EV放浪記2.0【021】全日本EVレース第3戦で応援したHonda eが3位表彰台GET!

愛車を走らせつつ電気自動車関連の話題をレポートする連載の第21回。千葉・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催されたEV-GP(グランプリ)の第3戦「袖ヶ浦EV55kmレース大会」に、モデューロレーシングHonda eの応援に行ってきました。初めての表彰台を祝福です!

EV放浪記2.0【021】全日本EVレース第3戦で応援したHonda eが3位表彰台GET!

出場2戦目となるモデューロレーシングのHonda e

JEVRA(日本電気自動車レース協会)が主催する『2024 ALL JAPAN EV-GP SERIES』 は、電気自動車だけで競われる年間6戦のレース大会です。ここ数年はテスラ(モデル3やモデルS)の優勝が続いています。そこに「打倒テスラ」を掲げて参戦したのがモデューロレーシングHonda e。改造範囲の広いEV-P(レース専用車両)クラスでデビューした第2戦「つくば55km」で総合7位に入ったリポートはこちらです。

レース前に、あらためてモデューロレーシングHonda eがどんなクルマなのか振り返っておきます。最大の特徴が、大胆な軽量化による戦闘力アップです。ウインドウと屋根はガラスからアクリルに変更して、ボディも一部を除いてカーボン(CFRP)に換装。ノーマル約1540kgから約300kgも軽くしてあります。リアドライブで前後重量配分が50対50という車両特性を活かして、コーナリングマシンに仕上げる狙いです。

一方で、Honda eベースのドラッグレーサー「e-DRAG」として改造された車両だったため、サーキット走行が難しくなってしまった部分もありました。400mの直線で競うドラッグレース向けに改造した足回りがそのひとつ。再セッティングに取り組んでいるところですが、前戦ではまだ、パワーステアリングとブレーキのマスターシリンダーが外されたままだったそうです。ハンドリングは力任せ、制動には副次的な油圧システム(ペダルフィーリングユニット)を使っていたとか(!)。

ピットサインも新調されていました。

レースには必須の「曲がる」「止まる」に問題があったわけで、よく総合7位に入れたものですが、今回はノーマルのパワステとブレーキシリンダーを再装着しています。これは大きな改善になるはず。また、エアインテークから入った外気がボンネット内で拡散していたのを、導風板を追加して、バッテリーや機器類の冷却効率アップを図っています。

ドライバーも変更されました。今回ハンドルを握るのは安井亮平選手。「FIT1.5チャレンジカップ」で年間チャンピオンになったこともあるスゴ腕です。ただし「EVはほとんど乗ったことがなくて、サーキットで走らせるのは初めて」とのこと。はたして、どうなるでしょう。

公式予選では、いきなりヒヤッとするシーンが生まれました。早朝まで雨が降っていて、午前9時45分からの予選スタート時には、路面は完全にウエット。後で聞いたところでは、Honda eは注文していた雨用のタイヤが間に合わず、Sタイヤで予選に臨みました。このため2周目でコースアウト。ランオフエリアで動けなくなったため、予選は赤旗中断することになります。

幸い、足回りに泥や砂が付いただけで車両に異常はなく、再開された予選にも参加。1分33秒541で4番グリッドからのスタートとなったのですが、「まったくアクセルを踏めないし、バランスも何もわからなかった」(安井選手)と不安を持ち越したまま、決勝レースに臨むことになりました。

Honda eオーナーズクラブのメンバーとプチオフ会も

予選後は、各車両が充電するための時間が取られています。Honda eオーナーズクラブのメンバーと一緒に、サーキット内のレストランへ。混雑していましたが、そもそも雑談しに来ているので待ち時間も気になりません。のんびりとランチタイムを楽しみました。

午後2時20分スタートの決勝レースに出場したのは13台。上位入賞の常連だった強豪軍団「チーム・タイサン」が出場しなかったため、少し寂しいグリッドになりました。予選のあと、まったく雨は降らず、陽光が差す時間帯もあったので、コースコンディションはドライになっています。

1分27秒679でポールポジションをゲットしたのは、テスラ モデル3を駆るモンドスミオ選手。パワフルなパフォーマンス(360kW)ではなくスタンダードレンジ(202kW)で昨年の最終戦から参戦していて、4戦目にして初のPP獲得となりました。

予選2位は、ここまで2戦ともポール・トゥ・ウィンを決めているテスラ モデルS プラッド(750kW)のKIMI選手。予選タイムは1分31秒015。予選3位は、日産リーフe+で1分31秒172を出したレーサー鹿島選手という順になりました。

決勝レースは全クラス混走。燃料電池車両のトヨタ ミライ(EV-Fクラス)や、e-POWERの日産ノートやオーラ(EV-Rクラス)も並びます。他のBEV勢は、11位ジョー・ジャスティス選手(テスラ モデルY)、12位折戸聡選手(日産アリア)、13位本間康文選手(日産リーフ)となりました。

リーフe+とのバトルは見応え十分!

