日本初! EVトラックも充電可能な公道EV充電ステーションが横浜市で運用開始

神奈川県横浜市のみなとみらい地区に、EVトラックも充電可能な公道上の急速充電スポットが開設されました。50kW器と150kW器の2基が設置され、前方は長さ5.5m、後方は8.0mの枠線が引かれ、それぞれ枠内に収まるEVトラックや乗用車が充電できます。

日本初! EVトラックも充電可能な公道EV充電ステーションが横浜市で運用開始

EVトラックが充電可能な公道充電器は日本初

神奈川県横浜市は、2021年6月に全国初の公道上急速充電ステーションを運用開始した自治体です。2023年2月には公道急速充電スポット第二弾となる「駅前充電ステーション」を開設。そして今回、電気トラックも充電可能な駐車マスを備えて150kW級充電器を設置した第三弾を2023年12月21日に運用開始しました。場所は人気観光スポット「赤レンガ倉庫」のすぐ近くです。

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横浜市とe-Mobility Power(eMP)が主体となって実施する「EV充電器の公道設置に関する実証実験」として設置されるもので、EVトラックが充電可能な公道上の急速充電器設置は全国で初めての事例です。実証実験開始式を訪れて、新設された充電設備の概要や運用開始後のユーザーの声、そして今後の横浜市の戦略などについてまとめてみました。

写真左から eMPの四ツ柳尚子社長、横浜市の山中竹春市長、横浜市議会議長の瀬之間康浩さん。

今回の実証実験の概要

<場所>
新港中央広場 南側(横浜市中区新港一丁目5番地先)

<実証期間>
2023年12月21日~2024年3月31日(予定)

<利用料金>
認証はe-Mobility Powerネットワーク。充電料金は充電カードによって異なる。ビジター利用可。

<充電器と駐車マスサイズ>
前側:東光高岳製(50kW、シングルアーム)1基/駐車マス:長さ5.5m×幅2.5m
後側:新電元製(150kW、シングルアーム)1基/駐車マス:長さ8.0m×幅2.5m

公道上に設置するメリットについて、横浜市の担当者に確認すると以下のような回答でした。

①都市部における重要な充電場所になる。
②人目につきやすく、市民に充電インフラの充実を目で見て実感してもらえるので、EV促進という横浜市の政策に貢献してくれる。

さらに筆者が現地で感じたメリットもありました。

③アクセスしやすい。駐車場のようにわざわざ入って行ってロット(駐車マス)に駐める必要がない。バックして駐車する面倒もない。
④充電が終わっても車両が放置される可能性がきわめて低い。というのは、充電中以外は駐車違反に問われるから。

公道上設置の急速充電器の利用状況について

横浜市とeMPによる公道上の急速充電器設置は、前述のように3カ所目になります。第一弾は「しらとり台」公道上に2本アームの充電器。第二弾は「センター南駅前」駅前ロータリーに2台の急速充電器が設置され、現在も運用が続いています。

稼働状況を確認すると、どちらも1か月あたりの利用数が300回を超えているとのこと。eMPによると、全国でもトップレベルの利用回数を誇る充電器が、だいたい月あたり400回の利用ということなので、横浜市の公道上設置充電器の人気ぶりがうかがわれます。

第1号ユーザーの声

この取り組みを主導してきた横浜市の温暖化対策統括本部プロジェクト推進課では、このあと充電器の利用者の声を拾うべく、現場で第1号ユーザーの来訪を待ちました。充電器の利用をモニターしていたところ、運用開始翌日の12/22(金)11時頃、待望のユーザーがやって来ました。市役所からわりと近いので、急いでインタビューしに行ったそうです。

乗用車を充電した第一号利用者の方(利用車種は三菱アウトランダーPHEV)からは「カーナビに表示されたのでここを知った。もともと、センター南(公道上設置第二弾)の公道充電をしばしば使っているので、ここでも戸惑うことなく使えた。すばらしい取り組みなので、ぜひ今後も続けてほしい」という好意的な評価だったとのこと。公道上の急速充電器に対する市民の理解が着実に広がっているようです。

今後の方向性

2023年初冬、横浜市が市民向けに配布したパンフレットには、今後設置したい候補場所が紹介されていました。いずれも、横浜市中心部と横浜以外を結ぶ結節点、環状道路などの起点といった傾向がうかがえます。

<候補場所一覧>
1/鶴見区大黒ふ頭(大黒ふ頭中央公園前)
2/磯子区杉田五丁目
3/都筑区勝田南二丁目
4/都筑区勝田南一丁目
5/都筑区仲町台二丁目
6/栄区柏陽(柏陽高等学校校門側)
7/栄区柏陽(柏陽高等学校グラウンド側)
8/栄区笠間二丁目(大船駅笠間口)
9/泉区和泉中央南五丁目(和泉川沿い)
10/泉区和泉町(和泉図書館前)

横浜市ご担当部署から候補場所各地の地図(PDFファイル)を提供いただきました。

おすすめの場所として筆者が挙げたいのは「磯子地区」です。ここは臨海部でトラックなどの充電が見込めるだけでなく、環状2号という横浜市中心部の外周を回る流れの速い道路の起点となっています。ここから環状2号を西や西北に進むと、新保土ヶ谷バイパスを経て東京都多摩地区などに行くことができます。いずれも制限速度が比較的速く、多くの交通量がある基幹道路なので、磯子で充電できるのは便利だと思います。

公道上の充電器設置では安全への万全の配慮が求められ、さまざまな調整が必要ですが、今後も横浜市では公道上に充電器が設置されていくものと思われます。今回のような高出力器、そして複数台設置が進むのは、EVユーザーとしても歓迎したいところです。

取材・文/箱守 知己

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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