もうすぐ発売! BYD『ATTO3』試乗レポート〜アフターでいいからフランクが欲しい!

2022年7月にBYDは国内市場に乗用車も投入することを発表した。国内で最初に投入されるBYDの乗用車はSUVタイプの「ATTO3」だ。JAIAが主催する輸入EVの試乗会で都内一般道を走行する機会を得た。どんな車なのか改めてレポートする。

もうすぐ発売! BYD『ATTO3』試乗レポート〜アフターでいいからフランクが欲しい!

現地化戦略のBYD

ATTO3の詳細やスペックはEVsmartブログの過去記事でも詳しく紹介しているが、簡単におさらいしておくと、バッテリー容量は58.56kWh。航続距離はWLTCで485kmとなっている。より実走行条件に近いEPAに換算すると約388kmとなる。国内で販売開始が発表されたのは2022年の7月だが、ATTO3はすでにグローバルで生産・販売されているモデルなので、日本市場での出荷は2023年1月にも始まるとされている(2022年12月1日現在)。

世界的な自動車の供給不足、部品不足で新車納入や各社の生産計画が読めない中、発表から半年ほどで納車可能な生産・販売体制は重要だ。ヒョンデのIONIQ 5は、国内発表から数か月で納車を始めたが、BYDは販売拠点整備と同期させる戦略だ。

BYD本体はバッテリーメーカーだが、自動車メーカーとしてはガソリン車も作っていたこともある。欧米の既存OEMとバッテリーの取引もある。電気バスやフォークリフトなど商用車の製造販売でも実績があり(BYD曰く「南極大陸以外の6大陸でBYDの車が走っている」)、BYDは保守的で地に足がついた戦略を好む。

国内での販売価格は記事執筆時点では公開されていないが、2022年12月には国内販売価格が発表されると見込まれている。「安売りはしない」はBYDジャパン 東福寺社長の言葉だが国内販売価格は消費者のみならず、ライバル各社にとっても注目の的となっている。

シンプルなプラットフォームが商品力・競争力の源泉

センターディスプレイは回転して縦型にもなる。

ATTO 3の最大の特徴は「e-Platform 3.0」が採用されている点だろう。e-Platform 3.0は、BYDがLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)モジュールを板状に構成した「ブレードバッテリー」で実装密度の高いバッテリーパックをベースとしたEVプラットフォームだ。

これに温度管理を含むバッテリー管理システム、DCチャージャー、インバーター、DC/DCコンバーター(電装品等の12V電源)などをコンパクトに一体化させている。

コバルトなどレアアースを使わず、コストと安全性も比較的高いとされるLFPは、エネルギー効率がNMCなど三元系と言われるリチウムイオンバッテリーより劣るとされる。しかし、セルやモジュールの配置、パックの構造やフレームとの一体化で容量を確保(エネルギー効率を相殺)する手法はテスラやCATL(cell to chassis)も採用している。

e-Platform 3.0はバッテリー部分が非常にすっきりしており、モーターやアクスル、制御ユニットもコンパクトだ。シンプルな構造だがフラットな土台部分は、居住性を含むボディやキャビンのデザイン自由度を上げる。モジュール構造を構成しやすいので製造工程もシンプルかつ拡張性を持つ。製造コストに加え生産性アップも期待できる。

専門家がATTO 3が競争価格を設定してくるのではないかと予想するのは、中国製だから安かろう、ではなく合理的なプラットフォーム設計だからでもある。

EV乗りが気になる回生ブレーキは?

筆者はATTO 3を運転するのは2度目だ。初回は本社取材のとき横浜みなとみらい地区をドライブしている。今回は都内一般道。市街地道路という点では同じだが、今回の車両はより製品モデルに近いという。ただしナビは最終製品ではなかったため評価していない。Android AutoやCar Playには対応するのでこれらの地図アプリは利用できるが、国内出荷バージョンでは日本語対応した国産ナビもインストールされるという。

EV乗り(私自身、先だってマイカーEVを購入した)はどうしても回生ブレーキの制御が気になってしまう。ATTO 3でも最初に気になったのは回生ブレーキがどれくらい減速してくれるのか。ワンペダルで完全停止してくれるのか。BYDはガソリン車も作っていたため、基本方針は既存の車との違和感は最小限にしたいと考えている。減速と停止はブレーキペダル操作が必要だ。

回生ブレーキの強さは、センターコンソールのスイッチで2段階切り替え(HighとStandard)ができる。Standardでの市街地走行ではアクセルオフでは普通のコースティングと同じフィーリングで滑走する。スポーツモードや高めの速度からのアクセルオフで回生ブレーキの制御を感じるくらいだ。減速感は少ないが、アクセルオフでの発電・充電は行われているので安心してほしい。

