集合住宅駐車場などのEV充電設備の選択肢が進化中〜マンション総合EXPO 2022 レポート

東京ビッグサイトで『マンション総合EXPO 2022』が開催されたので取材してきました。注目したのは、EV普及に向けた課題である集合住宅駐車場への充電設備に関するブース。機械式駐車場への充電設備設置への方法が広がってきています。

集合住宅駐車場などのEV充電設備の選択肢が進化中〜マンション総合EXPO 2022 レポート

集合住宅用EV充電設備の出展が増加

2022年6月16日(木)〜17日(金)、東京ビッグサイトで『マンション総合EXPO 2022』が開催されました。昨年10月の開催時にも、集合住宅への充電設備設置推進ビジネスを進める「ユアスタンド株式会社(以下、ユアスタンド)」が、日東工業やモリテック、パナソニック、ニッパツパーキングシステムズなどの機器メーカーとともに出展したことをお伝えしましたが、ユアスタンドは今回も出展。今年はさらに、既設マンションにEV用普通充電器『Terra Charge』を無料で設置することを発表したテラモーターズや、機械式立体駐車場へのEV用充電設備設置のサービスを立ち上げたファムなど、「電気自動車のマンション充電」に関する出展ブースが増えていました。

取材に行ったのは16日。なかなかの盛況でした。

日産サクラと三菱ekクロス EVが発売されて、いきなり1万5000台を受注。日本国内で買える電気自動車の選択肢が増えて、EV普及が着々と進もうとしている中、集合住宅や立体駐車場、つまり自宅などの拠点ガレージで行う基礎充電のための充電設備拡充が大事な課題となっています。EVの選択肢とともに、充電設備やサービスの選択肢が増えていることが実感できました。

ユアスタンド&ニッパツの全パレット対応EV充電器

最初に訪れたのは、ユアスタンドのブースです。去年の開催時より展示会全体の規模が小さかったこともあり、今年は車両展示のデモはなかったですが、充電器メーカー各社とともに多彩な充電ソリューションを提案していました。

ユアスタンドではこの展示会直前の6月13日、株式会社ニッパツパーキングシステムズ(以下、ニッパツ)と共同で開発を進めてきた機械式駐車場の全パレット対応EV充電器の設置開始を発表しました。

今までもユアスタンドは機械式駐車場へのEV充電設備は行っていたものの、機械式駐車場「全パレットへの設置」が課題となっていました。今回、1年以上かけて実証実験を繰り返し、パレットに入庫された状態で上下左右に移動している状況でも充電され、浸水時にはシステムが感知し自動で充電をストップするなどの安心と安全を確保、パレットの前後左右のどこにでも充電設備(200Vコンセントと充電ケーブルボックス)を設置できるシステムが完成した、ということです。充電予約や多台数の充電制御、課金などはユアスタンドのアプリで管理します。

実際の充電機器がこちら。黄色いボックス内にEV用の200Vコンセントがあり、車載の充電ケーブルを収納できるようになっています。

いたずらなどを防止するための鍵も備えています。

昨年の展示風景。

昨年展示されていたものより、ケースがスリムになっていました。

ユアスタンドとニッパツでは、6月下旬をメドに既設の機械式駐車場へのモニター設置をスタート。今後は、既設のニッパツ製の30万パレット以上の二多段式駐車場に順次設置していくことを予定しています。

展示会会場でも写真で紹介されていた設置事例は、神奈川県内のニッパツの拠点ということなので、改めて取材してご紹介したいと思っています。

ケーブル巻き取り式の6kW器〜モリテックスチール

ユアスタンドは予約&課金などが可能な独自アプリとともに、状況に応じてさまざまな状況に対応できるマンション用電気自動車充電設備の設置や補助金の申請から運用までのサポートとサービスを提供しています。ブース内には、ユアスタンドと連携している各社の充電器などが紹介されていました。

モリテックスチール製の6kW対応の普通充電器(2022年秋発売予定)は、ケーブル自動巻き取り式のスタンドタイプと、壁掛けの2タイプをラインアップ。ユアスタンドアプリと組み合わせることで、予約や課金などを行えます。巻き取り式のケーブル長は約7m。とくに屋外などではケーブルが地面で汚れるのが気になるし、収納するのがちょっと面倒だったりするのですが、自動巻き取り式はスッキリ気持ちよく使えます。

