第2回 チキチキ東京-大間キャノンボール対決〜バッテリーの小さなEV3台で競争してみた

YouTubeのEVsmartチャンネルでバズった「第1回チキチキ東京-大間キャノンボール対決」は、東京から本州最北端の大間崎まで急速充電を繰り返しながら誰が最初に到着するかを競う挑戦でした。はたして、バッテリー容量の小さなEVで走るとどうなるか。フィアット500e、Honda e、日産リーフ(30kWh)の3台で挑んだチキチキ対決のインデックス記事です。

第2回 チキチキ東京-大間キャノンボール対決〜バッテリーの小さなEV3台で競争してみた

「チキチキ東京-大間キャノンボール対決」とは?

第1回「チキチキ東京-大間キャノンボール対決」は、2022年11月、YouTubeのEVsmartチャンネルなどで公開された電気自動車チャレンジ企画。このときは、浦安をスタートして本州最北端の青森県大間崎のマグロ一本釣り漁師モニュメント前のゴールを目指し、『トヨタbZ4X/日産 アリア/テスラ モデルY/ヒョンデ IONIQ 5』という最新大容量EV4台が競争するチェレンジでした。

もちろん、EVsmartチャンネルで動画が公開されて、再生回数79万回という人気動画になっています。

「キャノンボール」なんて銘打つと「猛スピードで激走バトル」みたいなイメージもありますが、EVsmart 流のキャノンボールのポイントは「経路充電(急速充電)スタンドを上手に利用して大間までの超ロングドライブを楽しむ」ことがテーマです。法定速度で安全運転を心掛け、眠くなったりしたらきちんと休憩を取るのがルールで、ルートや充電計画、エアコン使用などは各ドライバーの自由です。

ちなみに、EVによるキャノンボールという発想は、2022年11月中旬、動画担当のテスカスさんと一緒にアウディジャパン販売が開催した『Audi e-tron Cannonball Tour』を同行取材したのがきっかけでした。アウディの高級EVで「静岡=富山」という本州縦断コースを往復し、往路復路それぞれに決められた電池残量を残してゴールするルールに、テスカスさんが「これ、面白いですね。動画で何かアイデア考えようかな」と思い付いたのがきっかけでした。それからひと月も経たずに4台で東京〜大間の動画が公開されたことに驚きましたけど。

EVならではの安全に楽しめるモータースポーツ

今回のスタートは東京都江東区の有明ガーデン駐車場。ゴールは第1回と同じ本州最北端の大間崎にあるマグロ一本釣り漁師モニュメント前に設定しました。Googleマップでルートを検索すると、常磐道経由で813km/10時間38分、東北道経由では829km/10時間44分(所要時間は出発時間や道路状況などで変動します)となっています。

今回の場合、おそらく途中で最低でも6回程度、1回30分として3〜4時間の充電時間がプラスになるでしょうから、渋滞などなくスムーズに走れたとして、おおむね15〜17時間程度のゴールタイムになることを想定しました。

バッテリー容量の小さなEVによるロングドライブレポートを紹介すると、コメント欄には「EV、面倒くさ!」みたいな感想をいただくことも多いですが、それはあまりに当然のこと。一充電航続距離が短く、急速充電性能も控えめのEVで長距離をスムーズに走るためには、どの充電スタンドでどのくらい充電するか。また、どのくらいの巡航速度で電費をどのようにコントロールするかといった、EVを使いこなすための戦略とテクニックが勝負を分けるポイントになります。

すなわち、バッテリーの小さなEVでは、急速充電を繰り返しながらのロングドライブ自体が自らの知識や運転技術を確かめるためのゲームであり、「安全に楽しめるEVならではのモータースポーツ」になるとも言えるのです。

私自身、プライベートでただ「大間へ観光へ行く」のであれば、八戸まで新幹線、もしくは三沢か青森まで飛行機で行ってレンタカー(可能な限り電気自動車で)を借りる選択をするでしょう。でも、今回のキャノンボールでは「東京から大間までBEVで走りきる」(そして帰ってくる)ことが最大のチャレンジであり楽しみになっているということですね。

勝負の結果は、セグ欠け30kWhリーフが優勝しました

第2回チキチキ東京-大間キャノンボール対決への参加車両とドライバーは以下の通りです。

フィアット500e(42kWh)/木野 龍逸
ホンダ Honda e(35.5kWh)/篠原 知存
日産 リーフ AZE0(30kWh)/寄本 好則

木野さんはフィアットから500eと、日本でようやくオーナーへの配布が始まった「チャデモ→CCS1 アダプター」を借りて、初めて使いながらのチャレンジです。

篠原さんの Honda e と、私のリーフはそれぞれのマイカー。Honda e には30分間の急速充電量が50kW器を使っても16kWh程度と控えめという弱点があるし、私の30kWhリーフはすでにセグ欠けが始まっていて現在10セグ、実質的なバッテリー容量は満充電で22kWh程度になっていると思いながら使っているよぼよぼEVです。