スタートは、EVレースならではの風景が楽しめます。一斉にエンジン音が高まったりしません。シグナルグリーンで、いきなり「シュワーッ」とクルマが猛ダッシュ。まったく無音というわけではなくて、風切り音とタイヤの接地音という、速度を実感できるサウンドが強調されるので、迫力は満点。コーナリングも怖いぐらいのスピード感です。

上位のテスラ2台がスタートダッシュに成功。モデルS プラッドのKIMI選手がモンド選手を抜き去って、独走体勢に入ります。モデル3のモンド選手もハイペースで3位以下を引き離します。各車とも決勝で予選タイムをガンガン上回っていく展開となりました。

安井選手のHonda eは、スタート直後に鹿島選手のリーフe+とバトルを演じました。Honda eは外装からフルカスタムですし、鹿島選手のリーフe+も気合いが伝わってくるレーシングカラーに塗られています。2台のテールトゥノーズはいかにもサーキットらしい見せ場でした。

Honda eは3位に浮上したのですが、EVファンとしても興味深いバトルでした。モーター出力はHonda eの113kWに対してリーフe+は160kW。バッテリー容量も35.5kWhと62kWhです。レースでは軽量化によって戦闘力をアップできることが、見ている側にもしっかり伝わってきました。

その後、上位陣はその順位をキープしたまま周回。Honda eは序盤は1分23~25秒台で走っていましたが、さらに順位を上げるのは難しいと判断して、後半は後続とのタイム差を確認しつつ、熱対策と電費を優先して1分26~28秒台でラップを重ねます。

そしてゴール。3戦連続優勝のKIMI選手、初の2位となったモンド選手に続いて、安井選手は3位で表彰台をゲットしました。23周して約56km走行したことになりますが、充電率(SOC)は「7%も残っていた」という安定したレース運びでした。途中で熱ダレしてパワーダウンすることもなかったそうです。

「ガソリン車とは違って、1周何%使ったかがはっきりわかるので、電欠しないペースを維持しました」と安井選手。「熱を持ってしまわないように回生を避けたアクセルの抜き加減だとか、コーナーへの進入速度とか、もっと効率の良い走らせ方があると思うので、ドライビングにもまだ伸びしろはあると思います」。

ウェット路面の予選ではまったく感じられなかった車両のポテンシャルの高さを楽しめたそうで、なんと「自分でもHonda eを買いたくなった」そうです。ぜひオーナーになってください!

モデューロチームとしても手応えを感じられた様子。黒石田利文監督は「バランスがいいので、ミニサーキットを走るのに向いているクルマ。レースを重ねながらセッティングを詰めていきたいですね」。次戦については「8月なので、バッテリーとPDU(パワードライブユニット)の冷却対策が課題。いよいよドライバーを冷やすことも考えないと」とのことでした。

和気あいあいとした雰囲気もEV-GPの魅力

左から2位モンド選手、1位KIMI選手、3位安井選手

レース後には表彰式にお邪魔しました。表彰台の中央に立ったのはKIMI選手。3戦3勝とチャンピオン街道を爆進中です。普段は通勤などに使っているマイカーにシールを貼って参戦しています。

「ポルシェやフェラーリも含めていろいろ乗ってきましたが、この車は本当に速い。好きな車に乗って楽しむのが一番。チーム・タイサンというライバルが不在なのは寂しいですが、これからも盛り上げていきたいですね」(KIMI選手)

過去2戦で5位、4位と順位を上げてきていたモンド選手も、PPからの2位という素晴らしい結果。初の表彰台ではニコニコ顔でした。こちらも普段乗っているマイカーでの参戦です。「モデル3はサーキットでも速いし、すごく楽しいクルマだということをみなさんに伝えたい」。表彰式で印象的だったのは、TOCJ(テスラ・オーナーズ・クラブ・ジャパン)の名前を挙げていたこと。「TOCJの仲間にサポートしてもらって、この順位を達成できました」。実際、この日もモンド選手のパドックには、テスラオーナーのみなさんが集まっていて、じつに楽しそうでした。「半分オフ会ですね」とモンド選手。

●モンド選手のXブロフィールはこちら

いやほんと、このフレンドリーな感じが、EV-GPの魅力だと思います。私たちHonda eオーナーズクラブも、代表を務めてくれているモータージャーナリストの片岡英明さんが黄色のHonda eで来てくれて、前戦の3色3台での応援から4色4台にパワーアップ。応援オフ会を楽しみました。

Honda eが4周目に出した1分23秒424というベストラップに対して、前回のレースでもバトルを演じたモンド選手のモデル3のベストは1分23秒356(同じく4周目)。今後も白熱したバトルが続くことに期待しつつ、どちらも応援させてもらいます。

第4戦は8月10日(土)にモビリティリゾートもてぎで開催されます。レースの詳細な結果や次回の開催概要については、日本電気自動車レース協会のHPでご確認ください。

私のHonda e(2021/4/29~2024/7/4)

総走行距離 5万7719km
平均電費 8.8km/kWh
累計充電回数 急速407回、普通108回

取材・文/篠原 知存

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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