新製品の6kW器を紹介するモリテックスチールの濱田康宏さん。

モリテックスチールはもともと「鋼」の専門メーカーで、強みである「ゼンマイ」の技術を活用してケーブル自動巻き取りの仕組みを開発したと伺ったことがあります。今回の新製品でも、柔軟性に富んだケーブルを採用するなど、使いやすさと完成度にさらに磨きをかけたとのこと。これもまた、実際にどこかに設置されたら取材してご紹介したいですね。

ユアスタンドのブースでは、愛知県一宮市内の新築マンションへの設置事例を取材する際に現地を案内していただいた日東工業の豊福拓馬さんが、ケーブル付き6kW普通充電器『Pit-2G』を紹介していました。

ユアスタンドのデニス・チアさん(今回、浦社長とはお会いできなかったけど)をはじめ、各社ご担当者のみなさんの熱意を直に再確認できるのも、リアルな展示会のいいところですね。

無償設置で話題のテラモーターズも出展

既設マンションに無料で普通充電器『Terra Charge』を設置することを発表したテラモーターズも今回はこの展示会に初出展。『Terra Charge』はボックス内に通信機能を備えたスマートコンセントで、独自アプリを通じて予約や課金が可能です。

既設マンションへの設置は着々と導入が決定中とのこと。また、この展示会に向けてなのか、6月14日には「100箇所の自治体施設にEV充電インフラを無料提供」、15日に「ホームセンター100店舗にEV充電インフラを無料提供」、さらに17日には「パチンコ店に100基のEV充電インフラを無料提供」することを続々と発表しています。

『Terra Charge』はスマートコンセントなのでケーブルは付属していません。設置する機器のコストは抑えて、アプリによる課金で収益をあげようとするビジネスモデルならではのチャレンジです。私自身、長いことパチンコはやってないですが、長時間滞在することが多い場所への充電設備設置はグッドアイデアだと思います。今後は、シネマコンプレックスとか遊園地とか、長時間滞在するいろんな場所に設置していくことにも期待しちゃいたいと思います。

ちなみに、テラモーターズのブースには、生産終了が伝えられているBMW i3が置かれていました。ブースのスペースに合うコンパクトなEVということで、個人間カーシェアリングサービスのエニカで借りてきたそうです。これだけ人が集まる場所なので、日産がサクラを貸してあげたら、それはそれで注目を集めただろうなぁ、というのは、勝手な妄想&大きなお世話です。

立体駐車場のEV充電に新規参入

テラモーターズのブースの隣りには、機械式立体駐車場の開発や制御、設置やメンテナンスなどのサービスを提供するファム(Famm)という会社が、立体駐車場へのEV充電設備導入をテーマにしたブースを出展していました。

複数台の同時充電や既設パレットへの設置、補助金申請のサポートなどにも対応するとのこと。課金システムなどは、テラモーターズの『Terra Charge』アプリや、東京ガスの『EVrest(イーブイレスト)』のシステムと連携するそうです。ファムの立体駐車場充電設備についての詳細はさらに取材を重ねて改めて紹介したいと思います。

EVrestは、そもそもユビ電の『WeCharge』のソリューションを活用したサービスです。いろんなサービスや機器が登場し、有効に連携して、集合住宅などでのEV充電設備の選択肢が広がっているということでしょう。

今後も鋭意、個別ケーススタディなどの取材&紹介を進めます。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 最近電気設備点検現場でこの要件に合致する集合住宅物件が出てきました。二段式駐車場が数台あり空きの駐車場も存在するからこの記事を管理組合へ提示できそうです。
    その電源は共用部の高圧受電設備から来ており変圧器容量も足りているようなのでもしかしたら工事費も安くなるかもしれません。ユアスタンドさんを紹介すれば話が進みそうな雰囲気はあるかも。
    集合住宅の管理会社も物件の付加価値を上げる手段としてEV注射環境への関心が高まっているようです。こちらも電気管理技術者として負荷測定業務に励まねば。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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