EV専用タイヤが静粛性のランクを上げる

加速もテスラのようにパワフルな制御はしていない。発進加速はマイルドだが、310Nmのトルクは十分で、発進時や上り坂、合流などの中間加速で「かったるい」というようなことはない。街中でも非常にきびきび走ってくれる。ATTO 3だけの話ではないが、街中でのEVトルクは「正義」といっていいだろう。エンジンががんばっている音や振動がなく上り坂でも自在に加速、スピード維持ができるのは、運転が楽だし渋滞でも疲れない。

静粛性に関してはキャビンの遮音以外に、コンチネンタルのEV専用タイヤが非常によい仕事をしている。試乗車はコロナ対策もあり運転席は窓全開で走っていたが、外から入ってくる自車のロードノイズがほとんどしない。ミシュランなどもEV専用タイヤを持っているが、日本メーカーもより積極的にEVタイヤを開発してほしい。トルクの大きいEVは耐摩耗性も重要だ。静穏性はいうに及ばず、ボディ剛性、フロア剛性が高い分、ボディの「いなし」が制限され乗り味に影響が出やすい面もある。トルクと回生によるピッチング、前後方向の加重変化などタイヤに求められる性能は多様だ。

ドライブモード(エコ、ノーマル、スポーツ)をスポーツにすると若干アクセルレスポンスがよくなる。SUVだが、スポーツモードにすればワインディングでは違う顔を見せてくれそうだ。

一歩踏み込んだボイスコントロールと惜しいフランク

今回の試乗で指摘しておきたい点が2つある。

ひとつは、音声認識による車両制御機能だ。試乗車はまだ英語にしか対応していなかったが出荷される車は日本語対応するという。ボイスコントロールはエアコン設定やナビ設定など対応している車種は多い。ボルボはGoogle Assistantに対応した車内インフォテインメントシステムを搭載している。

BYDのボイスコントロールは「Hi,BYD」で起動し、エアコン、ナビ、オーディオなどの操作が可能だ。ここまでは既存車両と大きな違いはない。ATTO 3はサンシェードの開閉と窓の開閉も音声コマンドで可能だ。誤作動や安全性を最優先させると、音声で窓の開閉ができることには異論があるかもしれないが、運転中にドライバーにハンドルやペダル操作以外の操作をさせることがそもそも危険という考え方もできる。運転中にラジオの選局、慣れない車でワイパーやライトの操作で迷うより、「ライトをつけて」の一言で終われば安全だ。

現状でそこまでの制御は危険というのは否定しないが、ドライブモード(スポーツやエコの切り替え)やACCの速度設定はボイスコントロールで変更できると便利なのだが。

2点目は、フランクがないことだ。写真ではわかりにくいかもしれないが、ATTO 3のフロントフード下にはかなりの空間が広がっている。メーカーとしてはいまのところATTO 3にフランクをつける予定はないそうだが、いかにももったいない空間だ。

モーターやインバーター冷却の問題があるのかもしれないが、8in1モジュールは冷却システムを持っているはずだ。アフターパーツでいいので、ぜひATTO 3のフランクキットを出してほしい。

(取材・文/中尾 真二)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. 中国BYD

    関係無い話ですが。トヨタさんが組んだ中国メーカー
    個人的には、NIO辺りと組んで欲しかった(笑)

    飛んでるメーカーかな?
    NIOは、余り面白みの無いメーカーのBYDと違い!中国のフェラーリと考えます(^-^)

    極論ですが、普通のガソリン車をEVに、変えた位で日本で売れるのかな?

    ああ、日本のEVが欲しい会社・タクシー会社とうの、営業車としては売れると考えます

  2. 指摘しておきたい点が2つ
    とありますが具体的には
    1)音声コマンドでドライブモード(スポーツやエコの切り替え)やACCの設定  これって外のEVでは普通なのですか?
    今乗ってるハイブリッドは手動設定ですがなれたのかこれでいいですかね
    2)フランクがないこと
    トランクの容量が外と比べると不足しているのですか?
    荷物がどれ位積めるかはとても気になります

  3. どのくらいの価格が出てくるか興味津々です。アリアやbz4xを圧倒する「安かろう、良かろう」を期待します。
    ただ、使用環境・目的からはサイズ的に大きすぎる(車幅)ので、次のDOLPHINの方に食指が動きますね。

  4. 当初11月の価格発表だったんですがね
    399万円くらいを期待してます!
    国産が少ないけど、価格差ないと厳しいですね

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この記事の著者


					中尾 真二

中尾 真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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