BYDの電気自動車『ATTO3』納車開始~日本第1号はEVのプロがマイカーに

BYDの国内最初のディーラーである東名横浜店でATTO3の納車セレモニーが開催されました。オーナーとなったオオタさんは「初めてのEV」とのこと。また、日本第1号納車は、コンバートEV製作の第一人者であるオズモーターズの古川さんと知り、購入した理由などを聞いてきました。

BYDの電気自動車『ATTO3』納車開始~日本第1号はEVのプロがマイカーに

購入した建売の戸建てにEV用充電コンセントがあった

今年1月末にオープンしたばかりのBYDディーラー国内1号店である「東名横浜店」で、電気自動車での日本進出第一弾車種となる『ATTO3(アットスリー)』の納車セレモニーをメディア向けに公開しました。

ATTO3は中国の深圳を本拠地とするBYD(比亜迪汽車)が日本での乗用車市場進出に向けた新会社として「BYD Auto Japan 株式会社」を設立。導入予定が発表された電気自動車3車種の第1弾として1月31日に発売されたばかりのミドルサイズSUVのバッテリーEVです。

この日新たなATTO3オーナーとなってセレモニーに登壇したのは、千葉県在住のオオタさんという30代の方でした。

「EVsmartブログ、いつも読んでます」と、かねてEVに興味をもっていたオオタさんですが、実際にEVを購入するのはこれが初めて。「数年前に建売の家を買ったら、EV用の200Vコンセントが付いていたことから、EVへの興味が深まりました。快適で維持費が安くて環境にもいいなど、いいことづくめ」と、EVをマイカーにするイメージを広げたそうです。

昨年の夏、横浜の赤レンガ倉庫で開催されていた体験試乗会でATTO3に試乗して、まずは「中国メーカーのクルマということで、正直、少しアラがあるのかなと思っていたけど、とても乗り心地のいいクルマというのが第一印象」と好感触。ほかのEV車種にも試乗しながら検討を進め、ATTO3を選んだのは「そこそこカッコよくて、装備が充実していてコストパフォーマンスが高いこと」が決断の決め手になりました。

まだ幼いお子さんがいるオオタさん。ATTO3は奥さまの賛成も得て「ファミリーカーとして購入」。家族でクルマを乗り入れられるキャンプ場に出かけて「V2L機能を活用してコーヒーを入れたりして楽しみたい」と、EVライフへの夢(じゃなくて、もうすぐにでも実現できますね)を語ってくれました。

約2カ月で48台の成約に驚きと手応え

アクセルの岡本二久社長。

納車セレモニーには、BYD東名横浜店を運営する株式会社アクセル(本社:東京都調布市)代表取締役社長の岡本二久さんも登壇、オオタさんにレプリカキーと花束を手渡しました。

岡本社長によると、1月31日の発売以来、東名横浜店ではすでに48台を受注。アクセルは東京都と神奈川県で複数の輸入車販売店を展開していますが「(日本初進出のブランドでありながら)わずか1車種、2カ月間で48台という成果は、今までに例のない反響だと感じています」とのこと。成約したオーナーさんの年齢層も「20~40代が約半分」と、若い方々にもかなり選ばれている印象です。また、8割程度の方がオオタさんのように「EVは初めて」ということでした。

さらに、ATTO3のCEV補助金は昨年度の規定(3月31日登録まで)では85万円だったのが、今年4月1日以降の登録では最大65万円になる影響が気になったので岡本社長に質問してみましたが、現段階で納車してきた車両は3月中に登録したので補助金の減額はなく。商談中のケースでも、BYDオートジャパンが20万円相当のアイテムなどをプレゼントするキャンペーンを打ち出したこともあり「さほどの影響は感じていない」とのことでした。

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日本第1号納車はオズモーターズの古川さんでした

オズの駐車場にATTO3! 手前の軽トラも奥のビートルも改造電気自動車です。

と、この納車セレモニーに先立つ3月下旬、Facebookのタイムラインに、ATTO3の写真とともに「本日、日本で初めて納車していただきました」という古川さんの投稿が流れてきました。

古川さんといえば『初期型リーフのバッテリーを合法的に増量改造~OZ Motorsが交換サービスを開始』という記事でも紹介したOZ Motors(オズモーターズ)の代表で、ビンテージカーをEVに改造して復活させるコンバージョンEV製作で日本の第一人者といえる、いわばEVのプロフェッショナルです。

