※冒頭写真はシェアグリーン南青山(東京都港区)のHypercharger。
道の駅の急速充電器が劇的にパワーアップ
2024年4月9日、国内工場をもつ蓄電池メーカーであり、自社製の蓄電池型超急速充電器「Hypercharger」によるEV用急速充電サービスを展開する株式会社パワーエックスが、EV経路充電インフラの整備に向けて一般社団法人全国道の駅連絡会と「全国の道の駅におけるEV充電設備の利用実験に関する協定」を締結。2024年5月から2年間で27カ所の道の駅に「Hypercharger」を設置していくことを発表しました。
全国道の駅連絡会は、道の駅相互の情報交換や連携を通じて道の駅の質の確保や向上を図る組織で、基本的に全国のすべての道の駅や地方自治体が加盟しています。
今回のパワーエックスによる急速充電器設置には、「再生可能エネルギーによる従量課金制を採用した超急速経路充電サービスの受容制や利便性を検証する社会実験を行う」という目的が設定されています。第一期として5月から順次設置される計画になっている道の駅は以下の12カ所。その後、2025年度中をメドにしてさらに15カ所へ設置されることになります。
第一期設置予定の道の駅
名称 | 所在地 | 現状の急速充電器 |
---|---|---|
道と川の駅 花ロードえにわ | 北海道 恵庭市 | 50kW×1基1口 |
道の駅 ニセコビュープラザ | 北海道 ニセコ町 | なし |
道の駅 猪苗代 | 福島県 猪苗代町 | 24kW×1基1口 |
道の駅 日光 | 栃木県 日光市 | 20kW×1基1口 |
道の駅 富楽里とみやま | 千葉県 南房総市 | 20kW×1基1口 |
道の駅 みのりの郷東金 | 千葉県 東金市 | 25kW×1基1口 |
道の駅 しょうなん | 千葉県 柏市 | なし |
道の駅 いちかわ | 千葉県 市川市 | 50kW×1基1口 |
道の駅 伊豆ゲートウェイ函南 | 静岡県 函南町 | 30kW×2基2口 |
道の駅 朝霧高原 | 静岡県 富士宮市 | 30kW×1基1口 |
道の駅 とよはし | 愛知県 豊橋市 | 50kW×2基2口 |
道の駅 くるめ | 福岡県 久留米市 | 20kW×2基2口 |
第一期設置予定の12カ所の道の駅について、「EV充電エネチェンジ」アプリで現状の急速充電器の状況を確認してみました。10カ所には既設器がありますが、20〜30kWの非力な「中速」充電器が多いことがわかります。一方で、まだまだ1口だけの急速充電スポットが多い現状の中、3カ所にはすでに複数口設置されているあたり、かねてからEV充電ニーズの高い場所が選ばれていると感じます。
Hypercharger は大型の蓄電池を備えた高出力急速充電器で、1基の設備で2口の充電ストールを備えています。1台だけの充電時は最大150kW(10分間のブーストモード)、2台同時の場合120kW×2口の最大出力で充電することができます。既設器と入れ替えるのか増設になるのかといったところは各地でケースバイケースかとは思いますが、書式を揃えて紹介すると「最大150kW(120kW×1基2口)」となり、50kW器×2基だった道の駅でも大幅なパワーアップです。
ちなみに、道の駅とよはしで既設の50kW器もJFE製の「蓄電池式」ではありますが、この「RAPIDAS-R」の蓄電池容量は12kWh程度(カタログには容量非掲載)で、蓄電池のSOCが減ると50kWの最大出力は出なくなります。一方、Hypercharger が備える蓄電池は定格で358kWhの超大容量。蓄電池には50kW未満の低圧受電で充電するので、高圧受電の受電設備設置などの初期投資や、デマンド基本料金などの運用コストを抑えることができます。
まあ、350kWh超の大容量蓄電池とはいえ、繁忙期に大容量EVが10台連続充電! なんてことになると空っぽになってしまうでしょうが……。Hypercharger は専用アプリで蓄電池への充電時間も勘案しながら予約をコントロールする仕組みになっているので、そのあたりも含めて合理的な運用のあり方を探る「社会実験」になるのだと思います。
ともあれ、高出力複数口化が進むことになり、対象となる、道の駅の急速充電は、EVユーザーにとってうれしいパワーアップを実現することになります。さらにEVユーザー的な観点から要望すると、道の駅には車中泊的な長時間休憩のニーズもあるでしょうから、高出力複数口の急速充電器の横に、出力6kW以上の普通充電器がズラリと並んでくれたら素敵です。
全国の道の駅から設置先を選定
パワーエックスから発信されたニュースリリースを見ながら、いくつか気になるポイントがあったのでパワーエックスのご担当部署に確認してみました。
まず、設置対象の道の駅は昨年9月に公募を行い「多数の応募」の中から選定したとのこと。手を挙げた道の駅の数は? と質問すると、「約150カ所」との回答でした。まずまずの多さだと感じます。「もっと設置場所が増えればいいのに」と勝手に思っていましたが、各地の道の駅ご担当者のみなさんも、蓄電池型のメリットや、高出力複数口設置の大切さを理解していらっしゃるということでしょう。
選定で重視したポイントは? という質問には「交通量、来場者数等の定量面や、ICからの距離や観光地としての知名度・集客力、現状の急速EV充電整備状況、防災道の駅として認定有無等の定性面を考慮・評価し、目的地充電・経路充電の観点から特に急速充電の需要が高いと想定される道の駅を選定」したとのこと。第一期の12カ所のうち千葉県が4カ所あるのも、この基準に沿った選定の結果ということです。
第二期設置予定の15カ所がまだ非公表なのは「実際の設置は先になるため」。2026年以降、さらに多くの道の駅に設置する可能性は? という質問には「当社としては積極的に検討してまいります」という回答でした。
「Try! PowerX」キャンペーンで無料充電できる?
