日帰りで往復約650kmを走行
11月某日。福島県の郡山市へ取材に行って来ました。新幹線で行こうかとも思ったのですが、東北道の安達太良SAで増強更新された最大出力90kWの急速充電器を使ったことがなかったので、マイカーの電気自動車、ヒョンデ『KONA』で行き、ついでに少し足を伸ばしてみることにしました。安達太良SA下り線は郡山市街の20kmほど北にあります。充電の後はさらに北の二本松ICで高速を下りて郡山市内へ戻るため、直接取材先を訪れるよりざっくりと70kmほどの回り道ではあります。
今回の走行ルート。まず東京・世田谷区の自宅から安達太良SAまでの距離は約260km。郡山市内の福島日産で取材して、そっちの関係で福島県内の酒蔵へ寄り道。その後、常磐自動車道経由で東京へ戻ることも考えたのですが、東北道上下線の充電インフラ事情を再確認するためにあえて復路も東北道を選択しました。全体の走行距離は約650kmです。
午前5時ごろ。出発時のメーター表示です。自宅コンセントで満充電。航続可能距離は「437km」と表示されています。現実的には「350km先の急速充電器に辿り着く程度が安心」な感じですけど、安達太良SAまで無充電で走るくらいは余裕です。私のコナは最廉価のカジュアルグレードで、バッテリー容量は48.6kWh。今どきの新車EVとしてはやや控えめではありますが、「これで十分!」と思って購入したし、それが正しかったことは今までの長距離遠征レポートでも繰り返しお伝えしている通りです。
安達太良SA到着時のメーターがこちら。SOC(残量)27%。95kmの航続可能距離を残して余裕の無充電完走です。
安達太良まであと30分のあたりから手動で「バッテリーコンディショニング」(急速充電に備えてバッテリーを温める。熱い時は冷やしてくれます)をオンにして、「11%(消費した電力のうち)」ほどの電力を消費しました。これを使わずに走っていたら、SOCや航続距離はさらに増えていたはずです。
EVは電池をたくさん積めば積むほど長い距離を走れます。でも、多くの電池を積むほどに重くなって電費が落ちるし、車両価格が高くなるのは当然の理屈。おおむね60kWh以上のバッテリーってのは、エンジン車で言えば3リッター以上とか8気筒とかに似た贅沢仕様。大衆車は30〜50kWh程度で十分だから、充電性能やEVとしての操作性などに工夫して、魅力的なパッケージングの「より多くの人が買えるEVを!」という願いも、繰り返しお伝えしている通り、ということですね。
安達太良SAの90kW器でおかわり充電
安達太良SA下り線には、最大90kWhでケーブル2本出し(2口)の急速充電器が2基、合計で4口設置されています。区画は広くバリアフリーへの配慮もOK。雪が降る地域だからでしょう、立派な屋根まで付いています。EVユーザーのひとりとして「NEXCOさん、e-Mobility Power(eMP)さん、ありがとうございます」って感じです。これで屋根にソーラーパネルが載ってたら象徴的な充電スポットだよなと思い、裏手にあった安達太良山の展望台に上って確認してみましたが、残念ながら発電パネルはありませんでした。
2基の充電器は、新電元製とABB製が1基ずつ。EV車種との相性問題で充電できないケースがあったりするので、違うメーカーの機種を並べてあるってことだと認識しています。不具合情報はeMPの公式サイトで随時更新して発信されています。
早めに出発したこともあってアポイント時間まで2時間以上の余裕があり、ほかに充電するEVもなかったので、まず新電元で30分充電した後、ABBに移ってさらに30分間のおかわり充電を行いました。最初の充電時はフードコートで朝食をとり、2回目の充電時は車内でインタビュー内容の整理と確認をしていたら、あっという間に「30分×2回」の充電が終わった感じです。
【充電結果●安達太良SA下り線 1回目】
開始時間/8:54
終了時間/9:23
充電時間/29分
電力量/20.1kWh
SOC/27%〜65%
【充電結果●安達太良SA下り線 2回目】
開始時間/9:26
終了時間/9:56
充電時間/30分
電力量/10.8kWh
SOC/65%〜87%
ちなみに復路は、回り道と寄り道で航続可能距離がギリギリになってきたので、夕食休憩を兼ねて佐野SA(上り線)の40kW器で30分間充電しました。
【充電結果●復路/佐野SA上り線】
開始時間/17:25
終了時間/17:55
充電時間/30分
電力量/13.5kWh
SOC/26%〜52%
従量課金や30分制限の撤廃などが望ましい
ここからは今回の日帰り長距離ドライブを例にしながら、EVビギナーのみなさんにもわかりやすいよう、気付きや課題を提示していきたいと思います。
まず、2回の充電結果で一目瞭然。同じ90kW器で自動停止する30分間充電したのに、充電できた電力量が1回目は20.1kWh、2回目は10.8kWhと「ほぼ倍」ってほども違います。EVの急速充電はSOCが上がる(満充電に近くなる)ほどに充電速度が落ちる特性があることが最大の理由です。私の場合、月額2750円で月100分までの急速充電ができる日産のZESP3会員で、10月にあまり外で充電しなかったため11月は200分まで追加料金なしで充電できるので料金のことはほとんど気にしませんでした。でも、これがeMPのビジター料金「77円/分」で都度課金となる場合は「2310円/30分(1回目は29分だけど便宜上30分で計算)」となり、1回目が「約115円/kWh」に対して2回目は「約214円/kWh」という、ちょっと膝から崩れ落ちそうなほど高い電気代になってしまいます。
