成田空港駐車場にパワーエックスの高出力急速充電器が登場~12月15日運用開始

日本の空の玄関口として知られる成田空港に、パワーエックスの電気自動車(EV)用高出力急速充電器が設置され、その運用開始を前にメディアへのお披露目が行われました。最大出力150kWを誇る急速充電器は、2023年12月15日から利用が可能です。

成田空港駐車場にパワーエックスの高出力急速充電器が登場~12月15日運用開始

空港も脱炭素化が不可欠

2023年12月15日、千葉県の成田空港第1ターミナルP1駐車場にて、株式会社パワーエックス(PowerX, Inc.)が手がけるチャデモ規格の蓄電池型高出力急速充電器「ハイパーチャージャー(Hypercharger)」の運用が開始されます。これを前に12月12日、その施設がメディアに公開されました。専用アプリで誰もが利用できる「パワーエックス チャージステーション」は、東京・青山、東京・目黒、京都(関連記事)に続いてここが4カ所目になります。

ハイパーチャージャーが設置されるのは、成田空港第1ターミナルP1の立体駐車場(自走式)。昼間でも薄暗い駐車場1階の出口付近に、「X」のロゴが光り輝いています。2基の充電ポストを挟むように2台分の充電エリアが確保され、1台なら最大150kW(連続10分間のブーストモード)、2台同時の場合でも120kWの連続充電が可能です。

成田空港を運営する成田国際空港株式会社(以下NAA)では、「サステナブルNRT2050」を掲げ、空港施設と空港車両が排出する二酸化炭素を2030年までに50%削減し、2050年までにはカーボンニュートラルを目指しています。

「サステナブルNRT2050」について説明する成田国際空港株式会社常務取締役の岩澤 弘氏。

2023年12月1日には「成田国際空港脱炭素化推進計画」が国内空港として初めて国土交通大臣の認定を受け、その取り組みを強化している真っ只中です。その一環として、空港へアクセスする車両の脱炭素化を進めるために、パワーエックスとの協業により実現したのが、今回のハイパーチャージャーの設置でした。

これまで成田空港には、P1駐車場とP2駐車場にそれぞれ1基ずつの50kW急速充電器が設置されていました。今後、EVでの来場がますます増えることに対して、120kW超の高出力急速充電器によって利便性を高めるとともに、再生可能エネルギーの電力を活用するハイパーチャージャーで脱炭素化を進めたい考えです。

『EQS 450+』で100kWオーバーを確認

蓄電池は充電ポストから離して設置できるので、レイアウトの自由度が高いのもハイパーチャージャーの長所。

パワーエックスが提供するハイパーチャージャーには、蓄電池容量179kWhの「コンパクト」と、358kWhの「スタンダード」があり、今回、成田空港に導入されたのは大容量のスタンダードです。どちらも50kW未満の低圧電力契約での運用が可能で、「キュービクル」と呼ばれる高圧受電設備も不要。他の90kWや150kW急速充電器に比べて設置や運用のコストを抑えられるというメリットがあります。また、太陽光発電などと組み合わせることで、再生可能エネルギーの活用が可能です。

ハイパーチャージャーを利用するには、専用のスマートフォンアプリを使います。登録費や月会費は一切無料で、使用した時間ではなく、充電した電力に応じて課金する従量課金制を採用しています。1kWhあたりの価格は、再生エネルギー100%の「プレミアム(Premium)」が105円、再生エネルギー70%の「レギュラー(Reguler)」が95円、系統電力(従来の発電方法)による「エコノミー(Economy)」が85円です。

取材当日は、『メルセデス・ベンツEQS 450+』と『アウディRS e-tron GT』が用意され、実際に充電する様子をが実演されて、EQS 450+は単独で100kW超の出力を確認。現時点で、ハイパーチャージャーは最大1時間の利用予約が可能で、107.8kWhのバッテリーを搭載するEQS 450+を時間内に20%から80%充電するには十分といえる能力と発揮してくれると思われます。

運用開始に向けて、パワーエックス社のEVチャージステーション事業部長の森居紘平氏は、年間の利用台数の見込みは回答を控えるとしながらも、「成田空港へは長距離ドライブの利用者が多く、また、輸入車のEV比率が増えていることから、ある程度の需要が見込めると考えています。ニースが高まれば口数を追加する可能性もあります」と話しました。

ハイパーチャージャーを紹介する株式会社パワーエックスEVチャージステーション事業部長の森居紘平氏。

一方、普通充電器の設置については、「現在、検討中ですが、まずは超急速充電器を設置することでニーズに応えていきたい」というのが、NAAの経営企画部門経営計画部サステナビリティ推進室マネージャーを務める金岡大介氏のコメントでした。

ところで、今回の取材のなかで、NAAの方々の多くが、ふだんの通勤などにEVを利用しているということを知りました。空港利用者の声だけでなく、自らの経験を生かしながら、EVが利用しやすい環境を整えていきたいという取り組み方は、私自身ひとりのEVユーザーとしてうれしいかぎりです。成田空港へはEVで行くことが多いので、EVユーザーに便利で、より環境にやさしい空港への進化を期待しています。

なお、ハイパーチャージャーでテスラ車を充電する際の不具合が報告されており、現在、パワーエックスでは原因究明を進めるとともに、当面、テスラ車での充電をしないようアナウンスしています。テスラユーザーの方はご注意ください。

文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)1件

  1. BEVのインフラ整備ということでは有意義であり、電力に比例する課金も理にかなっていますが、走行距離あたりの料金を見積もると、エンジン車に対する優位性はありませんね、残念ながら。
    まあ、日常的には自宅で夜間電力を利用し、たまに長距離走行するときに必要に応じてこうした急速充電器を利用するのであれば、妥当な金額かもしれません。
    そう考えると、電気料金が上がる前に存在したZESP/ZESP2というプログラムは、航続距離で不利なBEVを低料金で利用できるありがたい制度だったことがわかります。
    今後も電気料金に翻弄されそうです。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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