メルセデス・ベンツが世界の主要市場で超高出力充電ネットワーク構築を発表

ラスベガスで開催中のCES2023で、メルセデス・ベンツが北米を皮切りに世界の主要市場で1万台以上の高出力急速充電ネットワークを構築することを発表しました。ベンツオーナーは事前予約可能として、EV普及のために他ブランドにも開放する計画です。

メルセデス・ベンツが世界の主要市場で超高出力充電ネットワーク構築を発表

CES2023での目玉ニュース

2023年1月5日、アメリカのラスベガスで開催されているCES2023で、メルセデス・ベンツが世界の主要市場で1万台以上の高出力急速充電ネットワークを構築することを発表しました。

高出力急速充電ネットワークの構築は、まず北米からスタートするとのこと。ただし、テスラのように自社独自で展開するのではなく、北米においては、米国最大の太陽エネルギーおよび蓄電池の所有者および運営者のひとつである MN8 Energy、そしてEV充電ネットワークサービスの大手企業である ChargePoint とのコラボレーションで、2027年までに北米全体で400カ所以上、2500台以上の高出力急速充電器を設置する計画です。

メルセデス・ベンツはCES2023のカンファレンスで、高度運転支援システムやApple Musicなどとのパートナーシップで車載エンターテインメントの充実などについても発表しましたが、高出力急速充電ネットワーク構築は、グローバルのプレスリリースでもトップニュースとなっています。

最大350kW出力器を30台並べる

メルセデス・ベンツグループ取締役会会長のオラ・ケレニウス氏は、今回の急速充電ネットワーク構築について以下のようにコメントしています。

「メルセデス・ベンツは、市場で最高のEVであると私たちが信じているモデルをすでに提供しています。 しかし、モビリティの電動化を加速するためには、充電体験も最高のものにしていく必要があります。当社のお客様は、電気自動車の所有や長距離移動を楽にする魅力的な充電体験を享受する価値があります。様子見のアプローチは取りません。メルセデス・ベンツ自らグローバルなハイエンド充電ネットワークを立ち上げます。これは、お客様にとってメルセデス・ベンツを所有するもう1つの差別化要因となり、当社にとって価値創造の可能性を秘めた資産となるように計画されています。 MN8 Energy や ChargePoint などの強力で経験豊富なパートナーと共に、ここ北米でスタートできることをうれしく思います」

「様子見はしない」という心強いコメントには、さすがメルセデス・ベンツと感動すら覚えます。

EVメーカーによる高出力充電ネットワークの構築はいうまでもなくテスラが先駆者となりました。ここにきて、多くの自動車メーカーがEVに本気で取り組むようになり、フォルクスワーゲングループに続いて、メルセデス・ベンツも自らの手による急速充電ネットワークの構築を宣言したということになります。EV普及本格化に向けて、高出力急速充電ネットワーク構築はメーカー自ら責任をもって進めることが、世界の常識になってきたとも言えるでしょう。

はたして、どんな充電ネットワークになるのか。プレスリリースからポイントをピックアップしておきます。

●充電ステーションには、場所に応じて最大出力350kWの充電器を4〜12台、最終的には30台程度を設置する。

●ステーションには屋根を設けて、充電口の位置によって充電しにくいことがないよう十分なスペースを確保する。

●メルセデス・ベンツのEVオーナーは事前予約可能。

●ただし、EV普及のために他ブランドのEVオーナーにもステーションを開放。Mercedes me connect サービスの Mercedes me Charge機能に、他ブランドEVオーナーも簡単にアクセスできるようにする。

●充電ステーションでは再生可能エネルギーによるグリーン電力を使用。

どのような場所に設置するのかといった詳細な計画はまだわかりませんが、まさに、理想的な急速充電ネットワークになりそうです。

日本ではどうなるのか?

発表では、北米からスタートした後のグローバル展開について「北米、ヨーロッパ、中国、その他の主要市場で、世界中に 10,000 台以上の高出力充電器を設置」するとされています。はたして、JAPANが主要市場に含まれるのか。連休中でまだ日本法人に確認できていないのですが、ぜひ、含めて欲しいと願います。

ただし、最大350kWという高出力はコンボ規格を採用している北米と欧州を想定した数値です。中国のGB/Tは規格そのものが最大240kW程度なので、それなりの出力になるでしょう。また、日本のチャデモ規格にいたってはフォルクスワーゲングループのプレミアムチャージングアライアンスと同様に、最大150kW級になるのではないかと思われます。

日本で150kW器の拡充が進まないのは、水冷ケーブルが実用化されない課題があるとも言われています。VWGのPCAとメルセデス・ベンツの高出力充電ネットワーク構築の勢いでスピーディにチャデモ用の水冷ケーブルを開発していただいて、150kW以上の出力をもつ充電器が増えるなら、喜ばしいことだと思うので、主要市場に日本が含まれることを強く願っています。

北米でのネットワーク構築については、 MN8 Energy とメルセデス・ベンツがおおむね半々で出資するとも言及されています。日本でも、たとえばトヨタ&日産とeMPが投資を分担して、高速道路SAPAへの超急速充電器複数台設置を加速! なんていうニュースが飛び込んでくる日を待ち望みます。

なにはともあれ、あっぱれメルセデス・ベンツ! と感じるアメリカからのニュースなのでした。

文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 今後自動車会社には、自動車の生産から廃棄までのライフサイクルでカーボンフリーを達成する事が求められていくので、自動車会社自らが充電ネットワークを構築して、再生可能エネルギーによる電力供給を行っていく必要があるかもしれません。利便性が高く、環境に配慮した優れた充電ネットワークを構築した自動車会社が、勝者となる可能性があります。

    1. ピーター さま、コメントありがとうございます。

      テスラは再エネ企業たることを明示して独自急速充電ネットワークの構築に邁進していますし、VWGやMBが追随。「利便性が高く、環境に配慮した優れた充電ネットワークを構築した自動車会社が、勝者となる」流れが世界の本流となってきた印象ですね。テスラは独自ネットワークですが、VWGは欧州でIONITY、北米でEAに出資、今回のMBの発表も公共インフラ整備に注力することを示しています。はたして、日本はどうなるのか。国内のEVメーカーにも「本気」を出していただきたいところと感じています。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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