BMW『iX3』の生産が中国で始まり、アメリカは後退か

BMWの新型電気自動車であるiX3が中国で生産に入りました。まず中国で販売され、順次世界市場に展開予定です。電気自動車に関しては中国や欧州が積極的である一方、カリフォルニアを軸にリードしていたアメリカが後退してきています。『CleanTechnica』から全文翻訳記事をお送りします。

BMW『iX3』の生産が中国で始まり、アメリカは後退か

BMW iX3 Production Has Started In China, Not USA by Zachary Shahan on 『CleanTechnica

アメリカは過去数年で時代を逆行してきた

2013年のi3から何年も経ち、BMWは自社2番目の純電気自動車となるiX3の生産に入りました。興味深いことに、いくつかの理由で最初の生産は中国で始まりました。

アメリカは、一定数存在している…… ① 時計を50年以上巻き戻したい(言い換えれば後退させたい)、② 自分達の見ていた夢が迎えた結果に非常に不満で、他の人も苦しんだり “しょうがない” 状況に置かれることを願うグループ…… に影響を受け、馬鹿げた文化的内戦の最中にいます。

実際問題、アメリカは無排出テクノロジーへの転換を加速させる間に何百万もの雇用を作り出したはずのクリーンテクノロジー政策を切り捨ててしまいました。ドナルド・トランプ政権は、化石燃料や他の工業プロセスから発生する、有害で発がん性があり、命に関わる汚染から国民を守るはずだった多くの規制を廃止しました。完全に非生産的な方法で、またしても国を後退させたのです。企業に2,000ドルの便宜を図るために規制をカットすれば、ガンを患った(もしくは若くして死亡する)アメリカ人1人に10万ドルがかかることになり、社会としては前進をしていないのです。ほんの少しの金持ちをさらに金持ちにし、他の全員が余計に苦しむ社会です。

自動車に目を向けると、多数のEV販売に刺激を与えたカリフォルニア州の規制や7,500ドルのEV連邦税額控除、またEVテクノロジー自体がより競争力を持つレベルまで成熟してきたことが大きな要因となり、アメリカ電気自動車産業は成長してきました。これらの政策の拡充と電気自動車への素早い転換の奨励をする代わりに、トランプ政権は、カリフォルニアやその他の州がアメリカ政府レベルよりも強力な大気浄化や燃費改善規制を施行する権利を奪おうと戦ってきました。また政権は、アメリカ自動車産業を救済した際にオバマ/バイデン政権のもとに作られた燃料効率基準を切り捨てたのです。言い換えると、私達は過去数年で時代を逆行してきたのです…… またしても。

カリフォルニアに導かれ、1度はアメリカが電気自動車転換においての世界のリーダーとなりました。私達は今、そこから程遠いところにいます。

中国がこの転換についてはかなり積極的になり、カリフォルニアの政策から学んでそれを調整し、より強力なゴールと要件を設定したのです。結果として電気自動車市場のシェアはアメリカの何倍にも大きく飛躍し、自動車メーカーは中国で多くの車両を売って成功したいならば、電気自動車を増やす必要があるという明確なサインを受け取りました。

よって、フレッシュなBMW iX3の世界デビューは、クリーンテクノロジーが花咲いた中国になり、私達は工場の写真も入手しました。1950年代にタイムワープできると考えている(しかも国民がそうしたがっていると思っているような)、化石中毒で時代を分かっていない政府に邪魔されて窒息することもありません。

ヨーロッパも独自の強力な政策と10%程度に成長しているEV市場シェア(アメリカは1~2%)を持った電気自動車のリーダーです。BMW iX3もアメリカの地を踏む前にヨーロッパに向かうでしょう。言い換えると、中国とヨーロッパが全速力で走っている間にアメリカは遅れを取っており……いや実際には、馬鹿みたいに後ろへ走っているのです。
確かに私達にはテスラがいますし、それは本当に良かったです!また次数年ですべての自動車メーカーが、彼らの忠実な既存顧客とともに電気自動車に完全に乗り換える、しっかりとした計画を立てていれば素晴らしいのですが、残念なことにそうではありません。BMWのように政策として、または市場のニーズに応じる形でしか電気自動車を世に送り出さない、鈍い企業しかいないのです。

さてBMWのニュースに話を戻すと、9月29日にBMW・ブリリアンス・ジョイントベンチャー(BBA)が、中国瀋陽市にある生産ラインから純電気のiX3を初めて公開しました。「BBAは高レベルの生産効率と柔軟性を確保するため、内燃機関車のBMW X3と同じラインで純電気自動車のiX3を製造しています」と社は発表しています。

新しいテクノロジーとは新しい仕事を意味している

そのうちBMW iX3がアメリカやヨーロッパに来た際には、車両を隅から隅までチェックし、競合車のテスラ・モデルY、フォード・マスタング・マッハE、そしてガソリン版BMW X3と比べてどうなのかのレビューをすることになるでしょう。ただしばらくの間は、この車は中国でバッテリー開発やEVの進化が進む間に、その地域の空気をもう少しきれいにするのに役立つ中国製電気自動車としてとどまるでしょう。

iX3のニュースが出る数週間前、BMWグループはBBAジョイントベンチャーが『ハイボルテージ・バッテリーセンター』と呼ばれる瀋陽市鉄西区のバッテリー工場に新しいバッテリーセンターを追加して規模を広げ、iX3で使われる第5世代BMW eDrive テクノロジーの、よりパワフルで新しいバッテリーを生産し始めたことを発表しました。

強固な政策は、新しくてクリーンなテクノロジーへのシフトを刺激します。新しいテクノロジーとは新しい仕事を意味します。

「中国はBMWグループにとって非常に重要です。生産・革新のロケーションとしても、市場としても、です」と、BMW AG役員メンバーで生産部門の責任者でもあるMilan Nedeljković氏は話しました。

「私達の投資は、長期に渡る中国と瀋陽市に対する強力なコミットメントを明確にするものです。投資は今も続いています。鉄西と大東の工場拡大計画は軌道に乗っており、私達は将来の成長のための準備もしています。この新しいバッテリーセンターがあれば、中国エリアでのバッテリー生産量を倍にできるのです」。

あなたが私のようなアメリカ人ならば、この声明の『中国』を『アメリカ』に、また『瀋陽市』を『ノース・カロライナ』、『ジョージア』、『コロラド』などと置き換えて想像してみてください。

BBAの代表取締役である Dr. Johann Wieland氏は「ハイボルテージ・バッテリーセンターの拡張は、瀋陽、遼寧、そして中国北東部における継続投資にコミットするという具体的な証です」と付け加えました。「純電気のBMW iX3のローンチを以って、サステナブル・モビリティをリードする役割を担うという私達の決意も表しています」。

国、州、都市、人々を前に進めさせるリーダーがいる一方、これらを後退させる『リーダー』もいます。再び前者になれる方が良いに決まっていますよね。

(翻訳・文/杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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