集合住宅・マンションに電気自動車用充電器を設置する 【第2回】総会・施工・運用 編

「電気自動車には興味あるけどマンションだから無理……」 でも、あきらめなくていいんです! 集合住宅へのEV用充電器導入に成功した事例をEVsmartブログが独自取材。コンサルタントのユアスタンド社と共に進めた、実現までの方策などを段階別にお伝えします。第2回の今回は「総会・施工・運用」編です。

集合住宅・マンションに電気自動車用充電器を設置する 【第2回】総会・施工・運用 編

総会までの流れ、おもに理事会の説得については、前回のブログ記事でご紹介いたしました。今回は「総会上程」が決まってからの流れをお伝えします。前回の内容と重複する部分もあるかも知れませんが、ご容赦を。

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集合住宅・マンションに電気自動車用充電器を設置する 【第1回】理事会を通す 編

議案書・使用細則の作成

これは、換言すれば「詳細を煮詰めていく作業」です。上程が決まれば、議案書作成のための最終確認をしていきます。素案の作成等もユアスタンド社がお手伝いすることが多いようです。議案書に盛り込む内容はおもに以下の4つですが、これは基本的には管理会社を通して行うことになります。

1. 提案の背景

理事会では、「なぜ今回の総会で上程を決めたのか」を説明する必要があり、そこの肉付けのお手伝いもユアスタンド社に依頼する事例が多いようです。

多くの組合では……

(1)EVの普及に伴う充電設備の必要性、住民サービスの向上
今後EVのラインナップが充実してくるので、住民の選択肢を広げるために設置をする。

(2)資産価値向上
EV普及に伴い、設備の有無がマンションの価値を向上させる、また転入者等もEV所有者が増えてくる可能性も高く、その際には設備の有無が重要な付加価値になるはず。

(3)駐車場収入維持の為
マンションにとって駐車場収入は非常に重要であり、なかには収入の4〜5割を占めることもあります。その収入を維持するためには、居住者の方が今後も長く車を所有してもらえる環境に常に更新していかなければならないことになります。充電設備は、そのための手段の一つであると考えられます。

というのが定石になっています。強いリーダーシップのある理事長さんだと、この辺りの部分を「今後マンションが抱えるであろう課題」と併せて、上手く説明してくれるようです。

2. 導入費用

管理組合の負担はいくらになるのか、ここの記載方法はいくつかパターンがあります。

(1)補助金申請済での総会開催
理事会マターで申請済みであれば、補助金額がほぼ確定した状態での総会上程なので、居住者からすると、負担金額に対して信頼性が高く安心できるようです。

(2)補助金申請開始前の総会開催
補助金を利用できることが承認条件となっていることが多いようです。金額は「見込みでの記載」になり、総会後に補助金申請を行います。

(3)補助金申請なしでの総会開催
2019年にユアスタンド社が関わった案件の中には、200万円以上の費用をかけて、2基の充電器の導入を「補助金利用なし」で総会で承認をとった組合もあります。居住者の方々に費用かけても、それだけの価値があるとご判断いただけたわけです。

ユアスタンド社としては「今後の理想の姿」であると感じたパターンだったそうです。

現状では (1)か(2)のパターンが大半ですが、どれになるかはマンションごとの総会スケジュールによります。多くのマンションでは、5月の申請開始前に「補助金利用」を条件に「総会で承認」を取り、5月の申請スタートに合わせてすぐに「申請」を行なっています。

3. 利用方法

ここでは、設置場所が「他用途との併用スペース」の場合は、企画・説明・進行に特に気を遣う部分です。

「充電専用スペース」が確保できる場合は、そこまで利用方法で頭を悩ませるケースは少ないようです。しかし、既設のマンションの場合、特にスペースが凝縮されている都市部では、充電専用に設定できるスペースを確保できることはまれです。地価の高い都市部では「空間は宝」ですよね。そうした場合は「来客駐車場」や「洗車場」や「臨時駐車スペース」等を充電スペースと併用することになります。バイク駐車場・駐輪場の利用実態を調べて、スペース再編の提案を行うこともあるようです。