テスカスさんも一緒に行ってインタビューを収録したので、おいおいYouTubeのEVsmartチャンネルに公開されるかと思います。

古川さんがATTO3を選んだポイントは何なのか。また、ATTO3の使い勝手などはどうなのか。納車セレモニーの2日後、オズモーターズを訪ねて聞いてきました。まず、今までリーフやテスラモデルSなどに乗っていた古川さんが、新たなマイカーにATTO3を選んだポイントです。

「実は僕、2018年にBYDの本社に行って、工場を見たり、唐(TANG)というEVに乗ってます。そのとき、かなり衝撃を受けて、これからBYDが来るなとマークしてました」と古川さん。

ATTO3も採用しているBYDの電気自動車専用の「e-Platform3.0」に使われているLFP(リン酸鉄)のブレードバッテリーは、ことに魅力と感じるポイントになったそうです。これから世界で躍進するであろうBYDの日本第一号車種。これは、ぜひ日本で一番最初にGETしたい! ということで、迷うことなくオーダーを入れたのでした。

実際に東京=名古屋などの長距離ドライブで乗ってみた印象として「ATTO3はすごくバランスがいいEVだと感じてます。たとえば、物理的なスイッチの数。エンジン車はセンターコンソールやハンドルの右側にまでいっぱいスイッチが付いてます。逆にテスラはほとんどスイッチがなくてほとんどモニターで操作するから、エンジン車から乗り替える人は慣れるまで大変。ATTO3は、メカニカルなスイッチと画面での操作がすっきりとまとまっていて扱いやすい」ということでした。

急速充電中の画面表示。しっかり84.7kW出ています。ちなみに、液晶画面の保護フィルムが届くまでということで、新車時のフィルムのままでした。

ATTO3のチャデモ規格の急速充電は最大85kWとアナウンスされています。古川さんはすでに何度か最大90kW出力の急速充電も行っていて、しっかり80kW以上の出力で充電できることを確認。充電スタートから「20分以上経過してSOCが上がってきても、最後までしっかり入ってくれる印象」とのこと。

一方で、クルマ作りの経験値が日本メーカーより浅いと感じる点もあるそうです。

「たとえば、フロントのグリルとバンパーの間の隙間にクリアランスがなくて、虫が挟まっちゃって取れないんですよ。国産メーカーなら、フロントの虫当たりとかもわかっていて、掃除しやすいクリアランスを取るとか、見えないようにブラックアウトするでしょう。そういう細かい点はいくつかありますね」(古川さん)

バンパーとモールの隙間が狭くて、挟まった虫が掃除できずに残ってました。
「サンバイザー裏の照明付きバニティミラーや、カードホルダも優れもの!」とお気に入りのポイントです。

ともあれ、全体的には十二分に及第点。「スマホで喩えることがよくありますよね。僕は以前iPhoneを使ってました。iPhoneは素晴らしい機械ですけど、十何万円出さなきゃ買えません。以前のAndroidはすごくダメで、僕も一度AndroidにしてまたiPhoneに戻ったこともあったけど。今のAndroidは使えるし、iPhoneの半額くらいで高性能なスマホが買えるようになったでしょ。EVにも似たようなところがあって。BYDのEVはコストパフォーマンスが高くて使えるぞというところにたくさんの人が気付くようになったら、ブレイクスルーが来ちゃうんじゃないかと思っています」とのことでした。

ボンネットの中。プロの目から見て、冷媒類をコントロールする「マルチチャンネルバルブボディはかなりスゴい」のと「インバーター含めたパワーユニットがコンパクトにまとまっているのもポイント高い」ところです。

これから国内のBYDディーラーがどんどん増えて、夏頃にはコンパクトハッチバックのDOLPHIN(ドルフィン)も発売予定。街中や高速道路でATTO3やDOLPHINを見かける機会が増えると、ブレイクスルーは日本でも意外と早く訪れるのかも知れません。

ともあれ、オオタさん、古川さん、ATTO3納車、おめでとうございます!

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 一昨日アット3納車した者です。
    古川さんの2枚目の写真をよく見ると、漢字のロゴが付いています。
    これは第一号車の特別仕様ですか?

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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