エレガントなSUV電気自動車『BYD SEALION 7』
2025年1月、東京オートサロン2025にBYDの日本法人であるBYD Auto Japan(BAJ)が、すでに中国や欧州などで発売されているSUVタイプの電気自動車である『BYD SEALION 7(シーライオン7)』を参考出品。1月10日に行われたプレスカンファレンスで、日本市場における同社4車種目のEVとして発売することを発表しました。
シーライオン7は、すでに日本で発売されている『ドルフィン(DOLPHIN=中国車名:海豚)』や『シール(SEAL=中国車名:海豹)』などと同じ「海洋シリーズ」のラインナップとなるプレミアムSUVとなります。カンファレンスでプレゼンテーションを行ったBAJの東福寺厚樹社長は「シールでも評価が高かった海洋生物からヒントを得たデザインで、伸びやかでエレガントな外観が印象的。BYDが誇るブレードバッテリーなどメカニズムの進化はもちろん、洗練されたインテリアデザインや質の高い機能が特徴になっている」と、シーライオン7への手応えをアピールしました。
価格などの詳細は未発表ですが、1月24日に開催予定の「BYD事業方針発表会2025」でシーライオン7のさらに詳しい情報を公開することを明示しました。
東京オートサロンに展示されたシーライオン7はAWDモデルで、サイズは全長4,830×全幅1,925×全高1,620×ホイールベース2,930(mm)で、車両重量は2,615kg 。82.5kWhのLFP(リン酸鉄)リチウムイオンバッテリーを搭載し、245/45 R20サイズのタイヤを装着しています。
特別限定車『BYD SEAL Edition Pale Green』発売
さらに、カンファレンスで行われたもう1台のアンヴェール。昨年発売されたスポーツセダンEVであるシールが、日本カーオブザイヤーでBYDとして、また中国製の自動車としても初めてとなる「10ベストカー」に選ばれたことを記念する特別限定車『BYD SEAL(シール) Edition Pale Green』を、1月10日から全国の正規ディーラーで販売開始することが発表されました。
限定台数はBYDの創業30周年にちなんで、後輪駆動(RWD)のベースモデルが20台、ハイパフォーマンスなAWDが10台の合計30台。「地球の温度を1℃下げる」というBYDが掲げるビジョンを表現したという日本未導入だった特別色「ペールグリーン」のボディカラーが特徴となります。
設定された車両価格(すべて税込)は、RWDが528万円、AWDが605万円ですが、昨年のシール導入時に発表された先着1000台限定の「 BYD SEAL導入記念キャンペーン」の対象となり、RWDは495万円、AWDは572万円のキャンペーン価格が適用されます。
主要諸元や装備品などは現行モデルと同一。82.56kWhの大容量バッテリーを搭載し、一充電航続距離はRWDが640km、AWDで575km(ともにWLTCモードのカタログスペック)を誇り、走りの良さや航続距離、急速充電など優れたEV性能を備えているのは、いくつかの試乗レポートでお伝えしてきた通りです。
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トヨタ超えの報道も「ターゲットはまずテスラ」
オートサロン開幕前日の1月9日、日本経済新聞が2024年の日本国内におけるEV販売台数で「BYDがトヨタ超え」という記事を報じました。日本市場に進出した前年(2023年)比54%増の2223台となったBYDの販売台数が、30%減の2038台だったトヨタを「初めて上回った」として「日本でも中国勢の勢いが強まっている」と伝えています。
カンファレンス開始前、会場で東福寺社長と立ち話する機会があったので「トヨタ超え報道」をどう受け止めているか質問してみました。
いただいた回答のポイント、まずは「まだまだこれから」ということです。日本市場進出時に目標として明示した「正規ディーラー100店舗」に向けて、2024年12月24日には全国37番目となる「BYD AUTO 佐賀」がオープン。日本での販売拡大が着々と前進中ではあるものの、EV車種が『bZ4X』とレクサスブランドの『RZ』しかないトヨタと比較して「2000台程度の販売台数で超えたとか抜かれたとかのレベルではない」というお話しでした。
むしろ、同じようにEVに特化した輸入車ブランドとして、2024年は日産サクラ(44%減の3万749台)に次ぐ5600台(3%増)を販売したテスラを当面のターゲットとして、さらなる日本市場への浸透を目指していきたいというコメントでした。
シール発売時に「モデル3と真っ向勝負」と題した記事をお届けしたように、シールのライバルがモデル3だとすると、この日発表されたシーライオンはモデルYと真っ向勝負するEVということになりそうです。
奇しくも、この日はテスラからも「新型モデルYを日本発売」(別記事で紹介予定)というニュースが届きました。また、このオートサロンではヒョンデがバッテリー容量42kWhで約285万円という衝撃価格のコンパクトEV『インスター』の先行予約開始を発表(関連記事)しました。グローバルでは言わずもがな、日本市場でもテスラやBYD、ヒョンデなどのメーカーが繰り出してくるEVの進化のスピード感が印象的です。
BYDの記事の締めとしては唐突ですが、あえて「がんばれトヨタ!」とエールを贈っておきたいと思います。
取材・文/寄本 好則