その場合は、大きく分けて2つの管理方法があります。

(1)時間帯によって用途を分ける方法

(2)充電も他の用途も平等に「早い者勝ち」で「予約」で利用する方法

ユアスタンド社では、これらを「アプリ」で管理できるシステムを用意しているので、どちらの提案も受け入れてもらいやすいのでしょう。

この場合、従来のスペースの「使用細則」を変更する必要が発生する場合が多いようです。使用細則の素案もユアスタンド社で作成したりします。本来は理事会が作るものですが、実際には理事会から頼まれるケースが多いようです。筆者もマンション管理組合の理事長の経験がありますが(しかも大規模改修にぶち当たりました)、こうした「細かい部分」へのノウハウの積み重ねがあるユアスタンド社は、理事会としては頼れる存在に映ることでしょう。

4. 料金設定

大原則は、「組合が電気代の負担をしない設定にする」必要がある、ということに尽きます。ユアスタンド社のアプリを利用する形ならば、管理組合が「任意の金額」に設定することが可能ですが、ユアスタンド社がマンションの電気代を考慮して「妥当な推奨金額を提示」している事例が多いようです。

大きく分けて、この4点がよく記載されています。ユアスタンド社では、これらの内容を踏まえた「議案書・細則の作成」をお手伝いして、「総会の際には理事会役員だけで説明ができる」よう準備しています。

決議方法

また、総会上程の際に結構重要になるのが「決議の方法」です。

(1)普通決議:「出席組合員」の議決権の「過半数」の賛成で承認

(2)特別決議:マンション全体の区分所有者数、および議決権総数のそれぞれ「3/4以上」の賛成で承認

充電設備の導入については、普通決議での採択がほとんどだそうです。よって、総会に上程されれば、基本的には承認されます。

しかし、まれに「特別決議」となるケースもあります。上記のように、特別決議になると一気にハードルが上がります。理解が不十分で意見がまとまっていない組合や管理会社になると、そもそも必要な議決権数を確保できず、採択の土俵にも上がらずに不成立となります。

どちらの決議になるかは、管理組合や管理会社の考え方によるので、定まった正解はないのかもしれませんが、下記URLの国交省と経産省が公表している充電器導入のガイドラインを読む限りでは、充電設備導入は共用部の「軽微な変更」ととらえられるのが常識的なため、普通決議にかけられるのが妥当に思えます。

「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車のための充電設備設置にあたってのガイドブック」(国交省・経産省)
(なお、決議についてはp.26に記載があります。)

多くの管理会社担当者も、そう判断される方がほとんどだそうです。

では、どのような場合に特別決議になるのでしょうか。簡単に言ってしまうと「管理会社の判断」ですので、人によっては同じケースでも普通決議にする人もいれば特別決議にする人もいます。

もちろん「自主性の強い管理組合」であれば、管理組合の判断となります。過去には、なぜ特別決議になったのか理解できず、管理会社の説明も中途半端で終わった事例もあったそうです。やはり管理組合が「勉強」しておくことが肝要なようです。

逆に、納得できた過去の特別決議になったケースとしては、「バイク置場を整備し直して電気自動車の充電スペースとして利用する」というものでした。これは「共用部分の大きな変更となる」と管理会社が判断して、特別決議で採択していますが、バイク置場が自動車用の駐車スペースに改造されるとなれば、まあ納得ですね。

このケースでは管理会社が優秀で、500世帯規模の大きなマンションなので特別決議の議決権数を確保するのは非常に大変でしたが、頑張っていただき無事に承認されています。

総会当日

総会当日、コンサルタントであるユアスタンド社の果たす役割は、質疑応答への対応です。EV充電を含む総会での議案の説明は、理事会の主導で行われます。質疑応答も理事会役員が行なっていますが、どうしても対応しきれないような技術的・専門的な質問の場合は、ユアスタンド社で回答するようにしているそうです。逆に、総会にはユアスタンド社は呼ばれないことも多いですが、必要があれば対応しているそうです。

総会で理事会に向けてよく出る質問

過去に実際に出た問答を、ざっとまとめてみます。原則として管理組合の理事会が答えていますが、部分的に「ユアスタンド社」が呼ばれて表面に出て回答しています。

【Q】今回の設置は、なぜ1基なのでしょうか? [中野区の、とあるマンションでの事例。駐車場は60台]
【A】補助金の対象となる上限が、今回の場合は1基であるためです。補助金の充電器設置「上限数」は、マンションの駐車場台数の「5%」が上限です。よって、今回は駐車場が60台なので、1.5%は「0.9」です。少数点以下を切り上げて「1基」となっています。

【Q】補助金制度を使って、将来的に増設は可能ですか?
【A】追加設置は、今年度の制度上は可能ですが、将来的にも追加設置が補助金の対象となるかどうかは、その年の補助金事業の概要が発表されるまで判りません。

