとともに、自動車を取り巻くいろんなことが変わっていきます。

ヒョンデ カスタマーエクスペリエンスセンター 横浜がオープン〜150kW急速充電器が首都圏初登場か?

日本で初めてとなるヒョンデの直営拠点

「Hyundai Customer Experience Center 横浜」(ヒョンデ カスタマーエクスペリエンスセンター横浜/以下、CXC横浜)がオープンしたのは神奈川県横浜市。横浜市営地下鉄ブルーライン、北新横浜駅から徒歩数分の場所です。オープン前日の29日、メディア向けのプレオープンイベントが開催されたので覗いてきました。

テープカットのセレモニー!

ヒョンデの電気自動車 IONIQ 5は、日本国内でも5月2日からオンラインで受注を開始。6月末から納車が始まっており、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン、マネージングダイレクターの加藤成昭氏によると「受注の初速は好調で、5月に注文いただいたお客様へ、8月中にお届けできるかどうかというところ」とのこと。

写真左から、Hyundai Mobility Japan R&D Center 崔 南一(チェ・ナムイル)所長、Hyundai Mobility Japan 李 正旭(イ・ジョンウク)社長、Hyundai Mobility Japan マネージングダイレクターの加藤成昭氏。

世界中で人気の IONIQ 5。母国の韓国や欧米では「ほぼ1年待ち」なんて話も聞いてますし、他車新型EVの納車も滞り気味の気配が濃厚な中、注文から3カ月ほどで納車されるのであればノープロブレム。右ハンドルでウインカーも右側、急速充電はチャデモ規格に対応という、いわば「日本スペシャル」ならではのお得な事情と言えそうです。と、それはさておき。

CXC横浜は、ヒョンデのZEVを紹介し、試乗や整備などのサービスを提供するための直営拠点。約2432㎡(テニスコート10面分ほど)の敷地に建てられた倉庫風の施設です。1階にはEVのIONIQ 5や、FCEVの NEXO といったヒョンデのZEV(ゼロエミッションビークル)を展示するショールームや納車セレモニーのためのスペース、試乗拠点やZEV専用の整備工場を配置。2階にはZEVオンリーで日本再上陸を果たしたヒョンデの理念を反映したブランド展示スペースである「Hyundai Lounge」や、オリジナルドリンクなどを提供するカフェ、購入相談などのための顧客ラウンジなどが設置されています。

役割としては「巨大で先進的なディーラー」と喩えることもできそうですが。1階ショールームや、2階のカフェスペースと整備工場の境界は文字通りのガラス張り。顧客ラウンジには4面大型モニターで整備の様子が映し出されています。ちょっとした点検や整備でCXCを訪れたオーナーさんは、ラウンジで寛ぎながら愛車が整備される様子などを見守ることができる趣向です。

正面エントランス前の駐車スペースには、6kW出力の普通充電器「Hyundai Home Charger」が5基、ズラリと並んでいます。その奥のスペースには、アリアやEQC、iX3などの充電性能検証記事を紹介した際に使った新電元の最大150kW出力のブーストモード付き急速充電器が1基。さらに、入口側の目立つ場所には、韓国国内では最大350kW出力でヒョンデ自らが高速道路網などに整備を進めている「E-Pit」と同型の「Hyundai Fast Charger」が屹立していました。

Hyundai Fast Charger
Hyundai Home Charger
150kWブースト器。

納車の演出が「これはうれしいだろうな」って感じ

壁面のLED画面には多彩な映像が展開できるそうです。

ユニークだったのが、1階、Hyundai Fast Charger の近くに設けられた納車エリアです。ヒョンデの担当者からは「初めて愛車と出会う大切な瞬間を特別な思い出にしていただく」ために、壁面のLEDビジョンや車両を回転させられるターンテーブルを活用して「感動的な納車セレモニーを行う」という説明がありました。

「IONIQ 5 いいなぁ」の記事をいくつも書くばかりで、財布の事情でまだ注文に踏み切れない私としては羨むしかないのですが、すでに納車待ちをしていて、新横浜まで行くのはやぶさかでないという方は、CXCでの納車を選択すると「感動的な納車セレモニー」を体験できるはずです。

テスラが先鞭となって、ボルボもオンライン方式を導入するなど、電気自動車シフトは自動車購入の仕組みまで変革しつつあります。ヒョンデでもオンライン方式を採用して日本国内でディーラー網は展開せず、今回、横浜にオープンしたCXCと同様の施設を、全国主要都市を中心に展開(詳細な場所や数などは未発表)する予定としています。

テスラオーナーでない私はちゃんと利用したことがなく実体験で語れませんが、販売方法など、テスラの場合は思い切り「革新」に振り切っていて、サービスセンターなどの設えや対応などもクールと聞き及びます。ヒョンデでは、日本再上陸に当たり、車種をZEVに絞り(事実上、IONIQ 5 をイチオシ)受注などはオンラインに特化、ディーラー網展開ではなくCXCという「拠点」展開を選んだというあたりは、テスラに倣ったとも言えます。とはいえ、テスラユーザーであるテスカスさんに「テスラのサービスセンターとヒョンデCXCを比較した印象」を尋ねると、「テスラよりユーザーフレンドリーな気がする」とのこと。車両のインテリアやインターフェースまで含め、「テスラが突き進む革新の世界と、伝統的な自動車文化の融合点」を提案してくれているのが、ヒョンデの日本展開とも言えそうです。

整備の様子はガラス張りで見学できます。
IONIQ 5 前席の「Zero Gravity Sofa」を体験できるコーナーも。

充電サービスや整備工場の稼働は9月から

IONIQ 5 をまだ買えないEVユーザーとして、CXCで最も気になるのは駐車場に設置された急速充電器です。新電元150kWブースト器は、首都圏ではまだ実際に設置されている場所がなく、使ってみようとすると長野県のBMWディーラーか、佐賀県の日産ディーラーへ行くしかありません。でも、CXC横浜のこのQC器が、eMPネットワークに加盟してヒョンデユーザー以外でも使えるようになれば、EVsmartチーム社有車の日産アリアなどでも高出力QCを行うことができます。

また、2基が並んで設置されている Hyundai Fast Charger は、韓国や欧米では最大350kW出力で運用されているハイスペック器。CXCのものは当然チャデモ規格ですけど、もしかするとこれも最大150kW出力となる可能性もあります。

そうなると、日本国内の急速充電インフラの現状に合わせて「最大90kW」となっている IONIQ 5 の急速充電性能が、最大150kW対応にアップデートされる(ソフトウェアのアップデートで対応可能であることはこちらの記事で紹介済み)かも知れません。

ただし、Hyundai Fast Charger などによる充電サービスの提供開始は「9月からを予定」とのこと。Hyundai Fast Charger の最大出力や、他社EVユーザーの利用可否、利用料金や課金方法なども検討中で、追って発表されるとのことでした。

また、1階のZEV専用整備工場の稼働開始も9月予定となっています。IONIQ 5の日本進出は、当初の計画通り順調に、着々と進展中ということですね。先日は、中国からBYDの乗用車EV日本進出計画が発表されました。迎え撃つ日本のメーカーからも、これから続々とEVに関するグッドニュースが続くはず(と信じています)。これからますます、電気自動車に要注目、です。

「Hyundai Customer Experience Center 横浜」公式サイト

一緒にプレス発表会に行ったテスカスさんが、さっそく、YouTubeのEVsmartチャンネルにCXC横浜の紹介動画を公開しています。

(取材・文/寄本 好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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