高出力EV急速充電に月額900円で45円/kWh〜の新サービス「PowerX First」発表

パワーエックスが展開する高出力EV充電ステーションで、会員制の新サービス『PowerX First』の提供開始を発表しました。年払い10,800円(900円/月)で充電料金は45円/kWh〜。利用枠は最大75分で3日前から予約可能。ステーション数は年内に80カ所、2025年には300カ所へ拡大する予定です。

高出力EV急速充電に月額900円で45円/kWh〜の新サービス「PowerX First」発表

最大150kWの超急速充電が45円/kWh〜

株式会社パワーエックス(公式サイト)が、最大出力150kWの超急速充電器「Hypercharger(ハイパーチャージャー)」を展開するEV充電ネットワークで、2024年11月18日(月)から会員制の新サービス『PowerX First(パワーエックス・ファースト)』の提供を開始することを発表しました。現在実施中の無料充電キャンペーン『Try! PowerX』は11月17日(日)で終了します。

新サービス『PowerX First』は月額1,050円、または年払い10,800円(900円/月)の会員制で、従量制の充電料金は45円/kWh〜。月額料金なしの「一般利用」でも65円/kWh〜と、超急速充電のコストとして多くのEVユーザーにとって納得感が高く割安に感じられる設定です。また、ファーストの会員は「3日前から予約可能」や「利用枠が最大75分」といったメリットを得られます。

PowerX Firstの充電料金など一覧

PowerX First一般利用
会費月額900円(年払いの場合)
※月払いは月額1,050円
なし
充電料金(税込)Economy
(系統電力)
45円/kWhEconomy
(系統電力)
65円/kWh
Regular
(純再エネ70%)
50円/kWhRegular
(純再エネ70%)
70円/kWh
Premium
(純再エネ100%)
55円/kWhPremium
(純再エネ100%)
75円/kWh
予約3日前から予約可能不可(30分前から取り置き可能)
利用枠最大75分最大30分

基礎充電代替で利用する方なら、45kWh/月以上の充電でお得になるファースト会員加入がオススメ。念のために補足しておくと、一般利用の場合でもパワーエックスの専用アプリをスマホにインストールして登録することが必要です。

PowerX Firstのおもなメリット

①国内最速クラスの最大150kW超急速充電
150kWは国内市販EV(チャデモ規格)の最速級。充電性能が高いEVであれば30分で50kWh近く充電することが可能です。高速道路SAPAなどにも設置拡大が進められていますが、現状では駿河湾沼津SA、浜松SA、湾岸長島PAと指折り数える程度しかありません。

②業界最安クラスの充電料金
たとえば、多くの公共急速充電インフラをネットワークするe-Mobility Power(eMP)のビジター料金は最大出力50kW超(事実上90kW器と150kW器)の充電料金が77円/分(税込)となっています。30分で45kWh入れば「77円×30分÷45kWh=約51.3円/kWh」と安価になりますが、日産サクラのように充電性能が低く30分で10kWhしか充電できなかった場合は「約231円/kWh」と激高、最大50kW程度の一般的性能のEVで22kWh充電となった場合で約105円/kWhとなります。会員価格で45円/kWh〜、一般利用でも65円/kWh〜という充電料金は、大型蓄電池付きの利点で電力コストを抑えた「Hypercharger」ならではの強みといえそうです。

③最大75分の利用時間

国内の公共急速充電器の利用時間はおおむね1回30分が上限に設定されています。パワーエックスでは今までも最大60分まで選択して予約可能でしたが、「設置施設で食事などをするには時間が足りない」といったユーザーからの声を反映して「最大75分」を選択可能にしたとのこと。ただし、一般利用の場合は最大30分の利用枠になります。

④3日前から充電予約が可能
ステーションを事前に予約できるのはパワーエックスの大きな強みでした。PowerX Firstのサービスでは3日前から予約可能な仕組みが踏襲されるので、充電待ちの心配がありません。ただし、一般利用の場合は「30分前からの取り置き」に予約機能を制限。充電を開始できるのは予約時間になってからなので、到着時間に合わせて取り置き(予約)するテクニックを磨く必要があるかも、です。
(3分前から開始可能だったのが仕様変更となったそうです)

⑤日本全国の好立地にステーションを設置
パワーエックスでは当初から充電中の過ごし方を考慮した優良施設を選ぶなど「好立地」へのステーション設置を進めています。現在は全国20数カ所のステーション数が、2024年度内に80カ所、2025年度中には約300カ所に拡大。全都道府県を網羅する予定になっています。

『Try! PowerX』で集めたユーザーの声を反映

EVsmartブログでは、10月15日にも『パワーエックスが2基4口の「ハイパーチャージャー」設置/日本でも高出力複数口が常識へ』という記事をお届けしたばかりです。実は、今回の新サービス『PowerX First』についての説明も、新ステーション内覧会の日にメディア向けの説明会がありました。

プレゼンテーションを行ったパワーエックスのEVチャージステーション事業を担当する森居紘平執行役が強調したのは、『PowerX First』の料金やサービス内容は、約10カ月実施してきた『Try! PowerX』キャンペーンで集まった2,826件アンケート結果などのフィードバックをもとに設計したことです。フィードバックでは「不公平な時間課金に納得できない」や「充電カードでよくある4000円〜6000円もする月会費は高いと感じる」といった疑問の声があったとのこと。EVユーザーのひとりとして、まったくもって同感です。

もちろん、自らEVユーザーである森居紘平氏。

また、しっかりとユーザーの声を聞き届けて発表されたパワーエックスの新サービスが、日本のEV充電全体を「ユーザー本位」の方向に導いてくれる大きな一歩になってほしいと願います。

ちなみに私自身、現在は3年定期契約割引の日産ZESP3プレミアム100に加入しています。月額2,750円で100分間の急速充電付き。とはいえ、マイカーがバッテリー容量48.6kWhのKONAになってから遠出も増えてからでさえ、月100分の急速充電無料枠(余ったら100分まで翌月に繰り越し可能)をなかなか消費しきれません。また、私の場合は制度変更前の駆け込みでカードを作成しましたが、現在では他社EVオーナーはZESPには加入不可。3年定期契約割引もなくなりました。2026年の6月には3年契約が切れるのですが、月額4,180円のeMPカード会員になる必要は感じておらず……。

無料キャンペーン中には1基(2口)当たり30%の平均稼働率を記録したとのこと。好立地へのこだわりや予約可能といった利便性を高めた成果といえそうです。有料になっても、今回発表された価格設定であれば多くのEVユーザーが納得感高く利用できると思います。

今、eMPでも2025年の従量課金制度の導入に向けて鋭意検討&調整中のはず。eMPが従量課金制を導入すれば、ZESPを含む自動車メーカー各社の充電カードの制度も大変革の波に洗われるはず。今回発表された『PowerX First』は、「さあ、eMPはどうする?」「月額会費をもっと安くしてよ」といったユーザーの声を代弁してくれているようにも感じるのでした。

参考までに、現在のeMPの仕組みを紹介しておきます。

eMP公式サイトから引用。

なにはともあれ、『PowerX First』には「あっぱれ!」の賛辞を贈りたいと思います。

取材・文/寄本 好則

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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