【Q】急速充電器を設置したほうが良いのでは?
【A】急速充電器の場合は、マンションに国の補助金が仮に出たとしても、最低でも「400万円近くの導入費用」がかかるので、今の段階でこれだけの費用をかけての導入は、多少のリスクがあると考えます。また、電動車両の一部には急速充電に対応していない車種もあるので、マンションには不向きだと考えています。今回の「普通充電器」でも、「事前予約制」をとることで、10台近くは混雑なく充電を回すことが可能なので、当分は十分に対応が可能と考えています。将来的にそれでも回せなくなれば、そこで初めて費用をかけて急速充電器を入れるのか、または普通充電器を増設するのか、といった検討をしていただくほうが良いかと思います。ちなみに、急速充電は本来は「外出先」での「緊急的な利用」がメインで「経路充電」と呼ばれています。このため、設置されている場所の多くは「サービスエリア」や「道の駅」、「ディーラー」等の「それなりの距離を移動している途中に充電する」場所です。

【Q】充電器の所有者は誰ですか?
【A】管理組合です。

【Q】「手数料(30%)」を支払いながら、「4年目からの1台当たり2,000円/月」とありますが、これはどういうことですか?
【A1】まず手数料についてです。今回は「クレジットカード」をアプリ上で登録いただくために「決済手数料」分や「利用方法のサポート等の費用」としてユアスタンド社に支払います。しかし、こちらは「利用者の課金」から30%をユアスタンド社に支払っているので、管理組合が支払う費用はありませんし、利用がなければ発生しません。簡単な例を示すと、利用者に「130円の料金」が発生してお支払いいただく場合、そのうち「100円」が電気代その他雑費として管理組合へ入り、残りの「30円」がユアスタンド社へ入る、ということです。
【A2】また、後半の「4年目から月2,000円」とありますが、これは「4年目から1基あたり月2,000円」と言う意味です。利用が発生した月のみの請求ですので、利用がなければ一切請求はありません。ユアスタンド社の予測では、4年目にはEV/PHVがマンション内に2台以上は入ってくると考えており、そうなれば2,000円でも充分に相殺できると考えているそうです。ちなみに、こちらの費用に関しては、詳しく言うと、アプリを利用する場合に小型の通信機器(4G回線)を入れており、こちらの通信費用とサーバー維持費としてユアスタンド社に支払いますが、同社からは「最初の3年間は無償で提供」していただいています。

【Q】契約書について教えてください。
【A】別途用意いたしますが、契約としては2種類あります。1つ目は工事を着工する際の「工事請負契約」で、2つ目はアプリを利用する場合には「通信機器(弁当箱くらいのサイズ)」を充電器と一緒に設置しますが、その機器の「賃貸借の契約」が発生します。料金は4年目から「充電器の利用が発生した月のみ2,000円」をユアスタンド社に支払います。利用が発生しなければ、4年目以降でもこの費用は発生しません。また、契約年数としては、最初3年契約、その後4年目からは1年ごとの自動更新となります。

【Q】メンテナンスはどうなりますか?
【A】メンテナンスについては特に提案はしていません。結論から言うと、「基本的には不要」という考えです。今回は200Vの最大30Aほどの電気の取扱いとなり、エアコンと同じような電力の大きさです。それに対して費用をかけてのメンテナンスは、一般的に考える必要はないと思います。メーカーからも、家電製品によくある「半年に1回お客様ご自身でご確認ください」という案内のみです。ユアスタンド社では、そこを「有償オプション(15,000 円/年)」として年2回点検を用意していますが、契約しているマンションは今までのところ無いそうです。それで問題ないと理事会では考えています。

【Q】理事会だけでなく、ユアスタンド社も説明責任を果たすべきではありませんか?
【A】(ユアスタンド社の返答)おっしゃる通りです。今まで、管理会社様を通じてご提案してまいりましたが、機会を頂戴できましたので、ご説明させていただきたく存じます。

ユアスタンド社に向けてよくされる質問

【Q】充電器設置は時期尚早では?
【A】今後の EV/PHV がメーカーから大量に市場に投入されます。今後は、充電器があることでマンションを選択肢に入れてくることになると思います。ちなみに、新築のマンションでは充電器を設置するマンションが昨今は増えております。実際に EV 充電器を設置しているマンションでは、着実に EV 利用者が増えています。マンション居住者で EV の購入をためらう一番の原因は、充電設備がないことなので、補助金で設置ができる今が一番のタイミングではあります。居住者の選択肢を増やすことができ、先進設備の導入はマンションの資産価値向上にも繋がりますので、EV には絶対に乗らないという方がいたとしても、マンション全体にメリットがあります。