EV車種によって充電性能はまちまち。たとえば日産サクラの急速充電性能は最大30kWでより強い制御(受入出力を抑制する)も入るため、開始時のSOC次第ではありますが、30分の充電量はさらに少なく(高い電気代で充電することに)なるでしょう。50kW以下の充電器であれば料金は「55円/分」で少し安くなりますが、安達太良には90kW器しかないのでユーザーが選ぶことはできません(40〜50kW器が設置されている別のSAPAなどで充電することは可能)。
充電できた電力量に応じて料金を決めるのが「従量課金」という制度。今、eMPでも2025年からの導入に向けて鋭意検討中のはずですが。いろんなEVが納得感高く充電器を利用できるようにするためにも大切な、早く実現してほしい制度であるといえます。
また、今回はまったりと約1時間おかわり充電したおかげで、SOCは87%まで回復。寄り道しなきゃこのまま東京まで帰り着けるくらい充電できました。現状、公共の急速充電器は「1回30分」という原則に従って運用されています。でも、時間に余裕があるときにもっと長く充電することができれば、ゆっくりとレストランで食事できるし、ドライブ全体で充電回数を減らせます。充電待ちが発生しにくくなるように「複数口設置」が必要な条件にはなりますが、黎明期のEVスペックに合わせて生まれた「30分制限」も、そろそろ見直すべき時期になってきていることを感じます。
もっと「高出力器複数口」設置を拡げてほしい
EVsmartの地図検索で、高速道路の90kW以上の充電スポットを表示してみました。首都圏=関西圏あたりはかなり充実しています。でも、東北自動車道で90kW以上の急速充電器が設置されているのは、今回の安達太良SA(上下線に各4口)と、上り線の蓮田SA(6口)だけ。空白だけ示しても悲しいのでトリミングしましたが、北海道を含めて安達太良SA以北に充電スポットのアイコンはありません。
『eMPが高速道路SAPAのEV用高出力急速充電器増強を発表〜経路充電への不安は解消するか?』(2024年4月22日)の記事で紹介したように、eMPでは2023年度末で640口だった高速道路SAPAの急速充電器の設置口数を、2025年度末までに約1100(1073)口まで拡大するとともに、90kW以上の複数口化を進めているところです。この時に発表された予定箇所をプロットしたGoogleマイマップを作成したので、もう一度貼っておきます。
●Googleマイマップへのリンクはこちら。
EVロングドライブの利便性は、高速道路SAPAの急速充電インフラが支えてくれているといっても過言ではありません。高出力複数口化拡充はすでに進行中なので少しでも早く実現していくことを期待するのみ。頑張れ、eMPやNEXCO各社さん! です。
寒さのせいか空気圧低下のエラー表示が
最後に、マイカーKONAについていくつかの報告です。
まず、往路の車内。うっかりしててコンデジカメラとボイスレコーダー、さらにはiPadのバッテリー残量が少なくなっていたので、車内のV2Lコンセントで充電しました。
2020年の日産アリア発表時、中嶋光CVEへのインタビュー(関連記事)でコンセント搭載を切望したけど実現されずちょっと残念だったりしたこともあるのですが、手軽に100Vの交流電源が使えるのは抜群に便利です。普通充電口用のアダプターを含めて、V2L機能の使いやすさはコナやIONIQ 5といったヒョンデEVの強みだと感じます。
郡山遠征の前々日、今年1月の納車以来初めてのエラーメッセージが表示されました。急に寒くなったからでしょうか、タイヤ空気圧が低下しているというアラートでした。
適正な数値は「2.5bar(250kPa)」とのこと。エラー出たまま高速の長距離は気持ち悪いので、蓮田SAのSSに駆け込みました。
備え付けの空気入れを借りてセルフで充填。アナログのメーターで250kPaに合わせたのですが、車内のエラー表示が消えません。
不安なので少し多めに注ぎ足して。スタンドのスタッフさんに御礼を言って出発。メーターパネルで空気圧を再確認すると、今度は「2.8(bar)」と表示されていて、入れ過ぎちゃった感じです。
高速道路走行で空気圧高すぎるのも嫌なので、やむを得ず佐野SAで再びSSに駆け込んで空気を抜くという顛末になりました。車内メーターの空気圧表示は「少し走ってからじゃないとちゃんと表示されない」という教訓を学ぶことができました。空気圧検出機能がある他社車種がどうなのかはよくわかりませんが、参考にしていただければ幸いです。
私のKONA Casual(2024年11月7日現在)
総走行距離 11,977km
平均電費 7.5km/kWh
任意保険は年間走行距離9000kmのプランにしてるのに、ちょっと走り過ぎてます。
取材・文/寄本 好則