※冒頭写真はユアスタンドとニッパツが共同開発した機械式駐車場の全パレット対応EV充電器。
立体駐車場でもEV用充電器が設置可能
2022年10月24日、マンションなど集合住宅へのEV充電器(設備)導入、さらには独自アプリによる予約や課金など運用サービスを提供するユアスタンド株式会社が、IHI運搬機械株式会社のエレベータパーキングにEV充電サービスを提供することを発表しました。
ユアスタンドは2018年から首都圏を中心に集合住宅などへのEV充電設備導入と運用をサポートするサービスを展開しており、EVsmartブログでも設置事例をたくさん紹介してきた、EV充電ソリューションサービスのパイオニアと呼べる会社です。
一方、IHI運搬機械はエレベーターパーキング(立体駐車場)の設計から設置、運用までのソリューションを提供しており、国内シェアは約30%(同社ウェブサイトによる)を誇るトップメーカーです。
EVを便利に活用するために重要なのが「寝ている間に満充電」にできる拠点ガレージでの基礎充電であることは、さまざまな記事でも繰り返しお伝えしています。ところが、マンションなどの集合住宅ではEV用充電設備設置のための合意形成が障壁となっている上に、課金方法、多くの台数のEVが同時充電した場合の電気容量をどうするかといった課題があり、なかなか普及が進んでいない状況がありました。
集合住宅における充電サービスのパイオニアであるユアスタンドと、立体駐車場大手であるIHI運搬機械の連携は、とくに大都市圏で立体駐車場のあるマンションにお住まいの方にとって、EV購入への決断を後押ししてくれる朗報と言っていいでしょう。
集合住宅&立体駐車場の課題を解決するソリューション
前述のように、集合住宅へのEV充電器導入にはいくつかの課題がありました。
まず「課金方法」です。充電した電気代や設備費を賄うには、充電設備を利用するEVオーナーが適切に負担する仕組みが必要です。ユアスタンドでは独自アプリを開発し、事前に登録したクレジットカードで精算できる仕組みを提供しています。
独自アプリでは、限られた数の充電設備を集合住宅に住む多くのEVオーナーと共用する場合などに便利な「予約」機能も備えています。
さらに、多くの台数のEVが同時に充電することになると、受電設備の電力容量という課題が生じます。たとえば、最大出力4kWの充電設備を32台分設置した場合、全部が同時充電することを想定すると実に128kWという大容量を用意しておく必要があります。当然、高圧受電が必要となり、高額なキュービクルなどの設備を導入したり、毎月の電力料金の基本料金も高くなってしまいます。
ユアスタンドでは、複数の車両に順番に電気を供給する「省電力・EV全台充電システム」を開発。同時に充電可能な台数をたとえば4台に制限すれば、低圧受電の範疇に収まる「4kW×4台=16kW」の受電容量に抑えることができて、初期コストや電気代を節約することができます。
ユアスタンドでは、IHI運搬機械との連携を伝えるニュースリリースの中で、エレベーターパーキングへのEV充電設備導入の課題解決について、以下のように説明しています。
●複数の車両に順番に電気を供給する「省電力・EV全台充電システム」により、全台分の電気容量を確保する必要がなく、電気代の基本料金を抑えることが可能。
●利用者はアプリから充電予約し、利用料金は分単位でクレジット決済が可能。
●利用者が使用した分の電気代を支払う課金システムにより,充電に共用部電源を使用するマンションにおいて,受益者負担の原則でEVを充電可能。
既設マンションの立体駐車場にも導入可能?
少し気になったのは、はたして既設の立体駐車場にもこのソリューションを導入し、EV用充電設備を設置できるのかということです。ユアスタンドに確認したところ「できます」という回答でした。
ただし、既設の立体駐車場に導入する場合、新設とは別の初期コストが必要になるケースもあるということで「まずはユアスタンドに相談を」ということでした。
ユアスタンドでは、今回発表したIHI運搬機械との連携だけでなく、今年6月には株式会社ニッパツパーキングシステムズ(以下、ニッパツ)と共同開発を進め、機械式駐車場の全パレットに対応するEV充電器の設置開始を発表しています。
【関連記事】
集合住宅駐車場などのEV充電設備の選択肢が進化中〜マンション総合EXPO 2022 レポート(2022年6月20日)
また、ユアスタンドとIHI運搬機械、ニッパツだけでなく、機械式駐車場設備を提供する新明和工業やIHI扶桑エンジニリング、三菱重工といったメーカーからも、機械式駐車場、エレベーターパーキングへのEV充電対応についての発表が相次いでいます。
EV購入を検討しながらも、「うちはマンションだから」とか「立体駐車場だから」と諦めることはない時代になってきたということでしょう。ユアスタンドでは、充電設備導入に向けた理事会などとの調整や補助金申請などもサポートしてくれます。今後、EV充電設備の有無はマンションの資産価値にも関わってきます。まずは駐車場の運営会社や、ユアスタンドなどの充電サービス提供会社に「相談してみる」のが第一歩、ということですね。
【関連サイト】
ユアスタンド株式会社公式サイト
(文/寄本 好則)
これは名古屋の集合住宅自家用電気工作物を保安管理する僕にとって朗報かもしれまへん。実は立体駐車場へのEV充電器設置に悩んでたもので。
この記事を管理組合へ提示しておきますー。問題はイニシャルコストとランニングコストですが…ナンボ資産価値が上がるかどうかまで判れば導入に弾みがつくー思ったり。