【Q】今すでに EV に乗っている人が、区分所有者の中にいるのですか?
【A】こちらのマンションで「いるかどうか」までは、管理組合様からお聞きしていないので、弊社では把握はできていませんが、どちらにしても今回の提案は、今後の EV の本格的な普及に対応し、居住者の選択肢を増やすこと、設備導入による資産価値向上を目的にしていると聞いております。他の既に充電器を導入しているマンションでも 、EV に乗る区分所有者の方がまだいない事例の方が多いほどです。EV 所有者 がいることは、検討のきっかけでしかなく、最終的には先ほどの「選択肢の拡大」と「資産価値向上」という観点で導入されています。また、駐車場の料金はマンションにとって重要な収入源ですので、それを保証する観点から導入されたマンションもあります。今後も皆さんが、時代が進んでも「お車に乗りたい」と思える環境に整備することは、重要な施策と捉えるマンションも多くございます。

【Q】補助金は来年もあるのでは?
【A】東京都は来年まではありますが、来年以降は不明です。国に関しては来年でさえ不明です。国は毎年の予算編成なので全く読めません。年々予算が縮小しており、来年の実施は保証できません。また予算が減る中でニーズは増加していますので、来年補助金事業が実施された場合でも「取り合い」になることが予想されます。その場合は「戸数の多い大規模マンション」が優遇される可能性が高いです。理由は、車自体の台数が多く、よって EV が入っている可能性がより高い、と判断できるからです。

【Q】費用については、どうなりますか?
【A】導入費用は補助金を利用して消費税分のみのご負担となります。電気代等の運用については、アプリで課金制を取りますので、利用者負担での運用となります。

【Q】耐用年数については?
【A】充電器本体の耐用年数は10年程度を見ていただければと思います。新しい製品ですので、実はメーカーも10年以上運用をしたことがありません。どちらかという、使用回数に依存する形になります。頻繁に使うことを想定して、メーカーは10年程度と回答しています。なので、実際には10年以上使えるものですが、10年で見ていただければと思います。

【Q】リプレースの費用はどうなりますか?
【A】配線や配管だったりは、そのまま利用できるので、上物(充電器本体)の取り替えのみになります。取り替えの時には価格は安くなっているはずですが、今の価格感であれば今回の充電器は「43万円」です。出力(充電速度)は落ちますが、「17万円程度」のものもあります。

【Q】充電器のメーカーはどこですか?
【A】今回の機器は「平河ヒューテック」というメーカーになります。国内の普通充電器では「4kW出力」が主流のなかで、同社は「6kW出力」という高出力の普通充電器を出している優秀なメーカーです。

【Q】万が一、御社(ユアスタンド)がなくなったら、どうなるのでしょうか?
【A】充電器自体は今回購入いただく形なり、マンションの資産です。弊社がなくなった場合は、充電器自体はそのままご利用いただけますが、運用のアプリケーションについては、引き継ぐ企業がなければ利用ができなくなります。独自で管理されるしかないと思います。

【Q】御社(ユアスタンド)の事業、売上はどうなっていますか?
【A】現在はマンションでの充電サービスをメインとしております。アプリでの課金で料金を頂戴していますが、工事でも売上として頂戴している部分もあります。ですが、今後は外部での充電サービス等も計画中です。

【Q】御社(ユアスタンド)は、何名で動かしている会社ですか?
【A】昨年(2018年)に立ち上げた会社で、現在は開発を含めて4名で運営しております。

【Q】御社(ユアスタンド)の導入実績はどれくらいですか?
【A】昨年立ち上げたばかりの新しい会社ですが、昨年(2018年)は「15件」ほどのマンションで、充電器の数でいえば「30基」ほどです。今年度に関しては、いま(2019年9月)の段階で50件程度は予定しています。充電器自体は100基程度を見込んでいます。今年度の補助金利用から見る「全国のマンションでの充電器導入数」を調べましたが、1件を除いて残り全てが弊社の実績(弊社の扱ったもの)となっております。