先だって伊藤CEOへの緊急インタビュー記事でも紹介したように、今、パワーエックスでは、国内で同社がパブリックに設置して稼働中のステーションで、当面の間、充電料金を無料とする「Try! PowerX」キャンペーンを実施しています。
これから道の駅に設置されるHyperchargerの充電料金も無料になるかどうかは、「キャンペーンの終了時期は未定であるため、現時点での回答はいたしかねます」ということでした。正直、「ちゃんと有料にしたほうが充電後放置などのモラル違反を抑制できるだろうな」という気持ちと、「たくさんの道の駅で高出力が無料充電できたらインパクトはでかいなぁ」という思いが半々ですが……。当面は無料でスタートしてくれるとありがたい、と期待しておきます。
新型 Hypercharger Pro 設置の可能性も?
パワーエックスでは2024年2月、搭載する蓄電池から設置施設に最大50kWで給電できる機能を付加した「Hypercharger Pro」を発表しました。このHypercharger Proには、オプションでNACS(いわゆるテスラ規格)のケーブルを搭載することも可能です。そうなれば、チャデモアダプターでは最大125A(50kW)でしか充電できなかったテスラ車が、スーパーチャージャー以外で最大150kW(実際にどのくらいの出力にするかといった点も検討中だとは思いますが)で充電できる日本版スポットが登場することになります。
道の駅への設置機種については「個別の案件ベースで、設置するHyperchargerのモデルについては決定する予定です。また、Hypercharger Proは、2024年後半からの投入となりますが、今後、設置予定先の道の駅様と協議・検討の上で、Hypercharger Proを設置する先も出て来るかと思います」とのこと。
NACSケーブルを搭載するかどうか。また、その場合チャデモとのマルチガンにする(充電口数は確保できる?)のかといった点についても、まだ検討中ということでした。いろいろと、ユーザー本位で使いやすい急速充電スポットになることを期待しています。
今回発表された道の駅のほか、パワーエックスでは2024年末までに100拠点の充電スポット整備を目指しており、計画は着実に進行中とのこと。そもそも、「Try! PowerX」キャンペーンで充電料金を無料にしてまで取り組んでいるのは「多くのお客様からの幅広いご利用方法やご意見・ご感想を集め、最高の利便性や使い心地を追求した充電サービスの設計・提供、及びサステイナブルなビジネスモデルの構築へ反映させることを目的」としたチャレンジです。
もちろん「恒久的な施策ではない」ので、今年中にも有料化される可能性もありますが。いずれにしても、これから道の駅にも増えるHyperchargerを活用して、パワーエックスにさまざまな意見を届けるのがニッポンのEVユーザーにとってハッピーな未来に繋がっていくということです。
全国の道の駅と、パワーエックスのチャレンジを応援していきたいと思います。
【追記/2024年4月24日】4月22日、パワーエックスからのニュースリリースで、充電無料の「Try! PowerX」キャンペーンは2024年5月末で終了することが発表されました。道の駅設置には、おそらく間に合いそうにありません。ちょっと残念だけど、まあ、普通に戻るだけ、ですね。(さらに追記。無料キャンペーンは道の駅設置には間に合わないと思ったら……。もしかすると、うれしいニュースが届くかも情報が。ちょっと期待しておきます。※2024年4月26日)
取材・文/寄本 好則
EV所有者です。
道の駅に充電設備が増えていくのは歓迎しますが、使用方法、特にアプリや充電カードなどが複雑で困っています。 実際にEVへ乗ってみると充電設備は少しずつ普及しているようですが設置した会社により決済方法が違うのが最大の問題点ではないでしょうか。 パワーX社も独自の決済方法を採用するとなるとこれまた複雑になってかえって使い難い状況が発生しそうです。
今後の取材で、この各社バラバラな決済方法を一元化できないのかも取材&記事にしていただきたい。 これではEVは普及しませんよね!
BEVユーザーです。
パワーエックスを使用した充電故障(電池破損)の問題は解決してるのでしょうか?
その問題解決がないのなら「無料」であおるのは如何でしょう?
そもそも充電無料がおかしい、ビジネス的に永久無料はありえない、このあたり充電機メーカーは考えて欲しいし、日本人もガソリンと同じで「電気は有料」の意識をしっかり持って欲しい。
充電して故障すれば、悪評は一気に広がります。
それも「パワーエックスが悪い」ではなく「だからEVは使い物にならないんだ」になりますよ。
一般レベルにEVを広げるには、このWindowsパソコンみたいな「相性」「動作確認漏れ」は許されないと思います。
車はスマホじやぁないのです。
法規に乗っ取り人の命を預かる「車」なのです。
貴社には、このあたりしっかりフォロー、確認して欲しいです。
いいことばかり強調しても悪評は一瞬で広がりますよ。
充電トラブルが発生した際、道の駅の人では対処のしようがなく道の駅で働く人も「あんな迷惑なもの設置しないでくれ」になりますよ。
まあ、このコメントを掲載するか否かで貴社の方針も分かりますね(笑)