各車がどのように走ったかのレポートは、この記事とは別に、それぞれがまとめたレポートを順次お届けして、この記事からもリンクを貼っていきますので、もれなく存分にお楽しみください。

【シリーズレポート】
第2回「チキチキ東京-大間キャノンボール対決」〜Honda e で経路充電インフラの大切さを実感(2023年4月20日)
500eで無念の敗北! 敵は睡魔と空腹だった〜第2回 チキチキ東京-大間キャノンボール対決(2023年4月24日)
●リーフレポート(coming soon)

この記事では、端的に勝負の結果をお伝えしておきます。

むつ市直前。左下の青丸(私)と木野さん(顔アイコン)の差は推定1km程度。右上アイコンの篠原さんは別ルートでむつ市街の急速充電器を目指すデッドヒートになりました。

Result ● 第2回「チキチキ東京-大間キャノンボール対決」

日産リーフFIAT 500eHonda e
バッテリー容量30kWh(10セグ)42kWh35.5kWh
充電回数11回6回6回
充電場所友部SA
湯ノ岳PA
日産プリンス福島販売 原町店
鶴巣PA
日産チェリー岩手販売 一関店
紫波SA
岩手山SA
折爪SA
道の駅 おがわら湖
ローソン 野辺地高校前店
青森日産 むつ日産
上河内PA
安達太良SA
鶴巣PA
紫波SA
折爪SA
日産プリンス青森販売下北店
那須高原SA下り
国見SA下り
前沢SA下り
岩手山SA下り
青森日産三沢店
むつ市イベント広場
合計充電時間3時間15分2時間50分3時間11分
走行距離845km859km860km
ゴール時間12時32分12時40分13時02分
所要時間16時間22分16時間27分16時間52分
途中充電電力量111.9kWh104.4kWh95.3kWh
到着時SOC66%45%56%

Honda e と 500e は充電回数6回に対して、11回の細切れ急速充電を駆使したおかげで、セグ欠け30kWhリーフで走った私が一番最初にゴールすることができました。何よりも最大の勝因は、木野さんが最後の急速充電を行うむつ市街が近づいた下北半島のコンビニ駐車場で仮眠(爆睡)してくれたことです(笑)。

民宿海峡荘のマグロはやっぱり抜群に美味しかったです

私が電気自動車で大間崎を訪れるのはこれが3回目。第1回キャノンボールで走った4人の若者たちは、大間崎の観光駐車場に停めた車中で仮眠してトンボ帰りしてきたようですが、オヤジがそんなことをやるのは事故の元。今までの訪問の際にも宿泊した、最北端の碑の目の前にある民宿「海峡荘」に宿泊してしっかり眠り、翌日の復路に備えました。

実は、「大間で大間のマグロをちゃんと出してくれるお店は数少ない」と、以前、これまた別の大間取材で聞いたことがありました。地元で聞き込みをした結果のオススメが、この海峡荘と、漁港近くにある浜寿司で、大間での宿泊は海峡荘と決めています。そんなわけで、海峡荘に泊まって夕食のマグロをいただくのは通算で4回目の体験だったのですが、期待通り、抜群に美味しかったです。

ゴール後、観光駐車場近くの「さつ丸」というお店のおかあさんが教えてくれた、これまた漁港近くの「寺川食堂」ってところで遅めの昼食で食べたカレーが吃驚仰天のボリュームで、海峡荘の夕食を全部食べきれなかったのが心残りです。

ああ、また大間へ行きたいなぁ。読者参加可能なキャノンボールを企画したら、誰か参加してくださいますか、ね?

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 到着時間も、充電時間もかなり僅差。
    これは挑戦者でも順位が変わりそうな
    文字通りタイムアタックの要素がある結果ですね。
    訂正必要ですね。
    ゴール時間の欄は不自然ですねえ。

    1. 七海(コテハン) さま、コメントありがとうございます。

      ゴール時間の欄、公開当初、入力が変でした。失礼しました。修正済みです。
      ゴール時間は無くてもOKとも思うのですが、木野さんのスタートが3分ほど遅れたので、念のために入れています。

      >タイムアタックの要素がある結果

      今回の3車種、バッテリー容量は違いますが、充電性能が横並びだったという印象です。
      結局、EVのロングドライブはQCインフラ次第、ということを再確認できました。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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