【Q】充電は車種によって規格が違うのですか?
【A】今回の充電器は、外車国産車含めて全ての車種で充電可能です。テスラという外車だけは専用のコネクタを装着していただき利用していただく必要があります。コネクタは、テスラを購入される方がご自身でご用意いただくものですが、テスラを買われる方は大体所有されています。

【Q】私たちのマンションに充電器を付けなくても、外部の充電器で事足りるのでは?
【A】EV の日常の充電はご自宅がメインです。「基礎充電」と呼ばれています。じつは、ご自宅に充電器をつけやすい戸建ての方が、EV ユーザー全体の9割を占めると言われています。しかし、今後はマンションでもニーズは高まりますが、充電器がご自宅にないとそもそも選択できません。外部に日常の充電を依存するのはどうしても不便です。ガソリンと違い、時間がそれなりにかかります。EVの良さは、ご自宅で充電できてしまうことです。帰宅したら充電器にセットするスマートフォンのようなものです。外部での充電は「緊急的な使用(経路充電と言います)」や「外出先での滞在中(目的地充電と言います)」を利用することを想定しています。また近年は、ディーラーにある充電器も混雑してきているとメーカーから聞いています。充電が重なり、待たなければいけないというのはストレスです。スマートフォンを充電しに、いちいち帰宅前にどこかの店舗に寄らなければならない、その際に先客が複数いて数時間待たされることを想像してみてください。ご自宅に充電設備があることが、EV の購入の重要な条件となり得るのはそのためです。

【Q】技術の向上でもっといい充電器が出るのでは?
【A】可能性がないとは言い切れませんが、充電速度をあげるにはその分の電気容量が必要になります。現在の共用部の電気契約を上げる必要が出てきたりで、結局設置できる充電器には限界があります。どちらかというと、車両に積んでいる電池の改良が今後進む可能性の方が高いです。電池の改良により充電速度が上がることも言われております。

【Q】24時間サポートですか?
【A】基本的には平日の9:00〜17:00となります。上記時間帯以外は、翌営業日の対応となります。 将来的には24時間での対応も検討中です。

アプリと運用について

ユアスタンド社が関わった導入例では、施工後は同社のアプリを使って充電課金を運用しています。どんな利用形態になるか、概要をまとめてみます。

(1)事前予約制
アプリを利用するので、自宅にいながら充電器の予約状況を確認し、好きな時間に予約することが可能です。メインの利用時間帯となる「夜間」でも、管理人の在・不在に関わらず、充電が可能です。

(2)課金について
利用者は使用時間に応じた課金を受けることになります。料金はそれぞれの管理組合で決めます。運用途中で変更することも可能です。居住者以外でも、事前に登録することで利用が可能になる余地もあります。もちろん、マンションでそうした運用を決めて許せば、です。

(3)パスワード機能
マンションで共用できるパスワードを設定して(設定自体はユアスタンド社が行います)、利用する際にそれを入力することで稼働できるので、たとえ外部の人がアクセスできる場所に充電器が設置されていたとしても、外部の人が不正に利用することを防げます。

(4)居住者以外も予約できる余地
パスワードを設定せず、かつ、マンションの駐車場にセキュリティがなければ(誰でも外部から充電場所に入れる状態なら)、「外部の人たちにも利用を許して、なるべく稼働率を上げる」ことも可能です。

(5)営業時間モード
指定時間帯以外は充電器を予約・利用できないよう、アプリ上でブロックが可能です。アプリで電気の流れを制御しているので、利用禁止時間帯にアプリを介さず勝手に利用しようと思っても、電気は流れません。
これを使えば、前述の(4)と組み合わせて「19:00〜8:00は居住者以外の方は充電器をご利用いただけません」といった運用も可能です。

総会承認後(工事準備)

総会で承認されれば、あとは一般的な工事の手続きを踏んでいくことになります。具体的には、「契約書の取り交わし」や「日程の調整」です。

工事

工事も、一般的な電気工事ですので、そこまで大掛かりな機材を使用したり、ということはありません。ただし、中にはどうしても「貫通工事」を行う必要があることもあります。

いい加減な業者だと、なんの確認もせずに貫通工事を行い、鉄筋を切ってしまったりということも耳にします。もっとも、鉄筋を少し切ったからといって、建物が崩れるリスクが増えるかというと、その可能性は低く、影響も小さいと言われています。しかし、そこは丁寧に慎重に行いたいと思っているので、ユアスタンド社では必ず下記の手順を踏んでいるそうです。

