都度料金だけで利用できる急速充電サービス
2023年4月17日、ENEOS株式会社は、EV用経路充電(急速充電)サービスの「ENEOS Charge Plus」で、5月1日から新たに「会員価格」を設定することを発表しました。
ENEOS Charge Plusについては、以前の記事で概要や期待を紹介。実際にさいたま市内のスタンドで「急速充電しながら洗車の拭きあげ」をやってみた使い勝手もレポートしています。
ENEOS Charge Plus の特徴を整理しておくと……。
●月会費は無料。
●急速充電の都度料金は「49.5円/分」。
●全国のSSのほか、カーディーラー、商業施設、コンビニなどにも設置。
●当面の設置機種はニチコンと共同開発した最大出力50kW器。
●高速道路IC近くのSSには150kWをメドにした高出力器の設置も検討中。
●eMPカード(メーカー発行の充電カード)でも利用可能。
●そのほか、多彩な認証&決済方法に対応。
という感じです。従来の充電カードの場合、各カードで設定されている急速充電料金で利用することができます。私はまだ日産ZESP2のカードが使えているので、実質無料で充電できることになります。
今回発表された会員価格は、ENEOS Charge Plus に会員登録した人や、会員登録の上で発行した会員カードを利用する場合のほか、エネオスが提供しているユニークな決済サービスである「EneKey」(エネオスの特設ページ)を利用した場合にも適用されます。一覧にしておきましょう。
決済手段 | 料金(税込) | |||
2023年5月1日〜 | 従来料金 | |||
電子マネー | 49.5円/分 | 49.5円/分 | ||
ビジターワンタイムパスワード | ||||
会員ワンタイムパスワード | 46.2円/分 | |||
EneKey(ビジター) | ||||
EneKey(会員) | ||||
ENEOS Charge Plus 会員カード | ||||
eMP提携充電カード | 各カード規定料金 |
ひとつのポイントは、EneKey で充電(認証&課金も完了)できて、EneKey なら会員登録しなくても会員料金で充電できること、ですね。
今回、エネオスの本社に伺って発表の内容について確認取材。もう何年もレンタカー(最近はレンタカーでもリーフを借りることが多いですけど)以外の給油をしていない私は EneKey を見たことすらなかったのですが、なるほど、便利そうなツールです。
2022年末の時点で、すでに840万本の EneKey が発行済みとのこと。エンジン車で EneKey を利用していて EVに乗り替えた、もしくはEVを買い増ししたという方であれば、その EneKey で ENEOS Charge Plus の急速充電器を会員価格で利用できることになります。
会員価格は「46.2円/分」なので、電子マネー決済など非会員価格の「49.5円/分」に比べて1分当たり3.3円。30分充電すると99円お得です。
ユーザー本位の急速充電サービス構築へのチャレンジ
以前の記事でも紹介したように、エネオスでは ENEOS Charge Plus の急速充電器を2022年度中(2023年3月まで)に170基、2025年度までに1000基以上とするプランを進めています。170基という昨年の目標はしっかり達成できたとのこと。2030年度までには「政府が目標としている3万基の3分の1程度、数千基から1万基をメドに設置」するということなので、今後、さらにペースアップして設置数が増えていくことになりそうです。
今まで、日本国内の急速充電インフラはおもにe-Mobility Power(eMP)が拡充を進めてきました。とはいえ、2010年ごろの市販EV黎明期からの仕組みを踏襲しているeMPのルールや課金、決済方法などには、やや時代遅れになって、ユーザー本位とは言いがたいところが目立つようになっていることも事実です。
ENEOS Charge Plus は、eMP以外のプレーヤーによる、ユーザー本位の急速充電サービス構築へのチャレンジと捉えることもできます。すでにeMP提携の充電カードでの認証課金にも対応しているように、eMPともうまく連携しながら、ユーザー本位の急速充電インフラと仕組みが進展していくことに期待したいところです。
具体的に、どんなことを期待するのか。EVユーザー目線でいくつか挙げておきます。
合理的で使いやすい課金システムを!
ENEOS Charge Plus には月会費がありません。EVユーザーの中には、充電カードの月会費負担を重く感じて、また自宅充電できれば急速充電器を利用する機会はそれほど多くないことから、充電カードを持たない方も少なくありません。月会費が無料で都度料金だけの料金体系はシンプルで合理的と感じます。
充電電力量による従量課金や、充電終了後放置へのペナルティ課金などを含めて、よりEVユーザーにとって納得感の高い料金体系が工夫され、eMPなどにも広がっていくといいな、と思います。
経路充電のリソースを強化して欲しい!
今のところ、ENEOS Charge Plus が設置している最大50kWの急速充電器は、都市部を中心に、集合住宅住まいなどで自宅ガレージに充電設備を設置できないEVユーザーの「基礎充電を補完する充電器」と位置付けられているものが多いといえます。
今後は集合住宅駐車場へのEV用充電設備設置も急速に進んでいくでしょうし、EVユーザーとして ENEOS Charge Plus にとくに期待したいのは、高速道路ICに近いSSを中心とした高出力の経路充電設備の拡充です。eMPでも全国の高速道路SAPAへの高出力器複数台設置の取り組みを進めてはいますが、先日、ニチコンの6口器が運用開始されたばかりの関越道上里SAで「いきなりの満車充電待ち発生」に遭遇したように、新車販売シェアも高まり始めたEV普及の加速に追いつくのは難しそうだと感じています。
ENEOS Charge Plus で、テスラのスーパーチャージャーのように高速道路各路線の基幹ICに急速充電器が設置されるのは、充電待ち回避のためにも有効でしょう。ぜひ、高出力器の複数台設置を進めていただきたいと期待します。
その場合、先だって国交省などが表明した「IC一時退出無料化にはETCカード決済必須」という方針は、いかにも的外れな施策である印象が強くなります。いっそのこと、高速道路一時退出の無料化はEVの充電だけに限らず、すべての高速道路利用車両に拡大してしまえばいいのでは? とも思うのですが、どうなんでしょう。
電気自動車をより便利&快適に使える日本になっていくことを願っています。
取材・文/寄本 好則