(1)設計を担当した「設計事務所」への構造的な確認(貫通を行なっても問題ない場所かどうか)を行う。

(2)実際に貫通を行う際は、専門業者を手配して「レントゲン撮影」を行います。これによって、鉄筋などの切断を確実に回避できます。

(3)貫通後の穴も、場所に応じて「防水処置」を行なったりと、適切な処置を行います。

工事後

集合住宅の機械式駐車場に200V充電器を設置する工事が行われているようす。設置工事会社だけでなく、機械式駐車機メーカーにも加わってもらってトラブルの出ない完璧な状態に仕上げる。
集合住宅の機械式駐車場に200V充電器を設置する工事が行われているようす。設置工事会社だけでなく、機械式駐車機メーカーにも加わってもらってトラブルの出ない完璧な状態に仕上げる。

工事後はユアスタンド社は「代金」を受け取り、国の補助金の機関へ「実績報告」を行います。国の補助金が管理組合に振り込まれれば、東京都の場合は都からも補助金が出るので、次は東京都への申請を行います。東京都は、国の補助金との併用の場合は「実施報告のみでOK」と、手続きも合理的で迅速に済みます。

運用開始

アプリケーションでの運用をする場合は、工事後にシステムの設定を行い、実際にアプリから充電器を稼働させるテストも行います。無事に完了したら、各戸に管理会社から「運用開始の案内」を配布してもらいます。マンションによっては「利用説明会」を開きたいので協力して欲しい、とユアスタンド社は頼まれることもあります。

運用後に「利用方法がわからない」ときなどは、ユアスタンド社に連絡が来ます。すぐに返答しているそうですが、場合によっては現場に駆けつけて対応することもあるそうです。

おわりに

いかがでしたか? 集合住宅にお住まいで、実際に充電器を導入してみようかと調べたことのある方以外には、あまり馴染みのない(ピンと来ない)内容だったかも知れません。でも、世界の流れとエネルギーの有効利用の進化を見ていると、これからEVは間違いなく増えてくることでしょう。つまり、集合住宅への充電器設置は増えることはあっても減ることはないでしょうね。

これで、調査・提案から設置・運用開始といった「段階別」はひと通り終わりました。続いては、実際に充電器の設置に成功した集合住宅を訪ねて、個々の具体的な条件・事情などを取材する「事例別」のシリーズ企画に切り替えます。取材を快諾してくださった集合住宅への取材も始めていますので、お楽しみに!

(取材・文/箱守 知己)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 入居者さんは大変ですね。
    充電器が無いのでEV購入を諦める訳です。
    数ある自動車の中から、EVも選べる環境を構築しなければいけませんね。
    自身も大家ですが、充電器は設置してあげたいです。

    しかし、普通充電に1時間130円ですか!
    ガソリン代よりも高い電気代?
    軽のEVアイミーブMだと4時間30分ですがこの単価ですと585円の充電代で、これは4.17リットル分のガソリンに相当します。
    戸建てユーザーが家で同じ時間充電すると290円〜330円くらいで、2〜2.4リットルのガソリン代相当で済みます。
    ハイブリッド車の実燃費が22km/Lで92キロの航続距離に相当しますが、アイミーブMが
    エアコン無しの超エコ運転で100kmの航続距離です。快適に運転したら80キロも走らないです。
    1時間130円も徴収したらマンションユーザーはEV買わないですよね?
    とても参考になりましたが、マンションへの充電器の設置については入居者さん自身で個別電気契約をして駐車スペースへ電柱から引っ張ってもらいます。

    1. Farfetchd様、130円ではなく、119円ですね。これで3.2kWhですから、1kWhあたり約38円。リッター22km/lのハイブリッド車と比較すると、
      ハイブリッド車:140/22=6.36円/km
      リーフ6km/kWh:38/6=6.3円/km
      ですから、ほぼ同じ燃料費。メンテナンスコストが低いこと、動力性能は電気自動車のほうが圧倒的に高いことなどを考えると、まあ悪くないのではないでしょうか?

    2. 間違いのご指摘ありがとうございます。
      出力の違う普通充電器があるのですね。
      EVはガソリン車よりはスタートダッシュが圧倒的ですし、オイル交換も不要でランニングコストは低いですから、悪くは無いですね。

      もう一つ訂正させてください。
      22km/Lのフルハイブリッド車とアイミーブMを比較しましたが、家内の軽ガソリン車マイルドハイブリッドターボは15キロ/Lでしたから、同じ土俵で比較すれば高い充電単価を払ってもEVが有利ですね。

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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